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勘定科目の雑費にはいくらまで費用を計上できる?注意点などを解説

経費の計上に用いる勘定科目の1つが雑費ですが、仕訳にあたって判断に迷いやすい勘定科目でもあります。帳簿付けをしていて、「雑費はいくらまで計上していいのか」「そもそも雑費にはどのような費用が該当するのか」といったお悩みの経験がある方も多いのではないでしょうか。
中には、「勘定科目に迷ったら雑費に計上しておけばいい」と考えている方もいるかもしれませんが、それは誤りです。雑費として計上できる費用には一定のルールがあり、仕訳にあたっては適切に処理する必要があります。
本記事では、雑費として計上できる費用や消耗品費・雑損失との違い、雑費を計上する際の注意点などについて解説します。

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雑費にいくらまで費用を計上できるかは明確な決まりはない

雑費とは、事業上の費用のうち、他の勘定科目に当てはまらないものを仕訳するときに使用する勘定科目のことです。少額かつ一時的な出費で、他に該当する勘定科目がない経費が発生したときは、雑費として処理をすることができます。
雑費には、税法上「いくらまで」と上限を定める明確なルールはないため、「勘定科目に迷ったら、とりあえず雑費で計上しておこう」と考える方もいるかもしれません。しかし、雑費は少額かつ一時的な出費で、他に該当する勘定科目がない経費に用いる勘定科目です。他に適した勘定科目がある場合、少額な出費でも、その勘定科目で仕訳しなければなりません。該当する勘定科目がない場合でも、その費用が高額だったり継続的だったりする場合は、新しく適切な勘定科目を割り当てる必要があります。

なお、雑費の上限が定められていないからといって、何でも雑費として計上してしまうと、実際には何のために費用を使ったのか、本当に事業に必要な費用だったのかが不明瞭になってしまいます。また、事業状況を分析するうえでも、雑費が多すぎると、帳簿を見ても内容がわからず支出の傾向を把握しにくくなるため注意しましょう。
決算書の信頼性を担保するためには、雑費の金額は多くても経費全体の5%から10%が目安だといわれています。もし、その目安よりも雑費の金額が多くなりそうなときは、適切な勘定科目を新たに割り当てることをおすすめします。

雑費とその他の勘定科目との使い分け

では、具体的にどのような費用が雑費として計上できるのでしょうか。ここからは、雑費として計上できる費用の具体例や、雑費と混同されやすい「消耗品費」「雑損失」との違いについて解説します。

雑費として計上できるもの

前述したように、雑費として計上できるのは、少額かつ一時的な出費で、他に該当する勘定科目がない経費です。事業上の優先度や重要度が高くなく、独立した勘定科目で仕訳するほどでもない少額の費用は、雑費の勘定科目で処理してもよいでしょう。
なお、雑費に仕訳される主な経費には、以下のようなものがあります。

雑費に仕訳されることがある経費の例

  • ソフトウェアのバージョンアップ代
  • ゴミ処理代
  • クリーニング代
  • 引越し費用
  • 臨時的な清掃費
  • 自治会費

ただし、雑費に該当するかどうかは、経費の種類ではなく、「該当する他の勘定科目がないか」「高額ではないか」「一時的な支出か」といった点から判断する必要があります。高額または継続的に発生する費用の場合は、他の適切な勘定科目で仕訳をするようにしましょう。
例えば、事業に関連したゴミ処理代は、「支払手数料」や「設備維持費」といった勘定科目で仕訳が可能です。自治体のゴミ処理券を購入した場合は支払手数料、設備のメンテナンスなどに伴い不用品を処分した場合は設備維持費(固定資産であれば固定資産除却損)に該当します。また、事務所などの移転に伴う引越し費用は「荷造運賃」、自治会費は「諸会費」で計上できます。

雑費の仕訳例

ここでは、雑費の仕訳例について具体的に見ていきましょう。雑費を計上する際には、以下のように仕訳をします。

仕訳例:ゴミ回収料金1万円を、現金でゴミ処理業者に支払った

借方 貸方 摘要
雑費 10,000円 現金 10,000円 ゴミ回収料金

仕訳例:事務所の清掃料金5,000円を、普通預金から清掃業者に支払った

借方 貸方 摘要
雑費 5,000円 普通預金 5,000円 事務所清掃料金

なお、雑費として計上できる清掃費は臨時的なものに限ります。事務所や店舗などの清掃費が定期的に発生するような場合は、雑費とは別に「衛生管理費」の勘定科目で計上した方がいいでしょう。

消耗品費との違い

雑費と混同されやすい勘定科目に消耗品費があります。消耗品費は、短期間に消耗する少額の物品を購入したときに処理する勘定科目です。具体的には、「使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費」と定められており、帳簿や文房具、コピー用紙、電池など短期間で消耗する物品の購入費用に対して用いられます。
なお、短期間で消耗する物品であっても、取得価額が10万円以上のものは基本的に固定資産となり、減価償却をして毎年一定額を費用として計上することが必要です。ただし、青色申告をしている中小企業や個人事業主は、所定の要件を満たせば、取得価額が30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上できる特例があります。
その一方で、雑費は物品の購入に対してかかる費用ではありません。雑費として計上されるのは、他の勘定科目に振り分けられない少額かつ一時的な費用であり、上述の雑費に仕訳される経費の例のように、主に目に見えないサービスにかかる支出を仕訳する際に使われます。例えば、臨時的に発生したゴミ処理代は雑費として計上しますが、そのときに購入したゴミ袋の代金は消耗品費になります。

雑損失との違い

雑費と間違われやすい勘定科目としては、雑損失もあげられます。雑損失とは、主たる営業活動以外の原因から生じる営業外費用のうち、金額が小さく独立した勘定科目で計上するほどの必要性のない費用を処理する勘定科目です。具体的には、盗難による損失や現金過不足などが雑損失に該当します。なお、雑費と雑損失の違いは、「本業と関係があるかどうか」という点にあります。雑費は、本業の売上を上げるためや本業の業務を管理するためにかかった経費の1つですが、雑損失は本業とは関係なく発生した損失です。他の勘定科目に当てはまらない少額の支出という意味では似ていますが、性質がまったく異なるため混同しないように気を付けましょう。

雑費として費用を計上するときの注意点

雑費の計上には、明確な上限の定めはありません。しかし、雑費の金額が大きすぎると、税務調査で不審に思われたり、事業の実態を把握しにくくなったりすることがあります。雑費として費用を計上するときには、以下の点に注意しましょう。

他に該当する勘定科目がないか確認する

雑費を計上するときには、他に該当する勘定科目がないかどうかをよく確認することが大切です。少額かつ一時的な出費であっても、他に当てはまる勘定科目がある場合は、適切な勘定科目で仕訳をします。
例えば、雑費と思われがちな振込手数料や代引手数料などは、「支払手数料」の勘定科目に該当するほか、印鑑証明書、納税証明書、登記事項証明書(登記簿謄本)などの発行手数料は「租税公課」での計上が必要です。
「細かい支出だから雑費」「どの勘定科目を選ぶかわからないから雑費」などと安易に計上していると、雑費の金額が大きくなり、実際に何にどれだけ費用がかかったのかがわからなくなります。さらに、雑費が多すぎると正確な事業内容を決算書に反映するのが難しくなり、税務署や金融機関の信用を落とすことにもなりかねません。そのため、雑費を計上する前に改めて該当する勘定科目を見直し、可能な限り雑費以外の適切な勘定科目に振り分けるようにしましょう。

継続的または多額の費用なら新しく勘定科目を追加する

他に該当する勘定科目がない場合でも、継続的に発生する費用や金額の大きい費用については、新しく勘定科目を割り当てることが大切です。仕訳で用いる勘定科目は、既定のもの以外にも、任意で割り当てることができるため、頻繁に発生する費用は、新しく勘定科目を追加した方が記帳の負担が軽減されます。さらに、適切な勘定科目を割り当てることで支出の傾向を正確に把握できるようになり、経費の管理も行いやすくなります。例えば、事業に必要な書籍を購入した場合、一時的な出費であれば雑費で処理しても問題ありませんが、何度も購入するようであれば新聞図書費などの勘定科目を新たに割り当てるといいでしょう。
なお、担当者によって使用する勘定科目が違うと、お金の流れを正しく把握できなくなるため、勘定科目を追加するときには、「どの費用をどの勘定科目で仕訳をするか」という統一した社内ルールを定めておくことをおすすめします。

摘要欄に詳細を記入する

雑費を多く用いると、費用の用途が不明瞭と見なされ、税務調査で内訳を精査されることがあります。雑費を計上するときには、内訳がきちんとわかるように、何のための費用なのかを摘要欄に記載しておくことをおすすめします。
摘要欄とは、帳簿に記録された取引の内容をわかりやすくするために、具体的な情報を記載する欄のことです。帳簿に記載されているのが日付と雑費という勘定科目、金額だけだった場合、後で見たときにどのような出費だったかを思い出すのが難しくなります。税務調査の際、帳簿を見ても何の費用か思い出せなかった場合、調査完了までの期間が長引くうえ、経理管理がずさんという印象を与えることになるかもしれません。
特に、雑費は他の勘定科目に比べて費用の実態をつかみにくいものです。雑費を計上する際には、摘要欄の記入を忘れないように注意しましょう。

消費税区分に注意する

雑費として費用を計上するときには、消費税区分を間違えないようにしましょう。取引には、消費税が課税される「課税取引」と、消費税がかからない(または免除される)「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」があります。雑費として計上できる取引の多くは課税取引に該当しますが、中には不課税取引や非課税取引もあるため注意が必要です。例えば、自治会費や町内会費といった雑費は不課税となり、課税仕入にはなりません。また、立退料や起工式・地鎮祭で納める玉串料なども不課税です。
課税事業者で一般課税(本則課税)を採用している場合は、売上にかかる消費税から仕入や経費にかかる消費税を差し引いて、納付する消費税額を算出します。なお、「雑費だから」と一括りにして課税区分を判断してしまうと、消費税の納付額が変わってしまうことがあります。消費税区分に注意して、取引の内容ごとに、課税の対象かどうかを確認することが大切です。

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雑費の多用は避け、適切な勘定科目で仕訳しよう

雑費は、少額かつ一時的な出費で、他に該当する勘定科目がない経費を処理する勘定科目です。雑費に計上できる金額の上限には明確な定めがありません。そのため、どの勘定科目を選ぶか判断に迷ったとき、雑費を多用してしまうことがあるかもしれません。しかし、費用の内容をよく確認せずに安易に雑費へ計上していると、雑費の金額が大きくなりすぎて内訳がわからなくなります。その結果、収支状況が把握しにくくなり、経費の見直しをしようと思っても、何から減らせばいいのか見当がつかない状態になるかもしれません。さらに、経費の内訳が不明瞭と見なされ、税務調査で指摘を受けることもあります。

雑費は一見便利そうな勘定科目ですが、多用は避け、できるだけ他の適切な勘定科目で仕訳をすることが大切です。また、経費の計上にあたり、改めてどの勘定科目に当てはまるのかを確認することは、本当に必要な経費なのかを見直すきっかけにもなります。他に該当する勘定科目がなかったとしても、高額または頻発する費用であれば、新たに勘定科目を割り当てることもおすすめです。なお、会計ソフトを利用すれば、新しい勘定科目もかんたんに追加することができます。経費の内訳をしっかりと把握したうえで、適切な仕訳を行いましょう。

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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。

著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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