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株式会社の定款変更が必要なのはどんなとき?手続きの方法も紹介

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定款とは、会社の組織や活動に関わる根本原則を定めた、いわば「会社の法律」。株式会社を設立する際に必ず作成するものですが、作って終わりではなく、会社を運営する中で記載内容と現実にずれが生じる、あるいは定款に記載がないと許認可が受けられないといったケースでは、定款変更が必要になります。

ここでは、定款変更が必要になるのはどんなときか、変更方法も含めてご紹介します。

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定款の記載事項は大きく分けて3つ

定款の記載事項は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分かれています。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、会社を設立する以上、必ず決めて定款に記載しなければいけない事項です。
具体的には下記の6つが該当し、1つでも記載がない場合は定款自体が無効となります。

  • 会社名(商号)
  • 本店の所在地
  • 目的(事業内容)
  • 資本金額
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能株式総数(※)

※株式会社が発行できる株式の総数。会社法27条で定められた絶対的記載事項に発行可能株式総数は含まれてはいませんが、株式会社設立までに発行可能株式総数を定款で定めることが会社法37条に記されています。

なお、発行可能株式総数を定款で定めている場合は、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意により、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができます。

相対的記載事項

相対的記載事項とは、記載がなくても定款自体は有効ですが、定款に記載しなければ効力を持たない事項です。例えば、下記のようなものがあります。

  • 株主総会、取締役以外の機関の設置
  • 株主総会および種類株主総会の定足数、決議要件の法定要件と異なる定め(※)
  • 種類株式の発行
  • 株式の譲渡制限
  • 取締役の任期の伸長・短縮

※ただし定足数や表決数は定款による変更が不可のケースもあるので注意が必要です

任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的記載事項と相対的記載事項以外の事項です。定款に必ずしも記載が必要なわけではありませんが、内容を明確にするために記載されるものです。ただし、いったん定款に記載すると他の事項と同様、定款変更の手続きをとる必要があります。例えば、下記のようなものがあります。

  • 事業年度
  • 株主総会の招集時期、招集権者、議長
  • 役員の人数
  • 株券の再発行の手続き
  • 公告の方法

これらの定款に記載されている事項に変化が生じた場合は、定款変更が必要です。変更箇所が法律の定める登記事項に該当するならば、法務局への登記申請も必要になります。

定款変更の流れ

定款変更のやり方は、会社法で決まっています。

まず、株主総会で定款変更についての特別決議を得て、議事録を作成しなくてはいけません(詳細は後述)。その後、変更箇所が登記事項に該当するなら法務局に登記申請を行い、元の定款と一緒に議事録を保管することで定款変更が完了します。

なお、登記申請が確実に完了したかを確認するためにも登記完了後には登記簿謄本をもらうようにしましょう。たとえば、商号の変更、本店および支店の所在場所の変更といった場合には税務署や都道府県税事務所等からの提出をもとめられることもあります。

この一連の手続きは、電子定款でも同じです。

定款変更の際に登記申請が必要なもの

定款変更をするうえで法務局への登記申請まで必要になるのは、会社法911条3項の「株式会社の設立登記において登記すべき事項」に該当する事項を変更したときです。

具体的には、下記に変更が生じた場合は登記申請が必要になります。

  • 会社名(商号)
  • 本店および支店の所在場所
  • 目的(事業内容)
  • 資本金額
  • 株式の譲渡制限に関する定め
  • 発行可能株式総数
  • 発行済株式の総数ならびにその種類および数
  • 取締役の氏名
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 公告方法についての定め

定款の内容によっては、発行株式の内容や会社の存続期間や解散の理由、株式予約権に関する事項など、登記申請が必要なものは上記のほかにもあります。実際に定款変更を行う際は、必ず調べるようにしてください。

こんなときは登記申請が必要?

定款の内容を変更した際に、法務局への登記申請が必要かどうか迷うことも少なくありません。次のような定款変更の内容を例に、登記申請が必要か不要かを見ていきましょう。

登記申請が必要・不要な例
変更内容 登記申請 備考
事業目的の追加 必要 追加項目だけを書くと、もともとの事業目的が消えてしまうので注意。追加した分を含めて、すべての事業目的を記載します。
本社所在地の移転 必要 ただし、例えば定款の記載が「本社所在地を東京都港区に置く」の場合、港区内での移転であれば、定款の変更も登記申請も不要。一方、定款に「〇丁目〇番〇号」まで定めている場合同じ港区内であっても定款の変更も登記申請も必要。
事業年度の変更 不要 定款に事業年度を記載している場合、定款変更は必要。ただし、事業年度は登記事項ではないので、法務局への登記申請は不要。
役員の氏名変更 必要 役員などのメンバーが変わったときだけでなく、結婚や改名で氏名が変わったときも登記申請が必要。ただし、結婚等におる氏名変更に関しては、定款の変更は不要。

定款変更の注意点

会社の組織や活動に関わる根本原則を定めた定款の変更は、会社の運営や利害関係者に与える影響が避けられません。そのため、定款変更の手続きには厳格なルールがあります。スムースに手続きを進めるうえで、次の3点は特に注意しましょう。

株主総会の特別決議が必要

定款を変更するには、株主総会で定款変更についての特別決議を得て、議事録を作成する必要があります。特別決議の条件は、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成することなので、普通決議より難度は高めです。

例えば、新規事業を始めるために事業目的の追加を行う際、反対派がいる場合は、3分の2以上の賛成を集められるように票固めをしておく必要があるでしょう。

また、株主総会の開催時期でなければ、臨時株主総会を開くことになりますので、その招集もしなければなりません。株主総会の日時や場所を決め、原則、株主集会の2週間前までに招集通知を発送するなどの準備が必要になります。

法務局への登記申請には費用がかかる

登記申請を行うには、法務局に納める登録免許税と司法書士報酬の支払いが発生します。登録免許税は、変更箇所が複数でも1件の申請につき3万円ですが、本店所在地の移転による登記申請については、同じ法務局の管轄内での移転の場合で別途3万円、別の法務局が管轄する地域への移転では6万円かかります。

司法書士報酬は、会社名や事業目的の変更の場合で2万~4万円程度、他の法務局の管轄への本店所在地移転の場合は4万~7万円程度が目安です。

登記申請には期限がある

会社法によって定められている登記申請の期日は、登記事項に変更が生じた日から2週間です。登記申請をせずに放置しておくと、会社法の定めにより、代表者が100万円以下の過料に処せられる可能性もありますので、登記を申請する時期にも注意しましょう。

時間も費用もかかる定款変更は慎重に判断しよう

株式会社は、定款に記載した事項に変更が生じたときに定款変更が必要となり、その内容によっては法務局への登記申請も必要です。定款変更に必要な株主総会での特別決議を得るには、招集も含め手間と時間がかかりますし、登記申請に対する登録免許税や司法書士への報酬なども発生します。

一方、事業年度の変更など登記申請が必要ない定款変更を行う場合には「繁忙期を回避できる」など、節税メリットが生じることもあります。いずれにせよ定款変更は慎重に検討することをおすすめします。

photo:PIXTA

この記事の監修者田中卓也(田中卓也税理士事務所)

税理士、CFP®
1964年東京都生まれ。中央大学商学部卒。
東京都内の税理士事務所にて13年半の勤務を経て独立・開業。
従来の記帳代行・税務相談・税務申告といった分野のみならず、事業計画の作成・サポートなどの経営相談、よくわかるキャッシュフロー表の立て方、資金繰りの管理、保険の見直し、相続・次号継承対策など、多岐に渡って経営者や個人事業主のサポートに努める。一生活者の視点にたった講演活動や講師、執筆活動にも携わる。

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