交通費や通勤手当の課税と非課税のルールとは?計算方法も解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/08/27更新
従業員が公共交通機関や自家用車などで会社に通勤する場合、電車代やバス代、ガソリン代といった費用がかかります。多くの会社では、通勤にかかる費用を「通勤手当」として従業員に支給していますが、一般的に実費支給となるため、従業員ごとに必要な通勤費を計算し、適切に管理しなければなりません。また、通勤手当は一定要件を満たせば一定額まで非課税になるなど、通常の給与とは異なる性質があるため注意が必要です。
本記事では、交通費や通勤手当の課税・非課税のルールや、通勤手当の計算方法、注意点などについて解説します。
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交通費と通勤手当の支給に関するルール
交通費と通勤手当の支給については、それぞれ明確なルールがあります。交通費と通勤手当はどの費用を指し、どのようなルールがあるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
交通費
交通費とは、通勤以外で業務のために交通機関を利用した場合にかかった費用を指すことが一般的で、旅費交通費と呼ぶこともあります。例えば、取引先への訪問、仕入れや納品、外注先との打ち合わせなど、仕事での移動にかかる費用が交通費に該当します。
交通費は、かかった費用を一時的に従業員が立て替えて、後で経費精算をするケースが多いでしょう。通勤手当とは異なり、交通費はあくまで会社の経費のため、交通費の金額がいくらになっても従業員の所得税に影響はありません。
なお、会社によっては、交通費と旅費交通費を区分している場合があります。その際は、出張のように遠方または宿泊を伴う移動をした際にかかった費用を旅費交通費と呼びます。
交通費についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
通勤手当
通勤手当とは、従業員の自宅から勤務先までの通勤にかかる実費相当額を、会社が手当として支給するもので、通勤費や通勤交通費とも呼ばれます。法的な支払い義務はありませんが、多くの会社では福利厚生のひとつとして通勤手当を支給しています。
通勤手当の支給の有無や金額、支給方法などは、会社の賃金規程によって規定され、一般的には毎月の給与と同時に通勤手当を支給することが多いでしょう。支給額についても会社ごとに決めることができ、通勤にかかる実費を全額支給する場合もあれば、1か月当たりの支給額に上限を設ける場合もあります。
従業員に支給する通勤手当は、一定額まで非課税となりますが、その限度額は電車やバスなどの公共交通機関を利用するケースと、自家用車やバイクなどで通勤するケースで異なります。
通勤手当は一定額まで非課税になる
前述したように、通勤手当は一定額まで非課税になります。従業員に支給する給与は、その所得に応じて所得税がかかりますが、通勤手当に関しては限度額まで所得税がかかりません。通勤手当の非課税限度額は、公共交通機関や自家用車、バイクといった交通手段によって異なります。
公共交通機関で通勤する場合
電車やバスなどの公共交通機関だけを利用して通勤している場合、通勤手当の非課税限度額は1か月当たり15万円です。ただし、公共交通機関による通勤費を非課税の通勤手当とするには、支給する金額が「合理的な運賃等」でなければなりません。合理的な運賃とは、国税庁「源泉のしかた」(令和3年版)によると「通勤のための運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃または料金の額」です。
税法上明確な定めがあるわけではないため、何をもって合理的とするか、会社ごとに検討する必要があるでしょう。例えば、「最も金額の安いルートにすると大幅に通勤時間が増え、従業員の負担につながる」というような場合は、金額以外の判断基準も求められます。
自家用車やバイクで通勤する場合
自家用車やバイク、自転車などで通勤する場合、片道の通勤距離に応じて1か月当たりの非課税限度額が定められています。非課税限度額は以下の表のとおり、0~3万1,600円まであります。
片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
---|---|
片道2km未満 | 0円(全額課税対象) |
片道2km以上10km未満 | 4,200円 |
片道10km以上15km未満 | 7,100円 |
片道15km以上25km未満 | 1万2,900円 |
片道25km以上35km未満 | 1万8,700円 |
片道35km以上45km未満 | 2万4,400円 |
片道45km以上55km未満 | 2万8,000円 |
片道55km以上 | 3万1,600円 |
車の交通費計算についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
マイカーと公共交通機関を併用する場合
「自宅から駅までマイカーを使い、その後は電車で会社まで通勤する」など、公共交通機関と自家用車やバイクなどを組み合わせて通勤するケースは、公共交通機関による合理的運賃と、自家用車などの通勤距離に応じた非課税限度額を合計して、1か月当たり15万円までが非課税となります。ただし、会社が規定する条件のルートで通勤している必要があります。
通勤手当は限度額を超えると課税される
非課税限度額を超えて支給された通勤手当は、限度額を超えた部分の金額に対して所得税(所得税および復興特別所得税)が課税されます。例えば、公共交通機関で通勤している従業員に対して、17万円の通勤手当を支給したとしましょう。この場合、非課税限度額を超えた2万円は、給与に上乗せして所得税の源泉徴収を行う必要があります。
通勤手当の計算方法
通勤手当は福利厚生のひとつなので、計算方法は会社によって異なります。通勤手当の計算方法は、会社が認めるすべての通勤手段について、あらかじめ就業規則や賃金規程で定めておかなければなりません。ここからは、公共交通機関やマイカーなどの通勤手段別に、一般的な通勤手当の計算方法を紹介していきます。
電車やバスの場合
電車やバスなどの公共交通機関を使って通勤する場合は、通勤手当として通勤定期券の金額を支給するのが一般的です。なお、通勤定期券の期間には1か月、3か月、6か月といった種類があり、基本的には長期間分をまとめて購入する方が割安になるため、定期代をまとめて先払いする会社もあります。あらかじめ就業規則や賃金規程で、どの期間の定期券代を支給するか定め、それに基づいて通勤手当を支給しましょう。
自動車やバイクの場合
自動車やバイクで通勤する場合の通勤手当は、1km当たりのガソリン代をあらかじめ定めておき、それに距離と出勤日数を乗じて算出するケースが一般的です。計算式にすると、以下のとおりです。
自動車やバイクで通勤する場合の通勤手当の計算式
1か月の通勤手当=1km当たりのガソリン代×往復の通勤距離×その月の出勤日数
1km当たりのガソリン代をいくらにするかは会社によって異なりますが、10~15円程度に設定するケースが多いようです。ガソリン価格の変動に合わせて「ガソリン代が1円上がったから交通費も上げる」といった細かい調整は基本的に行いませんが、ガソリン代の設定基準や見直す時期を賃金規程に明示しておくといいでしょう。
なお、通勤のために駐車場代を支給する場合は、金額にかかわらず非課税にはなりません。特定の個人が専属利用する駐車場代は、原則として全額が課税対象になるので注意してください。
自転車の場合
自転車通勤の従業員に通勤手当を支給するかどうかは、会社の就業規則や賃金規程によって異なります。支給する場合も、通勤手当の計算方法は、「一律で定額を支給する」「自宅からの距離に応じて金額を定める」「公共交通機関を利用すると仮定して定期券相当額を支給する」など、会社によってさまざまです。
なお、自転車通勤の非課税限度額は、自動車やバイクで通勤する場合と同様に、片道の通勤距離に応じて定められています。通勤用に駐輪場代を支給する場合は、原則として全額が課税対象となります。
通勤手当の課税、非課税の注意点
従業員に支給する通勤手当は、税金や社会保険料にも影響するため注意が必要です。通勤手当を計算・支給する際には、以下の点に注意しましょう。
通勤手当の支給要件を明確に定める
通勤手当の支給にあたっては、就業規則や賃金規程で、支給要件を明確に定めておくことが大切です。ルールをしっかり決めておかないと、認識違いによる従業員とのトラブルを招きかねません。「公共交通機関のみか、マイカーや自転車通勤も認めるか」といった支給対象者や、支給金額の計算方法、支給上限額、通勤手当の申請方法などを、しっかりと明記しておきましょう。例えば、マイカー通勤や新幹線通勤など、会社の勤務形態で想定できるケースに応じたルールを定めることが大切です。
テレワークの場合は、出社日数に応じて通勤手当を計算する
テレワーク中心の従業員に対しては、出社日数に応じて、定期券相当額ではなく個別に通勤手当を計算するのが一般的です。
なお、営業職などで「客先への直行直帰が多く、出社の機会は少ない」というような場合は、出社日のみ実費計算で通勤交通費を支給し、直行直帰のときは交通費として経費で処理するなど、状況に応じて清算方法を区別するといいでしょう。
社会保険料の計算には通勤手当が含まれる
通勤手当は一定の金額までなら非課税となり、所得税や住民税がかかりませんが、社会保険料を算出する際には、非課税となる15万円以下であっても、通勤手当を標準報酬月額の対象となる報酬に含めて計算する必要があります。社会保険料の計算時には、混同して間違えないように注意しましょう。
通勤手当や交通費入力には給与計算ソフトが便利
通勤手当には通勤手段ごとに非課税限度額が定められており、その上限を超えた金額は課税対象となります。また、所得税は非課税であっても、社会保険料の計算においては通勤手当を標準報酬月額の対象となる報酬に含める必要があります。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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