有給休暇繰越とは?付与日数や時効、計算方法などを解説
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付与された有給休暇(年次有給休暇)を1年のうちに消化しきれなかった場合、翌年に繰り越すことが可能です。ただし、有給休暇には時効があります。また、有給休暇の付与日数は、勤続年数や所定労働日数によって異なります。従業員の有給休暇を正しく管理するためには、有給休暇の繰越制度や付与日数などをきちんと理解しておくことが必要です。
ここでは、有給休暇繰越の概要や有給休暇の付与日数、計算方法などについて解説します。
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有給休暇繰越とは消化しきれない有給休暇を繰り越す制度
有給休暇繰越とは、従業員に有給休暇を付与した日から1年以内に消化しきれなかった日数を、翌年へ繰り越すことができる制度です。
有給休暇とは、労働基準法に定められている、賃金が支払われる(取得しても賃金が減額されない)休暇のことです。正社員や契約社員、パート、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、一定の要件を満たした従業員に対しては、所定日数の有給休暇を付与しなければなりません。
有給休暇は1年当たりの付与日数が定められていますが、人によっては1年間にすべてを使いきれないことがあるでしょう。そのような場合は、その年に残った有給休暇の日数を翌年に繰り越し、翌年の付与される有給休暇日数に加算することができます。ただし、有給休暇には時効があり、繰り越しできるのは翌年までとなっていて、未消化分は翌々年には消滅することになります。
有給休暇の付与日数
有給休暇は「雇い入れの日から6か月間継続して勤務している」「その期間中に全労働日の8割以上出勤した」という2つの要件を満たす従業員に対して付与されます。有給休暇の付与日数は、所定労働日数等によって変わります。
原則的な付与日数
正社員など、フルタイムで働く従業員は、勤続年数に応じて以下の日数の有給休暇が付与されます。
勤続年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
勤続年数は、勤務シフトや給与の締め日などとは関係なく、採用日から起算します。
例えば、4月5日入社の場合、6か月後の10月5日に10日の有給休暇が付与されます。その後、毎年10月5日に上記の表に応じた日数の有給休暇が与えられ、付与日数は最大で20日となります。勤続年数が6年6か月以上になっても、有給休暇の付与日数は20日が上限で、これ以上は増えません。
なお、パートやアルバイトであっても、週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上の従業員に対しては、上の表に応じて有給休暇を与えなければなりません。
比例付与による付与日数
パートやアルバイトなどの短時間労働者の場合は、フルタイムの従業員よりも有給休暇の付与日数が少なくなります。週の所定労働時間が4日以下で、かつ週の所定労働時間が30時間未満の従業員に対しては、以下の日数の有給休暇が付与されます。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 勤続年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 5日 | 6日 | 7日 | ||
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 3日 |
付与日数は、週によって所定労働日数が決まっている場合は「週所定労働日数」、それ以外の場合は「1年間の所定労働日数」によって判断します。なお、所定労働日数は、付与時点の週所定労働日数で計算します。
勤続年数と最大保有日数
フルタイムの従業員が6年6か月以上勤務した場合、付与される有給休暇は20日になり、これが最大付与日数となります。勤続6年6か月以降は、毎年20日ずつの有給休暇が付与されることになります。
ただし、最大20日の有給休暇を1年のうちに使いきれないケースもあるでしょう。そのような場合は、その年の有給休暇の残日数を、翌年に繰り越すことができます。
例えば、勤続6年6か月の従業員が有給休暇を1日も取得しなかった場合、計算上は、繰り越した日数と翌年付与された日数を合わせて、40日の有給休暇を保有できることになります。なお、未消化の有給休暇を繰り越しできるのは、翌年までです。時効により、有給休暇は翌々年には消滅してしまいます。
有給休暇には年5日の取得義務がある
労働基準法の改正により、2019年から年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対しては、年5日の有給休暇を取得させることが義務付けられています。
企業は、正社員やパート、アルバイトといった雇用形態を問わず、有給休暇の付与日数が10日以上の従業員に対して、付与した日から1年以内に5日を取得させなければなりません。
有給休暇繰越の計算方法
ここからは具体例を挙げて、有給休暇繰越の計算方法を見ていきましょう。2021年度に勤続6年6か月となった正社員の例で、有給休暇繰越の計算をしていきます。
2021年度(1年目)の有給休暇
有給休暇が20日付与され、そのうち10日を取得した。なお、前年に付与された有給休暇はすべて取得済みとする。
- 新規付与日数:20日
- 今年度取得日数:10日
- 今年度残日数:20日−10日=10日
この場合、取得しきれなかった10日の有給休暇が、翌年に繰り越されます。
2022年度(2年目)の有給休暇
前年度に未取得だった10日を繰り越し、新規に20日が付与された。当年度に7日の有給休暇を取得した。
- 繰越日数:10日
- 新規付与日数:20日
- 今年度保有日数:10日+20日=30日
この年は、7日の有給休暇を取得しています。この場合、前年度から繰り越した日数から消化するのが一般的です。前年度から繰り越した有給休暇を今年度中に取得しないと、時効によって消滅してしまうからです。
ただ、このケースでは、前年度からの繰越日数10日のうち、7日しか消化できませんでした。残りの3日は時効により消滅してしまうので、翌年(2023年度)に繰り越せるのは20日となります。
- 今年度取得日数:7日
- 今年度残日数:30日−7日=23日
- 翌年度への繰越日数:23日−3日(時効により消滅する日数)=20日
また、従業員への通知として、今年度付与分と前年度付与分を分けて表記する方法が一般的です。
2023年度(3年目)の有給休暇
2022年度から20日を繰り越し、新規に20日が付与された。
- 繰越日数:20日
- 新規付与日数:20日
- 今年度保有日数:20日+20日=40日
有給休暇の付与と有給休暇繰越の注意点
翌年に繰り越した有給休暇は、就業規則に記載されたルールに従って消化されます。有給休暇の消化は、繰り越し分から消化するのか、新しく付与された分から消化するのかは、法律によって決まりがあるわけではありません。
しかし、有給休暇には2年という時効があることから、繰り越した有給休暇を早く消化した方が、従業員にとって有利になります。そのため、新規に付与した有給休暇よりも、前年から繰り越した有給休暇を先に消化することが一般的です。後々のトラブルを避けるためにも、有給休暇を繰り越す際の取得ルールを就業規則に定めておきましょう。
また、有給休暇を付与する日を、企業ごとに設定することも可能です。有給休暇は、入社日から6か月経過した日が基準日(付与日)となり、以後1年ごとに所定の日数を付与するのが原則となります。
しかし、原則どおりに付与すると、中途入社の従業員が多い場合などは、管理が煩雑になってしまいます。そのため、管理上の負担軽減のために、有給休暇の基準日を年1回または2回などのタイミングで統一することが可能です。これを、有給休暇の斉一的付与といいます。有給休暇の斉一的付与を行う場合は、就業規則などを規定し、運用する必要があります。
有給休暇繰越の正しい計算方法を知って適切に管理しよう
会社は、一定の要件を満たした従業員に対して、所定の日数の有給休暇を与えなければなりません。また、1年のうちに消化しきれなかった有給休暇がある場合は、翌年へ繰り越すことになります。有給休暇の管理を正しく行わないと、法令違反になるおそれがありますので、従業員ごとの有給休暇の付与日数や取得状況、残日数などについては、間違いがないように心掛けてください。有給休暇の管理は給与計算にもかかわってくるため、適切な対応が必要です。
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この記事の監修者税理士法人古田土会計
社会保険労務士法人古田土人事労務
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