不動産業における経理業務とは?仕事内容や注意点などを解説
監修者:税理士法人 MIRAI合同会計事務所
2023/08/31更新
不動産業は、土地や建物といった不動産を扱うという性質上、経理業務も一般的な小売業やサービス業などとは異なります。例えば、会計処理を行ううえでも、他の業種ではあまり馴染みのない勘定科目を使うことがあります。不動産業で経理業務に携わる場合は、この業界の特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。
ここでは、不動産業における経理業務の特徴や他業種との違い、不動産業でよく使用される勘定科目、不動産賃貸業における経理業務の注意点などを解説します。
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不動産業とは土地や建物などの不動産を扱う事業の総称
不動産業とは、その名のとおり、土地や建物などの不動産を扱う事業の総称です。不動産とは、民法第86条第1項により「土地およびその定着物」と定義されています。具体的には、土地や建物、立木、橋、石垣などが該当し、場合によっては土地や建物にかかる権利も取り扱います。
不動産業は、大きくは下記の5つの事業に分類することが可能です。
不動産開発 | 土地を仕入れて、商業施設やビル、マンション、リゾート施設、大規模な宅地などを開発し、その後の販売までを手掛けること。このような事業を行う企業は、デベロッパーとも呼ばれる。 |
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不動産売買 | 土地や建物を仕入れて売却し、その差額を利益とするのが不動産売買。扱う商品は不動産であるものの、利益を生み出す仕組みは、小売業や卸売業などと似ている。 |
不動産賃貸 | 所有する土地や建物などを第三者に賃貸し、賃料(使用料)を得る事業のこと。個人でアパートやマンションを貸し出している、いわゆる「大家さん」も不動産賃貸業に該当する。 |
不動産仲介 | 不動産の売買や賃貸を仲介する事業が不動産仲介。不動産を売りたい人と買いたい方、貸したい方と借りたい方をつなぎ、手数料収入を得る。 |
不動産管理 | 不動産の貸主(所有者)に代わって不動産の管理を行うのが、不動産管理。具体的には、賃料の回収や建物管理業務、入居者や近隣住民からのクレーム対応など。 |
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不動産業の経理と他業種の経理の違い
前述したように、一口に不動産業といっても、不動産賃貸、不動産仲介、不動産管理など、その事業はさまざまです。収益を得る主な方法も、不動産賃貸業は賃料、不動産仲介業は仲介手数料、不動産管理業は管理手数料と、事業によって異なります。経理業務にあたっても、それぞれの事業に合わせた会計処理が必要になるでしょう。
仕訳の際に、他業種ではあまり馴染みのない勘定科目を用いることも多いため、不動産業で使用頻度の高い勘定科目についてしっかり理解しておくことも大切です。
収入項目の勘定科目
不動産賃貸業において使用される勘定科目は、収入項目と費用項目の2つに分けることができます。ここでは、不動産業においてよく使用する勘定科目のうち、収入項目に分類できるものについて、ひとつずつ説明します。
賃貸料
賃貸料とは、入居者からの家賃収入を処理する勘定科目です。不動産業におけるメインの売上項目です。例えば、オフィス物件の家賃や店舗の家賃、マンスリーマンション、シェアオフィス、トランクルーム、貸し倉庫の賃料などが含まれます。
礼金・権利金・更新料
礼金・権利金・更新料は、入居者から受け取った礼金や権利金、更新料を処理する勘定科目です。賃貸料と礼金・権利金・更新料を合わせて、売上高として計上することもあります。
雑収入
雑収入は、本業以外の収入を管理する科目のことです。不動産業においては、例えば、所有する賃貸物件にある自販機の収入などが該当します。
費用項目の勘定科目
不動産賃貸業において使用される勘定科目のうち、費用項目に分類できるものにはどのような勘定科目があるのでしょうか。代表的な勘定科目は、下記のとおりです。
租税公課
租税公課(そぜいこうか)は、国や地方自治体に納付する租税と公共団体などに納付する公課を合わせた勘定科目です。不動産業においては、所有する土地や建物の固定資産税、不動産取得税、登録免許税、印紙税(収入印紙代)などが該当します。
損害保険料
所有する賃貸物件にかかる火災保険や地震保険などの保険料は、損害保険料の勘定科目で処理しましょう。なお、契約期間が2年以上にわたる保険料を一括で支払った場合は、支払時に損害保険料で計上したうえで、翌期以降の経費計上分を月割りで計算し、長期前払費用の勘定科目に振り替えます。
修繕費
修繕費は、賃貸物件を維持管理するための費用です。例えば、退去時の部屋のクリーニング代、畳や障子の張り替え、設備の修理費用、外壁塗装費などが該当します。
減価償却費
建物や車などの固定資産は、取得価額を法定耐用年数に応じて分割して費用計上しますが、このとき毎年分割して計上する費用に、減価償却費(げんかしょうきゃくひ)の勘定科目を使用します。例えば、事業に使用するパソコンや事務所の家具なども、法定耐用年数が1年以上、または取得価額が10万円以上であれば、減価償却の対象となります。
借入金利子
借入金利子は、金融機関などから借り入れた借入金の利息です。個人事業において、不動産所得が赤字の場合、土地を取得するための借入金利子は他の所得と相殺できないため、注意しましょう。
地代家賃
経営しているアパートやマンションなどの建物や土地を借りている場合、その賃料を地代家賃として計上します。また、入居者用に駐車場を借りた場合や、事業用に事務所を借りている場合なども、賃料を地代家賃の勘定科目で処理します。
給料賃金
給料賃金は、従業員に支払う給与や賞与を計上する勘定科目です。なお、個人事業主で家族を従業員にしている場合は、給料賃金ではなく、後述する専従者給与に該当します。
貸倒金
滞納家賃があり、借主から回収することができなかった場合、その金額を貸倒金として処理することができます。ただし、貸倒金として経費計上できるのは、「滞納家賃の回収努力をした」「入居者に支払い能力がない」などの客観的な理由から、回収が確実に不可能と判断される場合に限ります。税務署から指摘されることも多い項目なので、貸倒金を計上する際は、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。
管理諸費
管理諸費は、入金管理やクレーム対応、更新契約など、賃貸物件の管理を不動産管理会社に委託したときに支払う委託料や管理料です。また、エレベーターの保守代なども、管理諸費の勘定科目に該当します。
水道光熱費
水道光熱費は、アパートやマンションなどの共用部分で使用する水道代や電気代などを処理する勘定科目です。事務所などを設けている場合は、事務所の水道代、電気代、ガス代なども該当します。
広告宣伝費
広告宣伝費は、企業の商品やサービスをアピールするためにかかった支出を経理処理する際の勘定科目です。具体的には、入居者を募集するために出した広告の費用や、不動産仲介会社に支払う広告料、仲介サイトや不動産情報誌の掲載料、チラシの印刷代などが該当します。
支払報酬
税理士や司法書士、弁護士といった士業の専門家に支払う報酬は、支払報酬の勘定科目で処理します。少額の場合、これらの報酬を管理諸費の勘定科目で処理することもあります。
新聞図書費
業務に関係する書籍や雑誌、新聞などを購入した費用は、新聞図書費の勘定科目で計上します。ただし、年に数回程度の購入であれば、後述する雑費で処理しても問題ありません。
消耗品費
消耗品費は、備品などの購入費のうち、使用可能年数(法定耐用年数)1年未満または金額が10万円未満のものを計上する勘定科目です。例えば、事務用品や工具、電球などが該当します。
車両費
車両費は、事業に使用する車に関する費用を処理する勘定科目です。ガソリン代や車検費用、洗車代などが該当します。なお、自賠責保険の保険料は、車両費または損害保険料で処理します。
旅費交通費
旅費交通費は、業務に必要な移動のための電車代やバス代、タクシー代、出張先での宿泊費などが該当します。また、車で移動した場合の高速代や、コインパーキングの駐車場代も、旅費交通費にあたります。
通信費
通信費は、業務で使用する通信手段にかかる費用を処理する際の勘定科目です。具体的には、固定電話や携帯電話の料金、インターネット料金の他、切手代やはがき代などが該当します。
福利厚生費
従業員の社会保険料や、健康診断の費用、見舞金、慶弔費など、給与とは別に従業員のために支出した費用は、福利厚生費の勘定科目で処理します。なお、個人事業の場合には、本人とその家族にかかった費用については、福利厚生費と認められません。従業員が家族である場合、原則的には福利厚生費を経費として計上することはできないので注意しましょう。
専従者給与(控除)
家族への給与は、原則として必要経費にはなりません。しかし、個人事業主で家族が従業員として働いている場合、一定の要件を満たせばその家族を専従者とみなし、支払った給与を経費として計上することができます。この計上時に使用する勘定科目が、専従者給与(控除)です。
青色申告の場合は、事前に所轄の税務署に届出をすると、専従者に支払った給与を全額経費に計上できます。白色申告では、事前の届出は不要ですが、経費にできるのは配偶者なら86万円まで、それ以外の専従者は1人につき50万円までです。
雑費
事業の経費のうち、どの勘定科目にも当てはまらない少額の支出は、雑費の勘定科目で処理します。例えば、年間数冊しかない本の購入代などが該当します。
不動産賃貸業の経理業務における注意点
不動産業において経理業務を行う際には、他の業種とは異なるいくつかの注意点があります。特に不動産賃貸業では、下記のような点に注意が必要です。
賃貸料の売上計上時は、常に契約と結びついた処理が必要
賃貸料の売上計上時は、原則として、契約と結びつけて処理をしましょう。不動産賃貸業の主な売上は、月々の家賃収入です。ただし、毎月の賃料は物件ごとに異なり、賃貸期間も入居者によってそれぞれ違います。賃貸契約によっては、自動更新のものとそうでないものがあり、所定の条件のもと入居後の一定期間の家賃が無料になるフリーレント契約などもあります。また、店舗との賃貸契約の場合、入居しているテナントの売上高によって賃料が変わる、変動賃料になることもあります。
このような違いをふまえ、賃料を売上に計上する際には、常に契約と結びついた会計処理を行う必要があります。会計処理をする際にも、所有する賃貸物件の情報を一括管理できるシステムと会計ソフトと連携させておくと、ミスや漏れを防ぐことができるはずです。
借入金が多い場合、金利変動による支払利息が増加するリスクがある
金融機関からの借入金が多い場合、金利変動による支払利息の増加リスクを考慮しておかなければなりません。賃貸物件を取得する際には、金融機関でローンを組むことがほとんどでしょう。金利変動型ローンでは、金利の上昇によって支払利息が増加し、家賃収入だけではローン返済が厳しくなってしまう可能性があります。そのようなリスクを防ぐためには、固定金利にする、返済期間を延ばすなどもひとつの考え方です。
家賃収入より建物の減価償却費の方が大きくなる場合がある
家賃収入より建物の減価償却費の方が大きくなる場合があることを、あらかじめ知っておきましょう。
賃貸物件は、常に満室になるとは限りません。所有しているアパートやマンションの劣化や陳腐化などにより空き部屋が多くなると、家賃収入よりも建物の減価償却費の方が大きくなってしまう可能性があります。つまり、賃貸物件の価値が低下し、赤字になってしまうということです。
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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所
四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
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