【会計事務所監修】リモートワークで年末調整を行う際の注意点をタスク表・Q&Aで確認!
2020/11/27更新

この記事の監修ペンデル税理士法人 早川広毅 氏(業務効率化担当)

リモートワークの中で初めての年末調整を迎えたものの、どこまでの作業を自宅でやれるのかわからない……。そんな経理担当の方のために、ペンデル税理士法人の早川 広毅さんに監修いただきリモートワーク環境下で行う年末調整の流れや注意点を表にまとめました。
「紙の申告書を家に持って帰ってもいいの?」「リモートで年末調整の処理を行う際、システムの入力を行う際に気をつけることは?」など、リモートワーク環境下で行う年末調整の疑問を解決します!
2020年の年末調整は制度変更多数!抑えておくべき7つのポイント
「平成30年度税制改正」により、2020年の年末調整からさまざまな制度変更が行われます。年末調整業務に入る前に、まずは変更点をしっかり確認しておきましょう。押さえるべきポイントは以下の7つです。
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1 給与所得控除を一律10万円引き下げ↓
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2 基礎控除は基本的に10万円の引き上げ↑
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3 子育て・介護に配慮し所得金額調整控除を創設
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4 ひとり親控除の適用に伴い、寡婦(夫)控除を見直し
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5 配偶者・扶養親族などの控除要件は実質変更なし
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6 「住宅ローン減税」の控除期間を一時的に延長
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7 e-Taxなどでの法定調書の電子提出義務の基準が「100枚以上」に
さらに注意したいのが「給与所得者の基礎控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」の、3つの申告書が一体となった「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(通称「マル基配所」)」が導入される点です。
「マル基配所」は従業員によって記載の必要がない申告書があったり、あるいはすべてに記載しなくてはいけなかったりと対応が分かれます。そのため経理担当者は新しい申告書の内容と記載の方法をしっかりと理解したうえで、個々の従業員に合わせた周知を行わなければなりません。
新制度の概要や経理業務への影響については「経理・給与担当者必見!2020年は『年末調整』が変わります!経理業務への影響・対策は?」で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
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書類持ち帰りはOK?会計事務所に聞く、リモートワークで年末調整を行う際のQ&A
ペンデル税理士法人の方に、リモートワーク環境下で行う年末調整において出てくる疑問点をお聞きしました。経理担当の方はぜひ参考にしてください。
回収した紙の申告書を自宅に持ち帰って作業してもよいですか?
紛失や情報漏洩のリスクがあるため、経理担当者が申告書類を紙で持ち出すことは推奨できません。スキャンしてPDF化したものを弥生ドライブで共有するなど、データ化してからセキュリティ上問題ない方法で、自宅で閲覧するのがよいでしょう(このようにサーバーで共有する場合は誰もが見られるものでなく、経理や給与担当など一定の者しか閲覧ができないようにすることも重要です)。
年末調整を会計事務所に依頼している場合は、PDFなどのデータを受領してくれるかどうか確認してみてください。OKであれば、データ共有で進めることが可能だと思われます。

では、源泉徴収票や給与明細を自宅で印刷したり郵送したりしてもよいですか?
おすすめはできません。情報管理のリスクの面だけでなく、コストの面からも会社で行うほうがよいでしょう。さらにいえば、紙ではなく各従業員へデータ共有する仕組みに変えていくとリモートでの効率化が見込めます。すぐできる方法としては、源泉徴収票や給与明細のデータをメール送付する方法が考えられますが、その際は対象者を間違えないよう細心の注意を払ってください。
リモートで年末調整システムへの入力や給与計算などを行う際の注意点は?
前提として、会社で使っている弥生給与などの年末調整システムやソフトがリモート環境で起動・作業ができるのかを確認しておいてください。あとは一般的な話になりますが、セキュリティ対策は万全に。プライバシーの問題や情報漏洩の観点から、入力画面が家族の目に触れないようにすることも必要です。どうしても印刷が必要な場面では、印刷した書類も家族の目の届かない場所で管理しましょう。
パソコンからの情報漏洩やデータ紛失を防ぐために、セキュリティソフトなどの基本的な対策以外で工夫できることがあれば教えてください。
不特定多数の人がいるコワーキングスペースやカフェなどで業務を行ったり、Wi-Fiを利用したりしないことです。また、私的なパソコンを使うのは避けたほうがよいでしょう。会社が支給した業務用のパソコンで作業することが望ましいです。
自宅で紙の書類を安全に管理するための工夫やコツはありますか?
紛失や家庭内での情報漏えいの対策として、書類は1つの場所に保管して、そこから移動させないようにしてください。そして基本的に、紙資料は持ち帰らないようにすることです。自宅で書類を閲覧するにあたっては、会社でPDFなどのデータにしておき、パソコンの画面で内容を確認する方法がおすすめです。書類を持ち運んで紛失してしまえば、情報漏えいを引き起こすこととなります。また、データ化しておけば万が一書面を紛失した場合でもスペアを残すことができます。

リモートで法定調書を書面やe-Tax(電子申告)で提出する際の注意点は?
まず、リモートでの書面提出はおすすめしません。法定調書合計表など押印が必要な書面がありますし、給与報告支払書や支払調書を自宅で印刷・郵送するのは非常に手間がかかるからです。e-Taxを行う場合は、電子証明書の取得など事前に環境を整える必要があります。
法定調書の提出は、税理士や会計事務所にお願いするのも1つの方法です。給与計算を会計事務所に依頼しているような場合だと、ほとんどの会社で法定調書の提出もまかせているような印象があります。
年末調整書類の7年間保存義務に関して、紙の書類ではなくPDFなどにデータ化したものを保存してもよいのでしょうか。
年末調整申告書類は、原則として紙で7年間保存する義務があります。電子データの保存やスキャナ保存を行う場合、所轄税務署長の承認を受けたうえでタイムスタンプなどの要件を満たさなければなりません。要件の詳細については、国税庁のホームページを参照してください。
参照
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました|国税庁
「事前準備」から「書類の保管」まで、年末調整の流れを再確認
リモートワーク環境下でもスムーズに年末調整を行うために、流れを確認しましょう。紙の申告書で年末調整を行うことを前提とし、「事前準備」から「書類の保管」まで、7つのタスクごとにやるべきことや注意点をまとめました。
年末調整 経理担当者のタスク表

新しくリモートワークを始めた会社では、これまでとは異なる対応が求められます。また「経理担当者のみリモート」「従業員もリモート」など、リモートワークのパターンによって作業内容が若干変わることにも気をつけてください。なお紙での年末調整の場合、経理担当者がすべての作業をリモートのみで行うことは難しいと考えられます。ある程度の出社を想定し、リモートと会社で行う作業をそれぞれ切り分けておくことも重要です。
上記を踏まえて、以下のチェックリストを用意しました。ぜひこちらも活用しながら、リモートワーク環境下での年末調整を頑張ってください!

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リモートワークでの年末調整を電子化・生産性を向上させるきっかけに
新型コロナウイルス感染症の影響で慌ただしくリモートワークを始め、リモート環境下で初めての年末調整を迎えたという企業は少なくないでしょう。新たな作業や手間が増えてしまって大変……とお嘆きの経理担当者の方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、新型コロナウイルスの感染状況や「働き方改革」の観点から見ても、リモートワークは一時的なものではなく、これからも継続して行う必要があると考えられます。またリモートでの年末調整は紙からデータへの移行がカギとなっており、そのことは将来的に必ず作業の軽減につながるはずです。

国税庁も年末調整手続の電子化を進めていて、申告書をデータ提出できる「年調ソフト」を公開しました。一部の保険会社などでは、控除証明書のデータ化も始まっています。
いずれ従業員が、申告書の作成や控除証明書の提出をすべてデータで行うようになれば、経理担当者の負担は劇的に減っていくでしょう。これまで申告書の書き方を個別に指導したり、問い合わせや催促に追われていたりしていた方でも、チャットやWeb会議などの新しいコミュニケーションツールを取り入れることで業務を効率化できる部分は少なからずあります。
「新型コロナウイルス対策のためのリモート」ではなく、生産性向上の第一歩として2020年の年末調整に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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また作成した給与明細書は、Web配信で従業員のスマホ・PCに配付することができます。
さらに年末調整に必要な控除申告書の回収、法定調書の作成、源泉徴収票の従業員への配付もオンラインでスムーズです。
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この記事の監修ペンデル税理士法人 早川広毅 氏(業務効率化担当)
弥生会計を使った自動化・効率化を得意とする。現在は年末調整の業務効率化を研究中。会計税務の業務以外にも顧問先の生産性向上を支援し、喜んでもらえるよう日々活動している。
