給与計算は税理士に依頼する?社労士との違いと選び方を解説

2022/04/28更新

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

従業員を雇っていれば、毎月給与の支払いが発生し、給与計算が必要になります。その給与計算を専門家に依頼する場合、選択肢として考えられるのが税理士と社労士(社会保険労務士)ですが、税理士と社労士にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、税理士と社労士の違いの他、給与計算の代行を税理士と社労士のどちらに依頼するかを決めるポイントなどについて解説します。

給与計算とは?

給与計算とは、従業員の給与を計算する業務で、一般的には経理担当者が行うものです。企業(経営側)はもちろん、従業員にとって非常に大切なものですから、ミスがあってはいけない業務の1つといえます。

給与計算は、勤怠データなどから各従業員の総支給額を算出することから始まります。次に、税金や社会保険料などを差し引いた手取額を確定。続いて賃金台帳や給与明細を作成し、給料日に従業員へ給与を支給します。また、天引きした税金や社会保険料などを、定められた期日までに税務署や担当役所に納めることも必要です。
給与計算をすることによって、従業員の給与や税金、社会保険料の金額を把握できると同時に、雇用主として「賃金が適切か」「労働時間が長すぎないか」といったことを確認できます。

給与計算はアウトソーシングできる

給与計算は自社で行う他、アウトソーシングすることもできます。給与計算は特定の資格がなくても行える業務ですから、代行業者にアウトソーシングしても問題はありません。しかし、給与計算には税金や社会保険料などが関係するだけでなく、さらに正確性が求められるため、一般的には税理士か社労士に依頼するケースが大半です。

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税理士と社労士の違いは?

給与計算は、特定の資格を持つ方以外が行うことを法律で禁じられている独占業務ではないので、税理士と社労士のどちらにも代行を依頼することができます。どちらに依頼すれば良いかを考える前に、税理士と社労士の業務の違いを確認しておきましょう。

税理士だけができること

税理士は、その名のとおり税務の専門家です。税理士の独占業務には、納税者に代わって税務申告をする「税務代理」、納税者に代わって税務書類を作成・提出する「税務書類の作成」、税に関する相談を受ける「税務相談」の3つがあります。特に、決算申告業務や年末調整業務については、税理士以外は代行できません。

社労士だけができること

社労士は労務や社会保険関連の専門家です。社会保険や労働保険に関する書類の作成や手続きの代行、行政機関などの調査や処分に対して、依頼者の代わりに主張や陳述を行うことは、社労士にしかできない独占業務です(1号業務)。また、労働保険に関連する帳簿書類(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿など)の作成代行も、社労士にしかできません(2号業務)。

給与計算の代行を依頼すべきは税理士?社労士?

では、実際に給与計算を依頼する際には、税理士と社労士のどちらを選べば良いのでしょうか。迷ったときに注目すべきは次の4点です。

年末調整の代行は税理士の独占業務

給与計算だけでなく、年末調整の手続きも依頼しようと考えている場合は税理士に依頼しましょう。
年末調整とは、会社が年末に必ず行う、従業員の所得税の過不足を調整する手続きのことです。会社は、従業員に給与を支払う際に所得税を源泉徴収しています。この源泉徴収した所得税の合計額は、必ずしも1年間に納めるべき税額と一致しません。そのため、源泉徴収した所得税の合計額と納めるべき所得税を正しく算出し、差額を調整する手続きを行う必要があります。
この年末調整の代行は税理士の独占業務であり、年末調整に伴う各種法定調書の作成・提出を代行できるのは税理士だけです。そのため、年末調整の手続きも併せて代行してもらいたい場合は、毎月の給与計算を行っている税理士に依頼するといいでしょう。

役員報酬を決めるときに税の知識も必要

役員報酬を決める際には、税理士に相談することをおすすめします。
役員報酬は役員の給与のようなものですが、従業員の給与と役員報酬では税法上の扱いが異なります。例えば、役員報酬の金額は、起業1年目の場合、毎月決まった金額を支給することを会社設立日から3か月以内に決めなければ税法上の損金に計上できなくなります。また、役員報酬は事業年度ごとに改定することが一般的です。ただし、事業年度開始(期首)から3か月以内に変更し、一度決めた役員報酬の金額を1年間(少なくとも期末まで)固定で支給しなければ、全額を損金に計上することができません。
なお、役員報酬の金額は、会社の法人税にも影響します。役員報酬の決め方がきちんと税法に則っているかどうかを確認するためにも、まず税理士に相談してください。

設立したばかりの会社や中小企業はまず税理士に依頼

設立間もない会社や中小企業のように従業員数が少ない会社であれば、税理士に依頼するといいでしょう。
給与計算は、ただ数字の計算をすればいいというわけではありません。前提となる税務上のルールを踏まえて給与計算する必要があります。特に給与や賞与、役員報酬の取り扱いは、税務と切っても切り離せません。
また、年末調整の他にも、例えば法人税の決算申告は個人の確定申告に比べて複雑なため、税理士の力を借りずに申告書を作成するのはなかなか難しいものです。会社のスムースな事業運営のためにも、顧問契約も視野に入れて税理士への依頼を検討することをおすすめします。

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従業員数が増えてきたら社労士への依頼を検討する

従業員数が増えて数十人規模になってきたら、雇用関係について社労士に相談するタイミングといえます。従業員の数が増えると入退社も頻繁になりがちで、社会保険などの手続きが多くなります。そのため、場合によっては、給与計算代行を税理士から社労士に移行させても良いでしょう。また、雇用形態や勤務時間に関係なく常時10人以上の従業員を雇う場合は、労働基準法によって就業規則の作成・届出義務が生じます。ミスや漏れを防ぐためだけでなく、法令を遵守する意味においても、会社がある程度大きくなったら社労士に相談することがおすすめです。

なお、税理士の仕事と社労士の仕事はとても密接に関わっているため、個人間あるいは事務所同士が提携しているケースが多くあります。社労士に依頼したい場合は、まず税理士に相談して紹介してもらう方が資料のやりとりなどがスムースに進みますし、信頼できる税理士からの紹介であれば安心です。

初めて給与計算の代行を依頼する際には、まず税理士に依頼し、会社の規模が大きくなってきたら社労士に依頼する、という流れを基本として考えると良いでしょう。

給与計算を依頼する税理士を探す方法は?

給与計算について税理士に相談したいと思っても、自力で税理士を探そうとすると手間や時間がかかります。そのような場合は、弥生株式会社の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」がおすすめです。

「税理士紹介ナビ」は、起業全般や税、経理業務などに関する困りごとをお持ちの方に、弥生が厳選した経験豊富で実績のある専門家をご紹介するサービスです。業界最大規模の全国12,331のパートナー会計事務所から、ぴったりの税理士や会計事務所を最短で翌日にご案内が可能。完全無料で、会社所在地や業種に合わせた最適な税理士をご紹介します(2023年5月現在)。

「税理士紹介ナビ」はこんな方におすすめ

「税理士紹介ナビ」は、特に次のような方におすすめです。

初めて会社を設立する方

会社を設立する際には、必要な手続きや資金調達など多くの不安や疑問が生じることがあります。「税理士紹介ナビ」なら、これから事業を始める方の悩みや困りごとに合わせて、最適な税理士探しをサポートします。個人事業主から法人成りを予定している方にもぴったりです。

起業後の会計処理や決算が不安な方

会社を運営するうえでは、法人税や地方税、消費税など、さまざまな税や固定資産の知識が必要になります。そのような場合も、会計処理や決算に関することをまとめてプロに相談できます。

できるだけ節税したい方

「節税したいが方法がわからない」という方にも「税理士紹介ナビ」はおすすめです。税理士からのアドバイスで節税方法を理解できれば、戦略的な経営にも役立つでしょう。

記帳業務を丸ごとプロに任せたい方

日々の取引を記帳するには手間や労力がかかります。売上が増えるとともに経理作業量も増え、負担が大きくなってしまうでしょう。記帳業務を税理士に丸投げできれば、その分しっかり本業に集中できるようになります。

給与計算の依頼先は会社の規模や従業員数に合わせて選ぼう

給与計算をアウトソーシングする場合は、税理士か社労士のいずれかに依頼するのが一般的です。税理士と社労士はどちらも給与計算の代行が可能ですが、独占業務と呼ばれる専門領域にそれぞれ違いがあります。
税務の専門家である税理士は、給与計算の他に年末調整や決算申告も代行することができますが、社会保険の手続きはできません。一方、社労士は、社会保険や労働保険の手続きを行うことができますが、税に関する業務には携われません。それぞれの領域を把握し、会社規模が小さいうちは税理士、従業員数が増えて社会保険の手続きが多くなったら社労士と、状況に合わせて給与計算の依頼先を選びましょう。
「どうやって税理士を探したら良いかわからない」という場合は、ぜひ弥生の「税理士紹介ナビ 新規タブで開く」をご活用ください。

この記事の監修森 健太郎(もり けんたろう)

ベンチャーサポート税理士法人 代表税理士。
毎年1,000件超、累計23,000社超の会社設立をサポートする、日本最大級の起業家支援士業グループ「ベンチャーサポートグループ」に所属。
起業相談から会社設立、許認可、融資、助成金、会計、労務まであらゆる起業の相談にワンストップで対応します。
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