青色申告承認申請書の「備付帳簿名」どれを選べばいい?
執筆者:柳原つつじ
2021/03/31更新
最大65万円の特別控除など節税効果が高い「青色申告」。
青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要となります。
また、提出の際には、複数の種類がある帳簿のなかから、何を使用するのかを選ばなければなりません。
「そんなことを言われても、何の帳簿が必要かわからないよ……」という人のために、青色申告で必要になる帳簿について、それぞれ解説していきたいと思います。
どのように青色申告を申請する際に、どんな届け出を行い、どんな帳簿が必要になってくるのでしょうか。
POINT
- 「青色申告承認申請書」を期限までに提出が必要
- 備付帳簿は、厳密に選択する必要はない
- 青色申告に最低限必要な帳簿は、「総勘定元帳」と「仕訳帳」
青色申告をするために必要な「青色申告承認申請書」、どう書けばいい?
「よし、青色申告をやってみよう!」
そう思い立ったならば、「青色申告承認申請書」を税務署に提出することになります。
締め切りは、原則として、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで。
例えば、2021年(令和3年)分から、青色申告をスタートさせるならば、2021年3月15日までに青色申告承認申請書を所管する税務署に提出する必要があります。
また、青色申告承認申請書を提出するには、開業届も出さなければなりません。
私は開業届と青色申告承認申請書を同時に出したので、「これから、自分の事業を起こす!」と、なんだか気が引き締まるような思いがしたことを、今でもよく覚えています。
青色申告承認申請書の記入例としては、下記のようになります。
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①所轄の税務署がどこかを調べて、税務署名を記入しましょう。日付は記入する日でOKです。
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②「納税地」は、「住所」「居住地」「事務所」のいずれかに○をして、住所を記入します。
私は、自宅兼事務所なので、その場合は「住所」に丸をして住所を記載することになります。
そして、連絡がつく電話番号を記入します。携帯電話でも問題ありません。 -
③青色申告の適用を開始したい年分の年号を記入のうえ、もし、事務所が②で記入したもの以外にある場合は、追加で事務所の名称と住所を記載します。
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④所得の種類については、事業所得・不動産所得・山林所得から選択します。不動産や山林の所得でなければ、事業所得に○をつけます。
私の執筆業ももちろん、この事業所得にあたります。 -
⑤これまでに青色申告承認の取り消しを受けたことがあるかどうかを回答します。
また、もし、新規で個人事業を開業した場合は、開業日を記入してください。続いて、事業継承でなければ「無」に○をしましょう。 -
⑥簿記方式を「複式簿記」にするか「簡易簿記」にするかなどを選択します。
青色申告のメリットは、なんといっても、最大65万円の控除があることです。
65万円(もしくは55万円)の控除を選びたい場合は「複式簿記」に○をしましょう。もし、「簡易簿記」を選択した場合、記帳は楽になりますが、10万円の控除になってしまいます。
しかし、10万円控除で申請しても、65万控除(もしくは55万円)の要件をすべて満たして確定申告をするなら、65万円控除(もしくは55万円)で青色申告承認申請書を再提出する必要はないようです。
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⑦ここで備付帳簿名を選択します。これについて、以下で詳しく説明したいと思います。
「備付帳簿名」で何を選べばよい?
青色申告のために備えつける帳簿として、「その他」を含めて、ずらっと15項目が並んでいます。このなかから、いったいどんな帳簿名を選べばよいのでしょうか。
実はこの項目、あくまでも「使う可能性があるもの」ということでしかありません。なので、それほど深く考える必要はなく、選択していきましょう……と、言われても困るかもしれませんね。説明していきましょう。
まず、青色申告に最低限必要な帳簿は「総勘定元帳」「仕訳帳」です。この2つは、「主要簿」と呼ばれ、複式簿記で帳簿つけが必要な65万円(もしくは55万円)の青色申告特別控除を受けるために必要になってきます。
後述しますが、この2つは、必ず選択しておくとよいでしょう。
その2つ以外の帳簿は、「補助簿」と呼ばれ文字通り、「主要簿」を補助する役目の帳簿になります。
ちなみに、10万円控除の場合は、簡易帳簿でOKです。
「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」の5つが、標準的な簡易帳簿で必要になります。選択の際の参考にしてください。
いまさら聞けない!?「それぞれの帳簿の意味」
次に、主な帳簿について、それぞれ意味を説明していきましょう。
現金出納帳
「現金出納帳」は、現金の出し入れを記録する帳簿です。家計簿をイメージすると、わかりやすいかもしれませんね。帳簿の残高と現金の残高は、一致していなければなりません。それを確認するための帳簿が、「現金出納帳」です。
ただし、支払いを記載する際には、日付と金額、内容だけではなく「何のために」「どこへ」払ったのかも記載しなければなりません。入金についても同様で、いつ、何のために、どこから、いくらの金額が入金されたのかを記載します。そうすることで、事業に必要な経費であることを説明していきます。
売掛帳/買掛帳
「売掛」「買掛」という言葉は、耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。「売掛」というのは、「商品などを販売して売上が上がったけれども、代金をまだ受け取っていない状態」のことを言います。クレジットカードがまさにそうですよね。いわゆる「ツケ払い」と呼ばれるものです。
逆に「買掛」は「すでに商品を仕入れているけれども、代金を後払いとする状態」です。平たく言えば、代金の未払い分ですね。
そのような未回収の売上代を記帳するのが「売掛帳」で、逆に、未払いの仕入代金を貴重するのが「買掛帳」です。それぞれ「得意先元帳」、「仕入先元帳」とも呼ばれます。
売掛、あるいは買掛について、売上先や仕入先ごとに日付、金額、内容、残高などを記載して残します。そのことで、未回収がないかをチェックしたり、逆に、支払いが漏れていないかを確認したりすることができます。
経費帳
確定申告では「事業を行うにあたって、どれだけの経費がかかったか」を税務署に報告します。その経費のなかで、仕入れ以外のものを科目ごとに記録するのが、「経費帳」です。
例えば、私がよく使う「新聞図書費」以外の、消耗品費や地代家賃、水道光熱費、給与賃金などの経費を記録していくということですね。経費帳は、ある時点までにおいて、いくら使っているかの「合計」を明らかにしてくれます。
経費帳は、備付帳簿のなかではもっとも簡単で、「簡易帳簿」として位置づけされています。エクセルなどでも記録が可能することが可能です。
固定資産台帳
固定資産台帳は、事業主の固定資産を記録する帳簿です。
「固有資産なんて、たいそうなものは持ってないよ」
そんなふうに思う方もいるかもしれませんが、10万円以上で購入して長期にわたって使用するものを「固定資産」といいます。私のような執筆業ならば、まずパソコンが思い浮かびます。コピー機や事務机なども、10万円以上する場合は、固定資産ということになります。それを記録する帳簿が「固定資産台帳」だと思ってもらえるとよいでしょう。
預金出納帳
最初に説明した「現金出納帳」は現金の動きを記録しますが、銀行口座間のお金の動きを記録するのが、「預金出納帳」です。
「預金出納帳」では、単純に通帳の内容を転記していくわけですが、ここでも、やはり「誰と」もしくは「誰から」と「入出金した理由」を記載しなければなりません。それがなければ、経費がどうかわかりませんからね。「経費であることを明らかにする」のが、確定申告であることを忘れないようにしましょう。
総勘定元帳
総勘定元帳は、仕訳を行った後、勘定科目ごとに記録した帳簿のことを言います。名前からして迫力がありますが、帳簿の親分ですね。
総勘定元帳は、主要簿に分類されています。青色申告で65万円(もしくは55万円)の控除を受けたいとき、作成が必要になってくる帳簿です。
仕訳帳
仕訳帳は、総勘定元帳のもとになる帳簿であり、日々の取引を日付順に記録した帳簿です。総勘定元帳と同じく、仕訳帳も主要簿です。仕訳帳がなければ、総勘定元帳が作れませんからね。仕訳帳も、青色申告で65万円(もしくは55万円)の控除を受けたいときに作成が必要です。
活用したい「会計ソフトの自動転記」
以上、青色申告の際の備付帳簿について解説しました。
なんだか大変そうだな、と思う方もいるかもしれませんが、「会計ソフトの自動転記」を使えば、簡単にやってくれます。「やよいの青色申告 オンライン」などのソフトならば、直感的に入力できて、複式簿記まで自動でできるのが、大きなメリットです。帳簿をつけるハードルはぐっと下がっているといえるでしょう。
そして、これらだけの帳簿があるということは、それだけ多角的に経営を分析できることにほかなりません。
その出来上がりをみると、あらためて自分の事業がどれだけの経費を必要とし、どれだけ売り上げたのかがよくわかりますよ。
私は、青色申告をすることは、事業者として独り立ちすることそのものではないかと考えています。プレイヤーから経営者になるということです。
まだの方は、ぜひ次からチャレンジしてみてください!
photo:Getty Images
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画面の案内に沿って入力していくだけで、確定申告書等の提出用書類が自動作成されます。青色申告特別控除の最大65万円/55万円の要件を満たした資料の用意もかんたんです。またインターネットを使って直接申告するe-Tax(電子申告)にも対応し、最大65万円の青色申告特別控除もスムースに受けられます。
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この記事の執筆者柳原つつじ
出版社勤務を経て、フリーエディター、コラムニスト。歴史、伝記・評伝、経営、書評、ITなどを得意ジャンルとして、別名義で著作多数。ここでは、脱サラフリーランスならではの視点で、お役立ち情報をお届けしたいと思います。