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消耗品費とは?消耗品との使い分けや仕訳例、経費計上の方法を解説

執筆者:宮原 裕一(税理士)

2024/08/06更新

個人事業主や法人の経費で消耗品費は必ず出てくるものです。

個人事業主の場合、所得税の青色申告決算書、白色申告の収支内訳書にも勘定科目として印字されています。しかし、実際に日々の取引を分類していくと、消耗品費でよいのかどうか判断しづらいことが多いでしょう。

雑費との使い分けにも言及しながら、今回は、勘定科目の「消耗品費」について解説します。

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POINT

  • 消耗品費は、同じものが繰り返し消費される場合に使う勘定科目
  • 消耗品費には、10万円未満の減価償却資産の取得も含まれる
  • 消耗品費と事務用品費や備品費など、判断に困る場合は、消耗品費にまとめてもよい

勘定科目「消耗品費」「消耗品」とは

そもそも『消耗品費』とは、どのようなものをいうのでしょうか。国税庁の「帳簿の記帳のしかた新規タブで開く巻末の一般的な必要経費の一覧表では、つぎのようなものが消耗品費に該当するとしています。

  • 1.
    帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
  • 2.
    使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費

先に①の消耗品費について詳しく見ていきましょう。②については次の章で解説します。 例えば、コピー用紙は印刷して紙がなくなる前に用意しておかなければなりません。つまり、消耗品費とは、繰り返し消費されるものを一括りにした勘定科目なのです。

なお、コピー用紙の仕訳は次のようになります。

(例)コピー用紙1,000円を現金で購入した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 1,000 現金 1,000

消耗品費は種類ごとに必ずしも分類する必要はないが、業種によって特に多くなるものは分類してもよい

消耗品費を調べてみると、「事務用消耗品費」「備品消耗品費」など、さまざまな種類が出てきます。想像するに、事務用消耗品費は文房具などの事務作業で使用するものが該当し、備品消耗品費は日用雑貨など事業で使用する少額備品などが該当するのでしょうか。

そして、これらは購入したものを種類ごとに分類しなければならないのでしょうか。 個人的には、分ける必要はないと思っています。

なぜなら、これらの分類は迷いやすいですし、それを間違ったからといって税務上問題になることもありません。そもそも、個人事業主や小規模法人では、手間を考えると、消耗品費を分けることによるメリットを感じづらいと思います。私は「消耗品費」ひとつで経理処理をすることをお勧めします。

また、消耗品費として計上する場合、なにが該当するのか、税務調査などがあった場合、要らぬ指摘をされないよう、摘要に内容を記載して、領収書などもしっかり保存しておくようにするとよいでしょう。

ただ、消耗品費は業種や業態によって特に多くなるものは分類してもよいと思います。例えば車に乗ることが多い業種でガソリン代を車両費とするなど、その業種によって特に支出が多くなるものを別の科目に分けてみることは構わないと思います。

(例)ガソリンを給油し、3,000円を現金で支払った

①消耗品費として計上する場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 3,000 現金 3,000

②車両費として計上する場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
車両費 3,000 現金 3,000

「消耗品」は未使用の場合、「消耗品費」は使用中の場合に使いわける

さて、間違えやすいのが「消耗品費」と「消耗品」の違いです。簿記検定の勉強になってしまいそうな話ですが、後ろに「費」が付くか付かないかでまったく意味合いが違ったものになるのです。

ここまで、消耗品費は繰り返して購入・使用する「費用」の勘定科目だと説明しました。一方で、「費」が付かない消耗品は、購入してからまだ使用していないものを意味する「資産」の勘定科目なのです。簡単に言うと消耗品費は「いくら使った」を示し、消耗品は「いくら残っている」を示すという関係にあるのです。普段の帳簿づけでは、コピー用紙などを購入したときに消耗品費とする方法が多いです。しかし、購入時はまだ使っていないものが多いですよね。

本来は、購入していても未使用のものはその年の経費になりません。しかし、もともと少額であるケースが多いということもあり、実務上の便宜から購入時に費用処理することが認められているのです。

(例1)コピー用紙10組3,000円を現金で支払った

①消耗品を使用しない方法

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 3,000 現金 3,000

購入時に全額を消耗品費として「費用」にします。

②消耗品を使用する方法

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品 3,000 現金 3,000

購入時に全額を消耗品として「資産」にします。

(例2)コピー用紙1組で300円のものを開封した

①消耗品を使用しない方法

処理なし

②消耗品を使用する方法

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品 300 消耗品費 300

使用した分だけ消耗品という「資産」から消耗品費という「費用」へ振り替えます。つまり使用した分を費用化します。

(例3)期末に棚卸しをしたら3組900円分未使用だった

①消耗品を使用しない方法

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品 900 消耗品費 900

未使用の分を消耗品費という「費用」から消耗品という「資産」へ振り替えます。つまり費用が過大になっているのを修正します。

②消耗品を使用する方法

処理なし

なお、2019年6月以降の日商簿記検定では、一般的な消耗品はすべて購入時に費用処理する方法に限定されています。

「消耗品費」と「雑費」の使い分け

「消耗品費」と「雑費」の使い分けで迷う場合もあるでしょう。

雑費とは、「既存の経費項目に当てはまらない」というときに用います。一時的な費用や、高額でない費用などが、雑費に区分されます。雑費の金額が増えると、会計結果を分析したときに、支出の傾向がつかみづらくなってしまいます。雑費は経費総額の5~10%程度に収まるのが望ましいでしょう。

それから、雑費が多額になると、税務署の調査理由となる可能性もあるので、注意が必要です。雑費の金額が多額になる場合は、所得税の青色申告決算書や収支内訳書に記載されている経費の勘定科目(給料賃金、外注工賃、減価償却費、貸倒金、地代家賃、利子割引料、租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費、福利厚生費)や、業種によって特に支出が多くなるものを別の科目に分けてみることで対応できないかよく検討しましょう。

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10万円未満の資産は「消耗品費」、10万円以上は「減価償却費」で計上

消耗品費の定義の②に、「使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費」というものがありましたね。

ここでは、消耗品費と減価償却費の違いが重要です。

「減価償却費」は、資産の種類ごとの耐用年数をもとに分割して経費化すること

事業で使用する備品などで、その使用可能期間が1年以上のものは、その資産の種類ごとに定められた耐用年数にわたって分割して経費化する「減価償却」という会計上のルールがあります。

具体的には、購入時には器具備品、車両運搬具など「資産」としておき、毎年度の決算で、その年分の経費化金額を「減価償却費」として「費用」に振り替えるのです。

(例1)事業用の自動車120万円をローンで購入した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
車両運搬具 1,200,000 未払金 1,200,000

(例2)決算となり、自動車の償却費は30万円と計算された

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 300,000 車両運搬具 300,000

このようなルールで帳簿づけを行う減価償却ですが、長期間使用できるものすべてについて、このような方法で管理するのは無理がありますね。

そこで、減価償却をするものであっても、10万円未満のものについては消耗品費などとして購入時に全額を費用とするようになっているのです。

事業主が自由に選択できる経費化の方法

10万円未満の資産については消耗品費などとするということがわかりました。それでは10万円以上の資産については上記の減価償却しか方法はないのでしょうか。

じつは、資産の種類によっては定額法、定率法といった償却費の計算方法を選択することもできますし、資産の取得価額(購入金額など)によっても、次のような特別な計算をすることができます。

  • 110万円以上20万円未満の資産は「一括償却」で計算
    • その年に取得したもののうち選択したものにつき、一括して3分の1ずつ3年間経費化していく。
  • 210万円以上30万円未満の資産で、青色申告の場合、「少額減価償却資産の特例」で計算
    • その年に取得したもののうち、年300万円まで選択したものにつき全額をその年の経費とすることができる。

そして、②の青色申告者の場合は、個人事業主でも法人でも10万円以上20万円未満の資産について3通りの方法を選ぶことができるのです。

取得価額 消耗品費(全額経費) 一括償却 (3年均等) 少額特例 (全額経費) 通常の 減価償却
10万円未満 × × ×
10万円以上20万円未満 ×
20万円以上30万円未満 × ×
30万円以上 × × ×
  • 少額特例は青色申告のみ

10万円以上のため、器具備品として資産にする場合

10万円以上のため、器具備品として資産にする場合、次のような仕訳をします。

(例)150,000円のPCをカードで購入した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
器具備品 150,000 未払金 150,000

減価償却費とする場合

通常の減価償却費として計上する場合、仕訳は次のようになります。

(例)決算につき、通常の減価償却費25,000円と計算された

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 25,000 器具備品 25,000

その年に取得した10万円以上20万円未満の資産を一括して3分の1ずつ3年間経費化していく「一括償却」の場合、耐用年数にかかわらず、総額の3分の1を経費化できます。そのとき、仕訳は次のようになります。

一括償却とする場合

一括償却とする場合、仕訳は次のようになります。

(例1)決算につき、一括償却の方法を選択した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 50,000 器具備品 50,000

10万円以上30万円未満の資産で、青色申告の場合は、次のような仕訳になり、購入した年に全額を経費化できます。

(例2)決算につき、青色申告で少額減価償却資産の特例を選択した

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 150,000 器具備品 150,000

〇万円未満の判定は、取得価額の範囲に気をつけること

ここまでで、10万円未満、20万円未満、30万円未満と3つの「未満」が出てきました。では、この〇万円未満の判定はどのように行うのでしょうか。

まず、取得価額の範囲に気をつけましょう。備品などの取得価額には、本体そのものの代金だけでなく、据え付け工事費なども含みます。例えばエアコンを購入して設置する場合は、設置の工賃も含んだ金額になります。

また、〇万円未満の判定の単位は、通常1個、1組として機能するもので判定しますから、応接セットのように椅子とテーブルがセットになっているものは1脚ごとで判定することはしません。

最後に、令和元年10月から消費税率が10%となったところですが、〇万円未満は税込総額で判定するのでしょうか。これは、事業主が消費税の経理方法で税込経理・税抜経理のどちらを採用しているかにより、税込経理の場合は税込の総額で、税抜経理の場合は消費税を含まない金額で判定します。免税事業者の場合は総額で判断します。

消耗品費の仕訳例

それでは、消耗品費のさまざまな取引について、仕訳例を紹介します。

(例)領収書綴り500円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 500 現金 500

事務用品費などを使うこともあります。

(例)パソコンのマウス3,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 3,000 現金 3,00

備品費などを使うこともあります。

(例)名刺を印刷し5,000円を振り込んだ

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 5,000 現金 5,000

広告宣伝費などを使うこともあります。

(例)コーヒー豆1,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 1,000 現金 1,000

会議費や福利厚生費、サービス費などを使うこともあります。

(例)本棚20,000円をカード払いにした

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 20,000 現金 20,000

備品費などを使うこともあります。

(例)蛍光灯が切れたので、替えの蛍光管2,000円を現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 2,000 現金 2,000

修繕費などを使うこともあります。

(例)エアコン90,000円をカード払いにした。設置工事費15,000円は現金で支払った

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
器具備品 105,000 未払金 90,000
    現金 15,000

設置工事費も取得価額に含み、合計が10万円以上となるため器具備品として資産計上します。

(例)ソフトウェアの永続ライセンス60,000円をカード払いにした

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 60,000 未払金 60,000

ただ、ソフトウェアなど無形のものでも、10万円以上の場合は資産計上となりますので、注意が必要です。

(例)ソフトウェアの年間サブスクリプション120,000円をカード払いにした

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 120,000 未払金 120,000

年間サブスクリプションは利用料であるため、そのまま経費となります。もちろん数年分の前払いのときは、その期間で配分する必要があります。

(例)タブレット107,800円(本体価格98,000円+消費税9,800円)をカード払いにした

①税込経理の場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
器具備品 107,800 未払金 107,800

税込経理の場合は税込総額で判定し、この場合は10万円以上となるので器具備品として資産にします。決算時に減価償却を検討します。

(例)タブレット107,800円(本体価格98,000円+消費税9,800円)をカード払いにした

②税抜経理の場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
消耗品費 98,800 未払金 107,800
仮払消費税 9,800    

税抜経理の場合は本体価格で判定し、この場合は10万円未満となるので消耗品費としてその年の経費とします。

ひとつひとつの取引を記帳していくうちに、消耗品費の考え方、自分の事業にはどういう仕訳が合っているのか、見極められるようになるでしょう。

photo:amanaimages

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この記事の執筆者宮原 裕一(税理士)

宮原裕一税理士事務所新規タブで開く」代表税理士。弥生認定インストラクター。
弥生会計を20年使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。経営者のサポートメンバーとして会計事務所を営む一方、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。

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