固定資産台帳とは?決算書作成に必要な記載項目や見方を解説
監修者: 税理士法人 MIRAI合同会計事務所
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固定資産を管理するためには、固定資産台帳の作成が必要となります。固定資産台帳は、企業が保有する固定資産を管理するための帳簿です。
固定資産の取得から減価償却の状況、固定資産の売却や、使わなくなった固定資産の破棄や譲渡などの除却に至るまでを詳細に管理するもので、決算書の作成や税務申告にも関わる非常に重要な書類です。固定資産台帳の書式に決まりはありませんが、記載すべき項目や減価償却のルール、作成時に知っておきたい注意点などがあります。
本記事では、固定資産台帳の役割や記載項目、作成のポイントなどについて解説します。
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固定資産台帳とは、固定資産を管理するために作成する帳簿のこと
固定資産台帳とは、固定資産を管理するために作成する帳簿です。固定資産台帳を作成することで、企業が所有する固定資産を正確に把握することができます。
固定資産台帳は会計帳簿のうち補助簿にあたり、確定申告の際に提出が必要な他、会社法により10年間の保存が義務付けられています。
ここでいう「固定資産」とは、流通を目的とせず企業が長期にわたって所有する資産のことです。会計上は、次にあてはまるものを固定資産と呼びます。
会計上の固定資産の定義
- 販売目的ではなく、自社で使うために保有するもの
- 使用期間が1年を超える
- 取得額が一定以上の金額
なお、企業が固定資産を購入した際には、その購入費をすべて当年度の費用として計上することはせず、利用に耐えうる一定の期間(耐用年数)に応じて分割して計上する減価償却を行います。
減価償却の基本となるのは、「資産は時間の経過と共にその価値が減っていく」という考え方です。固定資産のうちの、建物や機械装置、車両などは、使用したり時間が経ったりすると価値がだんだん減っていく資産であり、これらを減価償却資産といいます。減価償却の期間は、減価償却資産の種類によってそれぞれ定められています。
ただし、土地や借地権などは時間経過によって価値が減るものではないため、減価償却の対象にはなりません。
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固定資産台帳の記載項目
ここからは、固定資産台帳に記載する項目について、具体的に解説していきます。固定資産台帳の書式には特に決まりはありませんが、基本的な記載項目は以下のとおりです。
資産番号、資産名
固定資産を取得したら、一つひとつに資産番号を付け、資産の名称を具体的に記載します。後で特定しやすいように、製造元や型番なども記入しておくと良いでしょう。
同じ資産を複数所有する場合は、アルファベットと数字を組み合わせたり枝番を付けたりして、資産番号を分けておくと管理しやすくなります。固定資産台帳の資産番号がどの固定資産を指すのかがすぐわかるように、固定資産そのものに番号を貼り付けておくのもおすすめです。
資産の種類
減価償却資産の種類として一般的なものは、建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、無形固定資産(ソフトウェアなど)です。各固定資産の勘定科目も同様の区分なので、併せて記載しておくと減価償却費用として費用計上する金額を算出するときや、貸借対照表の作成時などに役立ちます。
数量(土地の場合は面積)
数量欄には、取得した数量を記載します。数量は基本的には「1」ですが、パソコンなど同じものを同時期に複数購入した場合は、個数を記載してまとめて登録しても問題ありません。なお、土地や建物の場合は面積等を記入します。
取得年月日、供用年月日
取得年月日の欄には、固定資産を取得した年月日を記載します。また、供用年月日の欄には、「事業の用に供した日(供用年月日)」を記載します。「事業の用に供した日」とは、その固定資産を本来の目的のために使い始めた日のことで、償却を開始した日です。取得年月日と供用年月日が同日であるケースも多いものの、そうでないケースもあります。例えば機械などは、購入後に運搬・設置し、試運転を完了してからようやく事業で使用開始することも珍しくありません。この場合、取得年月日は機械を購入した日の日付となりますが、併用年月日は、機械を事情で使用開始した日の日付となります。
そのため、固定資産台帳には、取得年月日と供用年月日の両方を記載しておきましょう。
耐用年数
耐用年数の欄には、対象となる固定資産の耐用年数を記入しますが、企業会計原則における会計上は、固定資産の耐用年数に定めはありません。例えばある設備について、A社は頻繁に使うので耐用年数を3年、B社ではそれほど使わないので耐用年数を6年と考えたとしても、実態に即していれば会計上は問題ありません。しかし、税金の計算をするときに企業がそれぞれ違った耐用年数を設定していると、課税の公平性が崩れてしまいます。
そのため税法上は、減価償却資産の種類や構造、用途などによって一律の耐用年数が決められています。
しかし、会計と税務で減価償却資産の耐用年数が異なると処理が煩雑になります。実務上の手間を削減するため、多くの企業では会計上も税務上の償却方法に合わせ、国税庁が定める耐用年数で減価償却を行っています。
償却方法
会計上での償却方法は複数認められていますが、代表的な方法は定額法と定率法の2つです。
定額法
定額法とは、原則として毎年同額を償却していく方法のことです。金額は「取得価額×定額法の償却率」の計算式で求めることができます。税法上では、建物や、建物付属設備、構築物、無形固定資産などの資産に対して用いられる方法として定められています。
定率法
定率法とは、毎年一定の割合で減価償却費が少なくなるように計算する方法のことです金額は「未償却の残高×定率法の償却率」の計算式で求めることができます。税法上では、機械装置、車両運搬費、工具器具備品などの資産に対して用いられる方法として定められています。
なお、機械装置・車両運搬具・工具器具備品に関しては、税法上、「定額法または200%定率法」をとるべきとされており、何も届出などを行わなければ、原則として200%定率法を選択したとみなされます。200%定率法とは、定率法の中でも、償却率が定額法の償却率の2倍となる償却方法のことです。他の償却方法を希望する場合は、あらかじめ税務署に届出または申請書の提出などを行う必要があります。
届出の期限は、新たに法人を設立したときは設立第1期の申告書の提出期限まで、法人設立後に取得した減価償却資産の償却方法については資産を取得した期の確定申告書の提出期限までです。
税法上認められる償却方法 | 資産区分 |
---|---|
定額法のみ |
|
定額法または200%定率法 |
|
また、税法上、個人事業主の場合は「定額法」、法人の場合は「定率法」を使って償却しなければならないと定められています。法人の場合、減価償却は任意となりますが、個人事業主の場合は必ず行わなくてはなりません。
償却率
償却率の欄には、税法上で耐用年数に応じて定められた割合を記載します。定額法で算出する場合、償却率は減価償却の総額を耐用年数で割ることで求めることもできますが、一般的には、国税庁が定める耐用年数ごとの償却率を使用します。例えば、償却年数が3年の場合、定額法では0.334、定率法では0.667(2012年4月以降取得のもの)となっています。
取得価額
取得金額の欄には、その資産を取得(購入)するためにかかった金額を記載します。引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税など、その資産を利用するために付随する費用があれば、それらを含んだ合計金額を記入します。
固定資産台帳作成のポイント
固定資産台帳は、ただ決められた項目を記載しておけば良いというわけではありません。企業の固定資産を適切に管理するためにも、固定資産台帳を作成するときには次のポイントを押さえておきましょう。
誰が見てもわかる形式で記録する
固定資産台帳は、後で誰が見てもわかるように記録することが大切です。特に同じ種類、価格、取得日の資産が複数あるような場合、一つひとつの資産を識別するための情報を記載しておく必要があります。そのような場合は、資産名と共に製品番号を記載したり、車両であれば登録番号などの資産番号のラベルを現物に貼付したりするなど、適切な管理方法を工夫するのがおすすめです。また、資産の購入を部署ごとに行っている場合は、購入部門を記録しておきましょう。
購入の経緯を残しておく
購入の経緯を残しておくことも、固定資産台帳作成のポイントの1つです。購入額が一定以上の金額になる固定資産は、購入にあたって社内で何らかの手続きが必要になることがほとんどです。例えば、その資産を取得することによる生産効率の分析資料、複数の業者からの相見積もり、上層部の承認を得るための稟議書など、資産購入の根拠や経緯がわかる資料を固定資産台帳と共に管理しておきましょう。各種資料は、書類のコピーでも電子データでも構いません。購入の経緯がきちんと残っていれば、その資産購入によって企業の業務にどのような影響を及ぼしたのか、という検証も可能になります。
取得時の情報を漏れなく記録しておく
取得年月日や供用年月日、取得価額といった固定資産台帳の基本的な項目に加え、購入部門や購入の経緯についてもきちんと記録を残しておきましょう。将来的に固定資産を除却、売却するときに、簿価の再計算が必要になるケースがあるため、資産取得時の情報は重要です。
固定資産台帳と実際の資産を定期的に照合する
年に数回は、固定資産台帳と実際の資産の状態の照合を行いましょう。企業における固定資産の取得や処分は頻繁に起こります。照合作業をすることで、固定資産台帳に記録された内容が適切かどうか、新たに取得した資産に登録漏れがないかなどを確認することができます。また、固定資産の使用部署や管理者が変更になった場合なども、その経緯を固定資産台帳に記録しておくと良いでしょう。
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固定資産台帳は、企業が所有する固定資産を管理するための帳簿です。会計処理や税務処理を適正に行うために欠かせない帳簿で、確定申告でも提出が求められるため、日々の取引の記帳と同様にしっかりと作成する必要があるといえます。固定資産台帳の書式には決まりがないものの、基本的な項目は漏れなく記載し、購入の経緯などがわかる資料なども併せて管理しておくことが重要です。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。
