売上債権回転期間とは?計算方法や短縮するための対策を解説
監修者: 小林祐士(税理士法人フォース)
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企業が安定的に経営を続けるためには、資金繰りは重要な要素といえます。売掛金や受取手形といった売上債権を確実に回収することも、資金不足を未然に防ぐための大切な対策の1つです。こうした売掛金の回収にかかる平均的な期間を示す指標は、「売上債権回転期間」と呼ばれます。安定的な事業運営を続けるには、この売上債権回転期間を意識することが大切です。
本記事では、売上債権回転期間の重要性や計算方法について解説します。売上債権回転期間の長期化によるリスクや短縮するための対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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売上債権回転期間は、売掛金の回収にかかる平均的な期間を示す指標
売上債権回転期間とは、取引先から代金を回収するまでに平均してどの程度の期間がかかっているかを把握するための指標です。売上債権回転期間を把握することで「資金がいつ入るのか」「現金化までにどの程度の時間がかかっているのか」を可視化できるため、企業のキャッシュ・フローや資金繰りに大きく影響する指標といえます。
売上債権には、売掛金や受取手形などが含まれ、これらの回収スピードを表すのが、売上債権回転期間です。売上債権回転期間は、売上高とのバランスに加えて、売上債権の残高や回収期日または市場金利なども考慮することが大切になります。
なお、適切な売上債権回転期間は、業種や自社の状況によって変動します。現金商売が多い小売・飲食業であれば回転期間は短くなる傾向があり、法人相手の掛け取引が多い製造業・卸売業などでは長くなる傾向があります。すべての業種や企業に共通する「適切な売上債権回転期間」は存在しないことを理解しておきましょう。
売上債権についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
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売上債権回転期間の重要性
売上債権回転期間は、企業の資金繰りやキャッシュ・フローに直結するため、適切に管理することが大切です。売掛金の回収が長期化すると、手元資金が不足し、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。売上債権回転期間が長くなるほど資金的余裕がなくなり、経営の柔軟性が失われるリスクが高まるでしょう。
このような理由から、売上債権の回収状況を日常的に確認し、長期化を防ぐ体制を整備する必要があります。長期的な視点から、業績だけでなく資金管理の観点も踏まえて、自社にとって適切な売上債権回転期間をバランス良く判断することが大切です。
売掛金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
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売上債権回転期間の計算方法
売上債権回転期間とは、売掛金などの売上債権が平均して何日または何か月で回収されているかを示す指標です。したがって、一定期間の売上高に対する売上債権の割合を基に、売上債権回転期間を算出できます。実務では、売上債権回転期間を月数または日数単位で把握するのが一般的です。この場合、それぞれ以下の計算式を用います。
売上債権回転期間の計算式
- 売上債権回転月数=売上債権÷(年間売上高÷12か月)
- 売上債権回転日数=売上債権÷(年間売上高÷365日)
これらの計算を正確に行うには、仕訳を丁寧に行い、売上債権に該当する取引を正しく分類する必要があります。売上債権回転期間などの指標を自動で計算・記録できる会計ソフトを活用することで、作業効率やデータの正確性を高めることができるでしょう。
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売上債権回転期間の長期化がもたらすリスク
売上債権回転期間が長期化することで、さまざまなリスクが高まる可能性があります。想定される主なリスクとして、以下の2点があげられます。
資金繰りの悪化
売上債権回転期間の長期化がもたらすリスクとして、資金繰りの悪化があげられます。
売上債権回転期間が延びるほど現金化のタイミングが遅れ、手元資金が不足しやすくなります。そのため、現金の流れが鈍化し、給与や仕入代金など定期的な支払に対応できなくなる可能性があるでしょう。
こうしたリスクを未然に防ぐには、資金の流れを正確に把握しておかなければなりません。資金の流れを正確に把握するためにも、資金繰り表やキャッシュ・フロー計算書を活用し、少なくとも月次単位で資金の流れを継続的に分析することが大切です。
貸倒れリスクの増加
貸倒れリスクの増加も、売上債権回転期間の長期化がもたらすリスクの1つです。
取引先企業の経営状態が何らかの原因により悪化した場合、売上債権が回収不能となるリスクが高まり、場合によっては貸倒れとなる可能性も考えられます。
売上債権の回収が長期化すれば、資金繰りの悪化を招くおそれがあり、状況によっては外部からの資金調達が必要となるケースもあります。さらに、貸倒れが起きると回収予定だった資金が失われ、資金不足のリスクが一段と高まるでしょう。その結果、追加の借入が必要になり、負債比率の上昇により企業の財務的な健全性が悪化することになるだけではなく、利息負担が経営を圧迫することもあります。このようなリスクを回避するためには、取引条件の見直しや取引先に対して早期入金を促す割引制度の導入など、売上債権回転期間を短縮するための取り組みが求められます。
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売上債権回転期間を短縮するための対策
売上債権回転期間を短縮するには、いくつかの対策が有効です。ここでは、2つの具体的な対策について見ていきましょう。
分割請求による資金回収を行う
売上債権回転期間を短縮するための対策の1つが、取引金額が高額になりやすい場合に分割請求による資金回収を行うことです。
分割請求による資金回収に切り替えることで売上債権を無理なく回収できるようになります。一度に大きな金額を請求した場合、支払が遅れるリスクが高くなりますが、分割請求にすることで、取引先が支払を行いやすくなり、回収リスクの軽減が期待されます。回収金額を分割し、取引先との合意に基づいた計画的な支払スケジュールを提供することは、滞納リスクの低減にもつながるでしょう。
売掛金管理を見直す
売掛金管理の見直しも、売上債権回転期間を短縮するための対策としてあげられます。
売上債権回転期間の短縮には、定期的に入金状況を確認できる仕組みを整えておくことが大切です。そのためには、会計ソフトなどを活用して入金状況を自動的に記録・確認できるようにするとよいでしょう。請求書の支払期日が不明確、または把握しにくい状態であると、取引先の支払遅延に気づかなくなる可能性があります。結果として、資金回収の遅れが発生しやすくなります。そのため、請求時には支払期日を明確に示すと共に、期日どおりに入金されているか随時確認できる仕組みを構築することが必要です。
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売上債権回転期間の短縮が難しい場合は、仕入債務回転期間の延長も有効
売上債権回転期間の短縮が難しい場合には、仕入債務回転期間の延長といった、資金繰りに余裕を持たせるための補完的な施策の検討も有効です。
仕入債務とは、商品や原材料などを仕入れた後、未払いになっている支払代金のことを指します。自社は売上については債権者である一方、仕入については債務者であることから、回収した売掛金を仕入の支払にあてられれば資金繰りの悪化を防ぐことができます。売上債権の回収を早めることが難しい場合は、仕入債務回転期間の延長を図ることも、資金繰りの余裕を確保するうえで有効な取り組みといえるでしょう。
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仕訳を登録するたびにAIが学習するので、徐々に仕訳の精度が向上します。
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売上債権回転期間を正確に算出するには正確な仕訳が不可欠
売上債権回転期間は、売掛金の回収にかかる平均的な期間を示す指標であり、企業のキャッシュ・フローや資金繰りを適切に管理するうえで重要な役割を果たします。手元資金が不足するリスクを抑えるには、売上債権回転期間を的確に把握し、長期化している場合は適切な対策を講じることが必要です。売上債権回転期間を正確に算出するには、日頃から正確な仕訳処理を行うことが前提となります。会計ソフトを活用し、売掛金の記帳や回収状況を随時確認できる体制を整備することをおすすめします。
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よくあるご質問
売上債権回転期間の計算方法は?
売上債権回転期間は月数(12か月など)や日数(365日など)単位で把握するのが一般的です。月数・日数単位での算出には、それぞれ「売上債権回転月数=売上債権÷(年間売上高÷12か月)」「売上債権回転日数=売上債権÷(年間売上高÷365日)」を用います。この計算を正確に行うには、売上債権に該当する取引を適切に分類する必要があります。日々の仕訳を正しく行い、常に最新の状態を維持することが大切です。
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この記事の監修者小林祐士(税理士法人フォース)
東京都町田市にある東京税理士会法人登録NO.1
税理士法人フォース 代表社員
お客様にとって必要な税理士とはどのようなものか。私たちは、事業者様のちょっとした疑問点や困りごと、相談事などに真剣に耳を傾け、AIなどの機械化では生み出せない安心感と信頼感を生み出し、関与させていただく事業者様の事業発展の「ちから=フォース」になる。これが私たちの法人が追い求める姿です。