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仮受金とは?前受け金、仮払金、預り金との違いや仕訳方法を解説

仮受金とは?前受け金、仮払金、預り金との違いや仕訳方法を解説

会計実務では、取引の詳細が不明なまま入金だけが先に確認されることがあります。例えば、振込元や内容が不明な入金があった場合など、その場で適切な勘定科目を判断できないケースも少なくありません。このような場合に、一時的な処理として用いられるのが、「仮受金」という勘定科目です。仮受金がどのような場面で使われるのか、前受金や仮払金など他の勘定科目とどのように役割・性質が異なるのか、疑問を持ったことのある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、仮受金と前受金、仮払金、預り金、立替金、未払金との違いや仮受金の仕訳方法、注意点について解説します。

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仮受金とは、内容が不明な入金を仕訳する勘定科目のこと

仮受金とは、入金があったものの、どこからの入金か、何のための入金かといった取引内容が不明で、適切な勘定科目がすぐに判断できない場合に一時的に使用される勘定科目です。仮受金は、あくまでも正確な勘定科目がわからない場合に用いる一時的な勘定科目であるため、後で適切な勘定科目に振り替える必要があります。

本来、仮受金は発生しないほうが望ましいといえます。なぜなら、仮受金が発生しているということは、取引の内容や入金の理由が明確でないまま処理されていることを意味し、会計の正確性と信頼性が損なわれる可能性があるためです。例えば、社内の情報共有が不十分で、入金に対応する請求書や取引内容を経理担当者が把握できていない場合などに仮受金が計上されることがあります。こうした状況が続くと、仕訳の誤りや未回収債権の見落としにもつながりかねません。こうした仮受金の発生を防ぐためには、情報共有の仕組みを見直す必要があります。

仮受金は貸借対照表では「負債」に表示され、1年以内に支払い、その他の形で解消されるべき流動負債のうち「その他」に区分されます。ただし、このその他には仮受金の他、未払金や前受金など異なる性質の項目も含まれるため、内容を正確に把握していないと、実際には返金義務のない前受金と一時的な処理である仮受金を混同してしまうなど、財務状況の誤認、経営判断の誤りを招く可能性がある点に注意しましょう。また、仮受金が負債と純資産の合計額の5%を超える場合には、貸借対照表上で別項目として表示する必要があります。

仮受金の残高が期末まで残っているということは、その入金が何の取引によるものかがわからないまま、決算を迎えてしまった状態を意味します。そのため、仮受金はできるだけ早い段階で内容を確認し、正しい勘定科目に振り替えておくことが大切です。

なお、最終的に入金の内容が判明せず、返金対応を行う場合には、返金先に確認のうえ、振込手数料の負担者を明確にする必要があります。原則として、誤って振り込んだ側が手数料を負担することが多いですが、状況によっては返金する側が負担することもあるため、事前の合意が大切です。返金の際には、誤入金である旨の説明書類や返金の記録を残しておくことで、後のトラブル防止にもつながります。

仮受金とその他の勘定科目の違い

仮受金と混同しやすい勘定科目には、「前受金」「仮払金」「預り金」「立替金」「未払金」などがあります。それぞれ仮受金とどう異なるのか、ポイントを押さえておきましょう。

仮受金と前受金の違い

仮受金と前受金の違いは、取引内容の明確さにあります。
前受金とは、販売する商品やサービスの代金の一部または全部を前もって受け取った場合に、その入金を計上する際に用いられる勘定科目です。例えば、以下のようなケースでは、受領した代金を前受金として処理します。

受領した代金を前受金として処理するケース

  • 受注生産に際して、商品の納品前に顧客から受け取った代金の一部または全部
  • 予約販売に際して、注文受付時に顧客から受け取った代金の一部または全部
  • 研修会社が研修サービスの提供前に受領した代金

このように、取引内容が明確に決まっている点が、前受金の特徴です。それに対して、受領時点で取引内容が不明確な場合は、仮受金として処理されます。

前受金については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

仮受金と仮払金の違い

仮受金と仮払金の違いは、入金か支出かという点にあります。
仮払金とは、取引の内容や金額が不明なままお金を支払った場合に用いられる勘定科目を指します。つまり、お金を受け取る側が使うのが仮受金、支払う側が使うのが仮払金です。入金が不明な場合には仮受金を、支出が不明な場合には仮払金を使います。いずれも内容が判明し次第、すみやかに精算し振り替えなければなりません。

例えば、従業員に出張旅費の一部を前もって渡しておくのは、出張が終了するまで、実際の費用が確定しないためです。そのため、出張にかかる概算額を見積もり、出張する予定の従業員に渡すことになります。このような場合に用いられる勘定科目が仮払金です。

仮払金については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

仮受金と預り金の違い

仮受金と預り金の違いは、損益への影響の有無にあります。
預り金は、従業員や役員、取引先などが本来負担すべき金銭を、事業者が一時的に預かる際に用いられる勘定科目です。例えば、従業員に支払う給与から源泉徴収した所得税・社会保険料・雇用保険料などを仕訳する際に使用されます。一般的に、預り金は一時的に預かっているお金であるため、事業者の損益には影響を与えません。それに対して、仮受金は取引内容が判明し次第、売上高などの適切な勘定科目へ振り替えられ、場合によっては損益に影響を及ぼすこともあります。このように、損益への影響の有無が、仮受金と預り金の主な違いです。

預り金については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

仮受金と立替金の違い

仮受金と立替金の違いは、資金の流れの方向と性質にあります。
立替金とは、本来支払うべき相手に代わって、企業が一時的に費用を立て替えた場合に用いられる勘定科目です。立替金の対象は個人・法人を問わず、社内外の関係者すべてが含まれます。例えば、従業員が負担すべき社員旅行の費用を企業が先に支払った場合や、取引先が負担すべき配送料を企業が元払いした場合などが該当します。
立替金は、あくまで一時的に企業が立て替えた金額であり、後日返金されることが前提のため、原則として回収までの期間が短いことが特徴です。また、立替金の支払い時と回収時には、それぞれ仕訳が必要になります。

立替金については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

仮受金と未払金の違い

仮受金と未払金の違いは、入金か支払のどちらに関する処理かという点にあります。
未払金は、商品やサービスの提供を受けたにもかかわらず、まだ代金を支払っていない場合に使用する勘定科目です。例えば、事務用品などの備品を後払いで購入した場合や広告制作費を後払いで依頼した場合に、これらの費用を未払金として記帳します。
なお、売上原価に該当する商品の仕入や材料費、外注費など、営業取引にかかわる支払については、未払金ではなく買掛金として処理する必要があります。また、1年以内に支払う予定の未払金は、貸借対照表上「流動負債」に分類されますが、支払期限が1年を超える場合は「長期未払金」として「固定負債」に計上されます。

未払金については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

仮受金の仕訳方法

ここでは、仮受金の仕訳方法について解説します。仮受金の状況別に仕訳例を確認しておきましょう。

取引内容が不明の入金を仕訳する場合の仕訳例

取引先から20万円が入金されたものの、取引内容が不明の場合は、以下のように仕訳します。

仕訳例:入金されたとき

借方 貸方
普通預金 200,000円 仮受金 200,000円

なお、入金額の一部が売掛金と判明している場合は、以下のように仕訳します。

仕訳例:入金額の一部が売掛金と判明したとき

借方 貸方
普通預金 200,000円 売掛金 150,000円
仮受金 50,000円

上の例では、入金された20万円のうち15万円は売掛金と判明しているものの、残りの5万円に関しては内容が不明の状態となっています。この5万円の取引内容が判明した際には、すみやかに適切な勘定科目へ振り替える必要があります。

仮受金の取引内容が判明し、振替処理を行う場合の仕訳例

取引先から入金された20万円の内容が不明だったものの、後日その取引内容が明らかになった場合の仕訳例です。ここでは、入金額が売掛金だった場合を例にあげています。

仕訳例:入金額が売掛金のとき

借方 貸方
仮受金 200,000円 売掛金 200,000円

なお、受け取った金額が誤入金だった場合は、仮受金として一旦処理し、後に返金処理を行います。以下は、誤入金された20万円を返金した際の仕訳例です。

仕訳例:返金したとき

借方 貸方
仮受金 200,000円 普通預金 200,000円

仮受金の取引内容が不明のままだった場合の仕訳例

仮受金として処理した入金の取引内容が判明しなかった場合には、必要な確認を経たうえで雑収入として処理します。以下は1万円の仮受金の取引内容が不明のままだった場合の仕訳例です。

仕訳例:取引内容が不明だったとき

借方 貸方
仮受金 10,000円 雑収入 10,000円

ただし、雑収入として処理するのはあくまでも取引内容が不明だった場合に限られます。雑収入とは、本業に付随して得られる収入のため、売上高に占める雑収入の割合が高すぎると、自社の収入源や事業の実情が不明瞭になりかねません。決算までに取引内容を調査し、仮受金を適切な勘定科目へ振り替えることが本来の対応です。

仮受金における注意点

ここでは、仮受金として処理する場合の注意点を紹介します。勘定科目に仮受金を用いた際には、以下の4点に注意しましょう。

可能な限りすみやかに精算・振替処理を行う

仮受金における注意点は、可能な限りすみやかに精算・振替処理を行うことです。
仮受金は、内容が不明な入金を一時的に処理するための勘定科目のため、仮受金のまま長期間放置すると、過去の伝票などを基に取引内容を調査するのが困難になる場合があります。また、仮受金として処理されたことで仕訳が一見完了しているように見えるため、時間が経つと仮受金の存在を見落としやすくなります。結果として、経理処理上のミスや不正が発生する原因となる可能性もある点に注意しましょう。

仮受金に振り分けるのは、あくまでも一時的な処理に過ぎません。決算の際には基本的にすべての仮受金を振替処理することになるため、可能な限り早期に調査を行い、実際の取引内容を明確にする必要があります。

決算書に仮受金が残った状態は税務署に疑われやすくなる

決算時に仮受金の取引内容が判明せず、決算書に仮受金が残った状態になっていると、税務署に疑問を持たれる可能性があることも、仮受金における注意点の1つです。
本来であれば売上高として計上すべき勘定科目を仮受金として処理することで、売上高を過少に計上している可能性も否定できないためです。例えば、実際には取引が完了しており、商品が納品済みであるにもかかわらず、請求書の発行が漏れていたために売上高に計上されていなかった、といったケースが想定されます。

税務調査の際、仮受金が実際には売上だったと判断されれば、計上漏れの指摘を受ける場合があります。このような指摘を受けると、修正申告を行い本来納めるべき税金を支払うだけでなく、場合によっては重加算税の対象となる可能性もあります。こうした事態にならないよう、仮受金に関する取引内容をできるだけすみやかに調査し、適切な勘定科目へと振り替えておくことが大切です。仮受金として処理したまま、長期間放置することのないよう注意しましょう。

決算書に仮受金が残った状態では銀行からの評価が下がる

決算書に仮受金が残っていると、銀行からの評価が下がる可能性があることも、仮受金における注意点です。
銀行が企業の信用調査(与信調査)を実施する際には、資産と負債を科目別に評価します。本来であれば一時的に使用するべき勘定科目であるはずの仮受金が決算書に残っていたとすれば、信用評価のマイナス要因となることがあります。特に、融資の申込みを予定している場合には、遅くとも決算までに仮受金の取引内容を明確にすることが大切です。

財務諸表上では負債として位置付けられる

仮受金における注意点として、財務諸表上では負債として位置付けられることもあげられます。
仮受金は、取引内容が不明な入金を一時的に処理する際に用いられる勘定科目です。実際には最終的に負債とはならないこともありますが、お金を一時的に預かっており、将来的に返還することになる可能性もあるため、財務諸表上では負債となります。

仮受金の取引内容が判明し、本来の勘定科目へと振り替えられるまでは、該当する金銭を返還する必要があるか不明確な状態になっているといえるでしょう。決算書に仮受金が残った状態では、税務署や銀行の心証が悪くなるおそれがあるのはこのためです。何らかの仮受金として処理した場合は、負債が増加した状態であることを意識し、すみやかに調査を実施して取引内容を明確にする必要があります。

財務諸表については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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仮受金の適切かつ効率的な会計処理には会計ソフトの活用がおすすめ

仮受金は経理担当者が把握していない入金が確認された場合などに、取引内容が判明するまで一時的に使用する勘定科目です。やむをえず仮受金として処理した場合には、できるだけ早期に取引内容を明確にし、適切な勘定科目へ振り替えなければなりません。仮受金として処理してから時間が経過すればするほど、その内容を調査することが困難になる可能性があります。また、決算書に仮受金が残っていれば、税務署や銀行からの信用を損なう可能性もあります。仮受金は貸借対照表で「負債」として扱われることを踏まえ、遅くとも決算までには取引内容を明確にしましょう。

仮受金の経理処理は、入金が確認された際、本来の勘定科目へと振り替える際、誤入金などに伴い返金が発生した際などにそれぞれ必要になります。仮受金を適切かつ効率的に処理するためにも、操作性に優れた会計ソフトの導入を検討するのがおすすめです。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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