経費に勘定科目「雑費」の多用はNG?経費項目のポイント

2021/09/29更新

この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

日々の経理をしていると、どの勘定科目で処理すればよいのかわからなくなるときがあります。そのときに、なんとなく「雑費」として計上していませんか?

雑費はそのような使い方をするための勘定科目ではありません。実際に雑費が多すぎるとどのような問題が起こりうるのか説明します。

POINT

  • 雑費とは「金額が少なく、特定の勘定科目で処理するほど重要性がない費用」を処理するための勘定科目
  • 雑費を多用すると、経費の内訳が分かりにくくなったり、確定申告書の信頼性が薄れたりする
  • 雑費を使う際には、自分なりのルールを決めて使うようにするとよい

勘定科目に困ったら「雑費」にしておけばいい?

事業を営んでいると、さまざまな経費を支出します。そして、経理処理を行う際には、経費の種類ごとにさまざまな勘定科目を使用します。このとき、可能な限り勘定科目は適切に振り分けるようにしましょう。

勘定科目の1つに「雑費」という科目があります。いかにも何にでも使えそうな科目で、「勘定科目に迷ったら雑費に計上しておけばいい」と、さまざまな経費を雑費で計上している人もいるのではないでしょうか?

しかし、「雑費」は実際のところ、何でも計上するための万能科目ではありません。雑費とは「金額が少なく、特定の勘定科目で処理するほど重要性がない費用」を計上するための勘定科目です。

どの程度の金額で、どれくらいの重要性かは、売上規模などによるので一概には言えませんが、処理しようと思えば別の勘定科目で処理できるけど、金額的に少ないから便宜上「雑費」という勘定科目が設けられていると理解してください。「処理する勘定科目がわからないからとりあえず雑費!」という使い方をしていい科目ではないのです。

少なくとも特定の勘定科目で処理できるのであれば、その科目で処理したほうがよいです。もし、処理すべき勘定科目がわからなければ、「その支出がなぜ経費で計上できるのか」を今一度考えてみて、あるべき勘定科目で計上しましょう。

雑費で処理しがちな例

ほかの勘定科目で処理すべきところを雑費にしがちなものについて、リストアップしてみました。

消耗品費

雑費で処理されがちな代表例が「消耗品費」です。固定資産にならないような金額の備品類を処理するための勘定科目です。例えば清掃用品や飲食店の厨房器具、オフィス家電などが該当します。日常の消耗品とはイメージが違うため、とりあえず雑費というケースが多いように思えます。

備品関係は迷ったらとりあえず消耗品費で計上しておけばよいでしょう。ただし、もし1点10万円を超えるような備品、例えばパソコンなどを購入した場合には「工具器具備品」という勘定科目で処理します。その上で、減価償却で段階的に必要経費として計上していきます。

事務用品費

消耗品費と並んで雑費にしてしまいがちなのが「事務用品費」です。こちらは文房具などオフィスの仕事で使う事務用品を処理する勘定科目です。

こちらは消耗品費との区別がつきにくいということで、事務用品費という勘定科目は使わずに消耗品費でまとめて処理することもあります。まとめて消耗品費で計上することは問題ありませんが、雑費で処理するのは避けましょう。

支払手数料

「支払手数料」も雑費で処理しがちなので要注意です。銀行の振込手数料のほか、何かのサービスを利用するための手数料などでこの科目を使用します。

モノを購入した対価というわけではないので、よくわからず雑費にしているということもあるので、「手数料」と付けば、まずは「支払手数料」への計上を考えましょう。

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「雑費」が多いことの問題点

雑費を多用すると、具体的にどのような問題が生じるのでしょうか。結局経費に計上できる総額は変わらないのだから、雑費が多くても税務署としては納税額がずれなければ問題ないのでは、という声も聞こえてきそうです。

そこで、雑費が多いことで起こりうる問題点を整理してみましょう。

経費の見直しが困難になる

何でも雑費に入れると、会計ソフトや帳簿、確定申告書上で、どのような費目にいくら使っているかということがわからなくなってしまい、経費の見直しをしようと思ってもほとんどが雑費だと何を減らせばいいか見当がつかないという問題が起こります。

また、できあがった確定申告書で、あまりにも雑費の比率が多ければ、見栄えもよくありませんし、融資を検討して銀行に見せるときにも、指摘されるかもしれません。数字が正確だったとしても、雑費が大きすぎるということは、第三者から見れば、日々の経理をいい加減にやっていると思われても仕方がないのです。

また、経費を計上するときに、今一度どの勘定科目に当てはまるのかを考えてみることは、本当に必要経費なのかということを見直すことにもつながります。何かわからないけど、とりあえず財布にレシートが入っていたから経費に入れておこう、という場合に雑費で処理してしまうことがあるかもしれません。適切な勘定科目を自分なりに判断することは、必要経費かどうかを見つめなおす契機にもなります。

税務調査が来る!?

雑費の計上が多いと税務調査に入られやすい、という話を聞くことがあります。実際のところ税務調査先の選定は、売上規模や黒字の状況などを見て、税務署で決めています。そのため、「雑費の計上が多い」「経費に占める雑費の割合が多い」というだけで税務調査がやってくるわけではありません。

しかし、もし同じ売上規模で、同じような利益水準の個人事業主がいれば、経費構造が気になるほうに税務調査に入るケースはあるかもしれません。一方は消耗品費や支払手数料などしっかりと区分して経理していて、もう一方はほとんど雑費という場合、やはり雑費が多いほうを調査したくなるものです。もしかしたら雑費の中にプライベートな支出が紛れ込んでいるかもしれませんし、そうでなくても雑費の中身を細かく見たくなるでしょう。

さらに、雑費が多いと税務調査の際にも経費の調査に時間を要しますし、やはり普段からしっかりと経費は区分して経理することが重要です。

勘定科目「雑費」の正しい使いどころ

一切の費用について雑費を使ってはいけないわけではありません。繰り返しになりますが、雑費は「金額が少なく、特定の勘定科目で処理するほど重要性がない費用」を処理する勘定科目です。もちろん、たとえ金額が少なくても、適切に分けられるなら適切な勘定科目にしたほうが、その科目で使用した正確な金額が把握できます。つまり「こうした種類の費用は雑費」というルールが存在しているわけではないのです。雑費に計上する金額については自分なりにルールを作りましょう。

繰り返すようですが、より具体的な勘定科目で処理できるのであれば、雑費を使用しないほうがよいです。ですが、特に自ら経理を行っている個人事業主などで忙しくて手が回らず、一枚ごとのレシートについて勘定科目を考えるのが面倒で、とにかく雑費に計上してしまおうとする場合もあるかもしれません。判断に悩む経費が出てきたら、例えば「後で判断する科目」という勘定科目を作成し、一旦その勘定科目で仕訳を行い、後で再度吟味する、という手もあります。

また、会計ソフトを使っているのであれば、適切な勘定科目が見当たらないときは自分なりに勘定科目を作るのもよいでしょう。例えば、何かのシステムを利用するために支払っている費用であれば、「システム利用料」といった勘定科目を作るという感じです。

ビジネスによっていろいろな経費が発生するので、もともと会計ソフトに入っていない勘定科目について作成することは何ら問題ありません。むしろ、経費の内訳をより分かりやすくするためにも、やったほうがよいでしょう。

勘定科目「雑費」は既存の経費項目に当てはまらない場合に用いよう

自分で経理をしていると、つい面倒になって、雑費を多用してしまうことがあるかもしれません。しかし、これまで説明してきた通り、雑費とは、金額が少ないから便宜的に認められている科目であり、実際にはほかの科目が適切なのであれば、その勘定科目で処理すべきです。

「この種類の経費は雑費で処理しよう」といった基準を自分なりに作って処理するのであればよいですが、内容を吟味せずに「とりあえず雑費に入れておこう」といったことは避けましょう。

とはいえ、他にどのような勘定科目があるのかをしっかりと理解していないと、適切な勘定科目を選択することもできません。まずは、会計ソフトでどのような勘定科目が用意されているのかを理解し、雑費ではない、より中身が分かる勘定科目を選択するようにしましょう。

photo:Getty Images

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この記事の執筆者渋田貴正(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士)

税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、起業コンサルタント®。
1984年富山県生まれ。東京大学経済学部卒。
大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。
在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。
2013年にV-Spiritsグループに合流し税理士登録。現在は、税理士・司法書士・社会保険労務士として、税務・人事労務全般の業務を行う。
著書『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’21~’22年版新規タブで開く

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