振替納税とは?手続きの方法や利用時の注意点を解説

2023/12/08更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

確定申告で所得税の納付が必要になった場合、いくつかの納付方法から好きな方法を選択できます。納付方法ごとの特徴を理解したうえで、ご自身にとってメリットの大きい方法を選べるようにしておきましょう。

本記事では、主に所得税の振替納税について解説します。

税金を口座引き落としで納める振替納税

振替納税とは、税金を納税者名義の口座からの引き落としで納める方法です。本記事では所得税の振替納税について解説しますが、個人事業税や固定資産税、消費税などの税金も振替納税が可能です。

確定申告を行うと、申告内容によって所得税を納付したり、還付があったりします。納付が必要な場合は、期限内に納税しないと延滞金などが発生することがあります。所得税の納付期限は確定申告期限と同一ですから、申告期限ぎりぎりに確定申告をする場合は特に注意が必要です。納税資金の準備が間に合わないときは、引き落とし日が遅い振替納税を利用するのもひとつの方法です。

振替納税以外の納税方法

所得税の納税方法は、振替納税だけではありません。確定申告で所得税の納付が必要になった場合、下記のいずれかの方法で納付を行うことになります。振替納税以外の選択肢も知っておきましょう。

所得税の納税方法

  • 指定された金融機関の預貯金口座からの振替納税
  • e-Taxによる電子納税
  • クレジットカードによる納付
  • QRコード※を利用したコンビニエンスストアでの納付
  • 金融機関、税務署の窓口での現金納付
  • スマホアプリを利用した納付
  • QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。

所得税の納付方法は、現金での納付またはキャッシュレス決済に大別できます。ただし、e-Taxで納税する場合には、事前に利用開始手続きが必要です。そのほかにも、クレジットカード納付は手数料が必要、スマートフォンアプリとコンビニエンスストア納付は30万円以下など、それぞれ注意点があります。

確定申告の納税方法についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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振替納税を利用するメリット

振替納税は、その他の納税方法に比べてメリットの多い方法です。所得税の納付に振替納税を利用するメリットを4点紹介します。

納税の手間が省ける

振替納税は、納税者名義の口座から自動で税金が引き落とされる納税方法です。わざわざ振込手続きをしたり、金融機関窓口に現金や納付書を持っていったりする必要がありません。

本業で忙しい個人事業主にとって、手間なく納税の義務を果たせるのは大きなメリットです。なお、納税は本人名義の口座であれば、事業用の口座でもプライベートの口座でもどちらでも利用できます。納税用の専用口座を作って管理したり、生活費用の口座から引き落としたりすることもできますし、事業用の口座を使うことも可能です。資金移動や家計管理に都合の良い方法を選びましょう。

手続きは一度だけで良い

振替納税の手続きは、初年度の1度だけです。翌年以降は、自動で最初に設定した口座から納税額が引き落とされます。確定申告をするたびに納税手続きを行う必要がないので、うっかり納付を忘れて期限を過ぎてしまうといった問題が起こりにくくなります。

納税のタイミングが約1か月後

所得税の納付期限は、確定申告期限と同じ3月15日です。しかし、振替納税を選択した場合、引き落とし日が4月の中旬なので、申告期限から約1か月程度後になります。納税額が変わるわけではありませんが、支払いまでの猶予があることで、資金繰りに余裕ができます。確定申告のタイミングで納税額がわかってから納付までの1か月の間の入金を納税にあてることも可能です。

なお、具体的な振替日は年によって変わります。国税庁の「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日新規タブで開く」で確認できます。

手数料がかからない

振替納税をする場合、手数料がかかりません。前述のとおり、納税方法には複数ありますが、クレジットカードで納税をする場合、所定の決済手数料がかかります。この決済手数料は、納税額によって異なります。

振替納税の手続き方法

振替納税を利用するには、振替納税の依頼書を提出する必要があります。振替納税を行うまでの手続き方法や利用できる金融機関についてご説明します。

依頼書の作成

振替納税をするために、まずは「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を作成しましょう。

預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書

国税庁「[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付新規タブで開く

用紙は、国税庁のWebサイトに用意されています。手書き用とパソコン上で入力ができる入力用の2種類が用意されているので、都合の良い方を利用してください。依頼書を手書きで作成する場合には、所得税の納期限までに所轄の税務署または口座振替を希望する金融機関に提出してください。

記入内容は、特に難しいところはありません。ただし、金融機関お届け印を間違えると手続きができませんから、間違えないように注意が必要です。

パソコンやスマートフォンからも手続きが可能

口座振替の依頼は、パソコンやスマートフォンからも行えます。パソコンの場合は「e-Taxソフト(WEB版)新規タブで開く」スマートフォンの場合は「e-Taxソフト(SP版)新規タブで開く」を利用してください。

e-Taxで依頼書の新規作成から提出まで、すべての手続きが可能です。ログインして新規作成を選択し、金融機関や口座情報を入力すると、金融機関のページに移動します。画面の案内に従って、キャッシュカードの暗証番号など、指定された情報を入力して手続きを行ってください。

なお、確定申告書等作成コーナーでは依頼書の提出はできません。

振替納税を利用できる金融機関

振替納税は、ゆうちょ銀行を含む全国の銀行、信用金庫、労働金庫、信用組合、農協および漁協の口座で利用できます。普通預金口座のほか、当座預金口座、納税準備預金口座、通常貯金口座なども指定できますが、定期預金口座や貯蓄預金口座などは利用できません。また、一部のインターネット専用銀行など、振替納税に利用できない金融機関もあるので、事前に確認しておくと安心です。

なお、振替納税が可能でも、振替依頼書のオンライン提出に対応していない金融機関もあります。こちらについては、国税庁の「オンライン提出利用可能金融機関一覧(振替納税)新規タブで開く」で公表されていますので、併せて確認しておきましょう。

振替納税をする際の注意点

非常に便利な振替納税ですが、注意点もあります。利用にあたって留意しておきたいポイントを5点紹介します。

納税者の名義の口座のみ利用できる

振替納税に利用できるのは、納税者本人名義の口座のみです。配偶者や家族名義の口座などは利用できません。

残高不足だと納税できず、延滞税がかかる

口座振替日に振替金額に残高が足らず、引き落としができないと、納税できず延滞扱いになります。振替日は通常の納付期限よりも先の日程が設定されていますが、引き落としができなかった場合は法定納期限である3月15日の翌日から納付する日までの期間について延滞税がかかります。振替納税を選択している場合は、「振替日に残高が足りるか」「特に同じ口座から他の引き落としや支払が発生しないか」なども、事前に必ず確認しましょう。

万が一、振替納税で残高不足により納税できなかった場合は、振替納税以外の手段で直ちに納税を行ってください。

参考
国税庁「振替納付日について/期限内に納付できなかった場合は」新規タブで開く

引っ越した際には手続きが必要

振替納税は一度手続きをすれば、2年目以降は手続き不要です。翌年も振替納税になります。ただし、引越しをしたときは、注意が必要です。

以前は、引っ越しをして納税地が変わる場合は、改めて口座振替依頼書を変更後の税務署に提出する必要があり、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」が必要でした。

しかし税制改正により、2023年(令和5年)1月1日以後、住所変更によって納税地が変わる場合、所得税や消費税の確定申告書に異動・変更後の納税地(住所)の記載をすれば、届出は不要になりました。所得税・消費税どちらかの申告書に記載すれば、もう一方の税目についても、振替納税を継続して利用できます。

個人事業主の場合、申告期限が早い、所得税の確定申告書 第一表の「振替納税希望」欄に〇をつけて申告書を提出すれば、引き続き振替納税を継続できます。

確定申告書 第一表

国税庁「所得税の確定申告新規タブで開く

なお、年の途中に引越しをして、確定申告書を提出するより前に納税地の異動や変更をしたいとき(例:国税当局や税務署からの各種文書の送付先を変更したい場合など)は、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を異動・変更後の所轄税務署に提出します。この届出書の「振替納税に関する事項」「振替納税を引き続き希望する」欄の「はい」にチェックをいれます。そうすれば、引き続き振替納税ができます。

所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書

国税庁「[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付新規タブで開く

振替納税の継続チェックを忘れるなどでしなかった場合、振替納税は、継続されません。振替納税を希望するときは、新たに「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の提出が必要です。口座振替が継続されていると勘違いして滞納してしまいますと延滞税がかかるので注意しましょう。

預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書

国税庁「[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付新規タブで開く

振替納税の継続を希望しない場合は、上記の手続きは不要です。

振替口座の変更もできる

振替口座を変えたくなったときは、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を再度提出することで、口座の変更が可能です。記載内容は新規の場合と変わりません。

参考
国税庁:振替納税の新規(変更)申込み新規タブで開く

領収書は発行されない

振替納税の場合、領収書をもらうことはできません。通帳の履歴やインターネットバンキングの取引明細などで、納税が完了したことを確認します。領収証書が必要な場合は、最寄りの金融機関もしくは、所轄の税務署の窓口で現金で納付をします。

納税証明書は、1週間程度後から発行可能

振替納税をした場合、納付済の納税証明書の発行が可能となるまで、口座引落しから1週間程度かかる場合があります。

振替納税をやめるときの手続き

振替納税をやめたいときは、「振替納税の取りやめ届出書新規タブで開く」を所轄の税務署に提出してください。なお、この手続きは、税務署に郵送または持ち込みで提出します。

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振替納税で簡単・確実に所得税を納付しよう

振替納税を利用することで、所得税の納付手続きにかかる手間を大幅に軽減できます。口座残高に気を付けておけば、最初に手続きをするだけで手間なく納税できるので、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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