法律上定められている「手当」と会社で定められる「手当」の種類一覧
2021/03/31更新

この記事の執筆者宮田 享子(社会保険労務士)

毎月の給与支給の際、基本給の他にさまざまな手当がついている会社は多いと思います。
今回はその「手当」についてどのような種類の手当があるのか、また手当を支給する際に必要なこと、法律で決まっている手当、注意しなければいけないことについて解説します。
POINT
- 法律上定められている手当がある
- 「手当」をつける意味とメリットを考える
- 「手当」をつけるときに必要なこと、気をつけたいことは?
法律上「手当」は必ずなくてはいけない?
法律上、必ずつけなくてはいけない「手当」はあるのでしょうか。
答えは「YES」です。労働基準法では、会社が従業員に時間外労働(残業)や深夜労働・休日労働をさせた場合には必ず割増賃金として「残業手当」「深夜残業手当」「休日出勤手当」を支払わなくてはいけないと定めています。
また、割増賃金を支払う以前にサブロク協定の締結と届出が会社の義務となっています。
法律で定められていない「手当」とは?
「残業手当」「深夜残業手当」「休日出勤手当」は、法律で定められている手当ということはわかりました。逆に言うと、この3種類の手当以外は会社独自のルールで決めて良いことになっています。例えばどんなものがあるでしょう。一般的に取り入れられているものを以下に挙げます。
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1.役職手当……部長や課長など役職に応じて支給される手当
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2.住宅手当……住宅に要する費用に応じて支給される手当
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3.家族手当……扶養家族の人数に応じて支給される手当
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4.通勤手当……通勤に要する費用に応じて支給される手当
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5.皆勤手当……欠勤、遅刻がゼロの者に支給される手当
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6.精勤手当……欠勤、遅刻が少ない者に支給される手当
「手当」をつける意味とメリット
では、なぜ会社は法律で定められていない「手当」をつけるのでしょうか。これは従業員の働くモチベーションを上げるためや「このように待遇してあげたい」という想いをアピールするためでもあります。
実際、就職や転職を考えている人のなかにはどんな「手当」がつくのかに注目する人も少なくないでしょう。
時代とともに変化が
「手当」の種類は時代とともに変化していくものもあります。なかでも家族手当については、近年、多くの会社で見直しが進められています。大きく分けると以下のようなパターンが見受けられます。
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1.配偶者や子供に対する手当を減額もしくは廃止する。
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2.配偶者に対する手当を減額もしくは廃止し、子供に対する手当を増額する。
従来は男性が一家の大黒柱となり、女性は専業主婦で子供を産み育てるという考え方が一般的でしたが、現在はそのような時代ではなくなり、夫婦共働きの世帯が多くなっています。また、児童手当(旧子ども手当)が子育て世帯に支給されるようになりました。
そのような世帯の状況以外にも、従業員の能力や仕事の成果を賃金に反映させる「成果型賃金」という考え方から、家族手当を支給する意義が薄れてきています。そのため、配偶者に対する手当は縮小される傾向があります。
しかし一方で、子供に対する手当に関しては減額や廃止だけではなく、逆に増額するという動きもあります。これは依然として子供の教育費への負担が重いこと、少子化対策のために子育て世帯を応援するという考え方によるものでしょう。例えば家族手当を見直し「子女教育手当」を新設した企業もあります。
「手当」をつけるときに必要なこと
では「手当」をつけるときに必要なことはどんなことでしょう。「手当」は賃金に関することなので、労働条件通知書や就業規則のなかに必ず記載しなければならない事項です。どのような要件で、額はいくら支給するのか等を記載しておきましょう。また、割増賃金を計算する際には、除外することのできる手当もありますのでこれにも注意が必要です。
なお、業種によっては「年末年始手当」や「大入り手当」など繁忙期を乗り切るモチベーションを維持するための手当を導入する例も見られますが、どんな手当でも基準を明確にし、従業員の間で不公平感の無いものにすることが大切です。また、一度導入した手当の額を減額したり廃止したりする時は労働条件の不利益変更になりますから、その場合は合理的な理由があり経過措置を取る等の対策が必要です。
まとめ
基本給以外の手当は法律で定められているものといないものがあります。
法律で定められていないものは会社独自の考え方、ルールによって取り入れることができます。とりわけ「手当」は、その会社の個性や従業員の待遇を表す手段にもなる大切なものと言えるでしょう。
photo:PIXTA
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この記事の執筆者宮田 享子(社会保険労務士)
宮田享子(みやたきょうこ)
社会保険労務士。産業カウンセラー。
社労士事務所・社労士法人等で実務経験を積んだ後、2010年(平成22年)独立開業。労務相談の他、講師業やメンタルヘルス対策に力を入れている。趣味はオーボエ演奏とランニング。
