【2025年最新】年末調整は自分でできる?確定申告をするケースや手続きの方法も解説
監修者: 高崎 文秀(税理士)
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会社員の多くは、会社が行う年末調整によって所得控除等を受けるための手続きを済ませています。しかし、転職のタイミングや、控除の種類によっては、自分で控除のための手続きを行うケースもあります。担当者は、従業員から年末調整は自分でできるのか尋ねられることもあるかもしれません。
結論から言うと、年末調整を個人で行うことはできません。従業員が自分で所得控除等を受けるための手続きをしたい場合は、確定申告をします。本記事では、従業員が自分で年末調整ができない理由や、会社に勤めていても確定申告が必要になるケース、確定申告の方法などについて解説します。
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従業員が自分で年末調整をすることはできない
年末調整は、企業が従業員の1年間の所得に対する所得税を正確に精算するために行う手続きです。企業が行う手続きであるため、従業員が自分ですることはできません。
年末調整の対象となるのは、「一年を通じて企業などに勤務している人」や、「年の中途で就職し、年末まで勤務している人」です。また、パートやアルバイトでも、勤務状況や条件を満たす場合には対象となります。
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年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告の主な違いは、「だれが手続きするか」と「手続きの内容」です。具体的には、以下のような違いがあります。
- 年末調整:企業が従業員から預かって国に納めていた所得税(源泉所得税)と、1年間の給与総額に基づいて算出した正確な税額を精算します。手続きするのは、給与支払者である企業です。
- 確定申告:自営業者や一部の会社員などが、1年間に生じたすべての所得に対する所得税を自分で計算し申告・納税する手続きです。企業ではなく個人が行います。
年末調整とは?
会社員は給与が支給されるとき、「源泉徴収」として所得税が天引きされています。年末調整とは、1年間の給与収入が確定する年末に、本来納めるべき正しい所得税額を再計算し、その過不足を企業が精算することを指します。
手続きの対象となるのは、原則として「扶養控除等申告書」を勤務先に提出しているすべての従業員です。つまり、正社員だけでなくパート・アルバイトも含め、勤務先に申告書を提出している給与所得者全員が対象者に含まれます。提出がない場合は年末調整を受けられないため、従業員自身による確定申告が必要になります。
年末調整についてより深く知りたい方は、以下の記事も参照してください。
年末調整で用意する書類
年末調整では、企業が給与所得者に各種申告書を配布し、従業員が記載後に回収して所得税の精算を行います。主な申告書は以下のとおりです。
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- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
年末調整で控除を受けるためには、従業員が対象となる控除ごとに証明書類を準備する必要があります。控除を申告する場合、以下のような証明書を提出することになります。
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- 生命保険料の控除証明書
- 地震保険料の控除証明書
- 小規模企業共済等掛金払込証明書(iDeCoの掛金がある場合)
- 国民年金保険料の控除証明書
- 借入金の年末残高等証明書 (住宅ローン控除のため)
これらの証明書類は、保険会社や金融機関などから毎年10月から11月ごろに郵送されます。なお、住宅ローン控除は、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整による控除申告が可能です。従業員は、年末調整のためにこれらの証明書類を用意すべきことを把握していれば、余裕を持って準備できます。
確定申告とは?
年末調整をせず、自分で手続きをする場合は、確定申告を行います。確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)の収入や支出を基に、納めるべき所得税の額を計算し、国(税務署)に自ら申告・納税する手続きです。給与分の所得税は通常は年末調整で精算されますが、それ以外の所得については確定申告で対応します。例えば、以下に該当する人は確定申告の実施が求められます。
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- 個人事業主(自営業やフリーランス)
- 不動産収入や株取引での所得が20万円超ある人
- 一時所得が20万円超ある人(競馬や懸賞であたった賞金)
- 退職所得があり、退職所得の受給に関する申告書を提出していない人
- 所得税の猶予を受けている人
- その他、副業などによる1年間の所得が20万円超の人
会社員でも、給与所得以外の収入があるなど後述する要件に該当する場合は、自分で確定申告を行います。1年間のすべての所得について正確な所得税額を申告することで、適正に納税したり還付を受けたりすることが可能になります。
対象者に関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
確定申告で用意する書類
確定申告では、1年間の所得や控除内容を正確に申告するために、以下のような書類を準備します。
申告の際、提出(提示)する書類
- マイナンバーを確認できる書類:マイナンバーカード(表・裏のコピー)、通知カード、マイナンバー記載の住民票の写しなど
- 本人を確認できる書類:マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証、パスポートなど
- 確定申告書(第一表・第二表など)
- 青色申告決算書や収支内訳書(事業をしていて、青色申告や白色申告をする場合)
提出不要であるが確定申告書に記載する際に必要な書類
- 源泉徴収票
- 被扶養者のマイナンバーがわかる書類(配偶者や扶養親族のマイナンバーを申告書に記載する場合のみ)
- 口座番号がわかるもの(還付金を受け取る銀行口座の通帳など)
- 所得控除や税額控除の適用を証明するための書類:生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、医療費の領収書、寄附金の受領証、住宅ローン控除用の借入金残高証明書など
詳しくは、以下の記事でも解説しています。
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年末調整ではなく自分で確定申告をするケース
以下に該当するケースでは、給与所得者でも自分で確定申告を行います。
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- 年収が2,000万円を超える場合
- 前職の年末調整が間に合わなかった場合
- 年末調整では受けられない控除を申告したいケース
- ふるさと納税のワンストップ特例制度が使えないケース
- 収入源が複数あるケース
- 年の途中に退職し、年末調整の時期に再就職していないケース
- 提出内容に不備があったケース
年収が2,000万円を超える場合
年末調整が適用される収入の上限は、2,000万円です。そのため、賞与も含む給与などの収入が2,000万円を超える場合、会社員であっても自分で確定申告を行います。年末調整で控除可能な配偶者控除や扶養控除、小規模企業共済等掛金控除も改めて申告することになります。
該当する従業員がいる場合は、あらかじめ用意するべき書類や申告方法について案内しておきましょう。
前職の年末調整が間に合わなかった場合
転職が年末調整に間に合わなかった場合、従業員は自分で確定申告することを求められます。年末調整は、その年の給与や賞与が確定する時期に行われます。そのため、転職時期が年末になると前職の源泉徴収票が間に合わず、転職先で年末調整ができないことがあります。そのような場合は、翌年の確定申告期間(2月16日~3月15日)に従業員が自分で確定申告をして、所得税の過不足を精算します。
年末調整では受けられない控除を申告したい場合
年末調整では申告できず、確定申告での申告が必要な控除もあります。例えば、以下のような控除です。
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- 医療費控除
- 寄附金控除(ふるさと納税を含む)
- 雑損控除(災害や盗難などの損失に対する控除)
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の1年目
住宅ローン控除が年末調整で申告可能となるのは2年目以降からです。住宅ローン控除の詳細については、以下の記事も参照してください。
ふるさと納税のワンストップ特例制度が使えない場合
ふるさと納税を利用している方のうち、ワンストップ特例制度の条件に当てはまらない場合は、確定申告が必要です。ワンストップ特例制度を受けるには、主に以下の条件を満たすことが求められています。
・1年間に寄附した先の自治体数が5つ以内であること
・寄附をした翌年の1月10日までに、申請書がすべての寄附先自治体に必着となっていること(郵送の場合は必着が原則)
-
参照:国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)
」
寄附先の自治体が6つ以上ある場合や、申請書が期限内に到着しない場合ワンストップ特例制度は適用されませんが、確定申告をすればふるさと納税による寄附金控除を受けられます。
ふるさと納税については、以下の記事で詳しく解説しています。
収入源が複数ある場合
アルバイトなどで複数の企業から給与所得を得ている場合は、確定申告を行います。複数の勤務先からの給与所得を合算し、適正に納税するためです。
複数の勤務先がある場合、「主たる給与」と「従たる給与」を区別する必要があります。主たる給与とは、生活の中心となる収入源で、一般的には最も収入が多い勤務先からの給与を指します。年末調整は主たる給与を支払う勤務先で行い、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出します。それに対して、従たる給与は、主たる給与以外の勤務先からの給与です。例えば、ある会社の正社員が副業としてアルバイトをしている場合の給与が該当します。従たる給与の年間収入が20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は行います)。
給与収入の他、副業としての事業所得、特定口座(源泉徴収あり)以外での株の売却益、不動産所得などがあって20万円を超える場合も、確定申告が必要です。
年の途中に退職し、年末調整の時期に再就職していない場合
年の途中で退職し、年末調整の時期までに再就職していない場合は、確定申告によって所得税の還付を受けられる場合があります。これは、前職での源泉徴収が年末調整による精算を受けていないために、所得税を過剰に納めている可能性があるからです。申告により、納め過ぎた税金が還付されます。なお、確定申告による還付請求の期限は、その年の翌年の1月1日から5年以内です。
-
参照:国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき
」
年末調整の提出内容に不備があった場合
提出した年末調整の書類に不備があった場合も、確定申告が必要です。例えば、以下のようなケースがあります。
-
- 控除の申請を忘れた
- 申請した数字に誤りがあった
- 提出予定の書類が期限に間に合わなかった
年末調整で企業が税務署へ書類を提出する期限は1月31日です。提出する前であれば、年末調整の修正を勤務先の担当部署を通じて行えます。ただし、2月1日以降に不備が判明した場合や、すでに源泉徴収票が発行されている場合は修正できません。また、修正にはある程度の時間を要するため、期限間近では訂正が間に合わない可能性があります。その場合は、従業員が自分で確定申告することになります。
年末調整の訂正方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
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従業員が自分で確定申告の手続きをする方法
従業員が自分で確定申告をする際は、以下のような手続きを行います。
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1.源泉徴収票を受け取る
-
2.各種証明書を準備する
-
3.期日までに確定申告書を提出する
なお、確定申告の方法や手順については、以下の記事で詳しく説明しています。
1.源泉徴収票を受け取る
従業員が自身で確定申告を行う際には、まず給与を得ている勤務先から「源泉徴収票」を受け取ります。源泉徴収票には、その年に支払われた給与の金額(支払金額)や、天引きされた所得税の額(源泉徴収税額)などが記載されています。そうした情報を基に、確定申告書に記入していきます。
源泉徴収票の配布時期は企業によって異なりますが、一般的には年末調整が完了した12月末ごろに発行されるケースが多いでしょう。
2.各種証明書を準備する
確定申告で控除を受けるには、証明書を提出します。控除できるものがあれば、各種証明書を用意しましょう。確定申告で利用できる控除のうち、年末調整では控除できないものは以下のとおりです。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 寄附金控除(ふるさと納税を含む)
-
参照:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし
」
3.期日までに確定申告書を提出する
確定申告の期間は申告の対象となる年の翌年2月16日から3月15日です(土日祝日の場合は翌平日)。期日までに確定申告書を提出できるように準備しましょう。提出方法は以下の3つです。
- 税務署の窓口に直接提出する
- 税務署に郵送する
- e-Taxを利用して提出する
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年末調整は自分ではできないので確定申告をしよう
年末調整は、企業が従業員の代わりに所得税を申告するための手続きであり、従業員自身が行うものではありません。やむを得ず従業員が自分で申告しなければならない場合は、確定申告を行うよう促しましょう。
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この記事の監修者高崎 文秀(税理士)
高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。