借方と貸方とは?意味や違い、仕訳方法をわかりやすく解説

2024/02/02更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

経理業務に携わる上で、帳簿や決算書などで必ずといっていいほど目にするのが「借方(かりかた)」)「貸方(かしかた)」、という言葉です。多くの事業者は、日々の取引を複式簿記という記帳方法で帳簿に記録します。借方と貸方はこの複式簿記の基本となるものですが、簿記に慣れていないと両者の違いや意味がわからず戸惑うことがあるかもしれません。

ここでは、借方と貸方の意味や基本的なルールを、具体的な使い方の例と併せて解説します。

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借方・貸方とは、複式簿記で帳簿付けを行う際に使う概念のこと

事業におけるお金の流れや日々の取引を記録すること、およびその方法を簿記といいます。簿記の方法には、単式簿記と複式簿記があります。単式簿記は、基本的には収支のみを記帳する、家計簿のようなシンプルなやり方です。

一方、複式簿記では、借方・貸方という概念を用いて、やや複雑な帳簿付けを行います。事業者の場合は複式簿記での記帳が必要なため、借方・貸方についてしっかりと理解しておく必要があります。

単式簿記と複式簿記についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

複式簿記と単式簿記の違いとは?書き方などをわかりやすく解説

取引は借方と貸方の2つの要素に分けられる

事業者の活動によって財産などが増減することを、取引と呼びます。「商品を売り上げた」「材料を仕入れた」「給与を支払った」など、日々さまざまな取引が行われていますが、それらの取引は「資産」「負債」「純資産(自己資本)」「費用」「収益」の5つに分類が可能です。さらに、財産などが増減した理由をわかりやすく記録するために、この5つのグループからさらに細かく分類したものが「勘定科目」です。

事業者で行ったすべての取引は、決められた勘定科目を使って帳簿に記録する必要があります。このとき複式簿記では、ひとつの取引が借方と貸方の2つに分けられます。左側に記載するものが借方、右側に記載するものが貸方です。取引の要素を借方・貸方の左右に振り分け、それぞれ該当する勘定科目にあてはめて帳簿に記録する一連の作業を「仕訳」といい、経理の基本となります。

借方・貸方の振り分け方

簿記上では、資産、負債、純資産(自己資本)、費用、収益のそれぞれが、増えたり減ったりする取引が繰り返されています。例えば、商品を現金で販売すると資産(現金)が増加し、収益(売上)が増加します。この場合、資産の増加が借方、収益の増加が貸方となり、それぞれ左右に振り分けられます。
借方と貸方をどのように振り分けるのかは、仕訳の際に最も頭を悩ませる部分といえるかもしれません。どのように振り分けるのかを判断するポイントは、「何が減って何が増えたか」を見ることです。主な分け方を表にまとめました。

借方・貸方の主な分け方
借方 貸方
資産 資産の増加 資産の減少
負債 負債の減少 負債の増加
純資産(自己資本) 純資産の減少 純資産の増加
費用 費用の増加 費用の減少
収益 収益の減少 収益の増加

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借方・貸方の基本的なルール

取引を借方と貸方に振り分ける仕訳には、いくつかのルールがあります。その中でも基本となるのが、下記の2つのルールです。

借方・貸方の金額は一致する

借方と貸方の金額は必ず一致します。これは例外がありません。複式簿記では、ひとつの取引を借方・貸方の2方面から記録しているだけなので、金額が一致しないことはありえません。もし一致しない場合は、何らかの仕訳ミスがあると考えられます。

例えば、「現金で材料を仕入れた」というようなシンプルな取引なら、借方と貸方の金額が一致するのはそう難しいことではないでしょう。この場合は、借方と貸方の勘定科目は1つずつです。
一方で、取引の中には、「材料の仕入金額を普通預金で振込払いにした。その際に振込手数料が発生した」というケースもよくあります。この場合は、仕入と手数料の支払いという2つの取引が発生しています。
このようにお金の増減の理由が複数あるときは、勘定科目も複数になります。取引内容によっては、借方と貸方のどちらかが2つ以上になったり、両方とも2つ以上になったりすることもあります。しかしその場合でも、ひとつの取引にかかる借方と貸方の金額は必ず一致しなければなりません。

取引の項目は5つに分類される

前述したとおり、事業者の取引は資産、負債、純資産(自己資本)、費用、収益の5つに分類されます。ですから、借方・貸方の振り分けも、この5つの項目の増減に分類されます。
それぞれの取引分類が示す内容は、下記のとおりです。

資産(流動資産・固定資産・繰延資産)

資産とは、簡単にいうと会社が持っている財産のことで、流動資産・固定資産・繰延資産の3つに分けられます。
流動資産は1年以内に現金化ができる流動性の高い資産のことで、具体的には、現金や預金、売掛金、受取手形などが挙げられます。固定資産は、土地や建物、営業権など、長期間にわたって使用される資産のことです。また、繰延資産とは、すでに支払済または支払い義務が確定し、サービスや物の提供を受けているが、その効果が将来にわたって影響を与える費用のことで、開業費などが該当します。

総資産についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

総資産とは?純資産との違いや活用法をわかりやすく解説

負債(流動負債・固定負債)

負債とは、会社がいずれ支払う義務のあるもので、流動負債に固定負債に分けられます。
流動負債は1年以内に返済する必要がある債務で、これに該当するのは買掛金や支払手形、未払金などです。一方、固定負債は返済期日が1年以内に到来しない負債を指し、社債や長期借入金などが該当します。

負債についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

負債とは?その種類や違い、経営分析に活かす方法を解説

純資産(自己資本)

純資産は返済義務がない事業者の資産のことで、自己資本ともいいます。純資産の例としては、資本金や利益剰余金などです。

純資産についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

純資産とは?総資産との違いや活用法をわかりやすく解説

費用

費用とは、事業者が収益を上げるために必要となったお金のことです。例えば、材料の仕入のほか、従業員の給与や賞与、広告宣伝費、通信費、水道光熱費などが該当します。

収益

収益とは事業者が得た収入のことで、代表的なものが売上です。そのほか、受取利息や受取配当金、雑収入なども収益に該当します。

借方・貸方の仕訳方法

ここからは、借方・貸方がどのように使われるのか、実際の仕訳例と共に見ていきましょう。現金取引と掛取引のそれぞれのケースについて解説します。

現金取引

商品の受け渡しやサービスの提供と同時に、その代金を現金で支払う(または受け取る)取引を、現金取引といいます。ここでは、取引先の接待にかかった費用を、現金で支払ったという例で考えてみましょう。

取引先の接待を行い、3万円の飲食代を現金で支払った場合
借方 貸方
交際費 30,000 現金 30,000

接待を行った場合は、「交際費」という勘定科目で仕訳します。仕訳するときは、大まかに「現金を受け取ったら現金勘定は左(借方)、現金を支払ったら現金勘定は右(貸方)」と考えるといいでしょう。仕訳の具体的な流れは、下記のとおりです。

  1. 1.
    取引を原因と結果に分ける
    取引を、お金が動いた原因と、その結果に分解します。この事例では、「交際費を使った」という原因と、「現金3万円を使った」という結果に分けられます。
  2. 2.
    勘定科目に当てはめる
    「1」で振り分けた原因と結果を、それぞれ該当する勘定科目にあてはめます。接待を行った費用は「交際費」に、現金はそのまま「現金」という勘定科目になります。
  3. 3.
    借方と貸方に分けて記入
    あてはめた勘定科目を、借方と貸方のそれぞれに記入します。この事例では、借方に「交際費」、貸方に「現金」となります。

掛取引

掛取引とは、商品の引渡し時やサービスの提供時には代金の支払を行わず、期日を決めて後払いする取引のことです。多くの場合、月末など定められた締め日に1か月分の取引金額をとりまとめて請求書を発行し、請求書を受け取った側は決められた期日までに代金を支払います。
商品やサービスを掛取引で販売し、まだ受け取っていない代金のことを「売掛金」といいます。売掛金は、代金が未回収の段階では借方に計上し、代金を回収したときに貸方に計上するものです。

掛取引で10万円の商品を得意先に販売し、代金は翌月に支払われる予定の場合
借方 貸方
売掛金 100,000 売上 100,000
前月に販売した商品の代金として、10万円が普通預金に振り込まれた場合
借方 貸方
普通預金 100,000 売掛金 100,000

一方、掛取引で材料・商品の仕入や外注先への依頼を行い、まだ支払っていない代金を「買掛金」といいます。買掛金は、支払義務のある債務にあたります。

掛取引で10万円の商品を仕入れ、代金は翌月支払う予定の場合
借方 貸方
仕入 100,000 買掛金 100,000
前月に仕入れた商品の代金として、10万円を現金で支払った場合
借方 貸方
買掛金 100,000 現金 100,000

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取引を借方・貸方に振り分けて記帳する仕訳は、経理業務の基本ともいえるものです。しかし、仕訳にはいくつものルールがあり、簿記の知識がないと手間や時間がかかりがちです。また、仕訳ミスや仕訳漏れが起こると、決算時期などにチェックや修正で多大な負担がかかってしまいます。

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よくあるご質問

借方、貸方とは?

複式簿記では、すべての取引は決められた勘定科目を使って帳簿に記録する必要があり、ひとつの取引が借方と貸方の2つに分けられます。左側に記載するものが借方、右側に記載するものが貸方です。詳しくはこちらをご確認ください。

借方と貸方に振り分ける際の仕訳ルールは?

取引を借方と貸方に振り分ける仕訳には、いくつかのルールがあります。その中でも基本となるのが、「借方・貸方の金額は一致する」ことと、「取引の項目は資産、負債、純資産(自己資本)、費用、収益の5つに分類される」ことです。詳しくはこちらをご確認ください。

借方と貸方の仕訳方法は?

商品の受け渡しやサービスの提供と同時に、その代金を現金で支払う(または受け取る)現金取引の場合、大まかに「現金を受け取ったら現金勘定は左(借方)、現金を支払ったら現金勘定は右(貸方)」と考えるといいでしょう。具体的な仕訳例はこちらをご確認ください。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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