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個人事業主の報酬未払い|角を立てない回収手順とトラブル予防策

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個人事業主の報酬未払い|角を立てない回収手順とトラブル予防策

個人事業主やフリーランスとして活動する方にとって、約束の支払期日を過ぎても口座に報酬が振り込まれていないトラブルは、できれば避けたい状況です。しかし、まずは自分の側にもミスなどがなかったか確認を行い、その上で適切なアプローチを踏めば、取引先との関係性を損なわずに回収できる可能性は十分にあります。本記事では、未払いに気づいた後のチェックリストから、角を立てない催促のメール例文、いざというときの法的手段、そしてトラブルをそもそも回避するための予防策まで、わかりやすく解説します。

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個人事業主が報酬未払いに気づいたときの初動対応

もし報酬の未払いに気づいたとしても、焦らずに一つずつ手順を踏むことが重要です。未払いの原因は必ずしも支払う側だけにあるものではないので、慎重に確認を進めるようにしましょう。

1.自分の請求漏れや銀行営業日の影響がないか確認

報酬の未入金があると、真っ先に取引先へ振り込みがないと連絡したくなりますが、少し立ち止まってください。まずは「自分側にミスや思い違いがなかったか」をよく確認することが重要です。

実は請求書の送り忘れや口座番号の伝達間違いがあったのに、相手側のミスを疑って連絡してしまうと、信頼関係を大きく損ねてしまう恐れがあります。取引先へ連絡する前に、以下の4つのポイントをチェックしてみると良いでしょう。

確認項目 具体的なチェックポイントとよくある落とし穴
① 請求書の送付が完了しているか メールが下書きのままで未送信になっていないか、宛先のアドレスが間違っていないか、などを確認します。
② 支払期日の認識違いはないか 「月末締め・翌月末払い」の契約なのに、「当月末払い」と勘違いして認識してしまっていないか、などを確認します。
③ 口座情報が正確に伝わっているか 銀行名、支店名、口座種別(普通・当座)、口座番号、名義など、入金口座の情報が誤りなく伝わっているかを確認します。
④ 金融機関の営業日 入金予定日が土日・祝日に重なっている場合は、翌営業日に振り込まれるケースが一般的です。金融機関の営業日を確認しましょう。

このほか、報酬の入金はあるものの「想定していた入金額より少ない」といった場合には、報酬から源泉徴収税や振込手数料が引かれている可能性があります。こうしたケースでは、支払いに関する事前の取り決めがどうなっていたかを確認する必要があります。

2.取引先にメールや電話で状況を確認する

自分の請求手続きなどに不備がないことが確認できたら、取引先に連絡を取ります。ここで重要なのは、相手を非難するのではなく、「こちらの確認不足かもしれませんが、状況を教えていただけますか」というスタンスを取ることです。

報酬未払いの原因が取引先にあったとしても、悪意のないヒューマンエラーによる可能性もあります。今後の取引を考えても、最初から一方的に追及するような連絡の取り方は得策とはいえません。

まずは、以下の例文を参考にソフトな言い回しによるメールを送るなどして、状況の確認を進めましょう。

件名:【お支払い状況のご確認】〇〇業務委託費用につきまして(自分の氏名や屋号)

株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様

いつもお世話になっております。(自分の氏名や屋号)です。
先日は〇〇の案件にて、納品成果物の検収をいただきありがとうございました。

本日は、本件について〇月〇日付で送付いたしました請求書(請求書番号:xxxx)の
お支払い状況をご確認させていただきたく、ご連絡いたしました。

支払期日が〇月〇日となっておりましたが、本日〇時現在、
当方の口座へのご入金が確認できていない状況でございます。

行き違いですでにお手続きをいただいておりましたら、誠に申し訳ございません。
お忙しいところ大変恐縮ですが、現在の処理状況をご教示いただけますと幸いです。

また、こちらの請求書の記載や口座情報などに不備がございましたら、
速やかに対応いたしますのでお知らせください。

ご確認のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

(署名)

こうしたメールを送信して2〜3営業日経っても返信がない場合は、担当者がメールを見落としているなどの可能性があります。その際は「メールでお送りした件ですが、ご確認いただけましたでしょうか」とフォローの電話を入れてみると良いでしょう。

未入金時の確認や催促メールの具体的な例文については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

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確認や催促をしても未払いが続く場合の回収手段

ここからは、報酬の未払いについて確認や催促の連絡を入れても、明確な理由なく支払いに応じてもらえないケースについての対応を解説します。法的な手段も含め、段階的に回収への措置を講じていきましょう。

1.内容証明郵便による催促

通常のメールや電話による催促に応じない取引先に対して、次の段階として有効な一手となるのが「内容証明郵便」の送付です。

内容証明郵便とは、「いつ、誰から誰宛てに、どのような内容の文書が差し出されたか」を日本郵便が証明してくれる郵便制度です。これに、いつ相手に届けられたかを証明する「配達証明」を組み合わせることで、送付された側は「そんな書類は届いていない」「見ていない」という言い逃れがしにくくなります。

  • 【得られる効果】
    内容証明郵便は裁判でも有効な証拠となり得る文書であるため、相手に「法的措置も辞さない姿勢」を示し、「無視し続けることはできない」というプレッシャーを与えることができます。
  • 【費用と作成方法】
    自分で文面を作成し、郵便局の窓口やインターネット経由の「e内容証明(電子内容証明)」を利用して発送する場合、実費は1通あたり1,200円〜2,000円程度です。弁護士や行政書士に作成・発送代行を依頼する場合は、3万円〜5万円程度が目安となります。
    • もっとも、行政書士は他人の紛争に有償で関与することができませんので、ご留意ください。

2.少額訴訟など法的手段への移行

内容証明郵便を送っても、なお事態が進展しない場合には、裁判所を通じた法的措置を講じることができます。報酬の未払いについては、主に以下の3つの選択肢があります。

法的措置 主な特徴と利用するメリット 注意点・デメリット
支払督促
(しはらいとくそく)
簡易裁判所に申立て、主張する通りの督促が相手方に発せられます。書類審査のみで裁判所に出向く必要がなく、手数料も通常の訴訟に比べて安価です。相手が所定の異議を申し立てなければ、仮執行宣言や強制執行に手続きを進めることができます。 相手方が異議申立てを行うと、通常の訴訟へ移行してしまいます。相手方が争う可能性が高い場合は不向きです。
少額訴訟
(しょうがくそしょう)
60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用できます。原則1回の審理で紛争解決を図ります。通常訴訟に比べて手続きが簡素化されたスピーディーな訴訟制度で、弁護士に頼らず自分で手続きを進める(本人訴訟)こともできます。 原則1回の審理のため、期日までにすべての主張と証拠を揃えておく必要があります。また、判決に不服がある場合は異議申立てに限られ、控訴はできません。
通常訴訟
(つうじょうそしょう)
請求金額の多寡に関わらず利用できます。単に「民事訴訟」と呼ぶ場合はこの通常訴訟を指します。訴訟の途中で話合いにより解決(和解)することもできます。 相手が争う場合は解決までに数か月〜の長い期間を要することが多いです。また、弁護士に依頼するのが一般的であり、着手金や報酬が発生するため、場合によっては赤字になります。

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報酬未払いトラブルに関して知っておきたい知識と相談先

ここでは、報酬未払いへの対応や自衛において、個人事業主が知っておくべき知識といざというときの相談窓口について紹介します。

報酬未払いの請求権には「時効」があるため放置は厳禁

「今は忙しいし、相手もそのうち払ってくれるだろう」と未払いを放置するのは危険です。なぜなら、未払いとなっている報酬の支払いを請求する権利(債権)には「消滅時効」が存在するからです。

民法第166条では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」または「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」に債権が消滅すると定められています。これを過ぎて相手が消滅時効を援用した場合、未払いの報酬は1円も回収できなくなります。

債権の消滅時効は、裁判所への支払督促や訴訟の提起、あるいは相手方が支払義務を「承認」した場合(例えば支払猶予の申し出があった等)には時効期間が更新されます(その時点から新たな時効期間がスタートする)。

また、内容証明郵便などの法的手続に依らない督促行為も、時効完成前であれば半年間は時効完成が猶予される効果があります。しかし、半年が経過すれば時効は完成してしまうので、内容証明郵便を送付しても進展しないのであれば少しでも早く行動を起こすことが重要です。

取適法(旧下請法)やフリーランス新法でも保護されている

個人事業主や中小企業などは規模の大きい企業に比べて立場が弱くなりやすいため、その保護を目的に「中小受託取引適正化法(取適法/旧下請法)」や「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」が制定されています。これらの条文の中にも、報酬の支払いに関する定めがあります。

  • 【中小受託取引適正化法(取適法/旧下請法)】
    委託事業者(発注側)は「成果物の受領から60日以内、かつできる限り短い期間内」で支払期日を設けるよう定められています。成果物の受領拒否、勝手な報酬の減額、支払遅延は違法行為となります。ただし取適法が適用されるには、委託事業者が「資本金」または「従業員数」の要件を満たす必要があり、一定の規模に満たない事業者からの受託業務については保護の対象から外れることになります。
  • 【フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)】
    こちらは取適法と異なり、資本金など事業者の規模に関わらず、フリーランスとして活動する事業者に業務委託を行うすべての事業者に適用される法律です。ここでも「成果物の受領から60日以内、かつできる限り短い期間内」で支払期日を設けることや、業務委託時に書面または電磁的方法(メール等)で取引条件を明示することが義務付けられています。

契約書なしでも未払い回収を進めるための証拠の集め方

報酬額や支払期日を取り決めた契約書や発注書などがないため、未払いトラブルに直面しても回収が進められないのでは、と不安に思っている方も多いかもしれません。

しかし民法では、契約は双方の合意さえあれば口頭(いわゆる口約束)でも成立が認められます。署名・捺印のある書類だけが証拠になるわけではありません。仕事を引き受ける際の条件や成果物を納品した事実が可視化された記録やデータがあれば、報酬の回収を進められる可能性があります。例えば以下のようなものが考えられます。

  • 【相手方とやり取りしたテキスト履歴】
    メールやチャットツールなどのやり取り記録(「〇〇の執筆を〇万円でお願いします」→「承知いたしました」といった文脈がたどれるとデータが望ましい)
  • 【打ち合わせの記録】
    Web会議の録画・録音データや、自身のスケジュール帳のメモ、ミーティングの議事録など
  • 【成果物の提出記録】
    実際に納品した成果物のデータ、メールの送信履歴やアップロードサービスでの共有履歴など
  • 【相手の検収が確認できる記録】
    「内容確認しました」「修正なしでOKです」といった相手からの返信メッセージなど

これらのデータは消えないようにスクリーンショットやPDF形式などで保存し、「いつ・誰が・何を言ったか」を時系列で追える資料として整理しておくと、有効な証拠となり得ます。

個人事業主・フリーランス向けの相談窓口

報酬の未払いトラブルについては、利用できる相談窓口があります。問題を一人で抱え込まず、国や公的機関が提供する専門相談窓口を積極的に活用しましょう。

相談窓口の名称 運営主体 サポート内容と特徴
フリーランス・トラブル110番 厚生労働省より第二東京弁護士会が受託して運営(公正取引委員会、中小企業庁とも連携) フリーランス特有の契約トラブルや未払い問題について、弁護士が無料で電話・メール相談に応じてくれます。個人での解決が難しい場合には、必要に応じて「和解あっせん」の手続きを取ることも可能です。
取引かけこみ寺
(旧下請かけこみ寺)
中小企業庁の委託を受け全国中小企業振興機関協会が本部となり運営 全国48か所に設置。中小企業の取引上の悩みに対し、企業間取引や取適法などに詳しい相談員や弁護士が無料で相談に応じます。裁判外紛争解決手続(ADR)による調停もサポートしています。
法テラス
(日本司法支援センター)
国により設立された公的な法人である日本司法支援センターが運営 法的トラブルの解決に向けた情報提供や支援を行う総合案内所です。一定の収入要件などを満たすことで、無料の法律相談や弁護士費用の立替え制度が利用できます。

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そもそも未払いを防ぐには?報酬を確実に得るための請求管理

報酬の未払いトラブルについて、これまで解説してきた「起こってからの対応」ももちろん大切ですが、より望ましいのは「そもそも未払いが起こりにくい対策を講じておくこと」です。そこで重要になるのが、請求と入金の管理です。

まずは正しく期日通りに請求書を発行すること

報酬の支払いは、請求書が発行されることで行われます。決められた期日までに、正しい内容を記載した請求書が届かなければ、当然報酬が支払われることはありません。

請求漏れがないか、作成した請求書に不備や誤りはないか、こうした請求業務の確認と正確な実行が、報酬の未払いを予防する基本になります。

支払期日(入金予定日)の確認と管理も重要

取引を始める際に、取引先と「締め日」「支払期日(入金予定日)」を取り決めておくことも重要です。その上で、請求書には必ず支払期日を明記し、当日は口座に正しい金額が入金されているかを確認しましょう。

入金予定日にこうした確認を行うことが、いち早く未払いに気づくことにつながり、迅速な対応を可能にします。

紙やExcelでの管理には請求漏れ・確認漏れを招くリスクも

請求や入金の確認作業は報酬未払いを予防する上で大切ですが、案件数が多くなると煩雑になってしまいます。請求書を紙やExcelで発行・管理していると、「いつ、どこに、いくらの請求書を出したか」「期日どおりに正しい金額の入金があったか」を自分で確認・管理しなくてはなりません。

こうした作業を効率化したい方には、クラウドサービスの活用がおすすめです。たとえば、クラウド請求書作成ソフト「Misoca」には、請求書の支払期日(入金予定日)を一覧で管理できる機能があります。

請求書を作成する際に支払期日(入金予定日)を記載すると、請求書一覧のページで一目で確認できるようになり、「未請求/請求済」「未入金/入金済」のステータスも簡単に変更できて管理が楽になります。支払期日(入金予定日)で検索して請求書を絞り込むこともできるので、当月入金予定だったものを月末にまとめてチェックすることもできます。

「そもそも請求書を出していたか」「あの請求書の入金予定日はいつだったか」「期日を過ぎて未入金のものはないか」といった確認の漏れを防ぐことができ、報酬未払いの予防と毎月の経理業務を効率化できます。

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この記事の監修者梅澤 康二(弁護士)

「弁護士法人プラム綜合法律事務所」の代表弁護士。

2007年東京大学法学部卒。在学中に司法試験に合格し、卒業後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年にプラム綜合法律事務所を立ち上げる。労務全般(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)や紛争等(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)の対応、M&Aなど企業法務全般のリーガルサービスを提供している。

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