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配当金の勘定科目とは?法人・個人の仕訳方法をわかりやすく解説

配当金の勘定科目とは?法人・個人の仕訳方法をわかりやすく解説

配当金に関する会計処理は、受け取る側と支払う側、さらに法人と個人とで処理方法が異なります。勘定科目の選び方や税務上の取り扱いも間違えやすいため、正確に理解しておくことが大切です。

本記事では、配当金を受け取る場合・支払う場合に分けて、それぞれの会計処理や仕訳例をわかりやすく解説します。配当金の会計処理でよくあるミスについてもまとめて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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配当金とは?

配当金とは、企業が得た利益の一部を株主に分配するお金のことです。株主は、持ち株数(出資比率)に応じて、利益の還元を受ける権利があります。企業は、利益が出た際に配当金をどのように還元するかを決定します。

配当金の支払いは、会社の業績や方針によって異なります。一般的には決算時に期末配当金として支払われますが、中間決算時に中間配当金として支払うケースや特別配当金として臨時に支払うケースなど、企業によってもさまざまです。支払頻度は年1~2回程度が多いですが、配当は任意であり、支払われない場合も少なくありません。

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法人が配当金を受け取る場合の勘定科目と仕訳例

法人が保有する上場企業や子会社の株式から配当金を受け取った場合、どのように仕訳をすればよいのでしょうか。状況別に勘定科目の選び方と仕訳例を紹介します。

勘定科目は「受取配当金」

配当金は会社の営業活動とは関連がない収益であることから、勘定科目には「受取配当金」を用い、会計上は「営業外収益」に分類するのが基本です。誤って特別利益として処理しないよう注意しましょう。
特別利益とは、会社の業務内容とは関係なく、臨時的または偶発的に発生した利益のことです。例えば、固定資産売却益や保険差益、有価証券売却益、前期損益修正益などが該当します。配当金はこれらとは性質が異なるため、特別利益には含まれません。

源泉徴収税がない場合の仕訳例

法人が受け取る配当金のうち、完全子会社など継続的に完全支配関係がある会社の株式や発行済株式の1/3超を継続的に保有している会社からの配当に関しては、源泉徴収が不要です。このようなケースでは、税金が差し引かれることなく、配当金の全額がそのまま振り込まれます。
例えば、配当金20万円を源泉徴収されずに受け取った場合の仕訳例は以下のとおりです。

仕訳例:配当金20万円が振り込まれた(源泉徴収税なし)場合

借方 貸方
普通預金 200,000円 受取配当金 200,000円

源泉徴収税が差し引かれている場合の仕訳例

法人が非上場企業から配当金を受け取る場合、20.42%の源泉徴収税(所得税および復興特別所得税)が差し引かれた金額が振り込まれます。例えば、配当金20万円を受け取る際に、源泉徴収税として4万840円が差し引かれ、実際の振込額が15万9,160円だった場合、以下のように仕訳します。
差し引かれた源泉徴収税額の4万840円は、法人税の前払分として「仮払法人税等」で処理します。

仕訳例:非上場企業から配当金20万円を受け取った(源泉徴収税あり)場合

借方 貸方
普通預金 159,160円 受取配当金 200,000円
仮払法人税等 40,840円
  • 「仮払法人税等」は、決算時に実際の法人税額と相殺されます

なお、上場株式の配当金の場合は、源泉徴収税15.315%が課される点に注意しましょう。地方税は個人株主と異なり、課税されません。

仕訳例:上場株式の配当金20万円を受け取った(源泉徴収税・地方税あり)場合

借方 貸方
普通預金 169,370円 受取配当金 200,000円
仮払法人税等 30,630円
  • 仮払法人税等:200,000円 × 15.315% ≒ 30,630円

受取配当金の税務処理:益金不算入に注意する

配当金は、会計上は「受取配当金」として全額を収益に計上しますが、法人税の計算上ではその一部または全部を課税対象から除外(益金不算入)できます

配当金はすでに配当元の会社で法人税が課税されているため、そのまま益金にした場合、二重課税となってしまいます。この二重課税を避けるため、一定条件のもとで配当金の一部または全部が益金不算入として扱われます。益金不算入の割合は、株式の保有割合によって異なります。
具体的な割合は下表のとおりです。

益金不算入の割合

保有割合 不算入割合
3分の1超 100%不算入 完全子会社など
5%超 50%不算入 比較的安定した株主関係
5%以下 20%不算入 ※一定条件あり 上場株などの少額保有

ここまでに解説したポイントをまとめると、配当金の会計・税務処理を行う際には以下の4点に留意する必要があります。

配当金の会計・税務処理を行う際のポイント

  • 会計帳簿では、配当金は全額「受取配当金」にて記帳する
  • 源泉徴収の有無は個人株主と法人株主で異なる
  • 上場企業・非上場企業で配当金の源泉税率が異なる
  • 法人税申告時には、益金不算入を反映した税務調整を行う

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個人事業主が配当金を受け取る場合の勘定科目と仕訳例

個人事業主が事業用口座で配当金を受け取った場合、その収入は事業活動とは無関係なため、通常の事業収入とは異なる勘定科目を選択します。

個人事業主が配当金を受け取った際に使用する勘定科目

  • 事業主借:事業と関係のない私的な入金を処理する勘定科目
  • 事業外収入:事業収入ではないことを明示し、収益区分を分ける際に使用できる勘定科目

最も用いられるのは「事業主借」です。税務署や税理士が確認する際にも、事業と無関係な収入であることが明確に伝わるため、迷ったら「事業主借」を選ぶとよいでしょう。

個人事業主が配当金を受け取ったときの仕訳例

個人事業主が配当金を受け取った場合、その収入は事業とは無関係な私的収入にあたるため、「事業主借」で処理するのが一般的です。

配当金は、上場株式などの場合、源泉徴収所得税や住民税(合計20.315%)が差し引かれた後の金額が証券口座に入金されます。例えば、税引前の配当金が5,000円だった場合、源泉徴収税として1,016円(=5,000円×20.315%)が差し引かれ、実際の入金額は3,984円になります。

証券会社によっては、あらかじめ設定しておくことで配当金を自動的に銀行口座(普通預金)へ振り込むことが可能です。その場合は以下のように仕訳します。

仕訳例:配当金3,984円が事業用の普通預金に振り込まれた場合

借方 貸方
普通預金 3,984円 事業主借 3,984円

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配当金を「支払う」場合の勘定科目と仕訳例

企業が配当金を支払う際には、どのような勘定科目と仕訳例になるのでしょうか。配当金の支払いにおいては、以下の3つのステップがあります。

配当金支払いの主な3つのステップ

  1. 1.
    配当金の利益確定:期末の決算処理で、企業の当期純利益が確定する
  2. 2.
    株主総会における決議:株主総会で配当額が正式に決議され、この時点で利益の一部を配当に充てることが確定する
  3. 3.
    配当金の支払い処理:決議内容に基づき、株主に配当金を振り込むなどの支払処理を行う

このうち、「2. 株主総会における決議」「3. 配当金の支払い処理」で仕訳が必要です。以下では、配当金を支払う際の勘定科目と仕訳例を解説していきます。

配当を支払う場合の勘定科目

企業が株主に対して配当金を支払う場合、その処理は利益の分配(処分)として扱われ、費用ではなく利益剰余金から差し引かれます。よって、このとき使用する勘定科目は以下の2つです。

配当金を支払う場合に使用する勘定科目

  • 利益剰余金:これまでに積み立てた会社の利益の累計で、配当金の原資を取り崩す際に用いられる勘定科目
  • 未払配当金:株主総会などで配当金の支払いが決定したものの、まだ支払われていない金額を一時的に計上する負債の勘定科目

配当金を支払う場合の仕訳例

「2. 株主総会における決議」で配当額が正式に決議されたら、その金額を帳簿に記録します。例えば、配当金額が50万円だった場合の仕訳は以下のとおりです。

仕訳例:配当金50万円が確定した時点

借方 貸方
利益剰余金 500,000円 未払配当金 500,000円

「3. 配当金の支払い処理」で、実際に株主に配当金を振り込む際にも仕訳が必要です。このとき、株主が法人か個人かによって源泉徴収の要否が異なる点に注意する必要があります。
具体的な判断基準は下表のとおりです。

源泉徴収が必要かどうかの判断基準

株主の種類 源泉徴収の有無 備考
法人株主 必要(上場会社15.315%、非上場会社20.42%) ただし一部例外あり
(例:完全子会社など)
個人株主 必要(20.42%) 所得税+住民税を源泉徴収し、会社が納付

株主に法人・個人が混在している場合には、それぞれ個別に処理する必要があります。原則として、法人株主の場合は配当金の支払いに際して源泉徴収は不要です。
実際の仕訳例を、源泉徴収なし・源泉徴収ありのパターン別に見ていきましょう。

仕訳例:配当金50万円を支払った時点(源泉徴収なし)

借方 貸方
未払配当金 500,000円 普通預金 500,000円

仕訳例:配当金50万円を支払った時点(源泉徴収あり)

借方 貸方
未払配当金 500,000円 普通預金 397,900円
預り金 102,100円

源泉徴収ありの場合、源泉徴収額を差し引いた金額を振り込み、残額を「預り金」として処理したうえで税務署へ納付します。

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配当金処理でよくあるミス

ここまで、配当金の基本的な仕訳方法について解説してきましたが、実務では処理の流れや勘定科目の選び方を誤ってしまうケースも少なくありません。以下では配当金の会計処理でよくあるミスをまとめましたので、こちらも活用してミスをなくしましょう。

配当金を費用として処理してしまう

配当金の支払いを「支払手数料」や「雑費」などの費用科目で処理してしまうケースは少なくありません。しかし、配当金は企業の利益から株主に分配されるものであり、利益の処分として扱われます。そのため、会計上は、「未払配当金」として仕訳し、通常の費用とは明確に分けて処理する必要があるのです。
支払手数料や雑費といった費用科目を用いるのは、以下のようなケースです。

科目 概要 適用する費用の例
支払手数料 さまざまな取引やサービス利用に伴う手数料や報酬
  • 銀行などの振込手数料
  • クレジットカードの決済手数料
  • 仲介手数料
  • 証明書等の発行手数料など
雑費 ほかの勘定科目に該当しない、少額かつ一時的な支出
  • キャンセル料
  • 粗大ごみの処分費用
  • 臨時的な清掃費など

本来利益の処分とするべき配当金を経費として計上すると、損益計算書に本来含まれるべきでない費用が計上され、会計上の利益が実態より少なく記載されてしまうことになります。そのため、配当金は必ず未払配当金として記録し、通常の経費とは明確に区別して管理することが重要です。

株主総会で決議する前に処理してしまう

配当金の支払いは、株主総会における決議をもってはじめて法的に成立します。そのため、これに先立って処理してしまうことは、帳簿の信頼性を損なう行為です。内部統制上のリスクにもつながりかねないことから、必ず株主総会での決議に基づいて処理しなければなりません。たとえ経理担当者が配当予定額を把握していたとしても、正式な決議を経てから記帳する手順を遵守することが重要です。

源泉徴収税の処理を忘れてしまう

本来は源泉徴収税を控除しなければならないところを、控除の処理が漏れてしまったり、預り金の仕訳を失念してしまったりするのも、よくあるミスの1つです。非上場会社であれば、配当金の支払先が法人株主の場合も個人株主の場合も(所得税+住民税:20.42%)を徴収する必要があります。

また、源泉徴収税を差し引いて配当金を支払ったにもかかわらず、仕訳処理で記録が漏れてしまうケースもあります。このような記録ミスは、税務署への納付漏れや帳簿上の不一致につながり、決算時の修正対応が困難になるため、正確に処理することが大切です。なお、預かった所得税や住民税の納付期限は、原則として配当金を支払った月の翌月10日です。

  • 国外株式など例外に該当する場合は、国税庁の規定をご確認ください

配当金を支払った際には、実際の振込額と帳簿記録との間にずれがないかを必ずチェックしましょう。

配当金の支払い後の仕訳を忘れてしまう

配当金の支払いにおける会計処理では、金額が確定した時点と、実際に支払ったタイミングの2回で仕訳が必要です。しかし、銀行振込のときに支払配当金などの勘定科目で処理してしまうことも考えられます。そのまま放置してしまうと、未払配当金が帳簿上に残り続けてしまい、未処理残高が発生したり、資金繰り分析で実態を見誤ってしまったりする恐れがあります。

こうしたミスを防ぐために、配当金を支払うタイミングで必ず帳簿と連動して仕訳処理を行うことが基本です。また、支払い処理と仕訳をセットでチェックする体制を構築しておきましょう。

こうしたミスの防止と業務効率化を進めるためには、会計ソフトの活用がおすすめです。自動仕訳や株主情報との紐づけといった機能を活用することにより、ヒューマンエラーの防止に役立つだけでなく、経理業務の効率化につながります。配当金の仕訳をはじめ、経理業務全般を正確かつ効率的に進めるために、会計ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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