摘要とは?帳簿の摘要欄の意味や書き方、記載する際の注意点などを解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2024/06/26更新
日々の取引を記録する帳簿には、日付や勘定科目、金額といった項目に加えて、「摘要(てきよう)」という欄があります。摘要欄は他の記入欄に比べてスペースが広く、自由に記載ができるようになっています。
しかし、帳簿の摘要欄に記載すべき内容がわからないという方も少なくないはずです。もしかすると、何を書けばいいかわからず、空白のままにしてしまっていることもあるかもしれません。では、そもそも、帳簿の摘要欄は何のために存在するのでしょうか。また、摘要欄を記載しない場合、どのような不都合が起こるのでしょうか。
ここでは、帳簿や伝票の摘要欄の役割や摘要欄に記載すべき内容、摘要欄を記載する際の注意点などについて解説します。
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摘要とは、取引内容をわかりやすくするための補足事項の記載欄
仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳といった会計帳簿には、基本的に「摘要」という欄があります。また、帳簿の他、振替伝票や出金伝票などの会計伝票にも、摘要欄は存在します。摘要欄とは、帳簿に記録された取引の内容をわかりやすくするために、具体的な情報を記載する欄のことです。
もし仮に、摘要欄がなかった場合には、帳簿内の勘定科目のみで取引の内容を理解しなければなりません。勘定科目は、あくまで取引内容の性質を分類するための見出しやラベルのようなものです。そのため勘定科目だけでは、取引を大まかにグループ分けすることはできても、それぞれの取引の詳細まではわかりません。
例えば、「仕入」という勘定科目では、商品を仕入れたことはわかっても、どこから何を仕入れたかは判別できないでしょう。しかし、摘要欄に具体的な取引内容や取引先を記載しておけば、誰が見ても詳細をすぐに把握することができます。
摘要と備考との違い
摘要と混同されやすいものに「備考」があります。帳簿によっては、「摘要」と「備考」の2つの記入欄が設けられていることもあります。
両者の違いは、摘要が「要点を抜き出したもの」であるのに対して、備考は「参考のために書き添えたもの」であることです。摘要は要点なので、情報の重要度も高く、それだけを単体で見ても内容が理解できます。一方、備考はあくまで参考としての覚書であり、メインの情報がなければ意味を把握することはできません。
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摘要欄を記入する目的
摘要欄を記入する目的は、どのような点にあるのでしょうか。ここでは、摘要欄を記入する3つの目的について説明します。
帳簿を見たときに、何に対して、いくら使ったのかをわかるようにする
摘要欄を記入する第一の目的は、自社のお金の流れをわかりやすくするためです。帳簿の内容は、いつ、誰が見てもわかるような記載を心掛けなければなりません。しかし、帳簿に記載されているのが日付と勘定科目、金額だけだった場合、どのような取引だったのかを思い出すことは非常に困難です。
例えば、事務所のプリンターが故障し、A電機店からA5万円のプリンターを新たに現金で買った場合の仕訳は、下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
もし帳簿の記載がこれだけだった場合、後日帳簿を確認したときに、何をどこで買ったかを思い出すことができるでしょうか。自分で購入して自分で仕訳をした場合は、その内容を覚えていられるかもしれません。しかし、企業が行う取引は多岐にわたります。1年間の取引内容の詳細を記憶しておくことは、まず無理でしょう。記帳したのが自分ではなく、他の担当者であればなおさらです。
このような場合、摘要欄に「A電機店/プリンター」などと記載しておけば、後で誰が帳簿を見ても、「A電機店でプリンターを現金5万円で購入した」ということがわかります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 50,000 | 現金 | 50,000 | A電機店/プリンター |
税法を守るため
摘要欄の記載には、税法を守るという目的もあります。国税庁ホームページ内の「No.6621 帳簿の記載事項と保存」には、税法上で定められた帳簿に記載する事項が掲載されています。例えば、法人が青色申告を行う際には、その資産、負債および純資産に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然かつ明瞭に記録しなければなりません。明瞭に、つまり内容がはっきりとわかるようにするためには、摘要の記載が必須といえるでしょう。
また、消費税の課税事業者が仕入税額控除を適用するためには、帳簿に、取引の相手方の氏名や名称、取引年月日、取引内容、取引金額、事業者登録番号などを記載する必要があります。作成した帳簿がこれらの要件を満たしていないと、仕入税額控除が受けられず、税負担が大きくなってしまう可能性があります。
税務調査をはじめとする外部チェック対応のため
摘要欄を記載するのは、税務調査など外部からのチェックに、適切に対応するためでもあります。税務調査の際には、必ず帳簿を提示します。このとき摘要欄の記載がなかったり、摘要欄を見ても不明点が多かったりすると、その仕訳の根拠となる資料の提示を求められるでしょう。
さらに、「担当者や経営者が帳簿を見ても何のことか思い出せない」というような状況になってしまうと、調査完了までの期間が長引くうえ、経理管理がずさんであるという印象を与えかねません。
税務署のチェック以外に、決算業務を税理士など外部に任せている場合なども、摘要欄の記載は重要です。第三者が帳簿を見て具体的な取引内容がわからないと、追加資料の提出などが必要になり、やりとりが煩雑になる可能性があります。
摘要欄に記入すべき項目とは?
摘要欄に記載すべき内容は、「取引相手の名前や名称」と「取引内容」です。さらに、後で確認したときにわかりやすいように、入れておいた方が良い情報があれば追加することが大切です。例えば、交通費なら、「タクシー代」などの交通手段や行先なども記載します。
では、ケース別に、摘要欄の記入例を見ていきましょう。
売上に関する摘要欄の記入例
売上について記帳するときには、摘要欄に、取引先の名称や商品の品名・数量・単価などを記載します。なお、商品を販売したときは、基本的に納品書や請求書などの書類を発行しているはずなので、その場合は相手先別に合計金額を記載し、摘要欄には「◯◯商店へ売上」などと記載すれば良いでしょう。
例えば、取引先の◯◯商店へ、掛取引で単価2,000円のA商品を5個、合計1万円を販売した場合の仕訳と摘要欄の記入例は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 売上 | 10,000 | ◯◯商店へA商品2,000円を5個売上 |
また、小売店や飲食店のように、不特定多数の相手に対して売上がある業種の場合は、レジを締めた後の1日の合計額を金額欄に記載し、摘要欄には「本日売上分」などと記載します。
例えば、飲食店のレジを締めたところ、1日の現金売上は10万円だった場合の仕訳と摘要欄の記入例は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 売上 | 100,000 | 本日売上分 |
経費に関する摘要欄の記入例
経費については、取引ごとに、支払先と支払い事由を摘要欄に記載します。例えば、△△マートで500円の文房具を現金で購入した場合の仕訳と摘要欄の記入例は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 500 | 現金 | 500 | △△マート、文房具 |
また、タクシー代など交通費を記帳する場合は、支払先と支払い事由に加えて、移動区間や移動の目的も摘要欄に記載します。
例えば、取引先A社への訪問のため、◯◯駅から△△町まで××交通株式会社のタクシーを利用し、タクシー代3,000円を現金で支払った場合の仕訳と摘要欄の記入例は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
旅費交通費 | 3,000 | 現金 | 3,000 | ××交通株式会社、タクシー代、◯◯駅~△△町、A社への訪問 |
摘要欄を記載する際の注意点
摘要欄を記載するときには、意識しておきたいいくつかの注意点があります。帳簿などの摘要欄を記載する場合は、下記の点に気をつけましょう。
空欄のままにしない
帳簿をつけるとき、摘要欄を空欄のままにするのは避けてください。摘要欄に何も記載がされていないと、後で帳簿を見たときに、誰とどのような取引をしたのかがわかりません。請求書や納品書、領収書などの書類と照会しようとしても、内容がわからなければ確認するのにも時間がかかってしまいます。検索性を高めるためにも、少なくとも「取引相手の名前や名称」と「取引内容」の2点は必ず記載してください。
また、摘要欄の記載は、税法上定められた帳簿の要件を満たすことにもつながります。税務調査などで指摘を受けないためにも、「摘要欄は空欄にしない」という意識付けを徹底しましょう。
誰が見ても意味がわかるように詳しく記載する
摘要欄は、誰が見ても意味がわかるように記載しましょう。摘要欄を確認する場面として多いのが、過去の仕訳処理をチェックしたいときです。その場合、帳簿を記入した人と、後日確認する人が同じとは限りません。摘要欄を見ても意味がわからず、記載した本人が異動や退職などで確認する術もなければ、それは摘要欄が空白であるのと同じことです。第三者が後で摘要欄を見たとき、取引の具体的な内容がイメージできるように、できるだけ詳しく記載することが大切です。
記載した内容が情報過多にならないようにする
摘要欄は詳細かつ具体的に記載することが大切ですが、情報過多にならないよう注意しましょう。詳しく記入しすぎて情報過多になってしまうと、かえって要点をつかめず、取引内容を把握しづらくなってしまう可能性があります。そのため、摘要欄を記載するときには、必要な情報を判断し、簡潔な表現を心掛けることが重要です。例えば、「コンビニエンスストアの◯マートで、事務所で使用する文房具を購入した」というような場合なら、摘要欄は「◯マート 文房具」で十分です。
また、摘要欄の記載をシンプルにするためには、表記のルールを社内で統一するのも1つの方法です。例えば、取引先に「◯◯工業株式会社」という会社があった場合、全ての摘要欄で表記が統一されていれば、「◯◯工業」と簡略化しても問題ありません。
軽減税率に対する対応を怠らない
摘要欄を記載する際には、軽減税率に対する対応を怠らないようにしましょう。2019年の消費税率引き上げに伴い、軽減税率制度がスタートしました。これによって、消費税には、標準税率10%と軽減税率8%の2つの税率が混在しています。この軽減税率の導入により、事業者に求められるようになったのが「区分経理」です。区分経理とは、売上や仕入について帳簿に記録する際、標準税率10%と軽減税率8%の税率ごとに区分して経理することです。取引のうち、軽減税率の対象であるものはそれを区分し、軽減税率の対象である旨を明記しなければなりません。
そのため、軽減税率の対象となる取引については、帳簿の摘要欄に、必ず軽減税率対象品目であることを記載してください。ただ、帳簿の1行1行に「軽減税率対象品目」などと記載するのは、実務上かなりの手間がかかります。そのため、区分経理においては、統一したルールのもとで記載を簡略化することが認められています。例えば、軽減税率対象のものは摘要欄に「※」などの記号を入れ、帳簿の欄外に「※は軽減税率対象品目」と記載するなどの対応が可能です。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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