副業所得20万以下なら確定申告と住民税の申告は不要?20万円ルールを解説
監修者:齋藤一生(税理士)
2024/08/01更新
本業以外の所得の合計が年間20万円以下であれば確定申告が不要となる、いわゆる20万円ルールを耳にしたことのある人もいるでしょう。ただ、「本当に確定申告が不要なのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
本記事では、副業をするうえで知っておきたい所得の種類や20万円以下でも確定申告をした方が良いケース、確定申告をしなければいけないケースなどを紹介。副業所得20万円以下なら確定申告は本当に必要ないのか、疑問を解消していきます。
副業をするなら押さえておきたい3つの所得
まず、所得区分は10種類あります。事業所得、不動産所得に加え、給与所得、配当所得、利子所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類です。
副業をするなら、「事業所得」「不動産所得」「雑所得」の3つの所得について押さえておくことが重要です。
なお所得とは、収入から仕入や必要経費を差し引いた金額です。それぞれどのような所得なのか、詳しく説明していきます。
事業所得
事業所得とは、農業、製造業、卸売業、小売業など、事業主自身がリスクを負いながら、独立して営む事業で得た収入から必要経費を引いた金額です。
不動産所得
不動産所得とは、主に不動産の貸し付けで得た所得です。アパートやマンションなどの賃料、土地・建物の賃料を得ている場合や、地上権など不動産の上に存する権利の設定と貸付けで得た所得などが該当します。
雑所得
雑所得とは、事業所得や不動産所得も含めた9種類の所得区分のいずれにも当てはまらない「その他の所得」です。副業などで得た収入は、基本的に雑所得に分類されるケースが多いといえます。
副業の所得計算で必要経費に計上できる費用
副業が事業所得、不動産所得、雑所得に該当する場合は、必要経費が認められます。すべての経費が認められるとは限りませんが、副業の所得計算で必要経費に算入できる金額は、下記のとおりです。
副業でも必要経費に算入できる金額
- 収入を得るためにかかった費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用の額
例えば、雑所得で経費計上できる費用には、具体的に下記のようなものが挙げられます。
雑所得で経費計上できる費用の例
- ビジネスで使用するパソコンやスマートフォン、タブレットの購入費や通信費
- 打ち合わせや取材の交通費、飲食費
- コワーキングスペースの利用料
- コピー用紙や文房具などの各種事務用品
- 水道代や電気代、家賃などの一部(自宅を事務所として利用している場合)
なお、雑所得にて確定申告を行う場合でも、添付書類が必要になったり、要件によっては請求書や領収書などの証憑書類の保存が必要になったりする点には注意が必要です。税制改正により、2022年分の申告からは雑所得が一定の条件を満たす場合、確定申告で収支内訳書の提出が必要であり、請求書や領収書などの証憑保存が義務付けられているためです。
具体的には、業務に係る前々年分の副業による雑所得の収入が300万円と1,000万円で線引きされています。この場合、注意したいのは、所得金額ではなく、収入金額である点です。
副業所得がいくら20万円以下であっても、請求書や領収書の管理は一切不要というわけではないため注意してください。
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副業の20万円ルールとは?
副業の20万円ルールとは、給料をもらっている本業以外の所得の総額が年間20万円以下であれば、確定申告が不要となるルールを指します。通常、所得よりも収入の方が金額は大きくなります。
なお、前提として副業の年間所得が20万円以下であれば、自身の住所地を管轄する税務署に所得税の確定申告は行わなくてかまいません。しかし、雑所得が20万円以下でも1円でも利益がある場合は市区町村に対して住民税の申告が必要です。
所得税と住民税は、いずれも個人の所得に対してかかる税金です。ただ、それぞれ課税を行っているところは異なり、所得税が「国の税金」であるのに対し、住民税は「都道府県または市町村の税金」となります。
このうち所得税に対しては、副業の所得が20万円を超えない限り確定申告の手続きは不要という特別措置が設けられているのです。住民税に関してはこのような措置はないので、所得税の確定申告をしないのであれば税務署から市区町村の役所が課税に必要な情報を得られなくなるため、住民税の申告が別途必要となります。
副業の所得が20万円以下でも確定申告をした方が良いケース
副業の所得が20万円以下であっても、確定申告をした方が良いこともあります。所得税を納付しすぎている場合などが該当します。他にも住宅ローン控除や医療費控除などを受けるために確定申告をする場合は、副業所得が20万円以下でも一緒に所得を申告しないといけません。
ここからは、確定申告をした方が良いケースなどを、3つご紹介します。
所得税を納めすぎているケース
副業の収入が源泉徴収の対象となっていて、あらかじめ報酬から源泉徴収額が差し引かれて、取引先から税務署へ支払われている場合は、所得税を納めすぎている可能性があります。そのため、確定申告を行うことで税金が還付されることが多いでしょう。源泉徴収税は所得が確定する前にすでに企業などが天引きで納めているため、確定申告によって正しい所得税を申告すれば、納めすぎた税金が還付されるためです。
住宅ローン控除や医療費控除などを受けたいケース
住宅ローン控除(1年目)や医療費控除など、年末調整の対象とならない控除を受けたい場合は、個人で確定申告を行います。すでに納めた所得税の還付を受けられる可能性があります。この場合、すべての所得を申告する必要があるので、副業所得が20万円以下でも所得として、申告を行う必要があります。
副業の不動産経営が赤字となっているケース
不動産経営などで赤字が発生している場合、本業の会社の給与所得から赤字分を差し引く「損益通算」をすることで、すでに年末調整で過不足を精算している所得税の還付を受けることができます。なお、雑所得の場合は、給与所得と損益通算はできませんのでご注意ください。
なお、事業所得の場合も赤字であれば損益通算は可能です。
損益通算についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
副業における雑所得と事業所得の注意点
雑所得と事業所得の線引きは、副業を行ううえで把握しておきたい注意点です。副業の所得が20万円を超えた場合、基本的に雑所得として確定申告を行います。一方で、取得が継続した期間や、安定した収入を得ているようなケースでは、事業所得になることもあります。
ここでは、副業をするうえで理解しておきたい注意点として、雑所得と事業所得の違いや、事業所得に該当しそうなケースでも雑所得となるケースについて見ていきましょう。
副業でも事業所得に該当する可能性はある
基本的には、事業の売上で生計を維持している場合は事業所得、副業なら雑所得に該当する場合が多いといえます。
事業所得か雑所得かどうかは、事業規模や費やされた時間、もしくは継続性の観点から総合的に判断されます。例えば、下記のような条件を満たす副業の場合は、確定申告が必要な事業所得に該当する可能性があります。
副業が事業所得に該当するケース
- 相当程度の期間、継続して安定収入を得ていること
- 相当な時間を割いて日々継続して取り組んでいること
- 安定収入が得られる可能性が高く、設備などを整えていること
- 記帳と帳簿保存を行っていること
帳簿の保存がない場合は雑所得になる可能性も
副業による所得を事業所得に分類するためには、帳簿書類を作成し、保存しておく必要があります。今まで副業の雑所得と事業所得に明確なルールはありませんでしたが、2022年に明確なルールが提示されました。つまり、副業の所得が20万円超あり、事業所得に該当するようなケースであっても、帳簿書類の保存がない場合は、雑所得に該当してしまいます。そうなると次項で紹介する「事業所得で利用できる控除」は使えません。
なお、以下のような場合は、事業所得として認められず、原則的に雑所得と判断されます。自分の所得が事業所得になるかどうかは、よく確認するようにしましょう。
雑所得と判断される可能性が高いケース
- 収入金額が僅少と認められる場合
例年(3年程度の期間)年収が300万円以下で、副業の収入が主たる収入の10%未満の場合 - 営利性が認められない場合
例年赤字が続いており、その状態を解消するための取り組みを実施してない
副業が事業所得なら青色申告ができる
副業が事業所得に該当すれば、青色申告による確定申告が可能です。一方で、雑所得は青色申告が認められていません。
ここでは、副業を事業所得として青色申告にするメリットや、事業所得の場合の青色申告と白色申告の違いを見ていきましょう。
青色申告のメリット
青色申告とは、確定申告における申告方法の1つであり、事業上の支出入のすべてを正確に記帳して申告する方法です。青色申告は帳簿の信頼性が高く、日本政府もこの方式を推奨するために、主に4つの特典を設けています。
青色申告の主なの特典
- 青色申告特別控除を受けられる
- 青色事業専従者給与を使える
- 純損失の繰越控除や繰戻し還付を受けられる
- 少額減価償却資産の特例を適用できる
青色申告を利用すると、青色申告特別控除として最大65万円の控除が受けられます。また、1年間のうち6か月を超える期間、事業に従事しているという前提で、配偶者など生計を共にする15歳以上の親族に支払う給与を、全額経費として算入できます。
他にも、ある年の所得が赤字だった場合、そのマイナス額を翌年以降の3年間にわたって黒字分から控除することや30万円未満の資産を一括経費にするなども可能です。
青色申告と白色申告の違い
白色申告とは、簡易的な帳簿に記載することで申告を行う方法です。白色申告は、申告のハードルが低いものの、前述した青色申告のメリットを享受することはできません。
さらに、事業所得に分類される業務を行う事業者は、2014年分以降から、白色申告であっても、記帳や帳簿類の保存が義務付けられました。
そのため、事業所得に分類される業務を行う場合は、いずれにせよ帳簿作成の対応が必要なため、白色申告を選ぶべき理由は薄いといえます。
なお、現在は銀行やクレジットカード明細などと連携して、自動的に帳簿を作成し、青色申告に必要な書類を簡単に揃えられる会計ソフトも充実しています。前述のメリットを享受できる青色申告を選ばない理由は、ますますなくなってきているのです。
インボイス制度で課税事業者になると、副業所得20万円以下でも消費税の確定申告が必要
インボイス制度の導入により、課税事業者になると、副業の雑所得でも消費税を納めることになります。消費税を納めるためには、所得税の確定申告とは別に、消費税の確定申告を行う必要があります。
そのため、インボイス制度に登録している場合は、副業の所得が20万円以下であっても、消費税の確定申告は行う必要があります。
副業所得が20万円以下でも、確定申告をすれば還付金を得られる可能性も
副業の20万円ルールとは、本業以外の所得の総額が年間20万円以下であれば、確定申告が不要となるルールです。ただ、不要なのは所得税の確定申告のみで、住民税については申告する必要があります。
また、副業の所得が20万円以下であっても、確定申告によって納めすぎた源泉徴収税の一部が還付される場合もあります。さらに、医療費控除や住宅ローン控除(1年目)など、年末調整の対象とならない控除を受けたい場合などで確定申告をする際は、副業の所得もあわせて確定申告をする必要があるのです。
たとえ副業の所得が20万円以下であっても、確定申告をした方が良いケース、確定申告する必要があるケースがあることは知識として押さえておきましょう。そして、副業の場合でも所得を計算するためには、売上と経費を計算する必要があります。事業所得にできる可能性もかんがみて帳簿はつけておくことをおすすめします。ほかにも取引があるなら請求書を発行することもあるでしょう。少しでも手間を軽減するために、帳簿や請求書発行ソフトの導入も検討してください。
バックオフィス業務は弥生のクラウドソフトで効率化
事業所得になる副業の確定申告は会計ソフトを使って楽に済ませよう
会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
事業所得になる副業は、帳簿付けが必要です。そんなときにおすすめなのが、弥生のクラウド確定申告ソフト『やよいの白色申告 オンライン』です。『やよいの白色申告 オンライン』はずっと無料で使えて、初心者や簿記知識がない方でも必要書類を効率良く作成することができます。e-Tax(電子申告)にも対応しているので、税務署に行かずに確定申告をスムースに行えます。
副業の所得区分を事業所得・雑所得どちらにするか迷っている場合、まずは帳簿付けをしておきましょう。事業所得で確定申告する場合は帳簿が必要です。雑所得の場合、帳簿付けの義務はありませんが、売上や仕入・経費などの集計に帳簿がある方が便利です。
なお、『やよいの白色申告 オンライン』では、雑所得の収支内訳書と所得税の確定申告書は作成できません。もし、『やよいの白色申告 オンライン』で作成した収支内訳書から確定申告書を作成すると自動で「事業所得」に集計されます。国税庁の確定申告コーナーで、自分で収支内訳書と確定申告書に転記して申告をしてください。
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