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資格取得のための費用で経費になるもの、経費にならないもの

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資格取得のための費用で経費になるもの、経費にならないもの

「業務内容に関係ある資格取得なら、すべて経費にできる」と捉えている経理担当者や個人事業主の方がいるかもしれません。しかし、必ずしもすべての費用が経費になるわけではありません。資格を取る際にかかる費用は、経費として見なされるものとそうでないものがあります。

また、資格を取る際にかかる費用は「どのような内容に支払ったか」によって勘定科目を使い分けなければなりません。本記事では、資格を取る際にかかる費用が経費になるのかの判断ポイントや、勘定科目、仕訳例、注意点などについて解説します。

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資格取得費用は経費になる?

資格取得のためにかかった教材費やセミナー代、受験料などが経費に該当するのかについては、次の3つのポイントから判断できます。

  • 原則として業務に直接必要となる資格なら経費になる
  • 個人に帰属する資格の取得費用は経費にできない場合もある
  • 会社が従業員の資格取得費用を負担したら給与扱いになる場合がある

ひとつずつ解説していきます。

原則として業務に直接必要となる資格なら経費になる

資格を取る際の費用が以下の2点を満たしていれば、経費になります。

  • 業務に直接的に関連のある資格を取る際にかかった代金である
  • 研修等の費用が業務に対し、社会通念上適正なもの

資格取得費用を負担したのが企業/個人事業主か問わず、上記の考え方が原則となります。

これは、以下の法令解釈を根拠としています。

業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。

例えば、工場で働く人が業務を行うために必要な「危険物取扱者」「フォークリフト免許」といった資格を取る際の費用を企業が支払ったケースでは、経費になります。その他にも、以下のような業種で業務遂行上必要な立場の人が取得する下記のような資格は経費になる可能性があります。

  • 不動産業:宅地建物取引士や不動産鑑定士など
  • 海外営業職:TOEIC、英検など
  • 介護職員:介護士、介護福祉士など
  • アパレルショップの販売員:販売士、ファッション色彩能力検定など
  • ドラッグストアの販売員:登録販売者、医療事務など

講習や研修などについては、事業に関連性が確認できれば次のようなものも経費と判断される可能性が高いです。

  • 海外とやりとりするために英会話教室に通う費用
  • 自社のホームページ作成のためにパソコン教室に通う費用
  • 経理担当の社員が簿記の研修を受ける費用

例えば、個人事業主が新しく事業をはじめるためのセミナー代は経費として処理できる可能性があります。開業準備に必要な費用は、開業費として処理します。開業費の仕訳には、繰延資産の勘定科目を使い、すべての額を計上することで任意償却が可能です。

また、自己啓発セミナーや自身のスキルアップを目的とした英会話、健康維持のためのヨガなどは、直接業務に関係ないため経費にはなりません。ただし、対象が海外との取引や交渉が必要な営業担当者の場合、英会話を経費とすることが可能な場合もあります。また、従業員すべてが受講するセミナーで職種横断で業務遂行上必要なものであれば、福利厚生費として計上できる場合があります。

個人に帰属する資格の取得費用は経費にできない場合が多い

業務に必要な資格だと捉えていても、以下のようなケースでは経費として見なされない可能性があります。

【経費にできない可能性がある資格の費用】
  • 独占業務を行える国家資格を取る際の代金
  • 独立開業が可能な資格を取る際の代金
  • 国家資格を取るために発生した大学などの学費

上記の資格は、通常業務のためというよりも、資格取得が主な目的と判断される場合は経費として認められないケースが多くなっています。特に、主たる目的が現在とは違った職業に就くこと(新たな職業の獲得)であった場合は経費にできません。

大学への通学期間は長期にわたり、学費も高額です。そのため、業務に直接必要なスキルアップの範囲を超えると判断されるのが一般的です。ただし、目的が役員や従業員の業務に直接必要な知識や技術の習得であると明確に因果関係を説明できるような場合、経費として認められることがあります。

医師や弁護士、税理士といった国家資格を有する場合、業務独占資格の保有者だけに認められた独占業務を行えます。業務独占資格とは、特定の法律に基づいた資格保有者でなければ行えない業務に携われる資格のことです。業務独占資格は、就職や転職、開業に役立つことから、資格を取得した個人のメリットが大きいと見なされ、基本的には企業/個人事業主問わず取得にかかった費用は一般的には経費にできません。

例えば、開業医が医師免許を取るために支払った学費は経費として認められません。業務独占資格に該当する医師免許は、個人の独占的な業務権に帰属し、独立開業が可能であるため、学費等の取得費用は経費にできません。

これまでに資格を取る際に経費として見なされなかった事例を見てみましょう。

【資格を取る際にかかるコストが経費として見なされなかった事例1】

接骨院を営む事業者が、柔道整復師の資格を取得のために専門学校に支払った学費は経費にできない。業務に間接的に有効だが、主たる目的が新しい地位や職業を獲得するための教育費なので家事費に該当する。
(平29.12. 5 大裁(所)平29-36)

【資格を取る際にかかるコストが経費として見なされなかった事例2】

宅建業の開業にあたってかかった宅地建物取引主任者資格の取得の費用は経費にできない。宅建業者が特定の職業に従事できるので、資格取得費は新しい地位や職業を獲得するための教育費であり、所得税法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》第1項第1号に規定する家事費に該当する。
(平27. 4.14 東裁(所)平26-95)

国税不服審判所より概要まとめ

上記の判例に含まれる家事費(家事関連費)とは、事業と関係のないプライベートな費用のことで、経費にはなりません。2つの判例からわかるのは、その資格によって得られる地位や職業がある場合には、資格取得費用は家事費になる可能性が高いです。

資格取得費用は高額になることも多く、経費にできれば節税効果が大きい場合もあります。判断が難しい場合には税理士に相談してみてください。

会社が従業員の資格取得費用を負担したら給与扱いになる場合がある

会社が従業員の資格取得費用を負担した際に、以下と見なされる資格では給与扱いとなる場合があります。

  • 業務上の必要がなく、業務と直接的に関係がない
  • 主として従業員個人の経済的な利益につながるものである

これらの資格取得費用は、国税庁が「No.2508 給与所得となるもの新規タブで開く」に記載している「個人的債務を免除又は負担したことによる経済的利益」にあたると考えられるからです。

例えば、税理士は業務独占資格に該当するため、資格取得費用は原則として経費計上できません。さらに、税理士資格は取得による利益や権利が本人のみに帰属し、他人へ譲渡・承継できない「一身専属」の資格という側面も持ちます。そのため、資格取得による新たな職業的地位獲得を目的とするものであり、会社が取得費用を負担すると、その分は従業員への給与とみなされる可能性があります。

資格取得費用が給与として扱われる場合、従業員にとっては所得税や社会保険料などの負担が増えることにつながります。

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資格取得費用を経費にするときの勘定科目

資格を取得する際の費用は、以下の勘定項目を使用します。

  • 研修費
  • 福利厚生費
  • 新聞図書費
  • 旅費交通費

それぞれ4つの勘定科目がどのような場合に適用されるのかについて解説します。

研修費

最も一般的な勘定科目です。これは、従業員の業務上必要なスキル獲得を目的とした教育関連の活動や業務上必須となる資格を取得する際の費用が研修費に該当します。

具体的には、社外で催される有料セミナーや講習会・研修会、業務遂行上必要な資格取得に必要な費用、経理担当者などが簿記検定などの業務上必須となる資格の検定料や受験料などがあげられます。また、マナー研修のような入社間もない従業員向けの研修等の費用についても研修費として計上できます。

福利厚生費

企業が給与・賞与とは別に、従業員全体を対象とした福利厚生制度の一環として資格取得や研修にかかる費用を負担する場合には、福利厚生費として処理できることがあります。

ただし、福利厚生費として認められるためには、全従業員を対象としていること、業務との一定の関連性があること、金額が社会通念上相当な範囲内であることが必要です。

特定の従業員のみを対象とした資格取得費用や、自己啓発・キャリアアップを主目的とする講座の受講費用等については、福利厚生費とは認められず、給与として課税される可能性があります。

新聞図書費

業務上必要な新聞や雑誌、書籍を購入した場合は新聞図書費での計上が可能です。中でも、従業員がその資格取得のためにテキストや過去問題集などを購入した場合にはこの勘定科目に該当します。加えて、スキルの向上のために参加した勉強会で、書籍などを使用した場合も同様に新聞図書費に該当します。

なお、従業員が資格取得に向けて購入した書籍であっても、業務上直接関係がないと見なされると新聞図書費として計上できません。

旅費交通費

業務上必要な資格を取るにあたり、試験会場まで往復する際に発生した交通費については旅費交通費として計上できます。またスキルの向上を目的に参加した講習や研修などの交通費も「旅費交通費」に当たります。

交通費は、研修費や福利厚生費に含めて計上するケースもありますが、社内で管理しやすいように同様の取引については共通の勘定科目を使うようにしましょう。

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資格取得の費用を経費計上するときの仕訳例

資格を取る際の費用について、どの勘定科目が適しているかが把握できたら実際に仕訳をしてみましょう。本章では、研修費の仕訳例について詳しく紹介します。

研修費の仕訳の方法

ここでは、2つのケースの仕訳例を取り上げます。

  • 例1:資格取得のためのセミナー代5,000円を支払った。
  • 例2:セミナー代1年分、120,000円を支払った。

例1:資格取得のためのセミナー代5,000円を支払った。

セミナーの受講料5,000円を現金で支払った例の場合、以下のように仕訳を行います。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
研修費 5,000円 現金 5,000円

借方には、勘定科目「研修費」と実際に支払った費用を記載します。貸方には支払方法の「現金」と実際に支払った費用を記します。後に取引内容を把握できるように、必要に応じて摘要欄にいつ・どのような内容だったのかを記載しておくと安心です。

例2:セミナー代1年分、120,000円を支払った。

セミナーの受講料1年分について、120,000円を現金で支払った例の場合、以下のように仕訳を行います。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前払費用 120,000円 現金 120,000円

講習や研修会などは、一度だけではなく長期にわたって継続的に開かれることが多くあります。長期にわたるセミナーの受講料を前払いした場合は「前払費用」で処理します。

例えば、会計期末が3月の企業が「2025年12月から2026年11月まで」の1年間を通して行われるセミナーの受講料120,000円を、2025年10月時点に現金で全額支払った場合、以下のように計上します。

  • 1.
    支払った時点

    受講料の全額を「前払費用」の勘定科目で処理します。

  • 2.
    会計期末時点

    前払費用として計上したもののうち、2025年の費用として算入できるのは、12月~3月の4か月分の40,000円です。そこで会計期末時点では以下のように処理します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
研修費 40,000円 前払費用 40,000円
  • 3.
    翌期になった時点

    残りの2026年の8か月分の80,000円を「研修費」として計上します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
研修費 80,000円 前払費用 80,000円

借方に勘定科目の「研修費」とその金額、貸方に勘定科目「前払費用」と金額を記載します。

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資格取得の費用を経費計上するときの注意点

経費として計上する際、特に注意すべき点は1つです。整合性のある記帳を行うためにも、あらかじめ押さえておきましょう。

資格取得費用の証憑を保管しておく

企業/個人事業主問わず、資格を取る際にかかる費用を経費として扱う際には領収書とともに資格の内容がわかるものも保管しておきます。

具体的には以下のような資料です。

  • 講習や研修に参加した際の領収書
  • 資格の合格証明書
  • 試験を受験したことがわかる受験票

上記のような証憑から、当該資格が業務に直接必要なものであることがわかれば、経費としての妥当性を証明できるためです。税務調査の際にはっきりと説明できるように日頃から準備しておくと安心です。

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合格お祝い金は課税対象になる

資格を取る際に一時金として、いわゆる合格祝い金や合格報奨金を従業員に出す場合は、税金が課されます。企業が報奨金を支払った場合、給与所得と見なされて課税対象になるためです。

報酬金を支給する場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、受け取ることができる基準を就業規則や給与規定などで明確にしておきましょう。

判断に悩む場合には、税理士などの専門家に確認してください。

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資格取得にかかる費用は正しく経費計上しよう

資格を取得する際に必要となる費用は、原則として業務に直接関係があれば経費になります。ただし、資格取得を前提として新たに独立・開業が可能となる場合や、現行業務との関連性が乏しい資格については、個人の資質向上や事業開始準備と判断され、経費にはできません。また、経費として計上する際には「資格取得のために講習会を受けた」「書籍を購入した」などどのような支出だったのかによって、勘定科目を分けて管理するといいでしょう。経費として取り扱えるのか判断に迷う場合は、税理士などの専門家に確認してください。

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  • 機能やサポート内容はプランによって異なります。

photo:Getty Images

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この記事の監修者高崎文秀(税理士)

高崎文秀税理士事務所 代表税理士/株式会社マネーリンク 代表取締役
早稲田大学理工学部応用化学科卒
都内税理士事務所に税理士として勤務し、さまざまな規模の法人・個人のお客様を幅広く担当。2019年に独立開業し、現在は法人・個人事業者の税務顧問・節税サポート、個人の税務相談・サポート、企業買収支援、税務記事の監修など幅広く活動中。また通常の税理士業務の他、一般社団法人CSVOICE協会の認定経営支援責任者として、業績に悩む顧問先の経営改善を積極的に行っている。

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