帳簿が合わないときはどうすべき?不備をなくすためのコツも解説
監修者:渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
2024/07/11更新
会社が日々行う取引の内容は、すべて帳簿に記録する必要があります。正しく帳簿付けが行われていれば、帳簿残高と現金や預金の残高は必ず一致するはずです。しかし、帳簿の数字が実際の残高と合わないということは意外とよくあります。もし帳簿が合わない場合は、原因を見つけ出し、修正をしなければなりません。
ここでは、帳簿が合わなくなる原因や帳簿が合わないときの対処法、帳簿付けのミスをなくすための方法などについて解説します。
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正しく帳簿を記入できていないと、どうなる?
帳簿への記入が正しくできていない場合、決算書に不備が生じ、会社の信用を落とすことにもつながります。
そもそも、帳簿とは、事業を行うにあたって発生した取引や資産、負債、お金の流れなどを記録した台帳のことです。すべての会社は、法律によって、帳簿の作成と一定期間の保存が義務付けられています。
また、帳簿は会社の経理処理はもちろん、経営状態や資金繰りの状況を確認するためにも、なくてはならないものです。帳簿を正しく記入できていなければ、現時点での会社の儲けや経費などを正確に把握することもできません。
さらに、帳簿は決算書作成の基礎にもなる大切な書類です。帳簿が正しく作成できていないと、貸借対照表や損益計算書などの決算書にも不備が生じてしまうでしょう。税務申告は決算書の内容を基に行うので、納税額の計算にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、帳簿にミスがあると、たとえ故意ではなかったとしても、税務調査で誤解を招いたり警戒されてしまったりすることもあるでしょう。
帳簿を正しく記入できていないということは、会社のお金の管理状況に問題があることを意味します。会社の信用問題にもかかわることなので、ミスや漏れのないように正しく帳簿を作成する必要があります。
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帳簿付けは原則として発生主義に基づいて行う
会計処理の基本である帳簿付けは、原則として発生主義に基づいて行います。発生主義とは、実際にお金が動いたときではなく、その費用や売上が発生した時点で会計帳簿に記録する方法です。
ただし、発生主義では、取引発生時に売上を計上するため、見込まれる利益が実際に現金化されるかが不確実となり、売上を正しく認識できないというデメリットがあります。そのため、日本の会計ルールでは、費用については発生主義、売上については実現主義での記帳が採用されています。
実現主義とは、実際に売上や費用が実現した時点で売上や費用を計上する方法です。帳簿付けの原則は発生主義ですが、売上については、発生主義をさらに制限した実現主義で計上します。実現主義においては、実際にモノの引き渡しやサービスの提供が行われるため、代金を受け取る権利が確定した時点で帳簿付けを行います。
また、会計上で認められている費用や売上を記録する方法としては、発生主義、実現主義のほかに、現金主義もあげられます。現金主義とは、実際に金銭の動きがあった時点で費用や売上を計上する方法です。売上や経費について、預金や小切手などを含む現金の受け渡しが発生したタイミングで帳簿付けを行います。現金主義での記帳は基本的には認められず、例外的に、一定条件を満たした個人事業主にのみ認められます。
帳簿が合わない主な原因
一口に、帳簿が合わないといっても、その背景にはさまざまな原因が考えられます。帳簿と実際の残高の不一致に気づいたら、なぜ合わないのか、原因を見つけ出さなければなりません。
帳簿が合わない主な原因は、下記のとおりです。
計算ミスや入力ミスをしている
帳簿が合わなくなってしまう原因として多いのが、計算ミスや入力ミスです。特に、帳簿の記入や計算を手作業で行っている場合、ミスのリスクが高くなります。
計算ミスは、数値を誤って足したり引いたりしてしまった場合に発生します。例えば、小口現金の収支を計算する際には、数字の取り違えや計算の過程でミスが発生することがあります。このようなミスがあると、実際の現金残高と記録された現金残高との差異が生じ、誤差が発生してしまうのです。
レシートの紛失や取り違えがある
レシートや領収書を紛失したり、取り違えてしまったりしたことによる、一部の金額の計上漏れも、帳簿が合わない原因の1つです。もし帳簿に記載されている内容の領収書がなかった場合、架空の経費ではないかと疑われてしまうおそれがあります。
そのような場合は、取引先に領収書の再発行を依頼したり、領収書と同内容を記載した出金伝票を利用したりするなどの対処が必要です。また、クレジットカードを利用していた場合は、領収書の代わりに利用明細で支払いの事実と支払先、支払金額を確認する方法もあります。
借方・貸方を逆にしている
借方・貸方を逆にしているというのも、帳簿が合わない際の主な原因の1つです。複式簿記での帳簿付けでは、1つの取引が借方と貸方の2つに分けられます。左側に記載するのが借方、右側に記載するのが貸方です。
取引によって増減するお金を、借方、貸方のどちらに記載するかは、資産・負債・純資産・収益・費用という勘定科目のグループごとに決まります。例えば、商品を現金で売り上げたとすると、資産が増加し、収益が増加します。資産の増加が借方、収益の増加が貸方となり、左右に振り分けます。
この借方・貸方を逆に記入してしまうと、取引によって増減し勘定科目がまったく反対になり、帳簿が合わなくなってしまうのです。
二重に計上している
売上や経費で同じ項目を誤って2回計上することを、二重計上といいます。二重計上の具体例としては、クレジットカード払いした経費を、支払時に領収書を受け取ったタイミングで計上し、口座から利用金額が引き落とされたときにも計上してしまう場合があげられます。
また、1回の支払いで領収書とレシートの両方を受け取り、誤って2つとも計上してしまった場合も、二重計上になります。その他、売上代金を受け取ったときに領収書を発行したものの、不備があって再発行したなどの場合に、元の領収書と二重で売上を計上してしまうケースもあります。
売上や経費の二重計上は、利益や納税額にも影響するため、ミスのないように十分注意が必要です。税務調査で二重計上が判明した場合、粉飾決算や脱税を疑われる可能性もあります。
在庫の計上が漏れている
在庫の計上が漏れてしまうと、帳簿も合わなくなってしまうため、注意しましょう。決算の際には、商品や製品、部品などの在庫数を調べるために棚卸を行い、棚卸資産として反映させなければなりません。また、小売店など日常的に在庫を抱える業務では、在庫管理のために月1度程度の定期的な棚卸を行う必要があります。
このとき、在庫に計上漏れがあると、帳簿上の在庫数と現品数が合わなくなってしまいます。配送や保管場所の都合により社外に預けている商品(預け在庫)なども、忘れずにカウントすることが大切です。
売掛金と買掛金が合っていない
売掛金と買掛金が合っていない場合、帳簿も合わなくなります。事業の取引では、商品の販売や原材料の仕入れなどを行うとき、その都度代金の受け渡しをするのではなく、一定期間内の取引分を後でまとめて精算する、掛取引(信用取引)を行うのが一般的です。
掛取引で商品やサービスを提供した際には、売掛金として計上します。その後、入金が確認できたら、借方の売掛金を貸方に仕訳して消去する、入金消込(売掛金消込)の作業が必要です。
一方、掛取引で商品や原材料を仕入れた場合は、商品の引き渡しが行われたタイミングで買掛金を計上します。そして、後に現金預金で支払いを行った際に、買掛金を消滅させる仕訳を行います。
売掛金や買掛金は、このような複雑な仕訳が必要になるため、ミスも起こりがちです。例えば、入力ミスが原因で売掛金と入金額にズレが生じたケースや、振込手数料を差し引いて入金や出金があった場合、買掛金を計上したものの消込処理を忘れていたケースなどです。
帳簿が合わないときの対処法
月末の締め作業や期末の決算時に帳簿が合わないと、つい慌ててしまいがちですが、落ち着いて対処することが大切です。
ここでは、帳簿と実際の残高が合わないときに行うべき対処法について、ご紹介します。
元の書類に間違いがないかを確認する
帳簿が合わないときには、元の書類の数字に間違いがないかを確認することが大切です。帳簿を付ける際には、領収書やレシート、請求書、通帳など、取引の内容がわかる資料を見ながら、日々の取引を仕訳していきます。このとき、元の資料にミスがあると、当然ながら帳簿の内容も不正確なものになってしまいます。
特に、手書きの領収書や経費精算書、出金伝票などは、書き間違いや計算ミスが起こりがちです。印字された書類であっても、ミスがないとは限りません。そのため、帳簿が合わないときには、まず元の書類を確認しましょう。
誤った勘定科目で仕訳していないかを確認する
科目の入力ミスを探すことで、帳簿が合わない原因がわかる場合があります。帳簿の作成にあたっては、すべての取引を決められた勘定科目に従って仕訳しなければなりません。
勘定科目とは、取引の内容を性質ごとに分類するために使う簿記の科目のことで、その内容に応じて資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分けることが可能です。この勘定科目を間違えたことが原因で、帳簿が合わなくなる場合があります。例えば、現金で取引をしたのに「普通預金」の勘定科目を選んでしまうと、帳簿と残高は一致しなくなってしまいます。
そのため、帳簿が合わない場合は、帳簿の内容を改めて見直し、勘定科目にミスがないかを確認しましょう。
貸方と借方を間違えた箇所を探す
帳簿が合わない場合、貸方と借方を間違えた箇所を探してみることで、原因がわかる場合があります。借方と貸方を間違えて仕訳すると、帳簿は合わなくなってしまいます。
また、複式簿記では1つの取引を借方と貸方に分けて帳簿に記載し、借方と貸方の合計額は必ず一致します。もし借方・貸方のどちらかしか記載していなかった場合、帳簿の内容にもズレが生じるでしょう。
そのため、帳簿が合わないときには、借方と貸方が逆になっている箇所や、どちらか一方の記載が漏れている箇所はないか、帳簿をさかのぼって探してみることが大切です。
桁数を間違えた箇所を探す
帳簿が合わない場合、入力した数字の桁数が間違っていることがあります。桁数の間違いは、9で割ると見つけやすくなります。
例えば、合わない金額が5,715円だったとすると、5,715円÷9=635円となり、9で割り切れます。この場合は、6,350円と入力すべきところを635円と誤入力していないか(もしくはその逆)をチェックしてみましょう。つまり、6,350円か635円の数字を探すと、ミスが見つかる可能性があります。
帳簿付けのミスを減らすには?
帳簿が合わないと、ミスの原因を見つけて修正しなければならず、非常に手間がかかります。そのような手間と時間をなくすには、そもそもミスが起こらないような記帳を心掛けることが大切です。
ここでは、帳簿付けのミスを減らすための3つの方法について、それぞれ説明します。
こまめに帳簿を付ける
帳簿のミスを減らすうえで大切なのは、記帳と確認をこまめに行うことです。決算前にまとめて記帳をしようとすると、作業量が膨大になるうえ、ミスも起こりやすくなります。また、帳簿が合わなかった場合、1年分の記帳内容を見直さなければならず、非常に手間がかかります。期末に慌てることのないよう、日ごろからしっかりと帳簿付けをするようにしましょう。
日々の帳簿付けが難しい場合は、月末に一度帳簿を締めて、その月の収入と支出をまとめ、残高と一致するか確認しておくのもおすすめです。
精算をキャッシュレス化する
帳簿付けのミスを軽減するには、経費精算をキャッシュレス化するのも1つの方法です。例えば、経費の支払いに法人カードを利用すれば、申請ミスや計算ミス、現金の渡し間違いなどを防ぐことができるでしょう。従業員用の追加カードを発行することで、経費の一元管理も可能です。
さらに、後述する会計ソフトと法人カードを連携させれば、さらにミスが軽減できます。会計ソフトの中には、クレジットカードの取引明細を自動で取り込み、自動で仕訳できるソフトもあります。そのような会計ソフトを活用すると、業務効率化と同時に、経費の計上漏れや入力ミスなども防ぐことが可能です。
会計ソフトを導入することで、手計算をやめる
帳簿付けのミスを減らすには、会計ソフトを導入し、帳簿付けを自動化するのが効果的です。表計算ソフトや手書きで帳簿を作成していると、どうしてもミスが起こりやすくなります。手書きや手入力で帳簿を付けるには専門知識が不可欠ですし、書き間違いや抜け漏れ、計算ミスなどが発生する可能性も高くなるでしょう。
会計ソフトを使えば、手作業での計算や転記が不要になり、過去の取引データを探したい場合もスムースです。ミス防止と同時に、業務負担の軽減にも役立ちます。
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この記事の監修者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)
税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。