手当にはどのような種類がある?内容や法律で定められた条件を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/04/15更新
企業が従業員に支払う給与のうち、基本給以外のものを「手当」と呼びます。手当にはさまざまな種類がありますが、法律で条件により支給が義務付けられているものと、企業が任意で支給するものに分けられます。
本記事では、さまざまな手当の中から代表的なものを紹介します。手当の注意点や、給与計算を効率良く行う方法についても併せて解説するので、手当の種類や特徴を知っておきましょう。
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手当とは企業から従業員に支払われる基本給以外の賃金のこと
手当とは、企業から従業員に支払われる基本給以外の賃金のことです。
毎月決まった額が支給されるのであれば、手当も基本給と同じように従業員に支払われる固定的な賃金と見なされます。そのため、残業代などを算出する際は、基本的に手当を含めて計算しなければなりません。ただし、一部除外される手当もあります。
その一方で、賞与の算出などについては、手当を含まず「基本給の◯か月分」といった運用を行っても問題はありません。
手当には、法律で支給しなければならないと決められているものと、企業が任意で支給するものの2種類があります。次から、それぞれの手当の規定と具体的な種類について解説します。
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割増賃金として法律で支給が定められている手当
まずは、労働基準法によって支給することが定められている手当について解説します。法定労働時間を超える労働や休日、深夜の労働に対する手当は、法律で支給しなければならないと定められています。手当の金額についても規定があるため、遵守しなければなりません。
時間外手当(残業手当)
時間外手当は、法定労働時間を超えた労働に対して支払われる手当です。法定労働時間は、1日8時間・週40時間と定められています。1日8時間を超える労働や、1週間に40時間を超える仕事をした場合、時間外手当を支給しなければいけません。
時間外手当は、1時間当たりの賃金の割増率に応じた金額を加算した額で、割増率は25%以上に設定する必要があります。また、時間外労働が1か月に60時間を超えた場合、超えた部分の割増率は50%以上になります。ただし、労使協定を結んでいる場合、割増率を25%に据え置いて、代わりに有給休暇を付与することが可能です。
なお、1日当たりの就業時間が8時間未満の企業では、法定内残業が生じる可能性があります。その場合は、割増賃金を支払わなくても違法ではありません。
例)
9時から17時までが就業時間で、18時まで働いた(休憩1時間)
上記の場合、1時間残業をしていますが、法定労働時間は超えていません。1時間分の賃金を割増せずに追加で支払うことが可能です。
残業手当の割増率や計算方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
休日手当
従業員が法定休日に労働した場合、企業は休日手当を支給しなければなりません。法定休日とは、法律で定められた休日で、週に1日設定する必要があります。何曜日にするかは企業が独自に決められますが、日曜日にする場合が多いでしょう。休日手当の割増率は35%以上と義務付けられています。
なお、週休2日制で法定休日以外の休日に労働した場合、休日労働の割増の対象にはなりません。休日労働の割増に該当せず、週40時間を超える労働だった場合は、時間外手当を支払う必要があります。
深夜手当
深夜手当とは、深夜22時から翌朝5時までの労働に対して、支払われる手当のことです。割増率は25%以上と設定されています。時間外労働が深夜まで及んだ場合は、時間外労働の割増率25%と深夜残業の割増率25%を足して、50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
例)
基本給32万円、所定労働時間が9~18時の8時間で、月平均所定労働時間が160時間の従業員が9~23時まで働いた場合
この例では、1時間当たりの賃金は32万円÷160時間=2,000円です。
時間外手当および深夜残業手当を計算すると、以下のようになります。
時間外手当、深夜手当の金額
- 18~23時(残業5時間):2,000円×1.25×5時間=1万2,500円
- 22~23時(深夜残業1時間):2,000円×0.25×1時間=500円
上記の計算により、この従業員には1万2,500円の時間外手当と500円の深夜手当が支給されます。
企業が任意で支給する手当の例
企業が任意で支給する手当は、それぞれの企業が独自に設定できます。ここでは、代表的な手当の例から、通常の給与と同様に所得税の課税対象になるものについて紹介しましょう。
役職手当
役職手当は、役職に応じて支給される手当です。部長や課長といった職位に応じて支給金額が決まっています。
皆勤手当・精勤手当
皆勤手当や精勤手当は、一定期間で欠勤や遅刻がない従業員や、定められた基準に達した従業員に対して支給される手当です。具体的なルールは、それぞれの企業の賃金規程に則って判断されます。
資格手当
資格手当は、業務に必要な資格などを取得した従業員に対して支給される手当です。部署ごとに手当の対象となる資格や、手当の金額が指定されている場合が多いでしょう。資格手当制度を設けることで、従業員の資格取得やスキルアップを促せます。
特殊勤務手当・危険手当
身体的な危険や精神的な負担を伴う業務に従事する従業員に対しては、特殊勤務手当や危険手当を支給する場合があります。困難な業務や負担の大きい業務を行う従業員の待遇を良くすることで、前向きに仕事に取り組んでもらいやすくなるでしょう。
単身赴任手当
単身赴任手当は、遠方への転勤を理由に家族と別居しなければいけない従業員に対して支給する手当です。家族と離れて暮らすため生活費がかさんだり、自宅と単身赴任先を行き来する交通費が必要になったりと、従業員に金銭的な負担がかかることから、単身赴任手当を支給するケースがあります。
海外赴任手当
海外赴任手当は、海外に駐在する従業員に対して支給する手当です。海外赴任する人への職責の手当として支給する場合や日本では不要な精神的・経済的な負担を想定して支給されることがあります。赴任先の物価や情勢などに応じて金額を決める場合が多いでしょう。
地域手当
地域手当は、企業が定めた勤務地に配属された場合に支給される手当です。地域による家賃や物価などの差を調整するために支給されます。
家族手当
家族手当は、扶養家族の人数などに応じて支給される手当で、扶養手当と呼ばれることもあります。だれを扶養家族と見なすかは企業の規程に応じて決まりますが、社会保険の扶養を基準にする場合が多いでしょう。
住宅手当
住宅手当は、住宅にかかる費用の補助のために支給される手当です。現金で一律の金額が支給される場合もあれば、社宅の賃料などとして間接的に支払われる場合もあります。
通常は課税対象ですが、国税庁のタックスアンサーNo. 2597「使用人に社宅や寮などを貸したとき」によると、従業員から徴収している家賃額が賃貸料相当額の50%以上であれば、給与として課税されません。
食事手当
食事手当は、就業時の従業員の食費を補助するための手当です。昼食代の補助としてはもちろん、残業や深夜労働が多い職場で支給されることもあります。手当ではなく、食事を支給したり、食事券を支給したりするなど、支給方法はさまざまです。
所得税が非課税になる手当
企業が任意で支給する手当の中には、所得税が非課税になるものもあります。以下の手当が支給される場合、条件によって所得税がかからない可能性があるため、給与計算の際は注意してください。
なお、所得税が非課税になる場合でも、社会保険料の算定時や雇用保険の計算時には含めて計算する場合もあります。
通勤手当
通勤手当は、自宅と職場の往復交通費の一部を支給するものです。公共交通機関を利用して通勤している従業員に対して実費を支給する場合、1か月15万円までは所得税が非課税になります。その一方、マイカーなどで通勤している従業員に対してガソリン代として通勤費を支払っている場合は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額が定められています。
ただし、全従業員に一律で通勤手当を支給する場合など、実費以外の支給を行う場合は、非課税にはなりません。
マイカー通勤やマイカーと公共交通機関を併用する場合などの細かい条件についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
宿日直手当
宿日直手当とは、宿直や日直を行った従業員へ支払われる手当で、1回につき4,000円まで非課税になります。なお、宿直や日直にあたって食事が提供される場合は、4,000円分から食事代を引いた残額が非課税の対象です。
ただし、通常の勤務時間内の労働として宿日直を行った場合や代休が与えられる場合、宿直場所に居住して夜間などを含めて勤務することを前提に雇用された従業員への手当など、一部非課税の対象外になるケースがあります。
出張手当
出張手当は、遠方へ出張した人や宿泊を伴う出張をした人に支給されます。出張交通費や宿泊費、必要な範囲内の日当など、通常必要な範囲の手当は非課税の対象となります。これらの金額は、給与ではなく経費として扱われることから、所得税が課せられません。
通常必要な範囲を明確にするために、対象者や出張の定義、宿泊費の限度額、日当の計算方法などを定めた出張規程を作成しなければなりません。
なお、非課税の出張手当を支給した場合、企業は課税仕入れとして仕入税額控除が可能です。ただし、海外出張の場合は課税仕入れの対象外です。
手当に関する注意点
法律で定められたもの以外の手当は、企業が任意で支給するかどうかを決められます。しかし、支給する場合は、公平なルールに基づいて運用する必要があるでしょう。続いては、手当を支給する際の注意点を紹介します。
求人募集や労働条件通知書、就業規則へ記載する必要がある
手当の内容や計算方法は、求人票や労働条件通知書、就業規則などに明記しなければなりません。また、従業員に対して不利益な変更は、合理的な理由を示し、労働者への個別合意がなければ認められません。
一度支給を決めた手当について、事業者側の都合で一方的に取りやめたり、減額したりすることは困難です。手当の内容を決める際や、新たな手当を導入する際は、将来を見据えて慎重に検討するようにしてください。
同一労働同一賃金の考え方がある
パートタイム・有期雇用労働法によって、正社員と非正規社員の不合理な待遇格差が禁止されています。手当についても、適切な支給ルールになっているかを確認しなければなりません。
例えば、通勤手当について「正社員は上限2万円まで支給、アルバイトは支給しない」と一律に定めるのは、不合理な待遇格差に該当する可能性があります。一方、「フルタイム勤務の社員は上限2万円まで支給、月の労働日数が正社員の半分の社員は上限1万円まで支給」とするのであれば、合理的な理由があると考えられます。
正社員と非正規社員の役割や責任、業務範囲などを考慮して、それぞれの手当について合理的な説明ができるようにしておきましょう。
手当の種類を知ってミスのない給与計算を行おう
従業員に支給する手当には、さまざまな種類があります。所得税の課税対象になるかどうかの違いもあるため、手当の特徴を踏まえて給与計算を行いましょう。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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