帳簿は手書きで付けるべき?手書きのメリットや注意点などを解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2023/06/14更新
事業を行ううえで必要不可欠な業務の1つが経理業務ですが、その経理業務の基本となるのが帳簿付けです。帳簿付けには会計ソフトや表計算ソフトを使う方法もありますが、パソコン作業が苦手だから手書きで帳簿を付けたいという方や、これまで手書きで帳簿を作成してきたので、今さらやり方を変えるのは面倒だと考えている方もいるかもしれません。では、手書きによる帳簿付けには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ここでは、帳簿の種類や帳簿を手書きで付けるメリット・デメリット、手書きで帳簿を作成する際の注意点などを解説します。
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帳簿とは、お金の取引を記録して経営状況を明確にするための書類
帳簿とは、日々のお金の取引を記録して、資産や経営状況を明確にするための書類です。法人には、会社法や法人税法によって、帳簿の作成と保存が義務付けられています。また、個人事業主も、確定申告を行う際には帳簿が必要になり、保存期間が定められています。
帳簿は、経営状況を正しく把握するために役立つものです。事業を営んでいると、売上や仕入れ、経費の支払い、納税など、さまざまなお金のやりとりが発生します。事業に関わるお金の流れを帳簿に記録することで、現在どれくらいの利益が出ているのか、売上に対してどれくらいの経費がかかっているのか、といったことなどを正確に把握することができます。将来的な事業戦略を考えるうえでも、帳簿は非常に有用な書類になるでしょう。
帳簿の付け方には、複式簿記と単式簿記がある
帳簿を付けるには、複式簿記と単式簿記という2つの方法があります。
複式簿記は、1つの取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」の2つの要素に分け、それぞれを適切な勘定科目に振り分けて記録する方法です。この一連の作業を仕訳といい、仕訳をした取引は最終的に、貸借対照表や損益計算書といった決算書にまとめられます。
一方で単式簿記は、1つの取引を借方と貸方の2つの要素に分けず、ただ1つの勘定科目に絞って記録する方法で、複式簿記に比べてシンプルな記帳方法です。預金通帳や売上帳などは、この方法に沿って記帳します。
法人は、事業規模を問わず、複式簿記での記帳が必要です。個人事業主の場合は、白色申告なら単式簿記でも良いとされていますが、青色申告で65万円または55万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記で記帳しなければなりません。
単式簿記や複式簿記についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
帳簿には、主要簿と補助簿の2種類がある
帳簿にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると主要簿と補助簿の2つに分類されます。
主要簿とは、複式簿記では必ず作成する帳簿で、仕訳帳と総勘定元帳の2種類があります。仕訳帳は、日々の取引を発生順に記載し、お金の流れを把握するために作成する帳簿です。全ての取引における金額の増減がわかるため、該当する日付の仕訳帳を見れば、取引の詳細を確認することができます。
また、総勘定元帳は、全ての取引を勘定科目ごとに分類した帳簿です。仕訳帳の内容を勘定科目ごとに転記したものなので、仕訳帳がなければ作成できません。決算の際には、総勘定元帳をもとにして損益計算書や貸借対照表を作成します。
一方、補助簿とは、その名のとおり主要簿を補助するために作成する帳簿で、多くの種類があります。補助簿のうちどれを作成するかは、各事業者が必要に応じて判断します。補助簿の種類は、下記のとおりです。
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 仕入帳
- 売上台帳
- 固定資産台帳、など
会計帳簿についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
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帳簿を手書きで付けるメリット
帳簿付けは、決められた記載項目や記載方法さえ守れば、手書きでもパソコンで作成しても問題ありません。帳簿を手書きで付けると、どのようなメリットがあるのかを見てみましょう。
簿記の知識が身に付く
簿記や申告手続きに関する知識を身に付けることができる点は、手書きで帳簿を付けるメリットの1つです。簿記のルールにのっとった帳簿付けは複雑で、手書きではなかなか難しいかもしれません。しかし、だからこそ、帳簿の書き方や用語の意味を調べるうちに、自然と簿記に詳しくなれるでしょう。
さらに、自分で手書きした帳簿をもとに決算書を作成したり、確定申告を行ったりすることで、税金についても理解が深まるはずです。時間に余裕があり、実践を通して簿記の知識を付けたいという場合は、あえて手書きに挑戦するのも1つの方法です。
パソコンに不慣れでも作成できる
パソコンに不慣れでも作成できる点も、帳簿を手書きで付けるメリットといえます。会計ソフトや表計算ソフトを使って帳簿を作成する場合、パソコンでの作業が不可欠となります。中にはスマートフォンから入力できる会計ソフトもありますが、まったくパソコンを使わずに済ませるのは困難でしょう。
そのため、パソコン操作が苦手だったり不慣れだったりする場合は、手書きの帳簿の方が作成しやすいかもしれません。取引の数がそれほど多くなければ、手書きの方が心理的なハードルが低くなる可能性があります。
経営状況がより頭に入ってくる
経営状況が頭に入ってくる点も、手書きで帳簿を付けるメリットです。手書きで帳簿を付けると、取引のたびに、お金の流れを整理しながら記録していくことになります。会計ソフトなどで帳簿を付けると、入力したデータは自動で転記や集計が行われるため、自分で数字を計算したり、関連する他の帳簿に書き写したりすることがなくなります。
しかし、手書きであれば、記入するのも計算するのも自分です。そのため、1つひとつの取引について、より意識が向くようになるでしょう。また、手書きで帳簿を付けることで、経営状況を見直すきっかけにもなるかもしれません。
すぐに手に取って見ることができる
ノートなどを使って帳簿を手書きで付ける場合、思い立ったらすぐに手に取って見ることが可能です。特に、業務の中であまりパソコンを使わない職場だと、わざわざパソコンの電源を入れて会計ソフトにアクセスするよりも、ノートを開くだけで確認できる手書き帳簿の方が使いやすい場合があります。
帳簿を手書きで付けるデメリット
手書きでの帳簿作成には、次のようなデメリットもあります。メリットとデメリットの両方をよく確認したうえで、帳簿を手書きで付けるかどうかを決めましょう。
書き方を覚える必要がある
書き方を覚えなければいけない点は、帳簿を手書きで付けるデメリットの1つです。前述した複式簿記では、取引内容を、借方と貸方に分け、適切な勘定科目へ仕訳しなければなりません。そのため、借方と貸方の意味や各勘定科目の意味などをきちんと理解し、かつ帳簿の書き方のルールを覚えていなければ、帳簿作成を進めることができません。簿記の専門知識がない場合は、まず基本的な簿記の勉強から始める必要があるでしょう。
文字や数字を書く手間がかかる
パソコンでの入力に比べて、手書きで文字や数字を書くのは手間がかかります。さらに、会計ソフトなら、入力されたデータは関連する帳簿に自動で転記されますが、手書きはそういうわけにはいきません。
転記が必要な場合、関連する全ての帳簿に書き写していく必要があります。銀行の取引データなども、通帳に印刷された数字を見ながら、1つひとつ帳簿に記入していかなければなりません。取引が少なければそれほど手間はかからないかもしれませんが、取引数や従業員数が増えた場合、その分の手間と時間がかかってしまうでしょう。
書き間違いや計算ミスが起こる可能性がある
帳簿作成は、細かい計算や転記といった作業が多く発生するため、どうしても書き間違いや記入漏れ、計算ミスなどが起こりがちです。帳簿の数字が間違っていては、経営状況を正しく把握することもできません。手書きの場合はミスをしてもすぐには気付きにくく、修正箇所を探すのにも手間がかかってしまいます。また、もし誤って経費を二重に計上したり、売上を計上し忘れたりした場合、税務調査で厳しいペナルティを受ける可能性もあります。
そのような事態を招かないためにも、手書きで帳簿を付ける際には慎重に作業しなければなりません。さらに、作成者以外の第三者によるダブルチェックを行うなどの工夫も必要になります。
帳簿の保管や保存のスペースやコストの負担が大きい
作成した帳簿は、法人には10年間、個人事業主には7年間の保存が義務付けられています。取引は日々発生するため、それだけ長い期間保存していると、保管のためのスペースやコストの負担も大きくなってしまうはずです。
また、手書きの帳簿は、紛失や破損のリスクにも備えなければなりません。インターネット上のサーバーにアクセスして利用するクラウド会計ソフトなら、パソコンが故障しても問題なく使い続けることができますが、紙の帳簿は原本が失われたら復元は不可能です。そのため、万が一の事態に備え、コピーを取っておくか、スキャンしてデータ化しておいた方がいいでしょう。
過去の取引データを探しにくい
手書きの帳簿は会計ソフトに比べて検索性に劣り、過去の取引データを探しにくいというデメリットがあります。そのため、表紙にわかりやすいタイトルを記載する、インデックスを付けるなど、整理や保管の仕方に工夫が必要になるでしょう。
帳簿を手書きで付ける際の注意点
帳簿を手書きで付ける際には、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。ここでは、帳簿を手書きで付ける際に特に気を付けるべき3つの注意点について解説します。
書き間違いに気を付ける
せっかく手間をかけて作成しても、記載された数字が正しくなければ、帳簿としての意味を成しません。特に複式簿記での帳簿付けは、守らなければいけないルールが多く、書き方も複雑です。数字の記入ミスや記入漏れ、計算ミスの他、勘定科目の間違いにも十分気を付ける必要があります。
見返すことを考えて書く
貸借対照表や損益計算書といった決算書は、帳簿をもとにして作成します。また、前述したように、作成した帳簿は一定期間の保存が必要です。業績の推移を把握するために、数年前にさかのぼって帳簿を確認することもよくあります。
そのため、帳簿は書いて終わりではなく、後で見返すということを念頭に置いて作成しましょう。後で取引情報を探しやすいように整理するのはもちろん、誰が見てもわかるように丁寧な字で記入することも大切です。
必ず見本を参考にする
帳簿にはさまざまな種類があり、それぞれ目的や記載項目、書き方が異なります。そのため、手書きで帳簿を付ける際、まだ帳簿作成に慣れていないうちは、必ず帳簿ごとの書き方の見本を用意してそれを参考にしながら作成するようにしましょう。Webサイトからダウンロードできるフォーマットや、市販の帳簿用ノートなどを利用するのも1つの方法です。
会計ソフトを利用すれば、手書きの負担を削減できる
手書きの帳簿は、パソコンに不慣れでも作成できる、すぐに手に取って見ることができるなどのメリットはあるものの、作成には多大な手間と時間がかかります。このような手書きの負担を削減したい場合は、会計ソフトの導入がおすすめです。
会計ソフトを利用すれば、基本的に入力作業のみで帳簿を付けることができます。入力作業さえすれば、後は会計ソフトが自動で計算、転記してくれるため、手間や時間はもちろん、ミスの可能性も大幅に削減できます。また、入力したデータは自動で仕訳されるため、勘定科目に悩む必要もありません。
多くの会計ソフトは、簿記の知識がない方やパソコン操作に不慣れな方でも、かんたんに使えるような仕組みになっています。それでも不安な場合は、電話やメール、チャットなどで操作方法を質問できる、サポート体制の整った会計ソフトを選ぶといいでしょう。
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手書きで帳簿を付けることで、ある程度の簿記の知識を身に付けることができ、お金の流れを実感することができるというメリットもあります。しかしながら、手書きで帳簿を付ける場合、時間が大幅にかかってしまうというデメリットがあり、また、転記漏れや転記ミスというリスクもあります。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
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