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給与所得者の基礎控除申告書とは?書類の書き方や控除額の計算を解説

会社が年末調整を行う際に従業員から提出してもらう書類がいくつかあります。「給与所得者の基礎控除申告書」もその1つですが、毎年従業員に提出を依頼する一方で、どんな控除が受けられるのかわからないという方もいるかもしれません。給与所得者の基礎控除申告書を提出する対象となるのは、正社員、パート、アルバイトなど、会社が給与を支払うすべての従業員のため、正しい内容について理解しておくことが大切です。

本記事では、給与所得者の基礎控除申告書の目的や書き方の他、申告書の記載内容を基にした控除額の計算方法についても解説します。

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給与所得者の基礎控除申告書とは基礎控除を適用するための書類

「給与所得者の基礎控除申告書(以下、基礎控除申告書)」とは、会社員などの給与所得者が、年末調整で基礎控除を適用するために必要な書類です。基本的にすべての従業員は、この基礎控除申告書を勤務先に提出することになっています。

基礎控除申告書は、「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」の3つが含まれた、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という書類です。1枚の書類の提出で、3つの控除を受ける事が可能です。

なお、2024年(令和6年分)に関しては、上の3つに「定額減税のための申告書」の内容が追加され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書」という書類名称になっています。

以下の図の左部分にある記載項目が、基礎控除申告書に当たります。

給与所得者の基礎控除申告書の内容

給与所得者の基礎控除申告書の内容

基礎控除とは?

基礎控除申告書によって申告する「基礎控除」は、年間の合計所得金額が2,500万円以下の人に適用される所得控除です。所得控除とは、要件が満たされれば所得金額から一定の金額を差し引くことができる税制上の制度です。所得控除が適用されれば、所得税の計算のベースになる課税所得が減るので、税負担が軽減されます。

基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じて段階的に控除金額が変わります。合計所得金額に応じた基礎控除の額は、以下の表のとおりです。

合計所得別の基礎控除額
納税者本人の合計所得金額 基礎控除額【改正後】 基礎控除額【改正前】
2,400万円以下 43万円 33万円(所得制限なし)
2,400万円超2,450万円以下 29万円 33万円(所得制限なし)
2,450万円超2,500万円以下 15万円 33万円(所得制限なし)
2,500万円超 0万円 33万円(所得制限なし)

合計所得金額とは、その年に得た所得の合計額です。その年の収入が給与だけであれば、給与収入(額面年収)から給与所得控除を差し引いた「給与所得」が、合計所得金額ということです。個人事業で副業をしている会社員など、給与所得の他に事業所得や不動産所得などがある場合は、それらの合計額となります。

なお、基礎控除は、合計所得金額が2,500万円以下であれば、給与所得者でも個人事業主でも同様に適用されます。ただし、基礎控除申告書を作成するのは、勤務先で年末調整を行う給与所得者のみです。個人事業主の場合は、確定申告の際、確定申告書に基礎控除の金額を記入します。

給与所得者の基礎控除申告書の書き方

基礎控除申告書に記入するのは、対象となる年の合計所得金額の見積額と、それに応じた控除額です。申告書を記入する時期は、一般的にその年の収入が確定する前となるため、本人の収入金額・所得金額は見積額を計算して記入することになります。

以下の図の番号に沿って、基礎控除申告書の書き方を、項目ごとに詳しく解説していきます。

1年間の合計所得金額の見積額を計算する欄

給与所得者の基礎控除申告書

(1)給与所得に関する収入⾦額

申告書の「給与所得」の「収入金額」欄には、1年間(1~12月)の給与収入の金額を記入します。このとき記載する金額は、社会保険料や税金などが差し引かれる前の課税支給額です。手取り額ではないので注意しましょう。

年末調整の書類を作成するのは、一般的に11月から12月上旬ごろになるため、12月の給与の支払いが終わっていないことも多いでしょう。その場合は、確定していない給与については概算を見積もり、それまでの給与と合算して、その年の概算見積額を算出します。なお、複数の勤務先から給与を受け取っている場合は、すべての給与収入を合算した金額を記入します。

(2)給与所得に関する所得⾦額

申告書の「給与所得」の「所得金額」欄には、給与所得の金額を記入しましょう。給与所得の金額は、(1)の給与収入の金額から給与所得控除の額を差し引いたもので、給与の収入額によって異なります。具体的には、基礎控除申告書の裏面に記載の、以下の表に従って求めることができます。

給与所得の金額の計算方法

給与所得の金額の計算方法

なお、所得金額調整控除の適用を受ける場合は、上の表に従って求めた給与所得の金額から、所得金額調整控除の控除額を差し引いた額を記入します。

所得金額調整控除には2種類ありますが、年末調整で受けられる控除は「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」のみです。控除を受けるためには、年末調整の対象となる給与収入の額が850万円を超える方のうち、以下のいずれかに該当することが条件です。

年末調整における所得金額調整控除の条件

  • 本人、同一生計配偶者または扶養親族が特別障害者である
  • 23歳未満の扶養親族がいる

また、所得金額調整控除額を求める計算式は、以下となっています。

所得金額調整控除額の計算式

所得金額調整控除額=(給与などの収入金額-850万円)×10%(1円未満の端数は切り上げ)

ただし、給与などの収入金額が1,000万円を超える場合は、金額を1,000万円として計算を行います。

(3)給与所得以外の所得の合計額

申告書の「給与所得以外の所得の合計額」の「所得金額」欄には、給与以外に所得がある人が、それらの所得の合計金額を記入します。給与以外の所得とは、事業所得、雑所得、配当所得、不動産所得、退職所得などのことです。例えば、副業収入がある場合、その収入の種類に応じて適切な所得の額を記入します。また、事業所得の場合は売上から経費を差し引いた額、雑所得の場合は収入金額から必要経費を引いた金額などを記入します。作成時点でその年の所得が確定していなければ、概算の見積額を入れましょう。
給与以外の所得がないなら、ここには「0」を記入します。

(4)あなたの本年中の合計所得金額の見積額

「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」欄には、(2)の給与所得⾦額と(3)の給与所得以外の所得の合計額を合算した金額を記入します。この金額が、その年の合計所得金額の見積額になります。

控除額の計算

「控除額の計算」欄では、まずは(5)の表に、(4)で計算した合計所得金額の見積額を当てはめ、該当する数字の左側の四角にチェックを入れます。
その後、(5)でチェックを入れた基礎控除の額を、(6)「基礎控除の額」欄に記入しましょう。

(5)の「控除額の計算」でチェックを入れた金額に、(A)(B)(C)(D)のいずれかの記載がある場合は、その記号を(7)「区分Ⅰ」欄に記入します。記載がない場合は、何も記入しないままで問題ありません。

また、(5)の「控除額の計算」でチェックを入れた金額が定額減税対象となる場合は、(8)「本人定額減税対象」の四角にチェックを入れます。

定額減税の対象となるのは、は2024年(令和6年)の所得税と住民税の納税者で、合計所得金額が1,805万以下の個人です。ただし、給与所得のみの場合は年収2,000万円以下、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」を適用する場合は、年収2,015万円以下の個人が対象です。

基礎控除申告書の記入例

次に、基礎控除申告書の記入例を見ていきましょう。例えば、給与収入の見積額が500万円で他に所得がなく、所得金額調整控除が適用されない人の場合、基礎控除申告書の記入の手順は以下のようになります。

実際の金額を入れた基礎控除申告書の記入例

実際の金額を入れた基礎控除申告書の記入例

1. 給与所得に関する収入⾦額

給与収入の見積額が500万円なので、「5,000,000」と記入します。

2. 給与所得に関する所得⾦額

上で解説した「給与所得の金額の計算方法」の表に従い、給与所得を以下のように計算します。

500万円÷4=125万円

125万円×3.2−44万円=356万円

3. 給与所得以外の所得の合計額

給与所得以外に所得はないので「0」となります。

4. あなたの本年中の合計所得金額の見積額

356万円+0円で356万円となります。

5. 控除額の計算

356万円を表にあてはめると、「900万円以下」の欄に該当するのでチェックを入れます。

6. 基礎控除の額

「控除額の計算」表により、基礎控除の額は48万円になります。

7. 区分

「控除額の計算」表にチェックを入れた欄に(A)とあるため、「A」と記入します。

8. 本人定額減税対象

定額減税対象なので、チェックを入れます。以上で申告書の記入が完了です。

基礎控除申告書の修正方法と修正可能期間

もし基礎控除申告書の記入内容に誤りがあった場合は、後から訂正することが可能です。その場合は、訂正したい箇所に二重線を引き、正しい内容を記入します。訂正印はなくても問題ありません。

ただし、基礎控除申告書の修正には期限があります。会社は、基礎控除申告書をはじめとした年末調整に関連する書類を、対象となる年の翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。そのため、基礎控除申告書の修正は、会社が税務署に書類を提出する前に行う必要があります。

もし修正が間に合わなかった場合は、従業員本人が確定申告を行うことで、基礎控除を正しく申告できます。確定申告の期限は、原則として対象となる年の翌年2月16日から3月15日まで(土日祝の場合は翌平日)です。

スムースに年末調整を進めるために、給与計算ソフトを活用しよう

基礎控除申告書は、年末調整の際に従業員から提出してもらう書類の1つです。申告書の記入内容に誤りがあると、基礎控除が正しく適用されずに従業員の納税額にも影響が出てしまうため、書き方をしっかり確認しておきましょう。特に、2024年(令和6年分)に関しては、「定額減税」の項目が追加となっているため注意が必要です。

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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング

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