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法人税の勘定科目とは?仕訳例や仕訳時の注意点と共に解説

監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所

2023/12/04更新

法人は、事業活動を行う中でさまざまな税金を納めます。その中でも代表的なものが、法人税、法人住民税、法人事業税で、これら3つの税金をまとめて「法人税等」と呼びます。

法人税等の仕訳をするときに多い疑問が、「どの勘定科目を選べばいいか」ということです。法人税等の勘定科目を間違えると、会社のお金を正しく管理できなくなってしまいます。税金に関わる仕訳は少し複雑なので、勘定科目と仕訳方法について、しっかりと把握しなければなりません。

ここでは、法人税等の勘定科目や仕訳方法について、具体例や注意点と共に解説します。

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法人税等の種類とそれぞれの違い

法人が納める税金のうち、法人税、法人住民税、法人事業税の3つをまとめて「法人税等」と呼びます。法人税は国税ですが、法人住民税と法人事業税は地方税です。「法人税等」と呼ばれるこれら3つの税金について、それぞれの違いを確認しておきましょう。

法人税

法人税は、前述したとおり、法人が事業活動によって得た所得(利益)にかかる国税です。国税庁サイト内の「No.5759 法人税の税率新規タブで開く」によると、法人税の税率は資本金や所得金額によって変わるものの、資本金1億円以下の中小企業であれば、所得が年800万円以下の部分に対しては15%、年800万円を超えた部分に対しては23.2%と定められています。

なお、法人税には、「地方法人税」という税金もあります。地方法人税は、「地方」という名前がついていますが地方税ではなく、法人税と同様に国に納める国税です。国税庁サイト内の「地方法人税の税率の改正のお知らせ新規タブで開く」によると、地方法人税の税額は法人税額×10.3%で、法人税と一緒に申告・納付することが定められています。

法人住民税

法人住民税は、事業所のある都道府県および市区町村に納める地方税です。正確には道府県民税と市町村民税があり、これらを合わせて法人住民税と呼びます。

法人住民税は、道府県民税、市町村民税ともに「法人税割」と「均等割」によって構成され、この2つの合計額によって税額を算出します。法人税割は、法人税の税額に定められた税率を掛けて算出されます。法人税額は課税所得にもとづいて決まるため、課税所得が多いほど法人税割の税額も高くなります。

一方、均等割は、法人の資本金の金額や従業者数などに応じて算出します。決算が赤字の場合は課税されない法人税割と異なり、均等割は課税所得に関係なく計算されるため、赤字でも原則として納税義務があります。

法人事業税

法人事業税は、事業所のある都道府県に対して納める地方税です。法人事業税には「所得割」「付加価値割」「資本割」「収入割」の4種類があり、事業内容によって納める種類が変わってきます。資本金1億円以下の中小企業であれば、特定の業種に該当しない限りは、基本的には所得割のみとなるでしょう。なお、それぞれの税率は、法人区分や資本金額、所得金額によって異なります。

法人事業税の種類ごとの税率
法人事業税の種類 課税内容
所得割 法人の所得に応じて課税される
付加価値割 法人の付加価値額をもとに算出される。付加価値額とは、収益分配金に単年度損益を加えた額のこと
資本割 資本金および資本剰余金の額をもとに計算される
収入割 電気供給業者やガス供給会社、保険会社など特定の業種の法人に対して、収入金額をもとに算出される

法人税等のうち、法人税と法人住民税は損金に算入することはできませんが、法人事業税は損金算入が可能です。

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法人税の勘定科目

法人税等を仕訳するときに使用する勘定科目は「法人税、住民税及び事業税」です。

勘定科目とは、取引の内容を性質ごとに分類するために使う、見出しやラベルのようなものです。各種税金の勘定科目は全て「租税公課」になると考える方もいるかもしれませんが、租税公課に該当する税金は、固定資産税や自動車税、登録免許税、印紙税などです。法人税等の勘定科目は「法人税、住民税および事業税」なので、間違えないようにしましょう。

なお、受取利子や配当にかかる源泉所得税のうち、法人税の税額控除を受ける金額についても「法人税、住民税及び事業税」で処理をします。

「法人税、住民税及び事業税」は、損益計算書上の税引前当期純利益の下に記載されるものです。税引前当期純利益から法人税等調整額を加減した法人税等の額を差し引き、その事業年度における最終的な成果である当期純利益となります。

法人税の仕訳例

では、ここからは、法人税の仕訳方法を具体例と共に紹介していきます。法人税の仕訳が発生するのは、基本的に、中間申告、決算、確定申告のタイミングです。また、還付や追徴課税を受けたときにも、それぞれ仕訳が必要です。

それぞれのケース別に、法人税の仕訳例を見ていきましょう。

中間申告時の仕訳

前事業年度の法人税額が20万円を超えた場合は、原則として、法人税の中間申告が必要になります。

中間申告とは、その期の税額を概算で見積もり、事業年度の途中で税金の一部を納めることです。いわば、税金の前払い制度のようなものだといえるでしょう。

中間申告で納付した税額は、確定申告により計算される年間の税額から控除されます。また、中間申告で納めた税額が多すぎた場合は、確定申告後に還付されます。そのため、最終的に納付する税額は変わりません。なお、法人税の中間申告の対象になった法人は、法人住民税や法人事業税についても中間申告が必要です。

例えば、法人税の中間申告をして30万円を普通預金から納付した場合の仕訳は、下記のとおりです。中間申告では、まだ納税額は確定していないため、このときの勘定科目は「仮払法人税等」となります。

中間申告時の仕訳例
借方 貸方
仮払法人税等 300,000円 普通預金 300,000円

決算時の仕訳

決算時には、当期の法人税額等が確定します。法人税等はその事業年度に対応するものなので、期末(決算時)には仕訳を行う必要があります。ただ、この時点でも、まだ実際に納付はしていません。

例えば、決算処理が終了して法人税の納税額が70万円と確定し、中間申告によって納付した額は30万円だった場合の仕訳は、下記のとおりです。法人税の納付額70万円のうち、30万円は既に中間申告で納めているため、残りの40万円を「未払法人税等」の勘定科目で計上します。

決算時の仕訳例
借方 貸方
法人税、住民税及び事業税 700,000円 仮払法人税等 300,000円
未払法人税等 400,000円

確定申告時の仕訳

決算時に未払法人税等として納税額が確定した法人税額は、翌事業年度に法人税を納付します。例えば、前述した「決算時の仕訳例」にて未払法人税等として計上していた40万円を、確定申告時に普通預金から納付した場合の仕訳は下記のとおりです。

確定申告時の仕訳例
借方 貸方
未払法人税等 400,000円 普通預金 400,000円

法人税の確定申告の期限は、決算日の翌日から2か月以内です。つまり、当期にかかる法人税を実際に納めるのは翌期ということです。決算時に計上していた未払法人税等は負債として翌期に繰り越されますが、翌事業年度に法人税を納付することで、当該負債が消滅する形になります。

還付される場合の仕訳

中間申告で納付した法人税額が、期末に計算した法人税額を上回った場合は、確定申告をすることにより還付が受けられます。また、法人税額の見込納付によって還付金が発生することもあります。このように、法人税が還付されたときにも仕訳が必要です。

中間申告で納付した税金が還付された場合

中間申告の法人税を納めすぎていた場合の、中間申告時、決算時、還付時の仕訳例について説明します。

法人税の中間申告をして30万円を普通預金から納付した場合の仕訳は下記のとおりです。

中間申告時の仕訳例
借方 貸方
仮払法人税等 300,000円 普通預金 300,000円

また、決算処理が終わり、法人税の納税額が20万円と確定した場合の仕訳は下記のとおりです。

決算時の仕訳例
借方 貸方
法人税、住民税及び事業税 200,000円 仮払法人税等 300,000円
未収還付法人税等 100,000円

また、確定申告をして、納めすぎていた法人税10万円が還付された場合の仕訳は下記のとおりです。

還付時の仕訳例
借方 貸方
普通預金 100,000円 未収還付法人税等 100,000円

確定申告時に見込納付した税金が還付された場合

見込納付とは、確定申告書を提出する前に、概算で算出した法人税額を納付することです。

前述したように、法人税の確定申告の期限は、決算日の翌日から2か月以内と定められています。しかし、株主総会の開催を「事業年度終了の翌日から3か月以内」と定款で定めている場合などは、確定申告の期限を延長できる特例があります。

ただし、この特例によって延長できるのは申告期限だけで、納付期限は変わりません。そのため、本来の期限までに概算の税額を見込納付し、申告の際に改めて精算を行うのが一般的です。このとき、見込納付で納めた概算の税額と、確定申告によって確定した税額との間に、差額が生じることがあります。見込納付税額が確定税額よりも多かった場合は、納めすぎた金額が還付されます。

例えば、見込納付にて法人税50万円を納めた場合の仕訳は下記のとおりです。

見込納付時の仕訳例
借方 貸方
未払法人税等 500,000円 普通預金 500,000円

また、見込納付にて法人税50万円を納め、かつ確定申告書で法人税額が40万円となり、10万円が還付された場合の仕訳は下記のとおりです。

還付時の仕訳例
借方 貸方
普通預金 100,000円 法人税、住民税及び事業税 100,000円

還付加算金を受け取った場合

中間申告した法人税が還付されるとき、還付金の利息にあたる金額が戻ってくることがあります。これを還付加算金といいます。還付加算金を受け取ったときは、「雑収入」の勘定科目で仕訳処理を行います。

例えば、還付金10万円と合わせて、還付加算金3,000円を受け取った場合の仕訳は下記のとおりです。

還付加算金を受け取った場合の仕訳例
借方 貸方
普通預金 103,000円 未収還付法人税等 100,000円
雑収入 3,000円

追徴課税を受けた場合の仕訳

税務調査などによって過少申告加算税が課税されたり、納付が遅れて延滞税が発生した場合は、納付時に「租税公課」の勘定科目で処理します。ただし、勘定科目は「租税公課」ですが、追徴課税された加算税や延滞税は損金に算入することはできません。法人税を計算するときに損金不算入の処理を行うため、摘要欄には加算税や延滞税であることを記載しておきましょう。

例えば、税務調査によって追徴課税が発生し、普通預金から5万円を納めた場合の仕訳は下記のとおりです。

追徴課税を受けた場合の仕訳
借方 貸方
租税公課 50,000円 普通預金 50,000円

法人税の仕訳をする際の注意点

法人税の仕訳時には、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。ここでは、法人税の仕訳をする際の注意点について説明します。

課税のもとになる金額の勘違いに注意する

法人税の仕訳時には、課税のもとになる金額を勘違いしないよう注意が必要です。法人税を算出するもとになるのは、益金から損金を差し引いた所得です。税法上の所得は、会計上の利益とは異なります。会計上の利益は、収益から費用を引いて求めます。

収益と益金、費用と損金は、似ているものの同一ではありません。例えば、会計上は収益や費用として計上できても、税法上は益金や損金と認められないものもあります。所得と利益を混同して法人税額を計算すると、大きなズレが生じることになってしまうため、注意しましょう。

法人税の仕訳は還付金にも影響する

法人税の仕訳は、還付金にも影響するということを理解しておきましょう。前述したように、中間申告で納付した法人税額が確定申告による税額よりも多かった場合は、納めすぎていた金額が還付されます。ただし、還付金を受け取るには、正しく確定申告を行う必要があります。そもそも、確定申告をしなければ正確な法人税額は確定しないので、中間申告で納付した税金が多いか少ないかも判断できません。

法人税の仕訳は、確定申告時の他、中間申告と決算の際にも必要です。還付される税金を見落とすことがないよう、日頃から正しく仕訳をしなければなりません。

業務の遅れは追徴課税を発生させる可能性がある

法人税の仕訳に時間がかかり、確定申告の期限に間に合わなくなってしまうと、追徴課税などのペナルティが発生する可能性がある点には、注意が必要です。

法人税の仕訳は、日常の取引ではあまり見られない勘定科目を使うなど、処理がやや複雑です。会計ソフトを活用するなどして、スムースに仕訳作業を進められるようにしましょう。

損金の取り扱いに注意が必要

法人税や法人住民税は、損金として計上することはできない点にも、注意が必要です。法人税等と呼ばれる法人税、法人住民税、法人事業税のうち、損金に算入できるのは法人事業税のみです。法人税や法人住民税を誤って損金にしてしまうと、確定申告の内容も変わってきてしまうため、十分に注意しましょう。

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法人税等の仕訳に使う勘定科目を知って、正しく処理をしよう

法人税等を仕訳するときには「法人税、住民税及び事業税」という勘定科目を用います。また、状況によって「仮払法人税等」や「未払法人税等」といった勘定科目も使用します。法人税等の仕訳は細かく複雑なので、勘定科目や計算などを間違えないように注意が必要です。

特に、手書きや表計算ソフトなどで帳簿を付けているとミスが起こりやすく、修正するのも大変な作業です。弥生のクラウド会計ソフト「弥生会計 オンライン」などの自社に合った会計ソフトを活用し、手間なく正確な仕訳をするようにしましょう。

この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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