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商業登記とは?法人登記との違いや申請の流れについて解説

監修者:森 健太郎(税理士)

2024/07/29更新

株式会社や合同会社を設立する場合には、登記手続きが必要です。手続きについて調べると、「商業登記」や「法人登記」といった言葉を見聞きし、両者の違いについて疑問に思うケースが多いかもしれません。
会社設立手続きをスムースに進めるためにも、正確な知識を押さえておきましょう。

ここでは、商業登記と法人登記の違いや商業登記の意味、会社設立時の商業登記の申請手続きなどについて解説します。

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商業登記とは、会社の概要を法務局に登録し、公示する制度

商業登記とは、株式会社や合同会社などの概要を法務局に登録し、公示する制度です。

登記を完了しなければ会社と名乗ることはできないため、会社設立時は必ず商業登記に関する手続きを行わなければなりません。

概要として登録する主な項目としては、商号(社名)、所在地、代表者の氏名・住所のほか、事業の目的といった項目があげられます。

また、設立時に行う登記だけでなく、例えば所在地の移転によって登記事項に変更が生じたときに行う変更登記や、会社を解散するときに行う解散登記なども、商業登記に含まれます。

会社として法的に認められるために、設立時などには必ず商業登記の手続きを行いましょう。

商業登記と法人登記は、対象とする法人の種類が違う

商業登記と混同されやすい言葉として、法人登記があげられます。厳密には、両者は対象とする法人の種類が異なります

法務省のWebページ「登記-商業・法人登記-新規タブで開く」によると、商業登記とは会社の登記を指し、法人登記は会社以外のさまざまな法人の登記を指す言葉です。商業登記とほとんど同じ意味で、会社登記といった言葉が使われる場合もあります。

例えば、株式会社や合同会社の登記は商業登記となり、一般社団法人や一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人などの登記は法人登記に該当します。

商業登記と法人登記の対象の違い
登記の種類 対象
商業登記 株式会社・合名会社・合資会社・合同会社のみ
法人登記 会社以外の一般社団法人や一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人など

もっとも、商業登記と法人登記を厳密に区別せず、会社の登記も含めて法人登記と呼ばれることも少なくありません。土地や建物の不動産登記と区別する意味で、会社や一般社団法人といった法人の登記をまとめて法人登記と呼んでいるのです。

そのため、商業登記と法人登記をほぼ同義と考えても問題ないケースもありますが、法務局の手続きでは「商業登記=会社」「法人登記=会社以外の法人」とされている点を知っておきましょう。

  • 法人登記については以下の記事を併せてご覧ください

商業登記制度の目的は会社の信用維持と取引の安全性を確保すること

商業登記制度の目的は、登記事項を公表することによって会社の信用を維持するとともに、取引相手が安心してスムースに取引できるようにすることです。公表されている登記事項を参照することで、取引相手は会社の実体を確認できます。

例えば、金融機関での法人口座開設や融資申し込み、新規の取引相手との契約といった場面で、会社について登記されている事項を証明する登記事項証明書を求められるケースがあります。

商業登記は、取引相手からの信頼を得る第一歩となるため、登記内容は必要に応じて更新し、常に正しい情報を記載しておくようにしましょう。

設立時の商業登記の申請手続きには4つのステップがある

会社にとって最初に必要になる商業登記の手続きは、設立時の登記申請手続き(設立登記)です。

設立登記を申請するためには、以下の流れを踏む必要があります。

設立登記のステップ

  • STEP1. 会社概要を決定する
  • STEP2. 定款を作成する
  • STEP3. 資本金を払い込む
  • STEP4. 登記申請書類を作成し、法務局で申請する

 STEP1. 会社概要を決定する

設立登記では、最初に会社概要を決定しなければなりません。決定しなければならない基本事項としては、例えば、商号、事業目的、所在地のほか、資本金、会計年度(事業年度)などがあげられます。

STEP2. 定款を作成する

会社概要を決定したら、続いてその内容を基に、会社の基本的なルールである定款を作成しましょう。定款には、商号、事業目的、所在地といった会社概要に加えて、発行可能株式総数や株式の譲渡制限などを記載します。
定款を作成したら、株式会社の場合は定款を公証役場に提出し、認証の手続きを行いますが、合同会社では認証手続きは必要ありません。

STEP3. 資本金を払い込む

定款を作成したら、次のステップとして資本金の払い込みが必要です。登記が完了していない時点では会社名義の銀行口座が作れないため、資本金の振込先は、株式会社なら発起人、合同会社なら設立時の社員の個人口座を利用します。

STEP4. 登記申請書類を作成し、法務局で申請する

資本金の払い込みまで完了したら、次のステップは登記申請書類の作成と法務局での申請です。登記の申請日が法人の設立日となるため、設立日の希望がある場合は、その日に合わせて申請を行ってください。

  • 株式会社や合同会社の設立については以下の記事を併せてご覧ください

会社設立時の商業登記申請ではさまざまな書類を提出しなければならない

会社設立時の商業登記申請では、さまざまな書類を提出しなければなりません。株式会社と合同会社のどちらの手続きでも共通する必要書類と、それぞれの手続きでのみ必要となる書類について、確認していきましょう。

株式会社・合同会社に共通する主な必要書類は6種類

設立登記申請時の必要書類には、株式会社と合同会社のどちらの手続きでも提出しなければならない書類があります。基本的には、以下の6点の書類を提出する必要があります。

設立登記申請書

設立登記申請書とは、法務局に設立登記を申請したい意思を伝える書類です。商号や本店所在地、資本金の金額などを記載します。

登録免許税納付用台紙

登録免許税納付用台紙とは、登録免許税の納付のために収入印紙を貼る台紙です。登記の申請手続きでは、申請内容に応じた手数料である、登録免許税を支払わなければなりません。

定款の謄本

定款の謄本とは、作成済みの定款の写しです。株式会社の場合は、公証役場で定款の認証を受けてから、登記申請を行います。

資本金の払込証明書

資本金の払込証明書とは、資本金の払い込みがあったことを会社が証明する書類です。例えば、払い込みを受けた金額や、株式会社であれば発行株式数なども記載します。また、払い込みがあったことを証明するために、通帳のコピーも添付しなければなりません。

印鑑届書

印鑑届書とは、会社の実印を登録するために提出する書類です。会社では一般的に、契約書や公的機関への提出書類などの重要な書類で実印を押印しなければならないケースがあるため、登記申請と同時に実印の登録を行います。

登記すべき事項を記載した別紙

登記すべき事項を記載した別紙とは、設立登記申請書に添付する、法律上登記しなければならない項目をまとめて記載した書類です。別紙には、例えば商号や本店所在地、公告の方法など、申請書などに記載されている項目も含めて登記すべき事項を改めて列挙します。登記すべき事項は株式会社と合同会社で異なるため、注意が必要です。

株式会社の手続きでのみ必要になる主な書類は5種類

株式会社では、上記の株式会社・合同会社に共通する必要書類6点に加えて、5点の書類を提出しなければならないケースがあります。株式会社に特有の制度である、発起人や取締役などに関連する書類です。

発起人の同意書

発起人の同意書とは、設立時の株式発行に関連する事項などを、発起人全員が合意して決定したことを証明する書類です。発起人の同意が必要であるにもかかわらず、定款に記載されていない項目があった場合に作成します。

設立時代表取締役の就任承諾書

設立時代表取締役の就任承諾書とは、設立時に代表取締役に就任する予定となっている人が、就任を承諾したことを証明する書類です。代表取締役は会社と委任契約を結ぶ関係にあるため、契約締結に合意したことを証明する書類として、就任承諾書が必要になります。

設立時取締役の就任承諾書

設立時取締役の就任承諾書とは、設立時に取締役に就任する予定となっている人が、就任を承諾したことを証明する書類です。取締役と会社の関係も委任関係となるため、合意を証明する就任承諾書が必要になります。

設立時監査役の就任承諾書

設立時監査役の就任承諾書とは、設立時に監査役に就任する予定となっている人が、就任を承諾したことを証明する書類です。監査役も、取締役と同様、会社とは委任契約を結ぶため、就任承諾書が必要です。

設立時取締役の印鑑証明書

登記申請の際には、設立時の取締役の印鑑証明書も提出しなければなりません。印鑑証明書の添付により、登記官は、申請書類に押印された取締役の印鑑が実印登録された正しい印鑑であることを確認できます。

  • 株式会社設立時の必要書類については以下の記事を併せてご覧ください

合同会社の手続きでのみ必要になる主な書類は3種類

合同会社には、発起人や代表取締役、監査役といった機関がない代わりに、代表社員やそのほかの業務執行を行う社員が会社を運営します。そのため、合同会社の設立登記でも、株式会社とは異なる以下の書類が、状況に応じて必要になります。

代表社員、本店所在地及び資本金決定書

代表社員、本店所在地及び資本金決定書とは、定款で設立時の代表社員や具体的な本店所在地、資本金の額が定められていない場合に、作成しなければならない書類です。代表社員や本店所在地の詳細などが定款で定められていれば、提出は必要ありません。

代表社員の就任承諾書

代表社員の就任承諾書とは、設立時に代表社員に就任する予定となっている人が、就任を承諾したことを証明する書類です。定款で代表社員が定められていて、その代表社員に就任しようとしている人が実印で定款の末尾に記名押印している場合は、提出は不要です。

代表社員の印鑑証明書

合同会社では、登記申請の際に、代表社員の印鑑証明書を提出する必要があります。株式会社の手続きで取締役の印鑑証明書を添付するのと同様に、申請書類の代表者印の印鑑が真正な印鑑であることを証明する目的で添付します。

登記事項に変更が生じたら変更登記の申請手続きを行う

会社を設立後、登記事項に変更が生じたら、2週間以内に「変更登記申請書」と変更する事項に応じた必要書類を法務局に提出しなければなりません。登記で公表されている事項を速やかに修正するため、期間が2週間に設定されています。変更登記が必要になったら、迅速に対応しましょう。

変更登記が必要になるのは、例えば以下のようなケースです。

変更登記が必要になる主なケース

  • 役員の就任・辞任・退任・解任
  • 事業目的の変更
  • 会社の名称の変更
  • 代表者(代表取締役や代表社員)の住所変更
  • 会社の所在地の移転
  • 支店の設置・廃止
  • 増資や減資
  • 会社形態の変更

商業登記の申請費用は、登記の内容や会社形態によって異なる

商業登記の申請にあたっては、登録免許税などの費用がかかります。登記の内容や会社形態によって金額が異なります。株式会社、合同会社の設立登記や変更登記には、以下のように基本的には数万円以上の費用が必要です。

株式会社の設立登記には登録免許税、定款の収入印紙代、定款の認証手数料がかかる

株式会社の設立登記には、登録免許税、定款を紙で作成した場合の収入印紙代、定款の認証手数料がかかります。株式会社の設立にかかる登録免許税は、資本金額×0.7%または15万円の、どちらか高い方の金額です。資本金額×0.7%で計算した金額が15万円に満たない場合は、登録免許税は一律15万円となります。例えば、資本金が1,000万円であれば、1,000万円×0.7%は7万円で15万円に満たないため、登録免許税は15万円です。

また、定款を紙で作成した場合は収入印紙代が4万円かかります。電子定款の場合は、収入印紙代はかかりません。
ほかには、公証役場で定款の認証を受ける際、資本金の額に応じて3万~5万円の認証手数料がかかります。認証手数料は、紙の定款でも電子定款でも同様に必要です。

合同会社の設立登記には登録免許税、収入印紙代がかかる

合同会社の設立登記には、登録免許税、定款を紙で作成した場合の収入印紙代がかかります。合同会社の設立にかかる登録免許税は、資本金額×0.7%または6万円の、どちらか高い方の金額です。例えば、資本金が1,000万円であれば、1,000万円×0.7%は7万円で6万円を超えるため、登録免許税は7万円を支払わなければなりません。

また、株式会社と同様、紙の定款には4万円の収入印紙代がかかり、電子定款ではこの収入印紙代が不要です。
なお、定款の認証手数料については、合同会社は定款の認証は必要ないため、認証手数料はかかりません。

  • 会社設立時の登録免許税については以下の記事を併せてご覧ください。

変更登記にかかる費用は、変更する事項によって異なる

変更登記にかかる登録免許税の金額は、変更する事項によって異なります。例えば、本店または支店の移転の登記は、1か所につき3万円です。また、取締役や監査役といった役員に変更があった場合は、資本金1億円以下の会社では1件につき1万円ですが、資本金1億円超の会社では3万円です。

主な変更登記にかかる登録免許税の税額は、国税庁の「No.7191 登録免許税の税額表新規タブで開く」で確認できるため、参考にしてください。

商業登記の申請には3つの方法がある

商業登記の申請には、窓口、郵送、オンラインの3つの方法があります。最適な方法は、会社の状況によって異なります。3つの方法にはそれぞれに特徴があるため、自社に合った方法を選択しましょう。

商業登記の申請方法の種類

  • 法務局の窓口で申請する
  • 郵送で申請する
  • オンラインで申請する

法務局の窓口で申請する

商業登記の申請は、管轄の法務局の窓口で行うことが可能です。窓口に出向き、登記に必要な書類一式を提出します。窓口での申請は、提出書類の不足についてチェックしてもらえるといったメリットはありますが、窓口の開庁時間に出向かなければなりません。

登記申請に不安がある人は、この方法を活用することをおすすめします。

郵送で申請する

商業登記の申請は、管轄の法務局宛に、必要書類一式を郵送する方法でも可能です。必要書類の書式は、法務省の「商業・法人登記の申請書様式新規タブで開く」からダウンロードできます。

郵送方法については、決まりはありません。到達したかどうかを確かめたい場合は、簡易書留や特定記録郵便を活用しましょう。

郵送は、法務局に行く時間がない人にとっては便利ですが、書類の不備がないように注意しなければなりません。

自社でのチェック体制が整っているケースなどでは、この方法を活用するのがおすすめです。

オンラインで申請する

商業登記の申請は、オンラインで行うことも可能です。その場合は、法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと新規タブで開く」から登記申請の手続きをします。時間や場所を選ばず申請手続きができる一方で、専用ソフトのダウンロードや電子証明書の読み取りが必須となります。

オンラインでの手続きに慣れている会社は、この方法を活用しましょう。

  • 法人登記のオンライン申請については以下の記事を併せてご覧ください

商業登記などの会社設立に必要な手続きを手軽に行う方法

会社設立に必要な手続きを手軽に行いたい場合におすすめなのが、「弥生のかんたん会社設立」や「弥生の設立お任せサービス」です。

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会社設立後、専門家とご相談のうえ、会計事務所と税務顧問契約を結ぶと割引が受けられ、サービス利用料金は実質0円になります。定款の認証手数料や登録免許税など、行政機関への支払いは別途必要です。

便利なサービスを活用して商業登記にかかる手間を軽減しよう

商業登記とは、会社の登記のことで、会社設立時には商業登記の申請手続きが必須です。登記申請では、費用も時間もかかります。可能な限り円滑に手続きを進められるよう、書類作成などは余裕をもって進めてください。

会社設立手続きにかかる時間を短縮し、いち早く事業に集中するには、便利なクラウドサービスを活用するのがおすすめです。「弥生のかんたん会社設立」といった便利なサービスを上手に利用して、スムースな会社設立を目指しましょう。

この記事の監修者森 健太郎(税理士)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネル会社設立サポートチャンネル新規タブで開くを運営。

URL:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_mori/新規タブで開く

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