法人税とは?税率や課税対象、所得税との違いなどをわかりやすく解説

2024/01/19更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

個人事業主の所得に所得税がかかるように、法人の所得には法人税がかかります。法人化したら、法人税を税務署に申告し、納付しなければなりません。個人事業主と法人とでは税金の仕組みが異なるため、法人を設立したら、法人税についてきちんと理解しておくことが大切です。

ここでは、法人税の税率や課税対象、申告方法、所得税との違いなど、法人税の基礎知識をわかりやすく解説します。

法人税とは法人の所得にかかる税金のこと

法人税とは、法人の事業活動で得た所得にかかる税金のことです。税金は、国に納める国税と、都道府県や市町村に納める地方税に分類されますが、法人税は国税にあたります。法人に課せられる税金には、国税である法人税の他に、地方税である法人住民税と法人事業税もあり、これら3つをまとめて「法人税等」と呼ぶことが一般的です。

国税 ・法人税 地方税 ・法人住民税 ・法人事業税 → これら3つをまとめて法人税等と呼ぶ

法人税が課せられる法人の形態

法人とは、法人設立手続きを行い、法律によって権利や義務の主体になることを認められた組織のことです。法人には、株式会社をはじめとするさまざまな形態がありますが、税法上、法人税を課される法人は、株式会社や合同会社などの普通法人の他、協同組合、一般社団法人、NPO法人などが挙げられます。なお、日本政策金融公庫などの公共法人には法人税がかかりません。
法人税が課せられる主な法人は下記のとおりです。

法人税が課せられる主な法人 普通法人 ・株式会社 ・合同会社 ・合名会社 ・合資会社 ・有限会社 ・医療法人 ・相互会社 ・協業組合 など その他 ・協同組合 ・一般社団法人 ・NPO法人 ・学校法人 など

この記事では、普通法人にかかる法人税について解説していきます。

法人税が課せられる所得

法人税が課せられる所得とは、益金から損金を引いた金額のことを指します。益金とは、商品・製品などの販売による売上収入や土地・建物の売却収入などです。損金は、売上原価や販売費、災害などによる損失など費用や損失にあたるものです。法人税が課せられる所得は、計算式にすると下記のようになります。

所得=益金(売上収入や売却収入)-損金(売上原価や販売費、損失費用)

なお、益金と損金は法人税法上の考え方であり、企業会計上の収益や費用(経費)とは必ずしも金額が一致しません。実際には、収益から費用を引いた利益に、法人税法の規定に基づく税務調整を行ったものが、課税される所得となります。

企業会計における当期利益の計算 収益 費用 ・原材料費 ・人件費 ・減価償却費 ・支払利息 ・法人事業税 等 利益 → 税引前当期利益 -減算 企業会計上は費用とならないが、税務上は損金とするもの等 ・欠損金の繰越控除 ・租税特別措置による所得控除 ・受取配当等の額 等 課税所得と法人税額の計算 課税所得 +加算 企業会計上は費用となるが、税務上は損金とはしないもの等 ・一部の引当金への繰入額 ・一定額を超える交際費 ・寄付金の支出額 等 ×税率 算出税額 → ・所得税額控除 ・外国税額控除 ・租税特別措置による税額控除 等 税額控除 法人税額

税務調整とは

税務調整とは、法人の利益と課税所得を調整することです。企業会計と税法の計算方法が異なるため、法人税等を正確に計算するためには、税務調整が必要になります。

企業会計の目的は、適正な損益計算を行い、企業の利益を正しく把握すること。税法の目的は、公平に課税を行えるよう、課税所得を把握することです。このような目的の違いから、企業会計上は費用に含まれても、公平な課税を行うためには損金に計上できないものが出てきます。そこで生じるズレを調整するのが、税務調整です。

税務調整が行われるケースには、次のような例があります。

交際費

法人の交際費は、企業会計上で上限金額はありませんが、法人税法上、中小企業については年間800万円を超える部分は、費用とみなさず損金不算入となっています。例えば、年間で交際費を1,000万円使用した場合、決算書では交際費1,000万円の費用です。ただし、税法上の交際費の損金上限額は800万円までなので、超過した200万円は税務調整の対象となり、課税所得に加算されます。

寄附金

法人の寄附金については、寄附の内容によって法人税法上の損金上限額が変動します。損金上限額を超過した分は税務調整の対象となり、課税所得に加算されます。

減価償却費

法人の減価償却費については、法人税法上の耐用年数と償却方法などが決まっています。会社が減価償却費として費用計上した金額のうち、損金として認められるのは、法人税法上の償却限度額までです。償却限度額を超過した分は税務調整の対象となり、課税所得に加算されます。

上記のように、企業会計と法人税法の違いなどは、会計や税務の知識がないと、判断が難しいものです。
課税所得は節税にもつながる大切なものですので、会計や税務については税理士に相談するといいでしょう。

法人税を納付しないとどうなる?

法人税は、納税者自身が納めるべき税金を計算して、税務署に申告・納付する申告納税方式の税金です。法人税の申告・納付は、定款で定めた事業年度ごとに計算し、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行わなければなりません。
期限までに法人税を申告・納付しなかった場合、下記のようなデメリットがあります。

延滞税がかかる

期限内に法人税を納めなかった場合、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。延滞税の金額は、法定納期限の翌日から実際の納付完了日までの日数に応じて計算されます。
延滞税の割合は、年によって変動しますが、2022年3月1日現在では下記のとおりです。

納期限の翌日から2か月を経過する日まで

原則として年7.3%、あるいは延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方

納期限の翌日から2か月を経過した日以後

原則として年14.6%、あるいは延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方

最新の延滞税の税率や延滞税特例基準割合については国税庁の「No.9205 延滞税について 新規タブで開く」をご確認ください。

なお、納期限を過ぎてから納付するときは、現金に納付書を添え、金融機関または所轄の税務署の窓口で、延滞税を納めます。

無申告加算税が追徴課税される

法人税の申告を期限内に行わないと無申告となり、本来の納付額に15%~20%の無申告加算税が課せられます。なお、法人税を納付していても、税務調査によって隠蔽や書類の改ざんなど不正事実が発覚した場合には、納付額に対して、35%~40%の重加算税が追加される場合もあります。

2期連続で申告期限を過ぎると青色申告が取り消される

確定申告を期限内に2期連続行わなければ、青色申告は取り消されます。青色申告が取り消されると、赤字の繰り越しの他、さまざまな節税メリットが受けられなくなるため注意しましょう。
赤字決算の場合は利益がないため、法人税はかかりませんが、確定申告は必要です。また、赤字でも法人住民税の均等割分は課税されます。

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法人税と所得税の違い

法人税と所得税では、課税方法や税率、税額計算の対象期間、申告期間が異なります。法人税と所得税の主な違いは下記のとおりです。

法人税と所得税の主な違い
法人税 所得税
課税対象 法人の所得
(法人の利益から税務調整した金額)
個人の所得
課税方法 すべての所得に課税される 所得が10種類に分類され、種類ごとに計算方法が異なる
※医療費など所得控除が設けられている
税率 資本金1億円以下の中小法人 年間所得800万円以下の部分:15% 超過累進税率(事業所得)
  • 分離課税で税率が固定されているものも一部存在
年間所得800万円超の部分:23.2%
中小法人以外の法人 23.2%
税額計算の対象期間 定款に定めた1年以下の期間、事業年度 1月1日~12月31日
申告期間 事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出 翌年2月16日~3月15日の確定申告

※法人税は普通法人の前提です。

課税方法

所得税は、事業所得や給与所得、不動産所得など10種類の所得の分類があり、それぞれ計算方法が異なります。一方、法人税は所得区分がなく、法人が得た所得に対して、すべて同じ方法で法人税が計算されます。

税率

所得税は累進課税となるため、所得が増えれば税率が段階的に上がり、最大の税率は45%になります。対して、法人税の税率は一定ですが、会社の規模や法人の種類によって異なります。また、法人税等(法人税・法人住民税・法人事業税)の額は、法人税の税率プラス10%程度が目安です。

なお、法人税等のうち法人事業税は、損金への算入が可能です。法人事業税を損金算入すると、法人税の対象となる課税所得は減るため、実際の税率は上記の表とは若干の差が生じます。このように、法律で定められた税率を「表面税率」(上記表の税率)といい、事業税を損金算入したうえで法人税を計算した税率を「実効税率」といいます。実効税率は、表面税率よりも下回り、実際の納付額に近いものです。

対象期間と申告期間

所得税の対象期間は、毎年1月1日~12月31日までで、翌年の2月16日~3月15日に確定申告を行います。一方、法人税の対象期間は、定款によって定められた1年以下の期間である事業年度で計算し、事業年度終了日の翌日から2か月以内に確定申告を行います。

なお、法人税の申告期限については、納税地を所轄する税務署長に「申告期限の延長の特例の申請書 新規タブで開く」を提出することで、申告期限を1か月間伸ばすことが可能です。

また、令和2年度税制改正により、法人税の延長をしている企業に限り、消費税の申告も1か月延長できる特例が追加されました。消費税の申告期限を延長する場合は、納税地を所轄する税務署長に「消費税申告期限延長届出書 新規タブで開く」を提出することが必要です。延長申請を行っておけば無申告加算税を回避することができるので安心でしょう。延長申請を行う場合は、各書類の提出期限を国税庁のWebサイトであらかじめご確認ください。

法人税について相談できる税理士を探す方法

法人税の計算や申告はとても複雑なため、税務や会計の専門知識がなければ正しく行うことは困難でしょう。申告時の誤りを防ぐためにも、税務の専門家である税理士に相談するのが安心です。しかし、自力で税理士を探そうとすると手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

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この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
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