個人事業主の定額減税はどうなる?やり方や確定申告のポイントを解説
監修者: 中川 美佐子(税理士)
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2024年(令和6年)から定額減税が実施されています。個人事業主の場合、どのように減税が適用されるのか、住宅ローン控除やふるさと納税への影響があるのかなど、疑問が尽きない方も多いでしょう。
本記事では、定額減税の概要や導入の背景、対象者、申請方法について詳しく解説します。特に申請方法については、パターン別に具体的な流れを紹介します。また、配偶者や扶養する家族が対象となる条件についても、ポイントを解説します。
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定額減税とは?
定額減税とは、2024年(令和6年)4月1日に施行された「令和6年度税制改正法」に盛り込まれた制度であり、納税者本人とその配偶者や扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が2024年の税金から控除されるものです。
定額減税について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
定額減税とは何か
定額減税とは、2024年(令和6年)から実施されている所得税および住民税の特別控除です。
この措置は、昨今の物価上昇に賃金が追いつかない現状を踏まえ、国民の税負担を軽減することを目的としています。また、経済の安定化を図り、完全なデフレ脱却を目指す政府の経済政策の一環としても位置づけられています。
定額減税によって、対象者の手取り収入が一時的に増加し、家計の支援につながることが期待されています。具体的には、所得の高低に関わらず一定額が減税されるため、中低所得層を中心に幅広い国民に恩恵が及ぶ見込みです。さらに、減税措置によって消費意欲の喚起を促進し、内需拡大への貢献も期待されています。
なお、所得が基準以下で、納税していない層は定額減税の対象外となります。その代わりとして、住民税非課税世帯や、住民税均等割のみ課税世帯に対しては、各地方自治体から給付金が支給される予定です。
定額減税の対象者
所得税の定額減税(特別控除)の対象者は以下のとおりです。
参照:国税庁「定額減税について
- 2024年(令和6年)分所得税の納税者である居住者
- 2024年(令和6年)分の所得税にかかる合計所得金額が1,805万円以下
- 給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下)
」
住民税の特別控除の対象者は以下のとおりです。
参照:内閣官房「定額減税・各種給付の詳細
- 2024年度(令和6年度)分個人住民税所得割の納税者である居住者
- 2023年(令和5年)分の市民税・県民税にかかる合計所得金額が1,805万円以下
- 給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下(子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の適用を受ける方は、2,015万円以下)
」
以上のとおり、高額所得者を除いた納税者が定額減税(特別控除)の対象となります。さらに、所得税・住民税共に、納税者本人だけでなく、同一生計配偶者と扶養親族が定額減税(特別控除)の対象です。
なお、同一生計配偶者とは以下の要件をすべて満たす人を指します。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は除く)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
扶養親族とは、以下の要件をすべて満たす人のことです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)であること、または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと
定額減税の減税金額
定額減税(特別控除)される金額は納税者本人と、同一生計配偶者または扶養親族1人につき所得税が3万円、住民税が1万円です。
例えば、納税者、同一生計配偶者、扶養親族1人の家族構成で考えます。この場合、所得税の減税額は「3万円×3人=9万円」、住民税の減税額は「1万円×3人=3万円」となり、合計で12万円の減税となります。
個人事業主が定額減税を申請するには?確定申告のポイント
定額減税は、個人事業主にとって重要な節税措置です。給与所得者や公的年金受給者は特別な手続きをせずに定額減税の特別控除を受けられますが、個人事業主の場合は、自ら申請手続きを行う必要があります。そのため、どのように申請するかが非常に重要です。
さらに、この減税の適用は2024年(令和6年)分の納税額に基づいて決定されるため、正確かつ適切に申請する必要があります。誤った申告や手続きを怠ると、減税を受けられない可能性があるため、注意が必要です。
以下では、個人事業主が所得税と住民税の定額減税を受けるための具体的なポイントを詳しく解説していきます。
「所得税」個人事業主の定額減税の受け方
個人事業主が定額減税を受ける際は、予定納税か確定申告かで対応が異なります。
予定納税対象者は確定申告を待たずに本人分の定額減税額が減額されます。同一生計配偶者または扶養親族の定額減税に相当する額は、予定納税の減額申請の手続で定額減税を減税することができます。また、予定納税の対象でない方は、確定申告することで、定額減税額が減税されます。
それぞれのパターンについて詳しく解説していきます。
予定納税対象者(扶養家族がいない場合)
予定納税とは、前年の所得金額や税額に基づき、事前に納税を行う制度です。予定納税基準額が15万円以上の場合に適用され、所得税と復興特別所得税の一部を確定申告より前に納めます。
予定納税は、1回目が2024年(令和6年)7月(納期限令和6年9月30日)、2回目が2024年(令和6年)11月(納期限令和6年12月2日)に予定されており、それぞれで予定納税額の3分の1を納付します。
2024年(令和6年)7月に予定納税がある個人事業主の場合、その納税金額を減額する形で定額減税を実施します。1回目の予定納税で減額しきれない場合、2回目で引ききれない金額を控除します。さらに、1回目と2回目の予定納税でも控除しきれない場合は、確定申告時に引ききれない金額を控除します。この場合、確定申告で減額分を控除することを忘れないよう、特に注意が必要です。
予定納税対象者(扶養家族がいる場合)
同一生計配偶者や扶養親族がいる場合、予定納税ではその分が自動的に特別控除の対象とならないため、注意が必要です。この場合、予定納税額の減額申請手続き(第1期・第2期の申請期限は令和6年9月30日)を行うことで、控除することが可能です。あるいは、確定申告で同一生計配偶者や扶養親族の分の減税額を控除する方法もあります。
確定申告
2023年(令和5年)分の納税額が15万円未満であれば、定額減税は2024年分(令和6年分)の確定申告で行うことになります。このため、会社員などの給与所得者や、納税額が15万円以上の個人事業主に比べて、減税のタイミングは少し遅くなります。
「住民税」個人事業主の定額減税の受け方
住民税の計算は地域の市区町村が行うため、納税者本人が計算する必要はありません。住民税は通常、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納付します。2024年(令和6年)6月分の納付書には、定額減税が控除された住民税が記載されているので、そのとおりに納付しましょう。
定額減税が第1期の6月分の納付で控除しきれなかった場合、残りの控除額は次期以降に繰り越されます。ただし、控除が二重に適用されたり、逆に控除されなかったりする可能性を考えて、自身で納付書を確認し、不備がないか注意することが重要です。
個人事業主が確定申告で定額減税を受けるためのポイント
定額減税は納税者本人のみならず、同一生計配偶者や扶養親族も対象です。ただし、定額減税(特別控除)を受けるためには条件があります。以下では、これらの条件について詳しく解説していきます。
16歳未満の扶養家族も定額減税の対象となる
通常、所得税の扶養控除においては、16歳未満の扶養親族は控除の対象外で、その控除額は0円となっています。しかし、今回の定額減税では、16歳未満の扶養親族も対象になります。この点は見落とされやすい部分なので気を付けましょう。16歳以上の場合も、同一生計配偶者や扶養親族であれば定額減税の対象です。
同一生計配偶者は合計所得が48万円以下の場合に対象となる
同一生計配偶者が定額減税の対象となるには、年間の合計所得金額が48万円以下でなければなりません。給与所得のみの場合、給与収入が103万円以下です。この基準を超えると、同一生計配偶者は対象外となります。その場合、配偶者が個人事業主であれば配偶者自身の確定申告で対応し、給与所得者であれば勤務先で定額減税の特別控除が行われます。
誤って二重に申請してしまうと、後から訂正が必要になる可能性があるため、同一生計配偶者の所得状況を正確に確認することが重要です。この点は、扶養親族についても同様なので気を付けましょう。
青色事業専従者は給与によって異なる
青色事業専従者とは、青色申告をしている事業主の下で働く親族のことを指します。青色事業専従者が定額減税の対象となるかどうかは、その給与額によって異なります。以下に、それぞれの給与額について解説していきます。
青色事業専従者について、こちらの記事で解説しています。
青色事業専従者で給与が発生していない場合
青色事業専従者として登録されている場合でも、赤字などの理由で、2024年(令和6年)に給与が一度も支払われていないケースでは、同一生計配偶者や扶養親族として定額減税の対象になります。したがって、事業主である納税者本人が、予定納税額の減額申請手続きや確定申告を行うことで、特別控除されます。
青色事業専従者で給与が月88,000円以上の場合
親族が青色事業専従者として給与を受け取っている場合、納税者の同一生計配偶者や扶養親族とはされず、定額減税の対象にはなりません。
ただし、月88,000円以上の給与を受け取っている場合、親族(青色専従者)本人が給与所得者として、その給与に対して定額減税が適用されます。具体的には、給与から源泉徴収される所得税に対して、定額減税が反映される形になります。
青色事業専従者で給与が月88,000円以下の場合
青色事業専従者の給与が月88,000円以上支払う場合、源泉所得税の計算と納付が必要となり、個人事業主は事務手続きに手間がかかります。
そのため実務では、青色事業専従者の給与をきりのよい月80,000円以下に設定しているケースが多く見られます。これは、地域差はありますが、住民税が発生する給与の額が年間93万円から100万円を超える場合、所得税が発生する給与の額が年間103万円を超える場合であるためです。
給与を月80,000円以下に抑えることで家族の所得税や住民税を0円にするというこのやり方は、一般的に行われています。しかし、前述の通り、青色事業専従者として一定額以上の給与を受け取っている場合には納税者の同一生計配偶者や扶養親族には該当せず、定額減税の対象にはなりません。また、所得税や住民税の負担がないため、青色専従者本人としても定額減税を受けられません。
そこで2024年(令和6年)8月現在、調整給付金が支給されることが決定されています。この調整給付金に関しては各地方自治体から詳細な情報が提供される予定ですので、該当する方は最新の情報に注意を払う必要があります。
定額減税は住宅ローンやふるさと納税に影響しない
定額減税は、住宅ローン控除やふるさと納税への影響はありません。
住宅ローン控除とは、一定の要件を満たして住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に、年末残高に応じて所得税から控除が受けられる制度です。定額減税は、住宅ローン控除などの控除を適用した後に行われます。したがって、住宅ローン控除の控除額が減るということはありません。また、定額減税によって引ききれなかった分は、調整給付金として給付されるため、実質的には損をすることはありません。
ふるさと納税は、地方自治体に寄付を行うことで、所得税や住民税の一部が控除される制度です。ふるさと納税の上限額は、定額減税の額を特別控除する前の所得割額で決まるため、定額減税の影響を受けません。
定額減税とふるさと納税について、こちらの記事で解説しています。
個人事業主の定額減税への対応には確定申告ソフトの活用を
定額減税は、2024年に実施される所得税と住民税の特別控除措置です。主に年収が一定以下の納税者と同一生計配偶者、扶養親族が対象であり、1人あたり所得税3万円、住民税1万円が減額されます。また、住宅ローン控除やふるさと納税に影響はありません。
個人事業主の場合は、申請手続きや控除の適用時期に注意しましょう。確定申告ソフトなどを活用して、適切に対応することが重要です。「やよいの白色申告 オンライン」「やよいの青色申告 オンライン」は、操作質問に加えて業務相談までできる充実のプランもご用意しているため、申告手続きを誰かに相談しながら進めたい人でも安心です。ぜひご活用ください。
- ※2024年8月時点の情報を基に執筆しています。
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この記事の監修者中川 美佐子(税理士)
税務署の法人税の税務調査・申告内容の監査に29年勤務後、令和3年「たまらん坂税理士法人」の社員税理士(役員)に就任。法人の暗号資産取引を含め、法人業務を総括している。
