損金とは?損金算入・不算入の考え方や費用との違いを解説

2023/12/04更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

法人税の計算をするときによく聞かれるのが、「損金算入」「損金不算入」という言葉です。そもそも「損金」とは何を指すのでしょうか。

税法上の「損金」は、会計上の「費用」に似ているため、両者が混同されてしまうことも少なくありません。しかし、税法上の損金と会計上の費用は必ずしも一致しないため、十分注意が必要です。損金について正しく理解していないと、法人税の計算にも誤りが生じてしまいます。

ここでは、損金の意味や費用の違い、損金算入できる勘定科目と損金不算入の勘定科目などについて解説します。

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損金とは、法人の資産を減少させる原価や費用、損失などのうち、一定の額を除いたもの

損金とは、税法上認められた、法人の資産を減少させる原価や費用、損失などのうち、一定の額を除いたものを指します。法人税の計算のもとになる課税所得は、益金から損金を差し引いて求められます。益金とは、商品・製品などの販売による売上高や土地・建物の売却収入など、法人の資産を増加させる収益などのうち、資本等の取引など一定のものを除いたもののことです。一方、損金は、売上原価や販売費、災害などによる損失といった費用や損失にあたるものです。

税法上では、このように「益金-損金」で課税所得を求めますが、会計上は「収益-費用」で利益を計算します。収益と益金、費用と損金は、似ているものの同一ではありません。そのため、税法上の所得と会計上の利益は、必ずしも一致しません。

利益(会計上の儲け)を求める計算式

利益 = 収益 - 費用

所得(税務上の儲け)を求める計算式

所得 = 益金 - 損金

損金と費用の違い

損金も費用も、「事業を営むうえで発生するお金」という意味では同じです。しかしながら、損金と費用の違いは、損金が法人税という法律上の考え方である一方で、費用は、会計上の考え方であるという点にあります。税金を計算するためには、法人税法で決められたとおりに計算しなければならないため、費用になるかどうかではなく、損金になるかどうかが重要となります。

例えば、取引先を接待するためにお金を使った場合、会計上は、実際に支払った交際費が全額費用になります。しかし、税法上は、法人の交際費は原則として損金にはできません。無駄な経費を使いすぎてしまうと、会社の内部留保ができなくなってしまうからです。

このように、会計上は費用にできても、税法上は損金と認められないものがあります。法人税を正しく計算するためには、損金として認められる範囲を把握しておくことが大切です。

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法人税の計算に不可欠な損金算入、損金不算入とは?

法人税の計算をするときに欠かせないのが「損金算入」「損金不算入」です。「損金算入」「損金不算入」とは、かんたんにいうと、損金になるかならないか、ということです。法人税の計算をするうえでは、損金算入・不算入について、正しく理解しておく必要があります。

ここでは、損金算入と損金不算入についてそれぞれ説明します。

損金算入とは、会計計算上は「費用とされない」が税務計算上は「損金とされる」もの

損金算入とは、言葉どおり、損金に算入することです。つまり、税法上の損金として、課税所得の計算をするときに、益金からその金額を差し引くことを指します。

また、会計上は費用にならないものの、税法上は損金として扱われることも、損金算入といいます。例えば、前年度以前の赤字を繰り越した繰越欠損金などは、会計上の費用にはなりませんが、要件を満たせば損金算入が可能です。

損金不算入とは、会計計算上は「費用とされる」が税務計算上は「損金とされない」もの

損金不算入とは、税法上の損金として認められないという意味です。会計上の費用のうち、損金と認められないものは損金不算入となり、たとえ実際に支出していたとしても益金から差し引くことはできません。損金不算入の例としては、前述した交際費の他、役員報酬が挙げられます。役員報酬は会社が支払う費用ですが、「定期同額給与」など一定の要件を満たさなければ、損金としては認められません。

損金経理とは、会社の支出を費用として処理すること

税法上では税務上の損金に算入するために、あらかじめ会社の決算書類に費用又は損失として計上しておくことを「損金経理」といいます。法人税法における損金経理の定義は、法人がその確定した決算において費用または損失として経理することです。ここでいう「確定した決算」とは、株主総会で決算書(計算書類)の承認を得ることなどを意味します。

減価償却費や貸倒引当金など、一定の損金については、損金経理が損金算入の要件とされています。つまり、これらの損金は、株主総会等で承認を得た決算書において、費用または損失として計上されていなければ、損金算入が認められないということです。損金経理がされていない金額に関しては、申告書上で減算の調整を行うことはできません。

損金算入できる勘定科目

会社が支払った費用の中には、損金算入できる項目と損金不算入の項目があります。損金算入が可能な主な項目は、下記のとおりです。

損金算入できる項目
会計上の勘定科目 内容
租税公課 法人事業税、固定資産税、印紙税、事業所税、償却資産税、自動車税など
減価償却費 減価償却費として損金経理した金額のうち税法に定められた償却限度額の範囲内の金額
保険料 損害保険料や生命保険料のうち、法人税法等によって損金算入が認められている金額
修繕費 事業用の建物や器具備品など、資産を修繕のために使った費用のうち、資産の維持管理や原状回復に必要と認められた部分の金額
水道光熱費 電気代やガス代、水道代、灯油代など
消耗品費 文房具や事務用品などの消耗品購入費
雑費 発生頻度の低い少額の費用
支払利息 借入金に対する利息の支払い金額
給与 各種手当を含めた従業員への給与
福利厚生費 従業員への慶弔見舞金、健康診断費用、社員旅行の費用など、給与や賞与以外に従業員のために支出した金額
法定福利費 労働保険料や、会社負担分の健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など

損金不算入の項目

一方で、会計上の費用の中には、損金不算入となる費用もあります。損金不算入となる費用は下記のとおりです。

損金不算入の項目
会計上の勘定科目 内容
租税公課 法人税および地方法人税、法人住民税、延滞税、加算税、延滞金など
役員報酬 「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与(一定の要件を満たすもの)」に該当しない場合、または「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」に該当する場合であっても過大な部分
交際費等 交際費等の損金算入の特例が適用されない接待飲食費や贈答品費など
減価償却超過額 減価償却限度額(税法上の損金として認められる償却額)を超えて費用計上した金額
寄附金 寄附金のうち、法人税法上、損金と認められないもの

役員報酬が損金にされるためには一定の要件がある

「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」に該当する場合は、損金算入が認められます。ただし、いずれかに該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。

定期同額給与

1か月以下の一定期間ごとに同額で支払われる役員報酬のことです。税務署への届出は不要ですが、報酬額を変更できるのは、原則として事業年度開始(期首)から3か月以内の時期だけです。

事前確定届出給与

指定した日にまとめて支払われる報酬のことで、役員の賞与(ボーナス)のようなものです。所定の期限までに税務署に届け出をし、届出書の記載どおりに支給することで、損金算入が認められます。

業績連動給与

会社の業績を示す指標に応じて支払われる役員報酬のことです。業績連動給与を利用するには、所定の指標をもとに報酬額を算定するなど一定の要件があります。

交際費は原則損金不算入であるものの、企業規模によっては損金算入できる場合がある

交際費等は原則として損金不算入となりますが、企業規模によって一定額まで損金算入が認められる特例があります。国税庁サイト内の「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算新規タブで開く」には、期末の資本金が1億円以下の法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社を除く)の場合、「支出した接待交際費のうち接待飲食費の50%相当額」または「支出した接待交際費の金額のうち年間800万円までの金額」のいずれかの金額を交際費として損金に算入できると記載されています。

なお、資本金が1億円超かつ100億円以下の法人は接待飲食費の50%相当額を上限として損金算入が可能ですが、資本金が100億円を超える法人は全額損金不算入です。

損金算入できる租税公課と損金不算入の租税公課との違い

企業は、事業活動を行ううえで、さまざまな税金を納めます。また、行政機関への手数料など、公的な負担金を支払うこともあります。これらの費用を示す勘定科目が「租税公課」です。租税公課とは、国税や地方税などの「租税」と、国や地方公共団体、その他公共団体に納める罰金や会費に当たる「公課」を合わせた名称です。「租税公課」の勘定科目で計上した金額は、損金算入が可能です。

ただし、企業が支払った租税公課が、全て「租税公課」の勘定科目に該当するとは限りません。勘定科目である租税公課に計上できるのは、租税公課のうち、事業を営むうえで必要とみなされるものに限られます。租税と公課にあたるものでも、事業そのものに関連しない税金や負担金は、租税公課として計上することはできません。

損金算入できる租税公課

損金算入できるのは、どのような租税公課なのでしょうか。損金算入できる租税公課のうち、代表的なものは下記のとおりです。

損金算入できる租税公課

  • 固定資産税
  • 利子税
  • 地方税の延滞金(納期限延長によるもの)
  • 不動産取得税
  • 事業に使用するための自動車にかかる税金(自動車税、軽自動車税、自動車取得税、重量税など)
  • 登録免許税
  • 法人税額から控除されない所得税、外国法人税
  • 印紙税(収入印紙)
  • 事業税
  • 事業所税
  • 都市計画税
  • 軽油引取税
  • 酒税
  • ゴルフ場利用税

損金不算入の租税公課

法人が支払う租税公課の中には、損金不算入の租税公課もあります。例えば、「法人税等」と呼ばれる法人税・法人住民税・法人事業税のうち、法人事業税は損金算入が可能ですが、法人税と法人住民税は損金不算入です。

基本的には、所得に対して課税される税金については、税額計算の定めにより、損金への算入ができません。また、加算税や延滞税、過怠税など、ルールを守らなかったためにペナルティとして課税される税金についても、損金不算入となります。

損金不算入の租税公課は、下記のとおりです。

損金不算入の租税公課

  • 法人税、法人地方税
  • 都道府県民税や市町村民税の本税
  • 延滞税
  • 延滞金(地方税の納期限の延長にかかる延滞金は除く)
  • 過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税をはじめとした各種加算税
  • 過少申告加算金、不申告加算金をはじめとした各種加算金
  • 過怠税
  • 交通反則金などの罰金や科料、過料
  • 法人税額から控除する所得税および外国法人税
  • 復興特別所得税

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損金の定義と範囲を知って、税金を正しく計算しよう

損金とは、事業活動に伴う支出のうち、課税所得の計算をするときに益金から差し引ける金額のことです。法人税の税額は課税所得に応じて決まるため、損金が大きいほど納税額は少なくなります。

ただし、会社が支払ったお金が全て損金になるとは限りません。税法上の損金と会計上の費用は異なるため、誤って損金不算入の費用を計上しないように十分注意しなければなりません。損金算入できる租税公課と損金不算入の租税公課をきちんと把握していないと、法人税の計算にもズレが生じてしまいます。適切な税務処理のためにも、税法上の損金について正しく知っておきましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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