副業で20万以上は確定申告が必要?無申告のリスクも解説

2024/03/06更新

この記事の監修齋藤一生(税理士)

副業の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。判断基準は、副業の所得20万円以上ではなく、20万円超(20万1円以上)ですので注意しましょう。副業の所得が20万円を超えているにもかかわらず確定申告をしないと、いったいどうなるのでしょうか。

本記事では、副業の所得が20万円を超えた場合に確定申告をしないリスクについて紹介します。会社員でも確定申告が必要なケースについて、わかりやすくまとめました。

副業の所得が20万円を超えたら確定申告が必要

本業以外で、副業の所得が20万円を1円でも超える場合、所得税の確定申告が必要となります。ここでいう所得とは、すべての収入から経費を差し引いた残りの金額を指します。

国税庁のWebページにもあるように、会社員であっても「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」は確定申告が必要です。

一方で、本業以外の所得の総額が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則的にしなくても良いといえます。つまり、本業以外の所得の総額が20万円以上の場合で、ぴったり20万円(200,000円)であれば、所得税の確定申告は原則的に不要です。

しかし、副業の年間所得が20万円以下でも、居住している市区町村に対して住民税の申告は必要です。

なお、副業の所得が20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要なので、その申告により自動的に自治体に通知されて住民税にも反映されます。そのため、住民税の申告は不要となります。

また、年末調整後に扶養家族が増えたなどの変更や忘れていた保険料控除などがあったり、医療費控除や住宅ローン控除など年末調整の対象とならない控除を受けたい場合は、確定申告を行います。確定申告では、すべての所得を申告する必要があるので、副業の所得が20万円以下であっても所得を正確に申告することが必要です。そのため、副業の所得が20万円以下であっても、それらの控除を確定申告で申告したい場合は、「副業の申告は不要」とはならないことは理解しておきましょう。加えて副業の報酬から源泉徴収されている人は、所得税を納税しすぎていることがあるので、所得が20万円以下であっても、確定申告をすれば還付される可能性があります。

副業で得た所得は何に分類される?

副業で得た所得は、基本的に業務による雑所得として確定申告を行うケースが大半です。一方で、所得が継続的である、または安定して一定の利益を得ているといったケースでは、帳簿をつけて保存していれば、事業所得になることもあります。

なお、副業のパート・アルバイトで得た収入などは、給与所得に該当します。

ここでは、副業を行ううえで特に区別がつきにくい雑所得と事業所得の違いや、事業所得に該当しそうに見えても雑所得となる例外的なケースを見ていきましょう。

雑所得と事業所得の違い

所得区分には給与所得、事業所得、配当所得、利子所得、不動産所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類があります。このうち雑所得は、他の9種類のいずれにも当てはまらない所得です。多くの場合、副業の所得は雑所得に分類されます。雑所得は、収入金額から必要経費を引いた金額です。

また、事業所得は農業や製造業、卸売業や小売業など、事業主自身が独立して営む事業で得た収入から必要経費を引いた金額です。

雑所得ではなく事業所得になるケースとしては、「相当程度の期間、継続して安定収入が得られること」や「相当な時間を割いて日々真剣に取り組んでいること」などが挙げられます。つまり、事業の継続性や費やす時間によって総合的に判断されるのです。

なお、副業が雑所得、事業所得、不動産所得に該当する場合は、必要経費が認められます。必要経費に算入できる金額は、一般的に下記のとおりです。

副業でも必要経費に算入できる金額

  • 収入を得るためにかかった費用の額
  • その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用の額

例えば、雑所得で経費計上できる費用には、具体的に下記のようなものが挙げられます。

雑所得で経費計上できる費用の例

  • 事業で使用するパソコンやスマートフォン、タブレットの購入費、通信費
  • 打ち合わせや取材の交通費・飲食費
  • コワーキングスペースの利用料
  • コピー用紙や文房具などの各種事務用品
  • 水道代や電気代、家賃などの一部(自宅を事務所や仕事場として利用している場合)

帳簿の保存がない場合は雑所得になる

副業による所得を雑所得ではなく事業所得とするためには、帳簿書類を作成して保存しておく必要があります。

つまり、本来は事業所得に該当するようなケースであっても、請求書や領収書などをまとめた帳簿の保存がない場合は雑所得と判断されるのです。後述しますが、事業所得は雑所得と違い、青色申告特別控除を使えるので節税効果が高いです。雑所得でも売上から経費などを差し引いて所得を計算するためには、帳簿をつけておくほうがはるかに簡単です。そのため、帳簿を作成して確実に保存することをおすすめします。

副業の所得が20万円を超えて確定申告しないとどうなる?

雑所得や事業所得の副業収入が20万円超であっても、経費を差し引いた残りの金額が20万円以下であれば、確定申告はしなくても良いことになります。一方で、収入から経費を差し引いた残りの金額である所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。

副業の所得が20万円を超えているにもかかわらず確定申告をしない場合、本来納めるべき所得税の納付に加えて、「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが科されるおそれがあるため注意してください。

無申告加算税に該当すると、税額が15~20%加算される

無申告加算税とは、原則として納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて科されるペナルティです。

なお、確定申告の期限(例年3月15日)を過ぎてしまった場合でも、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税の割合は5%に軽減されます。ただし、2017年以後に法定申告期限が到来するものについては、調査の事前通知の後に申告した場合、割合が増加するので注意してください。

また、申告期限から1か月以内に申告し、納付すべき税額の全額を法定納期限(税金を納めるべき期限)までに納付しているなどの条件を満たすと、無申告加算税は課されません。

法定納期限は下記、国税庁のWebページから確認できます。

延滞税に該当すると、日数に応じて税額が加算される

確定申告を行わずに税金が定められた期限内に納付されない場合、無申告加算税に加え、延滞税がかかる点も問題です。

延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じ、所定の割合で課されます。そのため、年数が経つほど、延滞税も高額となってしまうのです。

延滞税の割合は下記、国税庁のWebページから確認できます。

会社員で確定申告が必要なケース

これまで紹介してきたとおり、会社員であっても副業の雑所得や事業所得が20万円を超える場合は、確定申告を行う必要があります。他にも、会社員の確定申告が必要なケースは2つあります。それぞれどのようなケースなのか、具体的に見ていきましょう。

年収2,000万円を超えている

会社員としての年収が2,000万円を超える場合、会社に属していても年末調整を個人で行わなくてはなりません。会社では、年収2,000万円を超える人の年末調整ができないことが理由です。そのため、みずから確定申告を行うことが所得税法上で義務付けられています。

国税庁のWebページでも、確定申告が必要な会社員は「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」と挙げられています。

2か所以上から給与を得ており、20万円を超えている

2か所以上の勤務先から給与収入を得ていて、本業以外の給与収入が20万円を超える場合は、確定申告の対象となります。

例えば、本業とは別に、平日の夜や土日を使ってパートやアルバイトをしているケースなどが当てはまります。

副業の所得が20万円超なら青色申告すべき?

副業が「事業所得」「不動産所得」「山林所得」に該当すれば、青色申告による確定申告が可能です。一方で、雑所得は青色申告が認められておらず、白色申告となります。それでは、副業でも事業所得として青色申告を行うメリットは何でしょうか。

ここでは、副業の所得が20万円超の場合に青色申告を行うメリットと、青色申告を行う場合に必要な手続きについて見ていきましょう。

青色申告のメリット

青色申告とは、事業上の支出入をすべて正確に記帳(取引内容を帳簿に記載)して申告する方法です。帳簿の信頼性が高いため、日本政府もこの方式を推奨するべく、下記のような特典を設けています。

青色申告の主な特典

  • 青色申告特別控除を受けられる
  • 青色事業専従者給与を使える
  • 純損失の繰越控除や繰戻し還付を受けられる
  • 少額減価償却資産の特例を使用できる

青色申告を利用すると、最大65万円の控除を受けられるため、その分の節税効果が期待できます。

また、生計を共にする15歳以上の親族に支払う給与を、必要経費として算入できます。なお、給与が必要経費となるのは、1年のうち6か月を超える期間、青色申告者の営む事業に従事している場合です。

また、ある年の所得が赤字だった場合、そのマイナスを翌年以降の3年間にわたって黒字分から控除することも可能であり、こちらの節税効果は大きいと言えるでしょう。

一方の白色申告は、簡易的な帳簿に記載することで申告を行う方法です。申告のハードルは低いものの、前述のような青色申告のメリットを享受することはできません。

現在は、銀行やクレジットカード明細などと連携して自動的に帳簿を仕上げ、青色申告に必要な書類を作成してくれる会計ソフトが充実しています。どちらで申告すべきか迷っているのであれば、青色申告にした方が節税対策などの観点から有効といえるでしょう。

青色申告には青色申告承認申請書の提出が必要

事業開始時から青色申告を行いたい場合は、「開業届」と「青色申告承認申請書」の両方の提出が必要です。開業届とは、個人事業主として事業を始めたことを税務署に知らせる書類のことです。また、青色申告承認申請は「青色申告をしたい」と申し出るための書類で、その年の3月15日までに管轄の税務署に提出する必要があります。その年1月16日以後に開業した人に関しては、開業日から2か月以内に提出すれば良いことになっています。

なお、事業所得、不動産所得、山林所得に該当する業務を行う事業者は、2014年分以降から、白色申告であっても記帳や帳簿類の保存が義務付けられています。

そのため、事業所得に分類される業務を行う人は、白色申告であっても青色申告と帳簿作成の手間があまり変わらなくなっています。

なお、当社が運営する起業・開業ナビでは「弥生のかんたん開業届」というクラウドサービスを提供しております。

弥生のかんたん開業届」は画面に沿って操作するだけで開業届を含む必要書類を作成することができる無料のサービスです。開業届だけでなく所得税の青色申告承認申請書も同時に作成できるため、事業開始時から青色申告を行いたい人は弥生のかんたん開業届の利用を検討してみてください。

インボイス登録をしている場合、副業所得20万円以下でも消費税の確定申告が必要

インボイス制度の導入により、副業でも取引先が課税事業者の法人が多いなどで、インボイスの発行が求められるケースも出てくるでしょう。副業といえどもインボイス制度に対応するために適格請求書発行事業者として登録すると課税事業者になるので、消費税を納めることになります。消費税を納めるためには、所得税の確定申告に加え、消費税の確定申告も行う必要があるのです。

そのため、インボイス登録している場合は、副業の所得が20万円以下・20万円超にかかわらず、消費税の確定申告を行う必要があります。

副業の所得が20万円超の場合は確定申告をしよう

本業以外で、副業の所得が20万円を1円でも超える場合、所得税の確定申告を行う必要があります。

また、副業の所得金額が20万円以下であっても、住民税の申告は必要です。さらに、副業の所得が20万円以下であっても、確定申告が必要な場合や確定申告をしたほうがよいケースもあります。

なお、所得税や消費税の確定申告書の作成は一定の知識が必要です。はじめておこなう人や簿記の知識が乏しいと複雑な業務になるでしょう。少しでも手間を軽減するためにも、会計ソフトの導入・活用を検討してはいかがでしょうか。

バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化

事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう

会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。

事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。

副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。

なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。

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クラウド請求書作成ソフトを使うことで、毎月発生する請求業務をラクにできます。今すぐに始められて、初心者でも簡単に使えるクラウド見積・納品・請求書サービス「Misoca」の主な機能をご紹介します。

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この記事の監修者齋藤一生(税理士)

東京税理士会渋谷支部所属。1981年、神奈川県厚木市生まれ。明治大学商学部卒。

決算書作成、確定申告から、起業(独立開業・会社設立)、創業融資(制度融資など)、税務調査までサポート。特に副業関連の税務相談を得意としており、副業の確定申告、税金について解説した「副業起業塾 新規タブで開く」も運営しています。

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