ボーナス(賞与)の計算方法とは?控除額の算出方法について解説
2022/12/09更新

この記事の監修税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

月々の給与とは別に、多くの会社で夏と冬に支払われるボーナス(賞与)。毎月の給与と同じように、ボーナスからも税金や社会保険料が控除されますので、総支給額と手取りの金額は異なります。そのため、ボーナスを支給する際には、総支給額を計算した後で、さらに控除される税金や社会保険料を計算しなければなりません。
ボーナスの控除額の算出には、毎月の給与計算とは異なるポイントがあるため注意が必要です。ここでは、ボーナスの支給額や控除額の計算方法について、詳しく解説します。
ボーナス(賞与)とは、定期的に支払われる給与とは別に支給される給与のこと
ボーナス(賞与)とは、定期的に支払われる給与とは別に臨時で支給される金銭のことです。ボーナスの支給有無、支給額や支給時期などは会社ごとに決めることができます。
ボーナスの支給回数も会社が定めた規定によって異なりますが、民間企業の場合、一般的には夏と冬の2回支給されることが多いでしょう。
通常賞与と決算賞与の違い
ボーナスには、社内規程や従業員の成績に応じて支給される一般的なボーナス(通常賞与)の他に、決算賞与があります。決算賞与とは、会社の業績に応じて支給されるボーナスのことです。
決算賞与は、その年の会社の業績によって支給の有無、金額が決まります。また、決算賞与の支給時期は、事業年度終了の翌日から1か月以内とします。これらの支給については法的なルールがありますので、事前に税理士へ相談するようにしましょう。
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ボーナスの支給額の決め方
ボーナスの支給額は、会社が定めた規定にもとづいて計算することもできます。ボーナス支給額の決め方の例をご紹介しましょう。
基本給連動型賞与の場合
基本給連動型賞与とは、「基本給×◯か月分」というように、基本給に支給月数を掛けて計算する方法で、多くの会社で採用されています。また、会社によっては一律の算出方法ではなく、評価係数を用いてボーナスの支給額を決めるケースもあります。
評価係数とは、人事評価などの査定にもとづく係数で、「S評価=1.5倍」「A評価=1.2倍」など、会社ごとに設定します。
業績連動型賞与の場合
業績連動型賞与とは、業績に応じて支給額が変動する成果型ボーナスのことです。会社や部門ごとの業績をボーナスに連動させ、目標達成度や評価に応じて支給額が決まります。
ボーナスの総支給額と手取りの違い
毎月の給与と同様に、ボーナスにも「総支給額」と「手取り」があります。
総支給額は、会社が定めた規定にもとづいて計算されたボーナスの支給額です。例えば、月の基本給が20万円でボーナスの規定が「基本給×2か月分」なら、ボーナス総支給額は40万円になります。
ただし、ボーナスは総支給額がそのまま振り込まれるわけではありません。ボーナスには、いくつかの控除項目があります。つまり、ボーナスの手取りとは、総支給額から控除分の金額を差し引き、実際に口座に振り込まれる金額のことをいいます。
ボーナスからは社会保険料や税金が差し引かれる
ボーナスの総支給額から差し引かれる控除項目とは、社会保険料や税金です。社会保険料は健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料が、税金は所得税がボーナスから控除されます。
控除額は総支給額によって変わり、それぞれ計算方法が異なります。そのため、実際に口座に振り込む手取り額を算出するには、控除される社会保険料や税金の計算方法を理解しておかなくてはなりません。
ボーナスから引かれる社会保険料の計算方法
ボーナスから控除される社会保険料は、健康保険料、介護保険料(40歳以上の場合)、厚生年金保険料、雇用保険料です。続いては、社会保険の種類ごとに、控除額の計算方法を解説します。
健康保険料の計算方法
健康保険料は、ボーナス総支給額の1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に、健康保険料率を掛けて算出します。健康保険料率は、加入している健康保険組合や事業所の所在地によって異なるため、注意が必要です。算出した健康保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
ボーナスから控除される健康保険料を求める計算式は、下記のとおりです。
ボーナスから控除される健康保険料の計算式
標準賞与額×健康保険料率÷2=ボーナスから控除される健康保険料
介護保険料の計算方法
40歳以上になると、健康保険料に介護保険料が加わります。介護保険料は、ボーナス総支給額の1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に、介護保険料率を掛けて算出します。健康保険と同様に、介護保険料率も加入している健康保険組合や事業所の所在地によって異なるので注意しましょう。算出した介護保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
ボーナスから控除される介護保険料の計算式は、下記のとおりです。
ボーナスから控除される介護保険料の計算式
標準賞与額×介護保険料率÷2=ボーナスから控除される介護保険料
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、ボーナス総支給額の1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に、厚生年金保険料率を掛けて算出します。厚生年金保険料率は2017年から18.3%となっています(2022年7月現在)。算出した厚生年金保険料は、労使折半です。
ボーナスから控除される厚生年金保険料の計算式は、下記のとおりです。
ボーナスから控除される厚生年金保険料の計算式
標準賞与額×厚生年金保険料率(18.3%)÷2=ボーナスから控除される厚生年金保険料
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、ボーナス総支給額に雇用保険料率を掛けて算出します。雇用保険料率は、事業主負担分と労働者負担分それぞれについて、事業の種類に応じた税率が設定されています。
例えば、一般の事業の場合、2022年度(9月30日まで)の雇用保険料率は、労働者負担が0.3%、事業主負担が0.65%です。
ボーナスから控除される雇用保険料の計算式
ボーナス総支給額×雇用保険料率(労働者負担)=ボーナスから控除される雇用保険料
ボーナスから引かれる所得税の計算方法
ボーナスからは、所得税が控除されます。ボーナスにかかる所得税の金額は、ボーナス総支給額から社会保険料を控除した金額に所得税率を掛けて求めます。
ボーナスから控除される所得税の計算式
(ボーナス総支給額-社会保険料の合計額)×所得税率=ボーナスから控除される所得税
詳しい計算方法については、下記の3つのステップに沿って説明していきましょう。
1. 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から所得税率(源泉徴収率)を求める
ボーナスにかかる所得税の税率(源泉徴収率)は、前月の給与や扶養親族の数によって決まります。
まず、ボーナス支給月の前月の給与から、社会保険料を引いた金額を求めます。これが所得税率の基準額となります。次に、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、基準額と扶養親族の数から、「賞与の金額に乗ずべき率」を確認します。これが、ボーナスにかかる所得税率です。
令和4年の所得税率を求める際は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和4年分) 」を参照してください。

- ※ 国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和4年分)
」
2. ボーナス総支給額 から社会保険料を差し引き、課税対象額を求める
ボーナス総支給額から、ボーナスにかかる健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の合計金額を差し引きます。これが、所得税の課税対象額になります。
3. 課税対象額に所得税率を掛けて、所得税の金額を算出する
「2」で求めた所得税の課税対象額に、「1」で確認した所得税率を掛けて、ボーナスにかかる所得税の金額を算出します。
ボーナスの控除額を計算するときの注意点
ボーナスから控除される社会保険料や税金の計算は、保険料率や税率の更新もあるため、ミスが起きやすい業務となります。下記のことに注意して、控除額の計算を正確に行いましょう。
雇用保険料の計算は、標準賞与額がベースではない
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、ボーナス総支給額の1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に、それぞれ保険料率を掛けて算出します。ただし、雇用保険料は、標準賞与額ではなくボーナス総支給額に保険料率を掛けて計算します。ベースとなる金額を間違えると算出される保険料が変わるため、気を付けてください。
税率や保険料率は頻繁に変更される
控除額の計算に用いる税率や保険料率は、改定が行われます。そのため、控除額を計算するときには、必ず最新の税率や保険料率を確認する必要があります。改定時期も一定ではないため、その都度確認しましょう。
計算で端数が出たときの処理を確認する
所得税の計算で小数点以下の端数が出た場合は、1円未満の端数は切り捨てとなります。また、雇用保険料については、被保険者の負担額に1円未満の端数が生じた場合、源泉控除であれば「50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げ」と法律で定められています。
ただし、労使間で慣習的な取り扱いなどの特約がある場合にはこの限りではなく、例えば、従来「切り捨て」で端数処理されていたなら、引き続き同様の取り扱いを行ったとしても差し支えないとされています。
給与計算ソフトを利用してボーナス計算を効率化しよう
ボーナスは、総支給額から社会保険料や税金を差し引いて手取り額が決定します。ボーナスから控除されるものは、健康保険料、介護保険料(40歳以上の場合)、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税で、控除額の計算方法がそれぞれ異なります。また、控除額の計算に用いる料率も、頻繁な改定があるため注意が必要です。
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