有給休暇とは?付与されるタイミングや日数の計算方法を解説
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/09/04更新
所定の要件を満たした労働者に対して、企業は有給休暇を付与しなければいけないと労働基準法に定められています。また、有給休暇が付与されるタイミングや付与日数なども法律で定められているため、従業員を雇用している企業の担当者はしっかりと確認しておくことが必要です。
本記事では、有給休暇が付与される要件やタイミング、付与日数・賃金の計算方法のほか、注意点などについても解説します。
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有給休暇とは賃金が支払われる休暇のこと
有給休暇とは、労働基準法に定められている、賃金が支払われる(取得しても賃金が減額されない)休暇のことです。
有給休暇は「6か月以上継続して雇用されている」「所定労働日の8割以上出勤している」という2つの要件を満たす従業員に対して付与されます。正社員や契約社員、パート、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、一定の要件を満たした従業員に対しては、所定日数の有給休暇を付与しなければなりません。
有給休暇が取得できる要件と付与日数
従業員が有給休暇を取得するには所定の要件を満たす必要があり、有給休暇の付与日数は、勤続年数や所定労働日数によって変わります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
有給休暇取得の要件
6か月以上継続して雇用されており、かつ所定労働日の8割以上出勤しているという要件を満たした場合、従業員に所定の日数の有給休暇が付与されます。ただし、一部の企業では、入社から6か月経過していない社員も含め、全社員に同一のタイミングで有給休暇を付与することもあります。
付与日数と最大日数
有給休暇の付与日数は、継続勤務年数と1週間の所定労働日数によって定められています。正社員など「週30時間以上、または週5日以上勤務する従業員」と、パートやアルバイトなど「週30時間未満、かつ週4日以下で勤務する従業員」では付与日数が異なるため注意しましょう。
正社員など週30時間以上、または週5日以上勤務する従業員
正社員など、週30時間以上、または週5日以上フルタイムで働く従業員の場合は、勤続年数に応じて以下のように有給休暇の付与日数が定められています
勤続年数 | 6か月 | 1年 6か月 |
2年 6か月 |
3年 6か月 |
4年 6か月 |
5年 6か月 |
6年 6か月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
- ※厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
勤続年数は、勤務シフトや給与の締め日などとは関係なく、入社日から起算します。例えば、4月5日入社であれば、6か月後の10月5日に10日の有給休暇が付与されます。その後、毎年10月5日に上表の日数の有給休暇が与えられ、付与日数は最大で20日です。ただし、勤続年数が6年6か月以上になっても、有給休暇の付与日数は20日が上限となります。
パート・アルバイトなど週30時間未満、かつ週4日以下で勤務する従業員
週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下のパートやアルバイトの場合は、フルタイムの従業員よりも有給休暇の付与日数が少なくなります。
週所定労働日数 | 1年間の 所定労働日数 |
継続勤務年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
- ※厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
付与日数は、週によって所定労働日数が決まっている場合は「週所定労働日数」、それ以外は後述する「1年間の所定労働日数」によって判断することもあります。
パートやアルバイトでも、有給休暇の付与タイミングはフルタイムの従業員と同じです。例えば、4月5日入社で週所定労働日数が4日のパート従業員であれば、6か月後の10月5日に7日の有給休暇が付与されます。その後は毎年10月5日に上記の表に応じた日数の有給休暇が与えられ、付与日数は最大で15日です。
なお、パートやアルバイトであっても、週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上の従業員に対しては、フルタイムの場合と同じ日数の有給休暇を付与しなければなりません。
アルバイトやパートの有給休暇についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
週の所定労働日数が決まっていない場合の付与日数
パートやアルバイトの従業員の中には、シフト制など、週の所定労働日数が決まっていないことがあります。有給休暇は、原則的に雇用形態の内容に沿って付与基準が決まりますが、そのような対応が難しいなら、便宜的に次のような方法で1年間の所定労働日数を計算することもあります。
1年間の所定労働日数の計算例
- 前年1年間の労働日数
- 直近6か月間の労働日数を2倍した日数
- 1か月の平均出勤日数を計算し、それを12倍した日数
育児、介護休業後の付与日数
産休、育休、介護休業から復帰した従業員に関しては、その休業期間を全日出勤したと見なして出勤率を算定し、有給休暇を付与しなければなりません。また、産休、育休、介護休業中は、実際には出勤していなくても、勤務しているときと同様に勤続年数に応じた日数の有給休暇が付与されます。
ただし、産休、育休、介護休業を取得している期間中に有給休暇を取得することはできません。
有給休暇取得日の賃金の計算方法
従業員が有給休暇を取得した場合は、実際に出勤していなくても賃金が発生します。有給休暇取得日の賃金計算方法は、労働基準法によって、次の3つのいずれかに定められています。
有給休暇取得日の賃金計算方法の例
- 通常の賃金額(所定労働時間労働をした場合に支払われる所定の賃金)で支払う方法
- 平均賃金(原則として有休消化日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額)で支払う方法
- 健康保険の標準報酬日額(標準報酬の月額の30分の1に相当する額)で支払う方法
採用した計算方法については、賃金規程や就業規則に明記しておく必要があります。月によって違う計算方法を使ったり、部署や従業員ごとに計算方法を変えたりすることはできません。
通常の賃金額で支払う方法
通常の賃金額で有給休暇取得日の賃金を計算する場合は、通常どおり出勤したと見なし、同じ賃金を支払います。有給休暇の取得の有無や取得日数にかかわらず、通常どおり給与計算を行えばいいので、企業にとっても手間はかかりません。
平均賃金で支払う方法
平均賃金を、有給休暇取得日の賃金として計算する方法もあります。この場合は、次の2つの計算式で算出した金額のうちいずれか高い方を、有給休暇1日当たりの金額として支払います。
平均賃金の求め方
-
1. 平均賃金=直近3か月間の賃金の総額÷その3か月間の休日を含めた暦日数
-
2. 平均賃金=直近3か月間の賃金の総額÷その3か月間の労働日数×0.6(60%)
「暦日数」とは、土日祝などを含めたカレンダー上の日数です。平均賃金を計算するときには、1の暦日数と2の労働日数を間違えないように気を付けてください。
健康保険の標準報酬日額で支払う方法
健康保険の標準報酬日額で支払う方法は、健康保険料を計算するうえでベースとなる「標準報酬月額」から「標準報酬日額」を算出し、その金額を有給休暇1日当たりの金額として計算します。標準報酬日額は、以下の計算式で求めます。
標準報酬日額の計算方法
標準報酬日額=標準報酬月額÷30
なお、有給休暇取得日の賃金計算の方法は、原則として、上に挙げた通常賃金または平均賃金で支払う方法のどちらかになります。健康保険の標準報酬日額による賃金計算を行うには、労働組合または従業員の過半数を代表する者との間で、書面による労使協定の締結が必要です。
有給金額計算についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
有給休暇に関するルールと注意点
有給休暇の付与は労働基準法で定められたルールであり、正しく対応しないと法令違反となるおそれがあります。従業員に有給休暇を付与する際には、次の点に注意しましょう。
企業は有給休暇を年5日以上取得させる義務がある
企業には、有給休暇の付与日数が年10日以上の従業員に対して、最低5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられています。正社員やパート、アルバイトといった雇用形態を問わず、有給休暇の付与日数が10日以上の従業員には、付与した日から1年以内に5日以上を取得させなければなりません。
有給休暇付与日から5日消化できない場合は罰則の対象となる
有給休暇の付与日数が10日以上の従業員に5日以上の有給休暇を取得させることは企業の義務ですが、もし年間5日の有給休暇を取得させられなかった場合は労働基準法違反になります。従業員1人当たり30万円以下の罰金が事業主へ科せられるほか、有給休暇に関する問題が発覚した場合は、労働基準監督署からの指導が入り、今後の改善も求められます。
1年以内に消化しきれなかった日数は、翌年へ繰り越せる
有給休暇は1年当たりの付与日数が定められていますが、1年間にすべてを使いきれなかった場合は、消化しきれなかった有給休暇の日数を翌年に繰り越し、翌年の付与される有給休暇日数に加算することができます。ただし、有給休暇には時効があり、繰り越しできるのは翌年までとなります。未消化分は翌々年には消滅してしまうので注意しましょう。
有給休暇の繰り越しについてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
半休や時間単位の取得もできる
有給休暇は、半日単位や時間単位で取得することも可能です。ただし、時間単位での有給休暇を付与できるようにするには、労使協定の締結や就業規則への明記が必要になります。また、時間単位での取得は、前年度の繰り越しを含めて5日以内に収めるよう定められています。
半日単位での有給休暇制度を導入する場合も、労使間でトラブルにならないように、詳細を就業規則や雇用契約書へ明記しておくといいでしょう。
退職申し出後から退職日までに有休消化を希望する場合は認められることもある
退職前に従業員から有休消化の申し出があり、かつ退職日までに未消化の有休日数分が残っていれば、希望どおり有給休暇を取得させることも可能です。よく見られるのが、最終出勤日から未消化の有休日数分を経過した日を、退職日とする方法です。
なお、有給休暇の日数が残ったまま退職した場合、有給休暇は消滅します。退職日が過ぎてから、さかのぼって有給休暇を申請することはできません。
有給休暇の管理は給与計算ソフトが便利
有給休暇の取得は労働者の権利です。企業は、一定の要件を満たした従業員に対して、所定の日数の有給休暇を与えなければなりません。また、従業員が有給休暇を取得した際には、定められた方法で賃金計算を行う必要があります。
さらに企業は、従業員ごとの有給休暇の付与日数や取得状況、残日数などを適切に管理しなければなりません。有給休暇の管理を正しく行わないと、法令違反になってしまう可能性がありますが、有給休暇の付与日数は従業員によって異なるため、管理が煩雑になりがちです。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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