約束手形とは?仕組みや仕訳方法、小切手・為替手形との違いなどを解説

2023/04/18更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

約束手形は、昔から商取引に用いられてきた決済方法です。しかし、約束手形の仕組みや発行する方法などを理解していないと、取り扱いに戸惑ってしまうことがあるかもしれません。手形には約束手形の他に為替手形もあるため、それぞれの違いを知っておくことも必要です。また、手形以外にも、現金の代わりにお金のやりとりができる有価証券として小切手があります。手形と小切手の違いも理解しておきましょう。

ここでは、約束手形の仕組みや仕訳例、小切手や為替手形との違いなどについて解説します。

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約束手形とは、期日までの所定金額の支払いを約束する有価証券のこと

約束手形とは、期日までに決められた金額の支払いを約束する有価証券の1つです。約束手形の代金を支払う側を「振出人」、代金を受け取る側を「受取人」と呼びます。手形を発行することは「振り出し」といい、振出人が受取人に対して約束手形を振り出すことで、現金での代金決済の代わりにすることが可能です。期日になると、振出人の口座から代金が引き落とされ、受取人は約束手形を金融期間に持ち込むことで、手形の現金化が可能になります。

約束手形は、振出人の口座に残高がなくても振り出し可能です。そのため、約束手形は、今は手元にお金が無いものの、将来確実にお金が入ってくるというときに使われます。掛取引よりも支払期日を先に延ばすことができるため、手元に現金がないときには非常に便利な方法だといえるでしょう。ただし、指定した期日までに代金を用意できないと、手形が不渡りになってしまい、信用低下や取引停止など重大な影響を及ぼす可能性があります。

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約束手形の特徴

約束手形を使用する際には、振出人と受取人の双方の同意が必須です。

振出人が約束手形を振り出すには、まず、金融機関で当座預金の口座を開設しなければなりません。当座預金口座は手形や小切手の支払いに使われる口座で、開設にあたっては、金融機関と当座勘定取引契約を結ぶ必要があります。当座勘定取引契約は、振り出した手形について、振出人に代わって代金を支払うことを委託する委託契約であり、当座預金の残高が足りない時に金融機関がマイナス分を立て替えた場合、後に立て替えた分の金額を金融機関に返済できるという信用がなければ契約ができません。つまり、約束手形を振り出すには、金融機関に対する信用が欠かせないのです。

一方、受取人は、指定の期日になったら金融機関に手形を持ち込み、現金化の手続き(手形の取り立て)を行います。このとき、受取人は、わざわざ支払人の当座預金のある金融機関に出向く必要はありません。一般的には、自社と取引のある金融機関に取り立てを依頼して、手形を現金化します。取り立てを依頼された金融機関は、約束手形の決済交換を行う手形交換所で手形を交換することで振出人の口座から現金を回収し、受取人の口座に振り込みます。

約束手形を特徴としては、どのようなことがあるのでしょうか。ここでは、約束手形の特徴である「裏書譲渡」と「手形割引」について説明します。

支払いを受ける権利を第三者に譲渡できる「裏書譲渡」

約束手形の裏側に日付や名前、住所などを記入して押印することを裏書といいますが、約束手形には、裏書をすることで支払いを受ける権利を第三者に譲渡できる特徴があります。これを「裏書譲渡」といいます。

裏書をすることによって、受取人は、自社の買掛金の支払いのために、受け取った手形を他者に譲渡することが可能です。裏書にあたって振出人への確認や同意は必要ありません。約束手形の裏側には、転々と譲渡されることを想定して、記載スペースが複数用意されています。このように、約束手形は、裏書をすることによって受取人を次々と変えながら、期日まで支払手段として流通させることが可能なのです。

期日前に金融機関に買い取ってもらう「手形割引」

約束手形には、手形割引という仕組みがあります。手形割引とは期日前に金融機関で約束手形を買取ってもらって現金化することです。支払期日までの手数料や利息が差し引かれるため、受け取る金額は額面より少なくなりますが、期日を待たずに現金化できるというメリットがあります。

約束手形と小切手・為替手形との違い

約束手形と同じく決済に使える手段としては、小切手や為替手形があります。約束手形と小切手・為替手形との違いについて、それぞれ確認しておきましょう。

約束手形と小切手の違い

小切手と手形は、どちらも現金の代わりに使うもので、必要事項を記入して相手に渡して支払いをするという点で共通しています。そのため、小切手と手形を混同して捉えてしまっている方もいるかもしれません。

小切手と手形の大きな違いは、現金化できるスピードです。手形とは、指定された支払場所・期日に、記載された金額を支払うことを約束する証券です。記載された支払い期日にならないと、原則として現金化することはできないので、それまでは口座に残高がなくても問題はありません。つまり、手元に現金がない状態でも手形を振り出すことができます。

一方で小切手は、受け取った人が支払地として記載された金融機関に持参すれば、すぐに支払いを受けることが可能です。そのため、小切手を振り出す時点で、当座預金口座に代金を用意しておく必要があります。また、手形は小切手とは異なり、支払期日を120日以内で設定することが一般的で、記載する金額も大きいという特徴があります。

小切手についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

約束手形と為替手形の違い

約束手形は、振出人と受取人の2者間取引であり、支払義務を負うのは振出人です。それに対して、為替手形は、振出人・受取人・支払人(引受人)という、主に3者間の取引で利用される決済方法になります。この場合、支払義務を負うのは第三者の支払人(引受人)です。

為替手形は、振出人が、受取人に対する債務(買掛金など)と支払人に対する債権(売掛金など)を同時に持っているような場合に利用されます。この場合、振出人が受取人に支払うはずの代金を、振出人に代わって支払人が支払うことで、債務と債権が相殺され、3者間の決済が一度に完了することになります。

約束手形のメリット

約束手形を振り出すことの大きなメリットは、支払いを先延ばしできることです。もし手元に現金がなかったとしても、約束手形を利用することで、資金調達のために期間の猶予ができます。

例えば建設業の場合、入金は工事の完了後でも、それまでの間に経費の支払いは発生します。このようなケースでも、約束手形を振り出して入金の後に支払期日を設定すれば、資金繰りを有利にすることができるでしょう。また、手元に現金がなく金融機関にお金を借りた場合は利子が発生しますが、手形取引に利子はかかりません。

約束手形のデメリット

約束手形のデメリットは、当座資金の残高が不足していた場合に手形が決済できず、不渡りになってしまうことです。所定の期日までに額面以上の残高を当座預金口座に用意できなければ、振り出した約束手形は不渡りになってしまいます。

不渡りを起こしてしまうと、あらゆる金融機関に不渡りを起こしたことが通知されます。さらに、半年以内に2度目の不渡りを起こすと、金融機関との取引を停止されます。こうなると、口座取引を行うことも融資を受けることもできず、取引先などに対する信用も低下するため、倒産の危機に陥る可能性が高くなってしまいます。

約束手形の仕訳方法

約束手形を使用した場合、どのように仕訳をすればよいのでしょうか。ここからは、具体的な例を挙げながら、約束手形の仕訳方法について解説していきます。

約束手形を振り出したときの仕訳例

約束手形を振り出したときは、支払手形の勘定科目を利用します。例えば、仕入代金の10万円を約束手形で決済した場合の仕訳は、次のようになります。

仕入代金の10万円を約束手形で決済した場合の仕訳例
借方 貸方
買掛金 100,000円 支払手形 100,000円

約束手形を受け取ったときの仕訳例

一方、約束手形を受け取った場合は、受取手形の勘定科目で仕訳します。所定の期日に支払を受ける権利のことを手形債権といいます。約束手形を受け取った場合、手形債権が発生して資産が増えるため、借方に受取手形の勘定科目を記入しましょう。10万円の商品を販売して約束手形を受け取った場合の仕訳は、次のとおりです。

10万円の商品を販売して約束手形を受け取った場合の仕訳例
借方 貸方
受取手形 100,000円 売掛金 100,000円

受取手形を支払期日に決済したときの仕訳例

代金を受け取ったことによって資産がなくなるため、貸方の勘定科目を受取手形と記載します。10万円の受取手形を決済したときの仕訳は、次のとおりです。

10万円の受取手形を決済した場合の仕訳例
借方 貸方
当座預金 100,000円 受取手形 100,000円

受取手形を裏書譲渡したときの仕訳例

10万円の買掛金の支払いとして同額の受取手形を裏書譲渡した場合、仕訳は次のようになります。

10万円の買掛金の支払いとして受取手形を裏書譲渡した場合の仕訳例
借方 貸方
買掛金 100,000円 受取手形 100,000円

受取手形について手形割引を利用したときの仕訳例

手形割引を利用すると、額面の金額から手数料や利息が差し引かれます。この差し引かれる金額を割引料といい、手形売却損の勘定科目で処理します。受取手形10万円を金融機関で割引し、割引料3,000円が差し引かれた残額が当座預金に入金された場合、仕訳は次のとおりです。

受取手形10万円を金融機関で割引し、割引料3,000円が差し引かれた残額が当座預金に入金された場合の仕訳例
借方 貸方
当座預金 97,000円 受取手形 100,000円
手形売却損 3,000円

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約束手形の仕組みを知って正しく利用しよう

約束手形には、手元の現金が足りないときでも支払いを先延ばしできるというメリットがあります。ただし、約束手形を振り出す場合は、不渡りなどのリスクについてもしっかり理解していなければなりません。また、取引先から約束手形を受け取ったときには、現金化するための流れについて知っておくことが大切です。約束手形の仕組みやメリット・デメリットなどを把握したうえで、資金繰りに役立てていきましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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