個人事業主が実際に「白色申告→青色申告」に変更して感じたこと
2023/08/01更新

この記事の執筆者安田博勇

青色にするか、白色にするか——。そんなふうにして悩むのは、個人事業主ならば誰もが一度は通る道です。現在は青色申告者である筆者も、かつては白色申告者でした。白色・青色のそれぞれを経験して、どんなことを感じたのか。どんなことがあったのか。今回は白色から青色に切り替えて感じた違いや実際の作業をまとめてみました。
POINT
- 最も魅力的だったのは30万円未満の資産を全額経費にできる
- 「青色事業専従者給与」「純損失の繰越しと繰戻し」なども大きな安心につながる
- 青色申告のデメリットは、会計ソフトを導入することで解消される
青色申告に二の足を踏んだ理由
「青色申告にすれば、最大65万円の控除が受けられるよ!」
個人事業主になると、そんな話を耳にするようになります。個人事業の経理や節税のことがまとめられた書籍やWeb記事なんかを読んでも、必ずといっていいほど青色申告を薦められます。
筆者が個人事業主になったのは、2013年の初夏のこと。それまでは給与所得者でした。脱サラしたその年の確定申告も「白色申告」で済ませていましたし、これから述べる理由がなかったら翌年の確定申告も「次も白色申告でいいか……」なんて思っていたかもしれません。
青色申告に二の足を踏んでいたのは、ずばり以下の理由から……。
- 1.帳簿をつけるのが面倒
- 2.青色申告に必要な「複式簿記」の知識がない
- 3.当時は会計ソフトの多くがMac対応ではなかった
- 4.会計ソフトの導入にはそれ相応のコストがかかる
しかし1. に関しては、2014年1月から、白色申告でもすべての事業者に記帳と帳簿等の保管が義務化されました(それまでは所得300万円超の場合に限定)。加えて、Macにも対応していて、しかも青色申告に必要な「複式簿記」に対応したクラウド会計ソフトが続々とリリースされ、2. 3. の問題もクリア。4. についても、一般的にパッケージ版に比べ、クラウド会計はコストを安く抑えられるように感じました。
以上の理由から、2014年分以降の確定申告は、青色申告に切り替えることを決断したのです。
なお、青色申告にしたい場合は、青色申告をしたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署へ届け出ることが必要です(1月16日以後に事業を始めていれば、開業から2ヵ月以内)。もちろん郵送でも対応してくれます。
私の時にはなかったですが、2017年(平成29年)1月4日から、e-Taxでも「所得税の青色申告承認申請書」を申請できるようになりました。
期首残高は、どうやって決める?
いざ、多くの人が白色から青色に切り替え、最初に戸惑うのは「期首残高」かもしれません(筆者もそうでした…)。前年分の確定申告を白色申告でしている場合は、貸借対照表を作成しないため、この期首残高がわからないのです。
初めて青色申告(65万円控除(※))をする場合、期首残高は、前年末時点での事業用現金、事業用口座の残高、売掛金のそれぞれを把握し、それらの金額で決まります。特に事業用現金の額がはっきりと定まっていない場合は、これを機に、事業用に使う現金の額をここで定めます。
筆者の使った「やよいの青色申告 オンライン」は、1月1日開始時点での残高がわからない場合は、そのまま取引入力を開始し、取引入力後にその日時点の残高を設定することで、期首残高を逆算して設定できる機能があります。
- (※)税制改正により、2020年分の確定申告から青色申告特別控除の要件が変わりました。青色申告特別控除は55万円控除と10万円控除を選択します。さらに青色申告特別控除65万円を受けるためには、複式簿記での帳簿付けなど55万円控除の要件に加え、電子帳簿保存(2022年分からは優良な電子帳簿保存)またはe-Taxによる申告が必要です。
青色申告、最も魅力的だったメリットは?
さて、その後実際に青色申告にしてみて最も魅力的に感じたのは「少額減価償却資産の特例」でした。これは、30万円未満の少額減価償却資産を購入した年に一括して経費に計上できる特例です。
その年の早々に購入した約20万円した事業用パソコンも、即時償却できました。通常であれば、パソコンの耐用年数4年/償却率25%ですから、その期中では最大5万円までしか経費計上できません。20万円と5万円は大きな違いでした。
最大65万円の特別控除とあわせて申告したことで、しっかりと税金の還付を受けられました。
このほかに青色申告のメリットには、生計を同じにする家族を青色事業専従者として届け出ることでその人へ支払った給与を経費として計上することができる「青色事業専従者給与」があったり、事業で出た赤字をむこう3年間の黒字と相殺できる「純損失の繰越控除」といったメリットなどがあります。
逆に前年も青色申告をしていて、黒字の後に赤字が出た場合には「純損失の繰越控除」に加えて、損失を前年に繰戻しすることで前年分の所得税の還付を受けることができる「純損失の繰戻し還付」もあります。
今のところ、筆者自身はこれらの特例措置を受ける機会はありませんが、これから先も事業を継続していくことを考えると、青色申告にしていることが大きな安心につながっています。
会計ソフトを導入すれば、デメリットはなくなる
一般的に言われるのは、青色申告にすると、
- 1.確定申告時に貸借対照表を提出しなければいけない。
- 2.帳簿は複雑な複式簿記を選択しなければいけない
- 3.確定申告書を申告期限内に提出しなければ、特別控除を受けられない
といったことが面倒、ということです。しかし会計ソフトを導入していれば、貸借対照表や複式簿記の帳簿はほぼ自動作成されますし、帳簿づけの習慣は財政状態のことを理解する良いきっかけになりました。帳簿づけが習慣化されれば、確定申告に手間取ることもなくなり、提出期限内に確定申告書作成を終えることも問題ありません。
結論――。青色申告に切り替えることで、多くのメリットが得られます。さらに会計ソフトを導入することで、一般的に言われているデメリットも、ほとんどデメリットに感じることがありません。
個人事業主ならば、青色申告にするべし!そう断言できると思っています。
photo:Thinkstock / Getty Images
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この記事の執筆者安田博勇
1977年生まれ。大学卒業後に就職した建設系企業で施工管理&建物管理に従事するも5年間勤めてから退職。出版・編集系の専門学校に通った後、2006年に都内の編集プロダクションに転職。以降いくつかのプロダクションに在籍しながら、企業系広報誌、雑誌、書籍等で、編集や執筆を担当する。現在、フリーランスとして活動中。
