特定扶養親族とは?控除額や控除の条件をわかりやすく解説
特定扶養親族に該当するのはどのような人か、具体的にはわからない方がいるかもしれません。本記事では特定扶養親族の概要や年末調整で特定扶養親族の控除を申告する方法、控除額の計算方法などについて解説します。
【初年度0円】クラウド給与計算ソフトで大幅コスト削減【全機能無料でお試し】
【初年度0円】給与明細をかんたん作成・スムーズ発行【法令改正に自動対応】
特定扶養親族とは
特定扶養親族とは、扶養親族のうち特定の年齢の扶養親族です。具体的には、年末調整や確定申告をする年度の12月31日時点での年齢が、19歳以上23歳未満の方を指します。
特定扶養親族がいる場合、納税者は特定扶養親族控除を受けられます。控除額は所得税で63万円です。
以下、控除額については所得税についてを表します。
扶養親族とは
扶養親族とは、納税者と生計を一にしている特定の親族を指します。以下の4つの要件をすべて満たす方が対象です。
-
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
-
(2)納税者と生計を一にしていること。
-
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(※2)。
(※2)上記(1)に該当する方の所得が給与所得だけの場合は、給与収入が103万円以下であることとなります。 -
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
また、扶養控除とは、その年の年末時点で年齢が16歳以上であるという要件を満たす「控除対象扶養親族」がいる場合に、一定の税額を軽減する制度です。なお、扶養控除は非居住者(国外居住者)も対象です。
特定扶養親族に非居住者がいる場合、以下の書類を勤務先に提出します。
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出時:「親族関係書類」「留学ビザ等書類」
- 年末調整時:「送金関係書類」
親族関係書類とは、以下のいずれかです。
-
①戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
-
②外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
なお、その国外居住親族の親族関係や住所又は留学の事実等に異動がない場合には、前年以前に提示した「親族関係書類」や「留学ビザ等書類」を再度提示することも可能です。
その場合は、給与等の支払者が扶養控除等申告書などの提出を受ける際に、その国外居住親族との親族関係や留学の事実について前年と変更がないかを申告書の提出者に確認してもらう必要があります。
送金関係書類とは、以下のように定められています。
居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの
例えば、金融関係の書類・写しや、クレジットカードの書類・写しなどです。また「居住者」とは国内に1年以上住んでいる人で、この場合、国外居住親族を持つ納税者を指します。
特定扶養親族の対象者
特定扶養親族がいる場合、経済的な負担への配慮から税制上の優遇措置があります。
特定扶養親族は、扶養親族の中でも申告年度の12月31日時点の年齢が、19歳以上23歳未満の方です。年末調整の書類を提出した時点では18歳だとしても、12月31日までに19歳になる方は特定扶養親族に該当します。
特定扶養親族の詳細な条件
特定扶養親族における年齢以外の要件は以下の4つです。
- 配偶者以外の親族である
- 特定扶養親族の年間合計所得金額が48万円以下である
- 納税者と生計が同一である
- 納税者が事業を行っている場合、事業専従者として給与を支払っていない
年少扶養親族との違い
年少扶養親族とは、その年の12月31日時点で16歳未満の扶養親族です。年少扶養親族は、所得税・住民税が控除されず児童手当が支給されます。なお、児童手当は2024(令和6)年10月から高校生まで支給されるようになります。高校生への支給は、18歳の年度末(3月31日)までです。
特定扶養親族の控除額は63万円
特定扶養親族の控除額は、他の扶養親族控除額とは異なります。
一般の控除対象扶養親族 | ||
---|---|---|
一般の扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
特定扶養親族の節税効果をシミュレーション
特定扶養親族の控除額は、所得税63万円、住民税45万円です。しかし、この額がそのまま節税額になるわけではありません。控除額に所得税率や住民税率をかけた額が節税額となります。
以下に、課税所得が600万円、20歳の大学生を扶養親族とするケースでの計算方法を紹介します。
所得税の節税額
所得税の節税額は以下のように計算します。
控除額 | 63万円 |
---|---|
所得税率 | 20% |
節税額 | 63万円 × 20% = 12万6,000円 |
また、所得税の税率ごとでの節税額は、以下のとおりです。
(復興特別所得税は加味していません)
所得税 | 税率 | 節税額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 3万1,500円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 6万3,000円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 12万6,000円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 14万4,900円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 20万7,900円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 25万2,000円 |
4,000万円超 | 45% | 28万3,500円 |
住民税の節税額
住民税は、税率が道府県民税4%+市町村民税6%で計10%、特定扶養親族の控除額は45万円です。そのため、節税額は以下のように計算します。
控除額 | 63万円 |
---|---|
所得税率 | 20% |
節税額 | 63万円 × 20% = 12万6,000円 |
特定扶養親族の控除を申告する際の注意点4つ
特定扶養親族の控除は、要件に当てはまる場合のみ適用されます。以下の4点に注意しましょう。
- 対象となる年齢が定められている
- 子供一人につき親一人のみ適用される
- 納税者本人と生計が同一でないと控除を受けられない
- 扶養親族の合計所得金額や所得区分によっては控除を受けられない
対象となる年齢が定められている
特定扶養親族とは、申告年度の12月31日時点で、19歳以上23歳未満の方を指します。そのため、早生まれ(1月~3月生まれ)の扶養親族がいる場合には注意が必要です。例えば、大学1年生の子供が早生まれだと、12月31日時点では18歳です。そこで、大学1年次には、一般の控除対象扶養親族の控除(38万円)が適用されます。
4月~12月生まれの方と比較すると、早生まれは18歳で大学に入学し、4年間で卒業・就職する場合、3年間しか特定扶養親族控除が受けられず、控除総額が少なくなります。ただし、例えば22歳の年に大学院生になるといった形で引き続き扶養親族になる場合は、4年間の控除が可能です。
子供一人につき親一人のみ適用される
特定扶養親族が子供であり、扶養者である両親にいずれも所得があるといった形で、同世帯に所得者が二人以上いる場合、控除が受けられるのは一人に限られます。これは、一人の扶養親族について二重控除がなされないようにするためです。
また、両親が離婚しており、一人の子供に両方の親が養育費を支払っている場合でも、父か母の片方のみ控除が受けられます。どちらが控除を受けるかは、法律で定まってはいないため、両親が相談して決める必要があります。
納税者本人と生計が同一でないと控除を受けられない
納税者と生計を一にしていることも、控除の要件です。「生計を一にする」とは、ただ同居しているという意味ではありません。例えば親と子が同居していても、子が就職しており生計は家族と別なら、特定扶養親族から外れるため注意が必要です。また、進学などで親と別居していても、親からの仕送りで生活している場合などは、生計を一にしているとみなされます。
扶養親族の合計所得金額や所得区分によっては控除を受けられない
扶養される親族の所得金額や所得の種類も重要です。扶養される親族の合計所得金額が年間48万円を超えていると、控除は受けられません。
また、扶養される親族が事業所得を得ている場合は、合計所得の計算方法に注意が必要です。事業所得の場合、合計所得金額は収入から経費を引いた金額を計算します。このように、扶養親族に所得があるのであれば、その所得区分も意識しなければなりません。
特定扶養親族の控除を申告する方法
特定扶養親族の控除を受けたい場合、以下のいずれかで申告します。
- 年末調整で申告する
- 確定申告で申告する
また、特定扶養親族の申告内容に間違いがあった時には、年末調整・確定申告ともに、修正ができます。
年末調整で申告する
年末調整とは、給与から源泉徴収された所得税の年間合計額と、実際の年税額の過不足を調整する手続きです。過不足があれば、返還や追加徴収を行い、年税額を一致させます。
扶養控除を受けるために年末調整を利用する場合は、手続きが必要です。勤務先で配られる「給与所得者の扶養控除等申告書」に、扶養親族の氏名、生年月日、マイナンバーなどを記入します。
確定申告で申告する
確定申告は、所得税の最終的な納税額を確定させる手続きです。特に、年末調整を行わない個人事業主やフリーランスは、原則として確定申告が必須です。
確定申告で控除を受けるには「配偶者や親族に関する事項」の欄に、特定扶養親族の氏名、生年月日、マイナンバー、続柄などを記載します。その後、納税者の所得税率、控除親族の数、条件などから控除額を正確に計算しましょう。控除額は、確定申告書の「扶養控除」欄に記入します。
特定扶養親族の記入内容に間違いを見つけた時の対処方法
特定扶養親族に関する記入内容を間違えた場合や、記入内容に変更があった場合は修正が必要です。
例えば、年末調整を提出する時点で、子供の年間合計所得が48万円以下だったものが、12月31日時点では48万円を超えており、所得制限額を超え特定扶養親族から外れる場合です。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「所得金額調整控除申告書」を提出すると、年末調整のやり直しが可能です。
間違いに気付いたら、すぐ担当者に報告が必要です。ただし、企業によっては納税者自身が確定申告をして修正することもあります。
特定扶養親族についての相談先
特定扶養親族の控除を受けるには細かい要件があり、当てはまるかわからない場合には、専門家への相談をおすすめします。具体的な相談先は、以下の2つです。
- 国税局電話相談センター「税についての相談窓口」
- 税理士による無料相談会
国税局電話相談センター「税についての相談窓口」
国税に関する相談は、電話相談の場合、国税局の電話相談センターで受け付けています。また、国税庁のHP内「税についての相談窓口」にある、チャットボットやよくある質問をまとめた「タックスアンサー」のコーナーでも疑問点を調べられます。
税理士による無料相談会
特定扶養親族に関するよくある質問
確定申告の時期には、各地の税理士会が無料相談会を開催しており、特定扶養親族に関する相談も可能です。税務に関してのプロフェッショナルである税理士から、的確なアドバイスを受けることができます。扶養控除やその他の税務に関する疑問がある場合、これらの相談会を活用することもおすすめです。
令和6年の特定扶養親族の年齢は?
控除対象扶養親族の中でも、その年の12月31日時点で、19歳以上23歳未満の方を指します。令和6年の場合は、平成14年1月2日から平成18年1月1日生まれの方です。
特定扶養親族と扶養親族の違いは?
扶養親族は、納税者と生計を一にしている配偶者以外の親族です。特定扶養親族は、扶養親族の中でも19歳以上23歳未満の方を指します。
特定扶養親族の年収はいくらまで大丈夫?
特定扶養親族の控除を受けるには所得制限があります。特定扶養親族の収入がアルバイトなど給与収入のみの場合、年収の上限は103万円です。
特定扶養親族について理解しよう
特定扶養親族は、納税者の扶養親族のうち、年末調整・確定申告を行う年度の12月31日時点で、年齢が19歳以上23歳未満に該当する方です。
「納税者と生計を一にしている」「年間合計所得が48万円以下」などの要件も満たす必要があります。また「早生まれの特定扶養親族は、控除期間が短い場合がある」「控除が受けられる親族は扶養親族一人につき一人だけ」など、控除の細かい要件にも注意しましょう。
弥生のクラウド給与サービスなら給与計算・年末調整がスムーズに
弥生のクラウド給与サービスは、初心者でも給与・賞与計算から年末調整まで、”かんたん”に行えるソフトです。
従業員規模や利用目的など、お客さまに最適な「給与計算ソフト」をお選びいただけます。
今なら初年度無償で使えるキャンペーンを実施中です!
まずはお気軽にお試しください。
年末調整までご自身で行いたい方におすすめな「弥生給与 Next」
弥生給与 Nextは、毎月の給与計算から年末調整業務を効率化するクラウド給与ソフトです。
勤怠情報を入力すれば残業代や社会保険料などは自動計算で、給与明細書の作成はラクラク。
また作成した給与明細書は、Web配信で従業員のスマホ・PCに配付することができます。
さらに年末調整に必要な控除申告書の回収、法定調書の作成、源泉徴収票の従業員への配付もオンラインでスムーズです。
年末調整の法定調書作成を委託されている方向けの「やよいの給与明細 Next」
やよいの給与明細 Nextは、年末調整を会計事務所に委託している方にピッタリのソフトです。
給与・賞与明細書の作成から配付はオンラインでスムーズ。
年末調整は控除申告書のWeb回収まで可能です。
- ※年末調整の法定調書作成を自社で対応したい方は弥生給与 Nextをお申し込みください。
また、外部委託先へデータ連携の共有がかんたんだから、データの転記や控除申告書のPDF化などの手間が大幅に削減されます。
この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人エムケー人事コンサルティング
中小企業を経営する上で代表的なお悩みを「魅せる会計事務所グループ」として自ら実践してきた経験と、約3,000社の指導実績で培ったノウハウでお手伝いさせて頂いております。
「日本で一番喜ばれる数の多い会計事務所グループになる」
この夢の実現に向けて、全力でご支援しております。
解決できない経営課題がありましたら、ぜひ私たちにお声掛けください。必ず力になります。