青色申告承認申請書の備付帳簿名はどれを選ぶ?最低限必要な帳簿や意味を解説
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確定申告で青色申告を選択するのなら、事前に青色申告承認申請書を税務署へ提出しなくてはなりません。当該申請書の最後には、備付帳簿を選択する項目が設けられていますが、これがよく分からないと眉をひそめる方は少なくないと考えられます。
本記事では、青色申告が初めての個人事業主や、副業で確定申告が必要になった方などへ向けて、青色申告承認申請書の備付帳簿について詳しく解説します。どのような帳簿がありどれを選ぶべきなのか、最低限必要な帳簿やそれぞれの意味なども説明するので、ぜひ参考にしてください。
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青色申告をするために必要な「青色申告承認申請書」とは?
確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。どちらも、1年における所得税の納税額を算出し、税務署へ報告する手続きであるものの、青色申告で手続きしたい場合には事前に「青色申告承認申請書」を提出しなくてはなりません。
青色申告は、白色申告に比べてメリットが多い申告方法です。最大65万円の特別控除を受けられるほか、家族へ支払った給与を必要経費として計上したり、赤字を3年間繰り越せたりと節税効果の高さが魅力です。
ただ、青色申告承認申請書を提出する際には、数ある帳簿のなかから、どれを使って日々の取引を記録するのかを選ばなくてはなりません。ただ、この備付帳簿は種類が多いため、「どれを選べばよいのか分からない」と悩む人も大勢います。
本記事の後半では、備付帳簿と呼ばれる15種類の帳簿から、必ず選ぶべき2つの主要簿と、それ以外の補助簿について解説していますので参考にしてください。
「青色申告承認申請書」の書き方
まずは、青色申告を開始するのに必要な申請書を入手することがスタートです。青色申告承認申請書は税務署の窓口か、国税庁の公式サイトからもダウンロードして入手できます。当該申請書には、納税地の住所や本人の氏名、職業、屋号のほか、所得の種類や簿記方式などを記載して提出します。
なお、当該申請書は提出期限が決められている点に注意が必要です。以下に記載する記入例をもとに、提出期限をすぎないよう余裕をもって作成しましょう。
提出期限
青色申告を始めるには青色申告承認申請書の提出が必須です。締め切りは、原則として青色申告書による申告を開始する年の3月15日までと定められています。
例えば、2025年(令和7年)分から、青色申告をスタートさせるならば、2025年3月15日までに青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出する必要があります。申請書は国税庁の公式サイトや税務署の窓口で入手可能です。提出方法は、e-Taxや税務署への持参、郵送があります。提出方法について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
これから事業を興すのなら、当該申請書と併せて「開業届」も提出しましょう。原則、開業から1か月以内に提出しますが、提出が遅れてもペナルティなどはありません。なお、白色申告から青色申告へ変更する際に、改めて開業届を提出する必要はありません。
白色申告から青色申告に切り替えるメリットについては以下の記事で詳しく説明しています。
記入例

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①所轄の税務署がどこかにあるかを確認して、税務署名を記入しましょう。日付は記入日を記載します。
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②「納税地」欄では、「住所」「居住地」「事務所」のいずれかに該当する項目にチェックを入れ、住所を記入します。自宅が事務所を兼ねている場合は「住所」にチェックを入れ、住所を記載してください。連絡が取れる電話番号(自宅や携帯電話など)も忘れずに記載しましょう。
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③青色申告を適用したい年の年号を記入し、もし事務所が②で記入したものとは別に存在する場合は、追加でその事務所の名称と住所を記載しましょう。
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④所得の種類は、事業所得、不動産所得、山林所得の中から該当するものを選択してください。不動産や山林からの所得がない場合は、事業所得にチェックを入れます。
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⑤これまでに青色申告の承認が取り消された経験があるかどうかを回答します。また、新たに個人事業を開始した場合は、開業日を記入してください。次に、事業を継承していない場合は「無」にチェックを入れます。
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⑥簿記方式は「複式簿記」または「簡易簿記」から選択します。青色申告の大きなメリットは、最大65万円の控除を受けられることです。65万円(または55万円)の控除を希望する場合は「複式簿記」を選びましょう。一方で、「簡易簿記」を選ぶと記帳は簡単になりますが、控除額は10万円となります。ただし、10万円控除で申請した場合でも、65万円(または55万円)の要件を満たして確定申告を行う場合、青色申告承認申請書を再提出する必要はありません。
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⑦ここで備付帳簿名を選択します。備付帳簿名については次の章で詳しく説明します。
青色申告承認申請書内の「備付帳簿名」の選び方
青色申告承認申請書には備付帳簿の選択欄が設けられており、15項目が示されています。まずは、備付帳簿の概要を把握し、そのうえでどれを選ぶべきなのかを理解しましょう。
そもそも「備付帳簿」とは

備付帳簿とは、事業で発生した日々の取引情報を記録する帳簿です。現金出納帳や経費帳、手形記入帳など、その他を含めて15種類がありますが、すべてをそろえる必要はありません。最低限必要なのは、次章で紹介する「総勘定元帳」と「仕訳帳」の2つです。
青色申告の際に選ぶべき2つの帳簿
青色申告に最低限必要な帳簿は、伝票から総勘定元帳までです。総勘定元帳は「主要簿」と呼ばれ、複式簿記で帳簿つけが必要な65万円(もしくは55万円)の青色申告特別控除を受けるために必要不可欠です。なお、伝票を作成しない場合は仕訳帳を作成する必要があり、これも「主要簿」となります。
上記2つ以外の帳簿は「補助簿」と呼ばれ、「主要簿」を補助する役目の帳簿です。なお、10万円控除の場合は簡易帳簿で問題ありません。必要な簡易帳簿は以下の通りです。
- 現金出納帳
- 売掛帳
- 買掛帳
- 経費帳
- 固定資産台帳
備付帳簿のそれぞれの意味を解説
備付帳簿ごとに、記録すべき内容などが異なります。誤った内容を記録してしまうと、青色申告のメリットを得られなくなるおそれがあるため、記載すべき情報などを把握しておきましょう。
総勘定元帳
総勘定元帳は、事業で発生した取引のすべてを、勘定科目ごとに記録する帳簿です。複式簿記における主要簿であるため、青色申告に不可欠な備付帳簿です。仕訳帳に記録された日々の取引情報を転記して作成します。
総勘定元帳には、勘定科目ごとに情報を記録するため、取引を行った日時や残高などを一目で把握できるメリットがあります。財務状況の把握が容易であり、組織経営に不可欠な帳簿です。
仕訳帳
仕訳帳は、総勘定元帳のもとになる帳簿であり、日々の取引を日付順に記録した帳簿です。こちらも主要簿であり、ここに記載された情報をもとに総勘定元帳へ記載します。伝票又は仕訳帳も、青色申告で65万円(もしくは55万円)の控除を受けたいときに作成が必要です。
仕訳帳には、取引が発生した都度記録を行います。取引が発生した日付や貸方と借方双方の勘定科目、金額、取引相手、販売した数量などを記載します。
現金出納帳
「現金出納帳」は、現金の出入りを記録する帳簿です。家計簿をイメージするとわかりやすいでしょう。帳簿上の残高と実際の現金残高が一致しているかを確認するために使用します。
支払いを記録する際には、日付や金額、内容だけでなく、「何のために」「どこへ」支払ったのかも記載する必要があります。入金の場合も同様で、いつ、何のために、どこから、いくら入金されたのかを記録します。これにより、支出が事業に必要な経費であることを証明できます。
売掛帳
売掛とは、商取引における信用取引の一種です。あとから金銭を支払ってもらうことを約束し、商品やサービスを提供する取引です。売掛帳には、何の商品をいつ、誰にいくらで販売したのか、回収状況はどうなのかといった情報を記録します。
買掛帳
買掛も信用取引の一種であり、後日の金銭支払いを約束し、前もって商品やサービスの提供を受けることです。買掛帳には何の商品をいつ、誰がいくらで購入したのか、支払状況はどうなのかといった情報を記録します。
買掛金は負債のため、期日までに必ず支払わねばなりません。
経費帳
確定申告では「事業を行う上でどれだけの経費がかかったか」を税務署に報告します。その中でも、仕入れ以外の経費を科目ごとに記録するのが「経費帳」です。
例えば、ライター業で書籍などをよく購入する場合、「新聞図書費」だけでなく、消耗品費や地代家賃、水道光熱費、給与賃金なども経費として記録します。経費帳は、一定時点までにどれだけの経費が発生しているか「合計」を確認できる役割を果たします。
経費帳は備付帳簿の中でも最もシンプルで、「簡易帳簿」として扱われており、エクセルなどで簡単に記録することが可能です。
固定資産台帳
固定資産台帳は、事業主が所有する固定資産を記録する帳簿です。10万円以上で購入し、長期的に使用するものが「固定資産」となります。
例えば、ライター業であればパソコンが該当します。コピー機や事務机も、10万円以上であれば固定資産とされます。これらを記録するのが「固定資産台帳」です。
預金出納帳
「現金出納帳」は現金の動きを記録します。一方、銀行口座間におけるお金の動きを記録する帳簿が「預金出納帳」です。
「預金出納帳」には通帳の内容を転記し、「誰と」もしくは「誰から」と「入出金した理由」を記載します。
手形記入帳
手形記入帳は、必要に応じて作成する帳簿であり、主要簿にも補助簿にも分類されません。取引で手形を振りだした、もしくは受けとった際に情報を記録します。手形を受けとった際は受取手形記入帳を、振りだした際には支払手形記入帳を使用します。いずれも、手形の種類や振出人、支払人、手形番号、振出日、満期日、手形金額などを記載します。
入金伝票
入金伝票は、現金で入金が行われたときに記録する帳簿です。日付や勘定科目、摘要(具体的な取引内容)、金額、取引担当者の氏名などを記載します。より細かい情報を記載することで取引内容を把握しやすくなる利点があります。
出金伝票
現金で出金した際に記録する帳簿です。日付や具体的な取引内容、支払先などを記録します。一般的に、経費精算では領収書やレシートが必要となるものの、レシートなどを入手できないケースも少なくありません。このようなとき、出金伝票があれば経費への計上が可能です。
振替伝票
振替伝票は、現金以外の取引情報を記録する帳簿です。例えば、原料の仕入れ代金を銀行振込で行った、振込手数料が発生したといったケースで記録を行います。ほかにも、取引先から自社の銀行口座へ振り込みがあった、掛売上が発生した場合にも作成します。
現金式簡易帳簿
現金式簡易帳簿は、現金出納帳に経費を記載する項目を加えた帳簿です。現金による取引が発生したタイミングで記録を行う、シンプルな帳簿であるものの、青色申告の特別控除額は10万円になってしまいます。また、利用には別途届出が必要であり、前々年度の所得が300万円以下の事業者に限定されています。
使用する備付帳簿を変更する場合
青色申告承認申請書を提出したあと、最初に選んだ備付帳簿の種類を変更したい、増やしたいとなるケースは少なくありません。例えば、もともと現金出納帳を選んでいたものの、やはり出金伝票に変えたい、といったケースです。
このような場合において、特別な対処は不要です。使用帳簿の変更や増加については、税務署への報告義務がありません。
活用したい「会計ソフトの自動転記」
青色申告承認申請書の備付帳簿は全15種類ありますが、最低限必要なのは伝票又は仕訳帳と総勘定元帳の2つです。この2つさえ選んでおけば、青色申告のメリットである最大65万円の控除を受けられます。まずはこの2つを使用し、必要に応じて補助簿を増やすなどしていきましょう。
確定申告の方式で迷っているのなら、青色申告がおすすめです。最大65万円の特別控除や赤字の繰り越しができるうえに、家族へ支払った給与も経費計上でき、貸倒引当金も経費にできます。また、業務のために購入した10万円以上の資産は、原則として数年かけて経費計上しなくてはならないものの、青色申告なら30万円未満の資産を取得したケースにおいて、その年度に一括して経費計上が可能です。
このように、青色申告は白色申告に比べて大幅な節税効果が期待できるため、選択しない手はありません。この機会に、青色申告への切り替えを本格的に検討してみましょう。
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