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賞与支払届とは?提出先や記入例、手続きの流れなどを解説

従業員に賞与(ボーナス)を支払ったときには、企業は必ず「賞与支払届(被保険者賞与支払届)」を提出しなければなりません。賞与支払届は、賞与の支給額を提出し、保険料を納付するために必要な書類です。従業員にとって将来の年金受給額にも影響する重要な書類なので、忘れずに手続きを行わなければなりません。

ここでは、賞与を支給した場合に必要な賞与支払届について、提出先や記入例、手続きの流れなどについて解説します。

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賞与支払届は賞与における社会保険料を算出する書類

賞与支払届とは、賞与の支給額を記載し、納付するために必要な届出書類です。月々の給与と同じように、賞与からも社会保険料が控除されます。しかし、賞与から控除する社会保険料は、通常の標準報酬月額にもとづく計算ではなく、賞与の金額に応じて決まる仕組みになっています。そのため企業は、従業員に賞与を支払ったときには、必ずこの賞与支払届の提出が必要になります。

なお、賞与支払届の対象となるのは、年3回以下で支給される賞与です。あらかじめ年4回以上支給されることが決まっている賞与は「給与」とみなされ、賞与としての社会保険料は徴収せず、標準報酬月額の対象として扱われます。

賞与支払届はボーナス支給後、原則5日以内に日本年金機構へ提出

企業は、従業員に賞与を支給した日から原則として5日以内に、賞与支払届を日本年金機構へ提出しなければなりません。提出先は、管轄の年金事務所または年金機構広域事務センターです。年金事務所へは窓口への提出が可能で、申請については郵送の他、電子申請や電子媒体(CDまたはDVD)による提出も可能です。

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賞与支払届の手続き

賞与支払届の手続きは、下記のような流れで行います。各手順について詳しく見ていきましょう。

1. 賞与支払いの確認

まずは、賞与支払い予定月における賞与支払いの事実を確認します。賞与を支給していれば賞与支払届の提出が必要ですが、支給していなければ提出書類は「賞与不支給報告書」となります。

賞与支払届の記入対象者は、役員を含めた社会保険の被保険者と、70歳以上の被用者(厚生年金保険の適用事業所で働く、過去に厚生年金保険の加入期間がある70歳以上の労働者)です。アルバイトなどで社会保険に未加入の場合は、記入対象にはなりません。

2. 届出書類の準備

事前に日本年金機構または加入している健康保険組合に登録している場合は、賞与支払い予定月の前月になると、賞与支払届が各企業に送付されてきます。被保険者番号や氏名、生年月日、種別などが印字されているので、内容を確認しておきましょう。印字されていない従業員がいる場合は、手書き等で追加してください。

出典:日本年金機構 新規タブで開く

また、給与計算ソフトの中には、賞与支払届を自動で作成できるものもあります。ただし、加入している健康保険組合によってはフォーマットが指定されていることがあるため、給与計算ソフトを利用する際は確認しておきましょう。

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3. 賞与計算における社会保険料の算出

賞与の支給額をもとに、保険料を算出します。賞与から控除する保険料は、「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」の3つです。40歳以上65歳未満の介護保険の第2号被保険者は、健康保険料に介護保険料が上乗せされます。

それぞれの保険料の計算方法は、下記のとおりです。

賞与にかかる健康保険料・厚生年金保険料の計算式

健康保険料=標準賞与額×健康保険の保険料率÷2
厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険の保険料率÷2

標準賞与額とは、賞与支給額(税引前の額面金額)の1,000円未満を切り捨てた金額のことです。雇用保険のように賞与支給額に料率を掛けるわけではないので注意しましょう。算出した保険料は、事業主と被保険者が労使折半で半分ずつ負担します。

なお、標準賞与額には上限があり、健康保険は年間累計額(4月1日から翌年3月31日までの累計額)573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限となります。

賞与にかかる雇用保険料の計算式

雇用保険料=賞与支給額×雇用保険料率(労働者負担)

雇用保険料は、賞与支給額(税引前の額面金額)に雇用保険料率を掛けて算出します。雇用保険料率は、事業主負担分と労働者負担分それぞれについて、事業の種類に応じて3種類の税率が設定されています。

例えば一般の事業の場合、令和6年度の雇用保険料率は、労働者負担が0.6%、事業主負担が0.95%です。

4. 届出書類の記入

従業員に賞与を支払った場合は「賞与支払届」を、全従業員に不支給の場合は「賞与不支給報告書」を記入します。

賞与支払届

賞与を支給した従業員について、賞与支払届に支給額などを記入します。賞与支払届に印字のある従業員でも、賞与の支払いがない場合は記入しなくて構いません。

2か所以上の事業所で社会保険に加入している場合は、備考欄の「2. 二以上勤務」に丸をつけます。また、同一月内に複数回の賞与を支給した場合は、「3. 同一月内の賞与合算」に丸をつけ、初回の支払い日を記入しましょう。

賞与支払届(記入例)

出典:日本年金機構 新規タブで開く

賞与不支給報告書

賞与不支給報告書は、賞与支払い予定月にすべての従業員に賞与を支給しなかった場合に提出する書類です。記入例に沿って必要事項を記載しましょう。

賞与不支給報告書(記入例)

出典:日本年金機構 新規タブで開く

5. 届出書類の提出

届出書類を作成したら、賞与支給日より5日以内に、管轄の年金事務所または年金機構広域事務センターに提出します。提出には、郵送、窓口提出(年金事務所のみ)、電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)の4つの方法があります。なお、協会けんぽ以外の健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合にも提出が必要です。

CDまたはDVDの電子媒体で提出する場合は、日本年金機構のWebサイトより「届書作成プログラム 新規タブで開く」をダウンロードするか、自社のシステムを使用して届出を作成します。自社システムを使用する場合は、必ず「電子媒体届書作成仕様書新規タブで開く」に従って仕様の確認を行いましょう。また、電子申請の場合は、電子証明書(マイナンバーカードのみ)または「GビズID 新規タブで開く」が必要です。

6. 保険料の納付

賞与支払届を提出後、「標準賞与額決定通知書」と「保険料納入告知額・領収済額通知書」が発送されます。標準賞与額決定通知書は会社で保管します。

また、保険料納入告知額・領収済額通知書が届いた月の末日までに、保険料を納付します。通常の標準報酬月額の保険料と合わせて納付することになるため、忘れないよう注意してください。

賞与支払届、こんなときどうする?

ここまで、賞与支払届の基本的な記入方法や手続きについてご説明いたしました。ここからは、賞与支払届の手続きで気をつけたいポイントについて解説します。実際の従業員と照らし合わせてご確認ください。

70歳以上の従業員の場合

たとえ会社に勤めていても、70歳以上になると、原則として厚生年金保険の加入資格を失います。ただし、老齢年金を受給するための加入期間が不足している場合、70歳を過ぎても任意で厚生年金保険に加入することが可能です。このような人を高齢任意加入被保険者といい、「高齢任意加入被保険者資格取得申出書 新規タブで開く」を提出する必要があります。

なお、70歳以上の従業員に賞与を支払った場合は、賞与支払届の備考欄「1. 70歳以上被用者」に丸をつけ、マイナンバーまたは基礎年金番号を記載します。また、協会けんぽの健康保険に加入している場合は、氏名欄の余白に「高齢任意」と記入します。

中途入社した従業員の場合

転職などにより、同一年度内に被保険者資格の取得・喪失があった場合、協会けんぽや各健康保険組合といった、保険者単位で算出した標準賞与額を累計します。そのため、同一の年度内で複数の被保険者期間がある場合、同一の保険者である期間に支払われた標準賞与額を累計することになります。

なお、同一年度内に複数の被保険者期間がない場合は、入社日以降に支払った賞与だけが賞与支払届の対象です。

退職した従業員の場合

賞与支払月に社会保険の資格を喪失、つまり退職した場合は、賞与にかかる社会保険料は徴収されません。ただし、保険料を徴収しなくても標準賞与額の決定は行われ、標準賞与額の累計額(年度の累計額573万円)にも含まれます。そのため、賞与を支払ったのであれば、退職者についても賞与支払届の提出は必要です。

なお、賞与支払い月の月末に退職した場合、資格喪失日は翌月1日になります。この場合は賞与支払い月の資格喪失にはならず、保険料の対象となるため注意しましょう。

休業中の従業員の場合

産前産後休業中や、育児休業中の保険料免除期間に支払われた賞与についても、標準賞与額として決定し、年度の累計額に含めることになっています。そのため、該当する従業員に賞与を支給する場合は、社会保険料の徴収がなくても賞与支払届の提出は必要です。

年度累計573万円を超える賞与を支給した場合

前述のとおり、標準賞与額には、健康保険は年度累計額573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円という上限があります。この上限を超えた分の金額は、保険料の対象にはなりません。

なお、標準賞与額の年度累計額が573万円を超える場合、被保険者からの申し出にもとづき「健康保険 標準賞与額累計申出書 新規タブで開く」の提出をしなければ、573万円を超えた分も保険料の対象となります。

賞与支払届の提出を忘れた場合

賞与支払届の提出を忘れた場合、原則として、登録した賞与支払い予定月の翌々月に催告状が送付されます。もしも届出を忘れていて催告状を受け取ったときは、すぐに届出と保険料の納付を行ってください。

遡及して手続きを行う場合、時効が2年間であることにも注意が必要です。

賞与支払届の提出前に修正が必要な場合

賞与支払届の提出前に賞与支給額の誤りに気づいた場合は、二重線で訂正して正しい金額を記入します。提出後に内容を修正するには、別の手続きが必要になるため、管轄の年金事務所または年金機構広域事務センターに問い合わせて指示に従ってください。手間のかかる修正手続きを避けるためにも、ミスのない適正な処理を心掛け、提出前には内容をしっかりと確認しましょう。

給与計算ソフトで賞与支払届を自動作成しよう

賞与支払届によって決定される標準賞与額は、従業員の将来の年金受給額にも影響を及ぼします。賞与支払届の提出は、従業員に賞与を支払う企業の義務であり、非常に重要な手続きといえるでしょう。賞与支給日から5日以内に提出しなければならないため、迅速かつミスなく作成することが重要です。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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