フリーランスや個人事業主が請求した報酬の未払いを回収するには?どんな方法がある?
執筆者: 柳原つつじ
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働き方が多様化するなかで「フリーランスや個人事業主として働く」という選択肢への関心も高まっています。
フリーランスや個人事業主は、組織に縛られないというメリットがある反面、「組織に守ってもらえない」というデメリットがあります。特にフリーランスや個人事業主で多いトラブルが「報酬の未払い」です。
引き受けた案件の終了後に請求書を発行したにも関わらず、報酬の支払いが確認できない場合、フリーランスや個人事業主は、どんな対応を行うとよいのでしょうか。予防策とともに解説したいと思います。
POINT
- 未払いの原因が自分側にないかどうかを確認する。請求書をもう一度見直そう。
- 何度、連絡しても対応してもらえなければ、内容証明を送付することも検討する。
- 未払いを防ぐために、取引先は事前に調査すること。前払いで一部支払ってもらったり、回収保証サービスを活用したりすることも有効。
目の前の仕事に追われて後回しになりがちな「入金管理」
生活費のやりくりに頭を悩ませたり、工夫をしたりした経験は、多くの人があることでしょう。家計簿を毎日きちんと付けている、という人もいるかもしれません。
それでも毎月、決まった日に給与として支払われる会社員の場合は、「出費」、つまり「出て行くお金」を管理することで、ほぼ家計を把握することができます。
ところが、フリーランスや個人事業主の場合は、業種によっては、入金の時期や金額がバラバラになので、出費だけではなく、入金管理も必要になってきます。
額はもちろん、振り込まれる時期もそれぞれ異なる場合、忘れずに請求書を送付し、入金を確認して初めて、その仕事が完了したといえるでしょう。
かくいう私もまだフリーランスになったばかりで、やはり目の前に仕事に追われて、入金管理はルーズになりがち。ただ、つい先日、仕事が一段落したので、確認したら、あることに気づきました。
「あれ、テレビ制作会社からの入金がまだないな……」
その仕事は、テレビ番組のリサーチに協力したもので、制作会社からの依頼で、謝礼は1万円。
これまでの経験上、テレビ業界はどちらかというと支払いにルーズなことが多いので、必ず事前に金額を確認するようにしていました。
請求書を送っていたので安心していたのですが、肝心の入金がまだのようでした。
未払いの報酬に気づいたとき、最初にすべきことは?
一体どうなっているのか‥…さっそくメールで確認しようとして、はたと思いとどまりました。万が一、こちらに落ち度があったら気まずい思いをすることになるからです。
未払いの報酬に気づいたら、まずは受注側、つまり、こちらに原因がないかを確認したほうがよいでしょう。
1)受注側のチェックポイント
- 支払日はいつになっているのか。
- 請求書の書類などに不備はないか。(金額、支払方法や振込先口座なども確認)
- そもそも請求書を送っているのか。
今回の私の場合は、請求書も確かに送付していますし、その受け取りの返事も来ています。不備も特にないようでしたので、どうやら先方に原因がありそうです。
クライアント側に未払いの原因があるとすると、どんなことが考えられるのでしょうか。
2)未払いで考えられるクライアント側の原因
- 支払日が先方の社内でうまく伝えられていない。
- 支払いの処理が漏れている。
- 請求書を紛失してしまっている、もしくは、そもそも届いていない。
- 振込先を間違えている。
そのほか、物販であれば「検収が完了していない」ことも考えられます。
また、最悪のパターンは「資金繰りの悪化で支払いが遅れている」あるいは「支払いができない」というケースです。
私のように少額の振り込みならばともかく、大口の仕事をしていた取引先が経営難に陥っていたら、あまりにも大きな痛手です。
このように、さまざまな原因がときには複数重なって、未払いが発生している可能性があります。
このことをふまえたうえで、未払いを回収するためのアクションを取るようにしましょう。
未払いの報酬に気づいたとき、最初にすべきことは?
未払い報酬に気づいたら、クライアントに連絡しましょう。手段は「メール」「電話」「訪問」などがあります。
まず「訪問」は、もしほかの用件があって、ついでに報酬についても触れるということでもない限りは、あまりよい方法ではないでしょう。
未払いの場合、先方も原因を探る必要があります。まずはメールか電話で状況を伝えるのがよいでしょう。
やはりベストはメールです。きちんと状況を文章で説明することができますし、先方もそれを経理など関連部署に転送できるので、意思疎通がしやすいです。
また、やりとりが形として残るのも、メール連絡のメリットです。
特に、請求した報酬の未払いが発生している時点で、クライアント側の社内で、コミュニケーションがうまくいっていない可能性もあります。
できれば、メールで、入金が確認できない状況を伝えるのがよいでしょう。
ただし、メールの弱点は「感情が伝わりにくい」こと。原因が明らかになっていない段階で、相手を責めるような文案にならないように、配慮しなければなりません。
大切なのは、クライアント側に原因があった場合にも、上記のように、理由にさまざまなパターンがあるということをふまえたメールを送りましょう。やりとりしている担当者に非がない可能性もあります。
もちろん、それでも会社として対応しているわけですから、伝えるべきことは伝える必要がありますが、なるべく感情を文面に込めないようにしたほうがよいでしょう。
具体的にどんな文案がよいのかは、下記ページを参考にしてください。
もちろん、請求書の送付し忘れなど、クライアント側ではなく、自分側にミスがあって未入金になっている場合は、簡潔な謝罪とともにクライアント側に確認を行うなどの対応をしたうえで、請求書を発行・送付し、再度、入金日に確認するようにしましょう。
私の場合は、メールをして未払いを伝えたところ、すぐに振り込まれました。単純に担当者が処理を忘れていたようです。おそらく、こういうケースが一番多いでしょう。
しかし、なかには、何度連絡しても対応してくれない場合も考えられます。
私自身も、何度連絡しても対応してもらえない、という体験をしています。
そのときは、らちが明かないので、担当者だけではなく、打ち合わせに同席していた上長のメールアドレスもCCに入れてメールで催促したところ、ようやく支払われることになりました。
何度メールしてもダメな場合は、内容証明郵便をクライアントに送る方法があります。
内容証明とは、法的手段に訴える前段階で送付するものです。さすがに内容証明までいけば、振り込まれるケースがほとんどでしょう。
しかし、今後の関係性には亀裂がはいりかねないので、できるだけ、メールでの催促によって入金してもらえるようにアクションを起こしてみましょう。
そもそも報酬未払いに陥らないためにできることはある?
ただ、上記のように未払いの対応をするだけでも、非常に労力を使います。できれば、未然に防ぎたいものです。いくつか対策があります。
1)未払い対策①クライアントを調査する
未払いを防止するための策としては、まずは「クライアントの事前調査をする」ことが挙げられます。
登記情報提供サービスを使えば、登記情報を検索できるので、実在する会社なのかどうかなどを事前に調べることが可能です。ただし有料となります。
法人登記をすれば、法人番号が指定されます。法人番号の確認は、公表に同意していない人格のない社団等を除いて、国税庁の「法人番号検索サイト」なら無料で確認できますので、実在するかの確認にも使えそうですね。
ほかには、無料の中小機構・法人検索サービスを用いたり、場合によっては有料になる調査会社のデータ閲覧などを活用したりしながら、事前に調べるようにするとよいでしょう。
いずれも面倒な場合でも、ホームページは最低限チェックすること。クライアントの雰囲気がわかるだけでも大きいです。
2)未払い対策②条件を文面で残す
そのほか、契約書を交わしたり、メールなどに条件を残したりするのも未払いを防ぐことにつながります。
仕事の内容がまだ固まっていない場合は、契約書の締結までは難しいかもしれませんが、メールのやりとりとして残しておくことは、必ず意識しましょう。
「言った」「言わない」の水掛け論は不毛ですからね。避けたいところです。
3)未払い対策③アドバンスを受け取る
アドバンス、いわゆる前金を支払ってもらうのも、有効な手段です。この時点で、全額とりっぱぐれることはありませんし、クライアント側の支払う意思も確認できます。
大きな案件のときは、ぜひ事前に交渉してみるとよいでしょう。
4)未払い対策④回収保証サービスの活用
より安全策として、回収保証サービスを利用する方法もあります。請求書サービスの「Misoca」では、回収保証を付けることで、万が一、代金が回収できなかった場合に、損害を補てんしてくれます(※)。
保証料は未収金10万円以下なら800円とリーズナブルですから、請求書の代行とともに頼んでしまうのも、かえって効率的かもしれませんね。
- ※こちらのサービスは、保証会社(株式会社ラクーンフィナンシャル)による事前審査があります。
回収できなかった売上は貸倒損失処理で経費に
それでもどうしても回収できなかった場合は、売上に貸倒損失処理を行って、経費として計上しましょう。
もし、債権の切り捨てや債務免除があり、法律上に貸し倒れがあった場合は、貸倒損失処理が可能です。
例えば、業績悪化によって取引先に会社更生法や民事再生法が適用された場合は、規定によって切り捨てられた金額を、その事実が生じた事業年度の経費(損金)の額に算入することができます。
それ以外に、「事実上の貸し倒れ」があった場合も、貸倒損失処理ができます。
「金銭債権の全額が回収不能となった場合」で、それが明らかになった事業年度において貸し倒れとして経費(損金)に計上することができます。
ただし、担保がある場合は、その担保を処理した後でなければ、経費(損金)にできませんので、注意しましょう。
まとめ
もちろん、回収を諦めて貸倒損失処理をする前で、あまりに支払交渉がこじれてしまうようなケースでは、法的な手段に出るという方法もあります。
対象のクライアントとの取引は今後困難になることなどとあわせて慎重に判断してください。
そのうえで、簡易裁判所から支払い督促を送付する手段もあれば、債権回収会社に相談することもできます。
額があまりにも大きい場合は、少額訴訟や民事調停の申し立てなども含めて、裁判所での裁判を起こすことも、視野に入れてもよいかもしれません。
独立すれば、未払いの報酬を回収することも、大事な仕事の一つです。
時期を逃すと、回収が困難になる可能性も高まりますので、気づいた時点で適切なアクションを取り、お互いが気持ちよく、また次の仕事に迎えるよう、良好な関係性を築いていきましょう。
photo:Getty Images
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この記事の執筆者柳原つつじ
出版社勤務を経て、フリーエディター、コラムニスト。歴史、伝記・評伝、経営、書評、ITなどを得意ジャンルとして、別名義で著作多数。ここでは、脱サラフリーランスならではの視点で、お役立ち情報をお届けしたいと思います。
