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個人事業主のガソリン代は経費になる?仕訳時の勘定科目や注意点

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個人事業主は、事業で使用した分のガソリン代を経費として計上することが可能です。しかし、車をプライベートにも使用している場合は、「家事按分(かじあんぶん)」する必要があります。また、ガソリン代だけでなく車両の取得費用も経費計上できますが、その場合は「減価償却(げんかしょうきゃく)」が必要です。

そこで、家事按分や減価償却の考え方、ガソリン代を家事按分する方法、ガソリン代を仕訳するときの勘定科目、ガソリン代を経費にする際の注意点、経費にできる車関連の費用などを解説します。

個人事業主が事業で使ったガソリン代は経費になる

事業で車を使用する場合、ガソリン代は経費に計上できます。「事業で使用する」とは、クライアント先や商談・ミーティング場所への移動、事業所間の移動など、業務に関わる使用が該当します。友人と外出したり食事に行ったり、家族旅行など個人的に使用する分は経費として計上できません。

事業で車を使用する場合、事業用の車を所有して事業のみに使用するのが合理的です。しかし、事業規模が小さい場合や車を使用する頻度がそれほどない場合は、事業用の車を所有せず、自家用車を事業にも使用しているというケースも珍しくありません。その場合、「家事按分」を行うことで、事業で使用する分のガソリン代を経費として計上できます。

また、ガソリン代だけでなく車両本体の取得費用も経費にできますが、金額が高いため、「減価償却」を行い耐用年数に応じて経費計上する必要があります。

家事按分とは?

家事按分とは、個人事業主の支出を「事業用」と「プライベート用」に振り分け、事業で使用した分を算出し、経費として計上することです。自家用車を事業でも使用する場合のほか、自宅の一室を仕事場として使っている場合や、個人のスマートフォンを事業でも使用している場合などが該当します。

代表的なのは、ガソリン代をはじめとした車関連の費用、家賃、水道光熱費、通信費などです。これらの支出は事業で使用した分のみ経費にできるため、家事按分によって支出を明確にする必要があります。

しかし、事業でどれだけ使用したのか、振り分けるのが難しいケースも少なくありません。家事按分には、各支出に対する明確な定義や計算式がないため、客観的に見て「根拠に基づいた割合」を自分で決めなければなりません。

いつ税務調査が入っても対応できるよう、根拠や計算で利用したデータは残しておくことが大切です。家事按分の比率や割合の計算に悩んだときは、税理士に相談することをおすすめします。

家事按分について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

減価償却とは?

減価償却とは、長期にわたって使用できる高額な固定資産を、資産ごとに決められた耐用年数(法定耐用年数)に応じて費用を分割し、経費として計上することです。

通常、事業に必要なものを購入した際、全額をその年の経費として計上できますが、車のように高額なものは毎年の利益を正確に計上するために、減価償却によって分割で計上する必要があります。

法定耐用年数とは、資産価値が0になるまでの年数を指し、各資産で年数が決められています。一般的な新車の法定耐用年数は、普通自動車が6年、軽自動車が4年です。中古車の耐用年数は「法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)」の計算式で求められます。

耐用年数は資産ごとに細かく決められており、国税庁のWebサイト新規タブで開くなどで確認できます。車の場合、車を取得するために直接かかった費用が減価償却の対象です。車両価格だけでなく、オプションにかかった費用や納車費用も含まれます。

車の他にも減価償却できる資産はありますが、高額な資産であればすべて減価償却ができるわけではありません。時が経つにつれて価値が下がっていく資産に限られ、耐用年数は1年以上、かつ取得価格が10万円以上の資産が対象です。例えば建物、工場設備、エアコン、ソフトフェア、商標権などが該当します。使用可能期間が1年未満または10万円未満の資産は減価償却の対象にはならないため、その年の経費として扱いましょう。

減価償却について詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

ガソリン代を家事按分する方法

一般的にガソリン代は、「使った日数」または「走行距離」から按分します。毎月の車の使用状況にムラがある場合、1年間の使用量で考えてみましょう。それぞれの方法について解説します。

使用した日数から計算する

車を使った日数を基に算出する方法を紹介します。

【例1】
月のうち、仕事で車を使う日数が平均15日だとすると、計算式は「15日÷30日=0.5(50%)」で、按分率を求めることができます。つまり、この例では車を事業で使用する割合は50%ということです。ガソリン代/月が6,000円なら「6,000円×50%=3,000円」で、3,000円を経費に計上できます。
【例2】
月のうち、仕事で週2回車を使用する場合、「2日(仕事で車を使った日数)÷7日(1週間の日数)=0.28…(約28%)」で求められます。ガソリン代/月が8,000円の場合、「8,000円×28%=2,240円」となり、経費にできるガソリン代は2,240円です。

走行距離から計算する

車の走行距離からガソリン代を計算する場合の例は以下です。

【例1】
月の走行距離が300km、このうち事業で走行した分が120kmだったとすると、「120km÷300km=0.4(40%)」で按分率が求められます。ガソリン代/月が4,000円の場合、「4,000円×40%=1,600円」なので、1,600円を経費にできます。
【例2】
1年間の走行距離が1万kmで、このうち仕事で走行した分が1,200kmだったとすると、「1,200km÷1万km=0.12(12%)」で按分率が求められます。ガソリン代/月が1万円の場合、「1万円×12%=1,200円」となり、1,200円を経費にできます。

家事按分する際は、按分の根拠の正当性を提示できるよう、記録を残しておくことが大切です。車をいつ使ったのか、どこからどこまで使ったのかなど、事業で使用した分を忘れてしまわないよう補足情報も記録しておくことが、経費計上に大事なポイントです。

個人事業主がガソリン代を計上するときに使用する勘定科目

経費としてガソリン代を計上する際、さまざまな勘定科目が使えます。どれを選んだとしても税金が変わることはありません。実態に即し、なおかつ内訳を把握しやすい科目を選びましょう。

一般的に使われるガソリン代の勘定科目は以下の4つです。

  • 車両費
  • 旅費交通費
  • 燃料費
  • 消耗品費

それぞれどのようなときに使うのが適しているのかを解説します。

車両費

ガソリン代は「車両費」の勘定科目を使えます。車両費は車に関わる費用全般に使えます。この他にも、車両費は高速道路料金や自動車税などの税金、車検時の修繕費や点検費、タイヤやエンジンオイルの交換費用、自賠責保険料など、さまざまな費用が含まれます。

車両費の勘定科目を使うことで、車に関わる費用をまとめて経費計上でき、車の所有や維持に全体でどれくらいの費用がかかっているのかがわかりやすくなります。ただし、修繕費や保険料などを別々に管理したい場合には不向きなので注意しましょう。

旅費交通費

「旅費交通費」をガソリン代の勘定科目に使う方法もあります。「旅費交通費=業務に必要な移動や宿泊にかかる費用」なので、ガソリン代以外にもETC料金や洗車代、タクシー代、新幹線などを含む電車代、バス代、飛行機代、ホテルの宿泊費、出張手当などにも使えます。

旅費交通費は一般的に、研修や出張など通勤以外の移動に伴う経費を分類するときに使われます。出張が多い方、移動にかかる経費をまとめて管理したい方は、旅費交通費で仕訳するのが適しています。

燃料費

「燃料費」は、燃料全般に使える勘定科目です。ガソリンの他に、灯油、重油、軽油、オイルなど、あらゆる燃料が対象です。

事業経費の中でガソリン代の比率が高いときや、他の科目と分類して管理したい場合に使用すると効果的です。例えば、事業用の車を複数保有していて車両費とガソリン代を分けたい場合、出張に伴う飛行機代や宿泊費などの旅費交通費とガソリン代を分けたい場合などに適しています。

ただし、軽油代を燃料費として計上する場合、消費税の不課税科目である軽油引取税を分けて計上する必要があるので注意しましょう。軽油引取税については後述します。

消耗品費

ガソリン代は、「消耗品費」で計上する方法もあります。消耗品とは、使用することで価値が減っていく資産のうち、使用可能期間が1年未満のものや10万円未満のものを指します。そのため、コピー用紙や文房具といった事務用品、ドライバーやペンチといった工具など、消耗性のある備品類を購入した際に、消耗品費の勘定科目が使用されるのが一般的です。

ガソリンは消耗品というよりは、車の使用や維持管理のために不可欠なものであるため、ガソリン代に消耗品費を積極的に使用するのはおすすめできません。しかし、車を年に数回しか使用しない場合など事業全体においてガソリン代の割合が少額であるときは、消耗品費に分類しても問題ありません。

個人事業主がガソリン代を経費にする際の注意点

ガソリン代を経費として計上する際は、次の三点に気を付けましょう。

  • 軽油引取税に注意すること(ディーゼル車の場合)
  • レシートや領収書は保管しておくこと
  • 一度決めた勘定科目は変えないこと

これらを把握せずに経費計上してしまうと、トラブルにつながる恐れもあります。3つの注意点について詳しく解説します。

軽油引取税に注意する

ガソリン車ではなくディーゼル車を事業に使用している場合は、軽油引取税に注意が必要です。ガソリン代と軽油代では費用の内訳が異なるため、経費計上の際にはガソリン代と軽油代は別々に処理する必要があります。

ガソリン代には、ガソリン税や石油税などが含まれており、関連するすべての税金に消費税がかかります。一方、軽油代には軽油引取税が含まれており、軽油引取税に消費税はかかりません。

軽油引取税は不課税の対象であるため、ガソリン代と同じように消費税を計上してしまうと、「仮払消費税」の過剰計上となってしまいます。消費税の計算では、「仮受消費税」から「仮払消費税」が控除されるため、消費税の過少申告になってしまう恐れがあります。

レシートや領収書を保管する

ガソリン代を経費として計上する場合、給油後に発行されるレシートや領収書、クレジットカードの明細書などは必ず保管しておきましょう。なぜなら、レシートや領収書は、支払いをした事実や利用日時を証明する根拠になるからです。保管しておくことで、経費計上をスムーズかつ正確に行えるようになります。

しかし、万が一レシートや領収書をもらえなかった場合、あるいは紛失してしまった場合でも経費計上することは可能です。支払った事実があれば、仕訳として帳簿に記入したり、金額・利用年月日・利用場所を別途記録しておいたりすることで対処できます。

クレジットカードで支払った場合は、クレジット会社から届いた請求明細を保存しておくことも大切です。税務調査があった場合、経費処理できるかどうかの判断は税務署に委ねられますが、記録があることで信ぴょう性は高まります。

一度決めた勘定科目は変えない

ガソリン代に限ったことではないですが、勘定科目は一度決めたらそのまま使うのが原則です。例えば、ガソリン代の勘定科目を「燃料費」と決めたなら、少なくとも会計年度中の一年間は変更せず、燃料費として処理し続けましょう。

途中で勘定科目を変更してしまうと、一貫性がなくなり、会計処理の信頼性に影響する恐れがあります。また、後から見直したときお金の流れが掴みにくくなるのもマイナスです。何らかの事情で変更したい場合は、会計年度中はそのまま使用して、次の会計期間の最初から変更するようにしましょう。

ガソリン代以外に経費に計上できる車関連の費用

ガソリン代以外に車両本体の取得費用も経費にできると前述しましたが、経費にできるものは他にもあります。経費計上が可能な車関連の費用を紹介します。

リース代

車のリース代は全額経費に計上できます。車は購入するのではなくカーリースを活用する方法もあります。カーリースは、毎月定額のリース代を支払い、車を長期間借りるサービスです。カーリースは購入する場合とは異なり、所有権がリース会社にあるため、減価償却の必要がありません。

リース代の中には車両本体の代金をはじめ、車検費用、自賠責保険料、自動車税などが含まれているため、科目別に分けて経費計上する必要もありません。「リース料」として全額を経費計上するだけでよいので、経理処理の手間も省けます。

保険料

自賠責保険料や任意保険料も事業で使用する割合に応じて経費に計上できます。自賠責保険は加入が義務付けられている強制保険です。「車両費」または「損害保険料」の勘定科目で仕訳しましょう。任意保険料も経費に計上できますが、契約期間が1年なのか、2年以上なのかによって仕訳方法が異なります。

契約期間が1年の場合は、自賠責保険と同様の仕訳で問題ありませんが、契約期間が2年以上の場合、費用を期間に応じて配分する「期間按分」を行う必要があります。例えば、3年契約で9万円の任意保険に加入している場合、1年目は「9万円÷3年=3万円」を車両費または損害保険料で計上し、残りの6万円は長期前払費用で計上し、翌年以降に繰越し、2年目以降も同様に計算して計上してください。

駐車場代

業務で使用した駐車場代は経費として計上できます。勘定科目は駐車場代が発生した場面に応じて異なり、コインパーキングの場合は「旅費交通費」、月極駐車場の場合は「地代家賃」を使用します。車両関連の経費として管理したい場合は「車両費」、接待で駐車場が必要になった場合は「交際費」にするなど、使える勘定科目はさまざまです。

プライベートで使用した駐車場代は経費にできないため、事業で使用した駐車場代と混在する場合は、駐車場を使用した日数や時間に応じて家事按分する必要があります。事業で使用したことを証明できるよう、駐車場を使用した目的や行き先なども記録しておきましょう。

税金

個人の税金は原則として経費にできませんが、車の税金に関しては事業で使用する割合に応じて経費計上が可能です。ただし、延滞税などは対象外なので、期限内に納めることが大切です。

経費に計上できる車の税金は、次の3つです。

  • 自動車税(軽自動車税)種別割:所有者に課される地方税
  • 自動車税環境性能割:車の取得時に課される地方税
  • 自動車重量税:車の重量や経過年数に応じて課される国税

税金の勘定科目には「租税公課(そぜいこうか)」を使用するのが一般的ですが、車の税金であるため、「車両費」を使用しても問題ありません。

車検代

車検代も経費に計上できます。プライベートでの使用も兼ねている場合は、家事按分を行いましょう。

車検代を経費計上する場合、勘定科目は以下のように分かれます。

  • 車検基本料や部品交換費用:「車両費」「修繕費」
  • 車検代行手数料:「支払手数料」
  • 自賠責保険料:「保険料」
  • 自動車重量税や印紙代:「租税公課」

車検代には用途や性質の異なるさまざまな費用が含まれているため、車検代としてまとめて経費計上はできません。明細を確認しながら、適切な勘定科目を選択する必要があります。勘定科目ごとに消費税の区分も変わるので注意しましょう。車検基本料、部品交換費用、車検代行手数料などは課税の対象ですが、自賠責保険料は非課税、自動車重量税や印紙代は不課税です。

個人事業主のガソリン代は経費として計上できる

事業で使用する車のガソリン代は経費として計上が可能です。車をプライベートと兼用で使用している場合でも、家事按分することで経費にできます。家事按分には明確なルールがないため、車を使用した日数や走行距離などを根拠に、事業で使用した分のガソリン代を算出しましょう。

ガソリン代の勘定科目には、車両費、旅費交通費、燃料費などが使えます。経費計上にあたってはレシートや領収書を保管し、一度決めた勘定科目は変更しないことが重要です。ガソリン代の他にも経費にできる車関連の費用は多くあります。確定申告をスムーズに進めるために、ぜひ確定申告ソフトの利用を検討してみましょう。

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この記事の監修者奥 典久(奥典久税理士事務所)

奥典久税理士事務所 代表

簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥典久税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事。

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