通勤における交通費計算の方法とは?計算例や非課税限度額などを解説

2024/06/03更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

多くの企業では、従業員の通勤のために交通費を支給しています。通勤交通費は、従業員ごとの個別の申請に基づき計算や管理をしなければなりません。また、一定額までは所得税や住民税の課税対象にならないため、処理が他の経理業務に比べて複雑になりがちです。交通費計算を間違いのないように行うには、ルールや計算方法などを正しく知っておく必要があります。

本記事では、通勤にかかる交通費の計算例や非課税限度額、注意点などについて解説します。

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交通費には法的な支払い義務はない

会社が支払う交通費とは、従業員が仕事に必要な移動のためにかかる費用のことです。営業活動や出張などにかかる交通費、通勤のための交通費が該当します。交通費は多くの会社が支給しているため、法的な支給義務があると考えている方もいるかもしれませんが、実は、会社に交通費の支払いを義務付ける法律はありません。

ただし、労働基準法では、就業規則に記載しなければならない事項の1つに「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」をあげています。交通費は、ここでいう「その他の負担」に含まれると考えられます。

例えば、通勤にかかる交通費について、会社に法的な支払い義務はありません。しかし、大半の企業は、福利厚生の一環として従業員に通勤交通費を支給しています。その場合は、就業規則で支給基準や上限額を定めていることが多いでしょう。通勤交通費について就業規則に定めた場合は、その内容に沿って支給することが義務付けられます。

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企業が従業員に支払う交通費の区分

会社が従業員に支払う交通費は、出張交通費や営業交通費といった「業務上発生した移動にかかる交通費」と、通勤交通費の「通勤にかかる交通費」の大きく2つに分けられます。

出張交通費や営業交通費

従業員が出張や営業に行った際の交通費は、給与とは別に実費で精算されます。日常の営業活動などにかかる交通費は、従業員がいったん立て替えて、後から精算するパターンが多いでしょう。

また、出張のように交通費が高額になると予想されるような場合は、「仮払金」としてあらかじめ一定金額を支給し、後日、実際にかかった金額との差額を精算することもあります。

通勤交通費

通勤交通費とは、その名のとおり、従業員が職場に通勤するための交通費です。電車・バス・新幹線など公共交通機関の料金のほか、車やバイク通勤のガソリン代も含まれます。通勤交通費は、福利厚生の一環として給与と同時に支給するケースが一般的ですが、支給自体の有無や金額、支給方法は、それぞれの会社の賃金規程や就業規則で決められています。

通勤交通費に法的な支払い義務はありませんが、就業規則などで明記している場合は、規則に沿った支給が必要です。

通勤交通費の支給パターン

通勤交通費の支給には、「全額支給」「一部支給」「一律支給」の3つのパターンがあります。それぞれどのような方法か見ていきましょう。

全額支給

全額支給は、実際に通勤にかかる交通費をすべて支払う方法です。金銭で支給するケースもあれば、定期券を現物支給するケースもあります。従業員の負担はゼロとなりますが、企業側にとっては、遠方から出勤する従業員であってもすべての交通費を支払う必要があり、負担が大きくなります。

一部支給

一部支給は、1日当たりや1か月当たりの上限額を決めて、その範囲内で交通費を支払う方法です。実際にかかる交通費が上限額以下なら全額を支給しますが、上限額を超えた分に関しては、従業員が負担します。全額支給に比べて企業の負担が軽減される一方で、上限を超える場合は、従業員個人に負担がかかることになります。

一律支給

一律支給は、実際にかかる交通費にかかわらず、1日当たりや1か月当たりで設定した金額を、すべての従業員に同額で支払う方法です。この場合は、全額給与課税になりますので注意が必要です。

一律支給は、個々の従業員の交通費を計算する必要がないため、交通費計算の処理が簡単になります。一方で、実際にかかる交通費が支給額を上回れば自己負担に、下回れば差額を受け取ることになり、従業員同士で負担の差が出てきてしまう可能性があります。

通勤交通費の計算例

通勤交通費は賃金規程や就業規則に沿って支給するため、具体的な計算方法は企業ごとに異なります。ここでは、通勤交通費の一般的な計算方法を、交通手段別に解説します。

公共交通機関を利用する場合

電車やバスなどの公共交通機関で通勤する場合は、合理的なルートの定期代を支給するケースが多いです。合理的なルートとは、最も通勤時間が早いルートや、最も金額が安いルート、最も乗り換えが少ないルートなどを指し、どのルートを採用するかは会社によって異なります。

ただし、最も金額が安いルートでも、通勤に大幅に時間がかかってしまうなど、従業員の負担につながるような場合は柔軟な対応が求められます。

具体的な支給方法としては、通勤ルートと定期代を従業員から申請してもらい、その内容に問題がなければ、給与に定期代相当額を通勤費として上乗せして支給、という形を取ることが多いでしょう。

自家用車を利用する場合

自家用車で通勤する場合は、1km当たりのガソリン代をあらかじめ賃金規程で定めておき、そこに通勤距離を掛けて通勤交通費を算出するケースが一般的です。

また、ガソリン代の変動による細かい調整を毎回行わない場合でも、ガソリン代の設定基準や、見直しの時期を明示することは可能です。ガソリン代を1km当たりいくらに設定するかは会社によりますが、10~15円程度が目安になるでしょう。

ガソリン代の計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

交通費におけるガソリン代の計算方法とは? 支給方法や経費計上の留意点も解説

公共交通機関と自家用車などを併用する場合

会社として、公共交通機関と自家用車などを併用して通勤運用するためのルールを規定化した後に、それぞれのルートごとの定期代または距離を申告してもらい、その申告に基づいて計算した通勤交通費の合計額を支給します。

なお、駅前に駐車場を借りる必要がある場合などには、駐車場代の支給を行うこともあるため、上限額や支給条件(家から最寄り駅までの距離など)を規定しておく必要があります。

主にテレワークを行うなど出社頻度が低い場合

テレワークを導入する際、定期代を一括で支給するのは合理的ではありません。主な勤務場所が自宅になれば、原則的に通勤費は発生しなくなります。会社で勤務した場合には、実際に出社した日数に応じて、個別に通勤交通費を精算することが多いでしょう。

また、客先への直行直帰をする場合には営業交通費として処理するなど、通勤交通費と区分して精算します。

通勤交通費と非課税限度額

通勤交通費には、一定の非課税枠があります。会社が従業員に支給する通勤交通費のうち、一定額までは所得税や住民税の課税対象になりません。

非課税限度枠は、電車・バス等での通勤と自家用車通勤とで異なり、それぞれ上限を超えた部分については課税対象となります。それぞれのパターンの非課税限度額を見ていきましょう。

公共交通機関を利用した場合

公共交通機関を利用している場合の通勤交通費は、1か月当たり15万円まで非課税です。ただし、非課税と認められるのは、最も経済的かつ合理的なルートで通勤した場合の交通費に限られます。

例えば、新幹線や特急列車を利用して通勤しても、それが合理的なルートに該当すれば、非課税の通勤交通費に含まれます。しかし、グリーン車で通勤しているような場合は、経済的かつ合理的とはいえないため非課税にはなりません。

自家用車を利用した場合

自家用車で通勤している場合は、1か月当たりの通勤距離によって非課税限度額が変わります。通勤距離ごとの非課税限度額は、以下の表のとおりです。

自家用車を利用した場合の1か月当たりの非課税限度額

片道2km未満 全額課税となり非課税の金額は0円
片道2km以上10km未満 4,200円
片道10km以上15km未満 7,100円
片道15km以上25km未満 1万2,900円
片道25km以上35km未満 1万8,700円
片道35km以上45km未満 2万4,400円
片道45km以上55km未満 2万8,000円
片道55km以上 3万1,600円

なお、駐車場代については、通勤用に支給する場合、原則として全額が課税対象です。

公共交通機関と自家用車を併用した場合

公共交通機関と自家用車を併用して通勤している場合は、両方の1か月当たりの交通費を合計し、15万円までが非課税です。この場合も、最も経済的かつ合理的なルートで通勤していることが条件となります。

通勤交通費に関する賃金規程の作り方

通勤交通費は、各企業の賃金規程に基づいて支給されます。そのため、あらかじめ賃金規程を整備しておかなければなりません。通勤交通費に関する規定を作る際には、次のような項目が必要です。

支給条件

賃金規程には、どういう場合に通勤交通費を支給するのかという、支給条件を明確にしておくことが大切です。

例えば、「自宅から歩いて10分の駅に行くのにバスを使いたい」という従業員がいた場合に、支給条件が定められていないと、その都度の判断となってしまいます。あらかじめ「公共交通機関を使った通勤交通費は移動距離が1.5kmを超えた場合に支給する」などと定めておけば、判断基準が明確になります。

同様に、「高速道路の料金は支給しない」「駐車場代金は個人負担とする」など、支給にあたって具体的な条件も定めておくとよいでしょう。

支給金額の算出方法

通勤交通費を算出する際のルールも、賃金規程に定めておく必要があります。例えば、「原則として最も運賃の安いルートの交通費を支給するが、30分以上通勤時間が長くなる場合は2番目に安いルートを認める」など、支給金額の算出方法を規定しておきましょう。

また、支給方法も、「1か月分の定期代を給与と同時に支給する」「6か月ごとに6か月定期の代金を支給する」「月に2万円を上限とする」など、具体的に決めておくことが大切です。

申請方法

通勤交通費は基本的に、従業員本人の申請に基づいて計算します。新入社員や、引越しなどで通勤経路が変わる従業員のために、通勤交通費の申請を行う際の手続きについても定めておきましょう。

一般的には、従業員が申請書を作成し、通勤ルートやかかる交通費の額を申請します。その後、会社が申請内容を確認し、合理的であると判断されれば、支給が決定となります。

その他に決めておく事項

支給条件や算出方法のほか、定期代を支給している従業員が長期休暇に入った場合の控除計算方法や、月の途中で引越しをした場合の精算方法、退職時の日割り計算の可否や計算方法などについても、あらかじめ規定しておくと安心です。

通勤交通費の支給に関する注意点

通勤交通費は、一定の限度額まで所得税や住民税がかかりません。しかし、社会保険料を算出する際には、通勤交通費も含めて計算しなければいけないので注意が必要です。なお、通勤交通費が非課税対象になるのは、最も経済的かつ合理的なルートで通勤した場合です。実際にかかった交通費にかかわらず、一律の金額を支給する場合は、課税対象となり、割増賃金の単価計算の基礎に含まれることになりますので注意しましょう。

また、通勤交通費は原則として現金で支給し、後払いは避けましょう。定期代などは高額になることも多いため、従業員が一時的に立て替える場合は負担となってしまいます。

通勤交通費を正しく支給するために計算方法を確認しておこう

通勤交通費を正しく支給するためには、さまざまな状況に対応できる賃金規程を作成すると共に、計算方法を確認しておくことが大切です。通勤交通費の計算方法が明確になっていない場合は、ルールを定めて明文化しておきましょう。

また、通勤交通費を支給する際の税金や社会保険料の計算には、給与計算ソフトの活用がおすすめです。給与計算ソフトによって、複雑な計算を自動的に行えるようなしくみができれば、給与計算にかかる手間やミスを軽減できるでしょう。弥生の給与計算ソフト「弥生給与」や「弥生給与 Next」「やよいの給与計算」は、給与・賞与計算、社会保険料の計算、年末調整などに必要な計算業務を自動化できるうえ、給与支払報告書の電子提出にも対応しています。

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この記事の監修税理士法人古田土会計
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