【令和7年(2025年)分】給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方(記入例あり)
監修者:税理士法人古田土会計 社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
2024/09/26更新
企業が従業員に提出を求める書類の1つが、扶養控除等(異動)申告書です。扶養控除は、企業に勤める従業員に認められているさまざまな所得控除の一種であり、従業員の所得税額にも大きく関わってくるため、企業の担当者は当該書類に記載すべき内容などを正しく理解しておかねばなりません。
本記事では、扶養控除等(異動)申告書の書き方、記載すべき内容や作成時の注意点などについても解説します。
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給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは?わかりやすく解説
国税庁のサイトに記載されている説明によれば、「扶養控除」とは「納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられる」ことをいいます。
扶養親族とは、「配偶者以外の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)または里子(さとご)など」の要件を満たしている人のことを指し、子どもや父母、兄弟姉妹、孫、祖父母などで、同じ財布から生活費を賄っていて、働いていないか、働いていたとしても所得の少ない人のことです。
※控除対象扶養親族について詳しくは後述します。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、給与所得のある者が扶養控除を申告するために必要な書類のことです。申告することによって、所得税と住民税を算出するための年間合計所得額から一定額が差し引かれ、税額が低減されます。企業に勤めている給与所得者であれば、年末近くになると担当者から記入すべき書類として渡されることとなります。
企業においては年末調整業務を行う際に必要な書類となるため、その年の最初の給与を支払う日の前日まで(新卒や中途入社の場合は入社後、最初の給与を支払う日の前日まで)に従業員から回収します。
提出されない場合、給与所得者は控除を受けられず、年末調整も行われません。控除を受けるには確定申告を行う必要があります。申告書が従業員から出されなかったなどの理由で、企業が年末調整を行わなければ、所得税法違反となることがあります。したがって、申告書が提出されなかった場合は、企業は適切な対応を検討しましょう。
提出が必要な人(対象者)は?
年末調整を行うすべての従業員が対象です。万が一、従業員が提出しなかった場合は、給与支払者である企業は扶養控除の計算が必要かどうかを判断できないばかりか、年末調整業務にも支障を来してしまいます。
申告書の提出の要否に、従業員の雇用形態は問われません。正社員はもちろん、パートやアルバイトなどでも、給与所得がある場合には提出が必要です。ただし、以下の要件に該当する場合は、提出の必要はありません。
- 年間の給与所得が2,000万円を超えている
- 複数の箇所から給与を受け取っており、別の企業に申告書を出している
- 12月の給与支払い日前に退職した
要件に該当する人は年末調整の対象とならないため、提出の必要はありません。ただし、扶養親族の有無に関係なく、年末調整の対象となるすべての従業員が提出する必要があります。提出しないと甲欄適用ができないため、各従業員について「扶養控除が必要かどうか」を把握するためにも、必ず申告書を回収しましょう。
いつまでに提出する?
通常は、年末調整のタイミングで従業員から回収します。扶養控除等(異動)申告書を回収するにはまず、当年分と翌年分の書類を従業員に配付します。例えば2024年の年末調整時には「令和6年(2024年)分」と「令和7年(2025年)分」の申告書を配付します。
当年分は、従業員が前年の年末に記入したもので、当年の年末調整の計算に使用します。従業員によっては、結婚や出産があったり、配偶者の所得が変化したりして、前年の記入時点とは状況が変わっている場合もあります。配付された従業員は、当年分の内容に訂正や追記の必要がないかを確認し、もし変更点がある場合は修正のうえ、再提出します。
紙の申告書を使用している場合には、修正箇所に二重の線を引いて、線の上または下に正しい内容を記載し直します。もしくは「異動月日および事由」の欄に書き込んでも差し支えありません。以前は訂正箇所に訂正印を押す必要がありましたが、現在は不要です。
翌年分は、翌年1月以降の給与から源泉徴収する所得税の計算に使用します。当該月分の給与計算をするときまでに回収できれば、実務上は問題ありませんが、提出漏れなどを防ぐために、当年分の申告書や年末調整に必要な他の書類とあわせて提出してもらうことが一般的です。
ダブルワークなど複数箇所で働いている場合
扶養控除等(異動)申告書を同時に複数の勤務先に提出することはできません。ダブルワークで2か所以上から給与を受け取っている場合には勤務先1か所に提出します。対象となる従業員に対しては、自社に提出するのかどうかを事前に確認してください。
ダブルワークをしている場合には、確定申告が必要になることがあります。給与所得者であっても、2か所以上から給与の支払を受けている場合で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合には、確定申告が必要です。
所得額が20万円以下の場合や、給与の収入金額の合計額から雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合には、確定申告は不要です。
確定申告は従業員本人が行うべき手続きですが、適切に行わないとペナルティを受けることになりますので、担当者は従業員に対し注意喚起しましょう。
提出しなかった場合はどうなる?
給与から源泉徴収(天引き)される所得税額は、源泉徴収税額表によって決定されます。源泉徴収税額表の課税区分には甲欄と乙欄(と丙欄)とがあり、申告書を出した従業員は甲欄、提出していないと税額が高くなる乙欄が適用されます。従業員が本申告書を提出しない場合は、給与から源泉徴収される所得税額が高くなってしまいます。
企業は、本申告書を回収できていない従業員の年末調整を行えないため、納税額を確定させるためには、従業員本人が確定申告をしなければなりません。経験したことがない人にとっては戸惑うことの多い手続きであり、扶養控除等(異動)申告書を書くのに比べて、はるかに大きな負担となります。
扶養控除等申告書などの必要書類を回収できなかったなどの理由で、年末調整業務が適切に行われなかった場合、従業員に不利益が生じることがあります。企業は、こうしたリスクを避けるためにも、年末調整の際に必要な書類を確実に回収し、適切に対応することが重要です。
【記入例あり】令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方
扶養控除等(異動)申告書には、従業員の基本的な情報をはじめ、控除対象となる扶養親族の情報も記載します。記載するのは従業員ですが、「書き方がわからない」など担当者に相談してくるケースは十分に考えられます。このような質問を受けた場合に適切に回答できるようにするためにも、書き方を理解しておく必要があります。
ここでは、令和7年(2025年)分の扶養控除等(異動)申告書の書き方を、以下の項目について、記入画像例を交えて詳しく解説します。
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1.基本情報
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2.源泉控除対象配偶者の情報
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3.控除対象扶養親族の情報
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4.障害者・寡婦・ひとり親または勤労学生の情報
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5.他の所得者が控除を受ける扶養親族等の情報
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6.住民税に関する情報
(1)基本情報
一番上の段には、従業員本人の基本情報(給与支払者である勤務先の社名や所在地、自身の氏名・住所など)を記入します。給与支払者の法人番号は企業が記載します。
個人番号(マイナンバー)は、所定の要件を満たしていれば、記入を省略できます。マイナンバーの記入が不要な場合は、事前に周知しておきましょう。
(2)源泉控除対象配偶者の情報
一定の要件を満たしていれば、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられます。該当する配偶者がいる場合には、当該情報を記入します。
一定の要件とは、年間の合計所得金額が900万円以下の人と生計を一にしている配偶者で、その配偶者の合計所得金額が95万円以下であることです。ただし、配偶者が青色申告者の事業専従者でその年に給与支払いを受けているか、または白色申告者の事業専従者であれば、源泉控除対象配偶者には該当しません。
該当するか否かを判断する基準である900万円以下および95万円以下が、納税者本人と配偶者の年間の合計所得金額である点に注意してください。双方が給与収入のみの場合は、本人の収入が1,095万円以下(所得金額調整控除を適用しない場合)、配偶者の収入が150万円以下であれば、要件を満たします。
(3)控除対象扶養親族の情報
納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合には、一定額の扶養控除を受けられます。扶養親族とは下記の要件をすべて満たす親族のことです。
- 納税者(従業員)と生計を一にしている
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者でその年にその年に一度も給与支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
控除対象扶養親族とは、扶養親族の中でも、その年の12月31日時点での年齢が16歳以上の人を指します。さらに令和5年(2023年)分以降の所得税については、非居住者の扶養親族に関しても「その年12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満」「障害者」などに該当すれば、控除対象扶養親族になります。
本欄に記入するのは控除対象扶養親族だけです。16歳未満の扶養親族については、後述する「住民税に関する情報」欄に記入します。
(4)障害者・寡婦・ひとり親または勤労学生の情報
障害者控除や寡夫控除、ひとり親控除、勤労学生控除の要件を満たしている場合には、該当する箇所にチェックを入れ、必要な情報を記入します。
障害者欄
障害者控除を受ける際に記入します。障害者の範囲は納税者本人や配偶者、扶養親族であり、障害者と特別障害者、同居特別障害者の区分によって受けられる控除額が異なります。障害者控除の対象となるのは以下に該当する人です。
- 精神の障害によって普段から事理を弁識する能力が欠けている人
- 知的障害者更生相談所や精神保健指定医などから知的障害者と判定された人
障害者控除の対象となる範囲については国税庁の公式サイトなどであらかじめ確認しておきましょう。
該当者と区分の欄にチェックを入れるほか、人数を記載して、障害の等級や障害者手帳の有無などを記載します。なお、障害者控除について年齢は問われません。
寡婦欄
寡婦控除を受ける際に記入します。寡婦とは、その年の12月31日時点でひとり親ではない女性で、かつ、以下に挙げる要件のいずれかを満たしている人のことをいいます。
- 夫と離婚後に再婚しておらず、扶養親族がいる人で、年間の合計所得額が500万円以下
- 夫との死別後に再婚していない人、または夫の生死が明らかでない人で、年間の合計所得額が500万円以下
上記いずれかの要件を満たしていても、事実婚関係にある相手がいる人は対象外です。また、扶養親族の要件はありません。
ひとり親欄
ひとり親控除を受ける場合に記入します。対象となるのは、その年の12月31日時点で婚姻していないか、配偶者の生死が明らかでない一定の人で、以下の要件をすべて満たす人です。
- 内縁関係や事実婚関係にある相手がいない
- 生計を一にする子どもがいる
- 年間の合計所得額が500万円以下
「生計を一にする」には同居・別居要件はありませんので、子どもと別居していても、例えば納税者(従業員本人)が学費や医療費、生活費などを子どもに送金している、といったケースでは、ひとり親控除の対象となります。
ただし、年間の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族の子どもは対象外です。
勤労学生欄
勤労学生控除を受ける場合に記入します。勤労学生とは、次に挙げる要件をすべて満たす人のことをいいます。
- 勤労によって給与所得などがある
- 年間の合計所得金額が75万円以下で、かつ上記の勤労による所得以外の所得が10万円以下
- 特定の学校の学生、生徒である
特定の学校とは、小学校や中学校、高校、大学、専修学校、職業訓練学校などが該当し、細かく定められています。もし、従業員から「自分は勤労学生に該当しているのか?」などの相談を受けた場合には、国税庁の公式サイトを確認したうえで回答してください。
(5)他の所得者が控除を受ける扶養親族等の情報
同一世帯に2人以上の所得者がいる場合、同一人物をそれぞれの扶養親族として重複申告することはできません。子どもがいる共働き世帯でも、扶養控除を申告できるのは夫か妻かのどちらかだけです。
夫が子どもを扶養親族とした場合には、妻は「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄に子どもと夫の情報を記入します。共働きで、夫が長子を、また妻が次子を扶養親族とするなど、同世帯内で扶養親族を分けて、控除を受けることは可能です。
(6)住民税に関する情報
16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象外ですが、住民税の対象として算入されます。16歳未満の扶養親族がいる場合は、本欄に必要事項を記入します。
配偶者や扶養親族の退職所得は納税者の所得税には算入されませんが、住民税には算入されます。住民税の控除申告漏れを防ぐため、従業員に退職手当がある配偶者や扶養親族がいる場合は忘れずに記入します。
年末調整の対象者全員が提出する扶養控除等申告書の注意点
本申告書を提出するのは、毎月の給与を源泉徴収税額表の課税区分の甲欄で計算するすべての従業員です。パートやアルバイトなどの雇用形態は問われません。この扶養控除等申告書の提出を条件に、甲欄が適用されます。控除対象となる扶養親族などがいない場合でも、控除の有無を確認するために提出する必要があります。
年末調整業務をスムーズに行うには、担当者が本申告書をはじめ、提出すべき書類の正しい書き方を正確に把握しておく必要があります。従業員からどのような相談を受けても答えられるように、十分な知識を身につけておきましょう。
扶養控除等申告書は記入ミスのないように注意しよう
扶養控除等(異動)申告書は、企業が年末調整業務をスムーズに進めるためにも重要な書類です。内容に誤りや抜け、漏れがあると、年末調整業務に支障を来すだけでなく、従業員の納税額にも影響してきます。正しい知識を身につけておきましょう
企業は定められた期日までに従業員の所得税額などを確定し、税務署へ申告し、納税する義務があります。企業は扶養控除等(異動)申告書を速やかに回収する必要があります。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
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