年末調整の訂正方法|期限や間違いを防ぐための対策を紹介
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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企業で年末調整業務を担当する方は、「年末調整の訂正はどう行えばよいのか」と疑問を抱くことがあるかもしれません。年末調整に用いる書類は種類が多く、さまざまな情報を記載しなければならないため、間違いや不備が生じるケースがあります。
本記事では、年末調整の訂正方法や、間違いを防ぐための対策について解説します。
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年末調整の間違いは訂正が必要
年末調整で従業員から回収した書類に間違いがあった場合、訂正せずに放置すると、納めるべき税金を納付しなかったとみなされるおそれがあります。税務署への書類提出の期限内なら修正が可能なため、速やかに対応しましょう。
年末調整でミスが発生する理由の1つは、十分な準備ができていないことです。年末は業務が重なりやすく、忙しい中で年末調整を進める必要があります。そのため、早めに準備を整え、計画的に年末調整業務を進めることが大切です。
年末調整の提出期限
企業が年末調整で税務署へ提出する書類には、源泉徴収票や各種支払調書、法定調書合計表などがあり、これらは提出期限が1月31日までと定められています。また、源泉所得税の納付期限は毎月翌月10日まで(納期の特例の適用を受けている場合は、7月~12月分を1月20日まで)と決められているため、遅れないよう注意が必要です。
年末調整では、従業員からさまざまな書類を回収します。従業員からの提出が遅れると、企業の担当者は計算やチェックが行えず、税務署への提出期限に間に合わないこともあります。このような事態を避けるため、余裕をもったスケジュールで必要な書類を提出してもらえるよう、従業員への周知や注意喚起を徹底しましょう。
時期別の年末調整の訂正方法
年末調整に用いる書類に間違いがあっても訂正は可能です。ただし、時期によって訂正方法が変わる点に注意しましょう。
1月31日以前の訂正
源泉徴収票を発行していない1月31日以前であれば、社内で訂正できます。記載する金額を間違えているケースでは、該当する箇所に二重線を引いたうえで訂正印を押印し、改めて正しい内容を記載します。
出産や結婚などで扶養家族が増えたため訂正が発生するケースでは、従業員にヒアリングを行ったうえで必要となる書類を提出してもらいましょう。その後、担当者が書類の内容を確認してから正しい情報に修正します。
年末調整の書類に訂正印は必要?
令和3年の税制改正によって、一部の書類は訂正印の押印が不要となりました。訂正印とは、文書に記載された内容を部分的に訂正したいときに押す印のことです。訂正印の押印によって、本人以外の第三者が改ざんしたものではないことを示せます。
ただし、提出する書類によっては訂正印を求められるケースもあります。法的な定めはないものの、あらかじめ押印しておくのも、スムーズに年末調整の訂正を行う1つの対策です。
また、年末調整に必要な書類の内容に誤りがあった場合、修正液や修正テープを用いることはできません。公的な書類は、どこを間違えてどのように訂正したのか、履歴を明確にしておく必要があります。
2月1日以降の訂正
源泉徴収票を発行したあとは、社内で間違いを訂正できません。この場合、企業は税務署へ提出済みの書類内容を修正しなければならず、対象の従業員は確定申告の手続きをしなくてはなりません。確定申告は、所定の確定申告書を用いて行います。
ただし、確定申告をしたことがない従業員が、見慣れない様式の申告書類を作成するのは困難で時間がかかってしまいます。従業員にとって負担が大きいため、書類は必ず期限内に提出することを従業員に周知する、複数人でチェックを行うことなどを徹底しましょう。
なお、場合によっては年末調整と確定申告の両方が必要となるケースもあります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
3月15日以降の訂正
確定申告の期間は、2月16日から3月15日まで(令和7年は2月17日から3月17日まで)ですが、還付の申告となる場合には、年明けからすぐに確定申告書を提出できます。源泉徴収票を発行したあとに間違いが発覚した際には、この期間内に手続きを行うよう従業員へ伝えましょう。
期限をすぎたあとに間違いが発覚した場合には、どのような手続きをとるべきか管轄の税務署で確認が必要です。
年末調整の訂正が必要なパターン
年末調整の訂正が必要なパターンとして、本人や配偶者の年収および扶養家族の変動、保険への加入が挙げられます。
本人・配偶者の年収が変わった場合
従業員本人や配偶者の見込み年収が大幅に変わったときは、訂正の必要が生じます。
例えば、配偶者の年収が上がった場合、配偶者控除を利用できなくなる場合があるため注意が必要です。配偶者控除は、年間における所得の合計が48万円以下、給与収入を得ている場合は103万円以下でないと金額が段階的に減少します。また、配偶者控除の控除額は、従業員本人の所得にも影響を受けます。
扶養家族に変動があった場合
扶養家族に変動があったときには年末調整の訂正が必要です。例えば、結婚して配偶者ができた(配偶者が控除対象になるような収入の場合)などのパターンが該当します。
扶養家族が変動した際には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容を訂正しなくてはなりません。従業員から聞き取りしたあと、正しい情報に更新してもらいましょう。
保険に加入した場合
従業員が年末調整書類を提出したあと、民間の生命保険や地震保険に加入した場合は、内容の訂正が必要です。このケースでは、従業員が保険料控除の対象となるためです。「給与所得者の保険料控除申告書」に、保険会社名や支払った金額などを記載してもらいましょう。
また、年末調整前に生命保険へ加入したものの、控除証明書が届かず申告書に記載できなかった場合でも、あとから証明書が届けば訂正によって控除を受けられる可能性があります。
年末調整を間違えたらどうなる?
年末調整に間違いがあったとしても、正しく訂正できれば大きな問題には発展しません。その一方で、間違えたまま放置してしまうと、企業がペナルティを科せられるおそれがあるため注意が必要です(事務運営指針により、正当な理由がある場合には、ペナルティがかかりません)。
延滞税や加算税が課される場合がある
年末調整を間違えたままにすると、本来納税が必要な所得税が不足していた場合、納めていないとみなされ、ペナルティの対象となります。なお、ペナルティの対象となるのは従業員個人ではなく企業です。企業には従業員の所得税を申告、納税する義務があるため、それを怠ったとしてペナルティを科せられます。
具体的には、不納付加算税や延滞税が科せられるおそれがあります。不納付加算税とは、定められた期限までに源泉所得税を納税しなかった場合に適用される税金です。本来納付すべきだった税額の10%に該当する金額を納めなくてはなりません。延滞税も、源泉所得税の納付が遅れた際に科せられる税金であり、2.7~9%の税率を納付までに要した日数にかけて算出されます。
業務の手間が増える
年末調整で間違いがあると、担当者は訂正作業に追われることになります。忙しい年末に訂正作業が発生してしまうと、生産性の低下にもつながります。このような事態を避けるため、企業は年末調整で間違いを防ぐための体制やしくみづくりを進めましょう。
年末調整の間違い・不備を防ぐための対策
年末調整に必要な書類の不備や間違いが発生すると、担当者に負担がかかるだけでなく、人的コストの増加や生産性の低下など、さまざまなデメリットを招きます。こうした事態を避けるべく、従業員には早めに書類を提出してもらう、書類の確認のためダブルチェック体制を整えるなど工夫をしましょう。
早めに書類を回収する
年末調整の書類を期限間際に提出されると、担当者は慌ただしく作業を進めざるを得ず、ミスや遅れが発生しやすくなります。これを防ぐためには、書類の提出期限を早めに設定し、担当者が確認・訂正できる時間を確保することが重要です。また、従業員にも余裕をもって対応してもらうために、年末調整書類の配付を早めに行うことが効果的です。
また、間違いや不備を根本から防ぐ取り組みも企業には求められます。例えば、年末調整に必要な書類の作成マニュアルを整備するのも有効です。年末調整書類は記載すべき項目が数多く設けられており、人によっては作成が難しいと感じられるものです。書類ごとに、記載すべき内容や具体的な書き方などをわかりやすく示したマニュアルを整備すれば、従業員はスムーズに書類を作成でき、ミスを防げます。
近年では、オンラインでマニュアルを作成、共有できるツールも登場しています。こうしたツールを活用すれば、従業員の数にあわせてマニュアルを整備する必要がなくなり、コストも抑えられます。
社内でダブルチェックを行う
年末調整業務に携わる担当者が少ない場合、書類の不備や間違いを見逃してしまうおそれがあります。特に、1人で書類のチェックを行っているケースでは、集中して業務に取り組んでいてもミスの発生は避けられないでしょう。
このような事態を防ぐには、ダブルチェック体制の運用が有効です。1人では発見が難しかった細かなミスや不備も、2人でなら見つけられる可能性が高まります。
複数人でのクロスチェックも、ミスの発見に効果があります。クロスチェックとは、複数の担当者が異なる視点のもとチェックを行う手法です。例えば、1人が情報の抜けや漏れを中心に確認し、もう1人が数値の計算ミスを重点的にチェックする、といった方法です。精度の高いチェックができるような工夫を凝らしてみましょう。
顧問税理士に相談する
年末調整業務は、税理士への代行依頼が可能です。既に税理士と顧問契約を締結しているのなら、年末調整業務に関しても相談してみましょう。代行してもらえる業務としては、税額の計算、法定調書の作成、税務署への提出などが挙げられます。
年末調整をスムーズに進められることが、税理士に依頼する大きなメリットです。煩雑かつ複雑な年末調整業務に自社のリソースを多く割く必要がなくなり、時間や手間も大幅に削減できます。
また、税理士なら控除の見落としを防いでもらえるのもメリットです。どのような控除が受けられるのか、必要な書類は何かといったことも税理士は教えてくれます。顧問契約を交わせば、経営や節税に関するアドバイスを受けられる可能性もあるため、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
年末調整を税理士に依頼するメリットについて、こちらの記事で解説しています。
ツールやシステムで効率化する
人力で行うアナログな手法では、どうしても間違いの発生やミスの見落としが生じます。年末調整に活用できるツールやシステムを導入し、効率化を進めれば間違いや不備を軽減でき、なおかつ書類の提出状況をリアルタイムに管理できます。
ツールやシステムによってできることは異なるものの、多くのツールでは従業員から各種申告書のデータを受けとれたり、税務署へオンラインで提出したりといったことが可能です。年末調整だけでなく、給与計算などの業務を効率化できるツールもあるため、担当者の日常における業務負担軽減につながります。
年末調整の訂正が最小限になるよう効率化しよう
年末調整で間違いが発生すると訂正しなくてはならず、余計な手間と時間がかかります。こうした事態を避けるべく、訂正が最小限となる工夫やしくみづくりが必要です。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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