フリーターは確定申告が必要?やり方や必要書類、していないとどうなるかを解説
監修者: 奥 典久(奥典久税理士事務所)
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フリーターの方でも、働き方や勤務先の都合などにより、確定申告が必要なケースがあります。もし、その義務を果たさなかった場合には、追徴課税や加算税などのペナルティを受けるおそれがあるため、注意が必要です。
しかし、確定申告が必要な人であっても、事前に税務署から「〇〇円納めてください」という通知が来るわけではありません。自分で申告が必要かどうかを判断して、確定申告書を作成し、必要書類を揃えて税務署に提出するするのがルールです。
そこで、確定申告について詳しく知りたいフリーターの方のために、確定申告が必要なケースや具体的な申告方法などを解説していきます。
フリーターで確定申告が必要なケース
フリーターとして働いている方が、どのような場合に確定申告が必要になるのかを解説していきます。
アルバイト・パートを掛け持ちして2か所以上に勤務している場合
2か所以上の職場で働いている場合は、確定申告が必要です。複数の職場で給与を得ていても、年末調整は1つの職場でしか行うことができません。複数の職場で年末調整をすると、所得控除などの申告が重複してしまうからです。
2か所以上の職場に勤めている場合の給与区分は、それらのうち金額が最も多い給与が「主たる給与」、それ以外の職場からの給与は「従たる給与」に分類されます。基本的には給与の額が最も多い職場で年末調整を行い、それ以外の従たる給与については原則として主たる給与と合わせて確定申告が必要です。
勤務先で年末調整を行わない場合
勤め先が1か所であっても、会社で年末調整をしない場合には確定申告が必要です。年末調整が行われる時期は会社によって異なり、一般的には10月〜12月ごろに扶養控除申告書が従業員に配布されます。会社が指定する期限までに扶養控除申告書を提出しなかった場合は年末調整を行えないため、自分で確定申告をする必要があります。なお、年末調整の対象となるのは会社に雇用されている従業員のみです。請負や業務委託などの契約で仕事をしている場合の収入は、給料所得ではなく事業所得となるため、確定申告が必要です。
年内に退職した場合
年末調整が行われる時期は会社によって多少異なりますが、一般的には毎年12月〜翌年1月です。年内(年末調整を行う前)に退職してしまった場合には年末調整を受けることができません。そのため勤務先から源泉徴収票をもらい、確定申告をする必要があります。ただし、2か所の勤務先で働いていて、1か所を退職した場合には、退職した勤務先の所得を、在職中の勤務先でまとめて年末調整をしてもらえるケースもあります。
フリーターで確定申告が不要なケース
続いて、フリーターとして働いている方が確定申告をしなくても良いケースを紹介します。例としては、勤務先が1社のみで年末調整を受けている場合や、年収が103万円以下の場合、従たる給与の総額が年間20万円以下の場合などが挙げられます。なお、会社で年末調整を行っている場合でも、医療費控除や寄附金控除、給与所得者の特定支出控除などは年末調整で控除することができません。これらの控除を申告するには、確定申告が必要です。
1社のみに勤務して年末調整を受けている場合
給与の受け取り先が1社のみで、会社で年末調整を行った場合には、確定申告の必要はありません。パート・アルバイトとして働いているフリーターの場合、給料から所得税が天引きされているのが一般的です。源泉徴収された金額が実際に納めるべき金額よりも多ければ還付金として差額が戻り、反対に少なければ追加で税金を納めることになります。年末調整で所得税の過不足を調整できるため、確定申告が不要ということです。しかし、勤務先が1か所のみでも、請負や業務委託で仕事をしている場合には、前述のように年末調整を受けることはできません。自分がどのような形態で仕事をしているのか、しっかりと確認しておいてください。
年収が103万円以下である場合
年収が103万円以下の場合は、そもそも所得税が課税されないため、確定申告の必要はありません。給与所得を計算する際には、最低55万円分(年収162万5000円までの場合)の給与所得控除が受けられます。さらに、所得税額を計算する際には、そこから最高48万円(合計所得金額が2,400万円以下の場合)の基礎控除が適用されます。つまり、収入が103万円以下の場合、控除金額の合計も103万円で差し引きゼロとなり、所得税を納めなくてもよいということです。
掛け持ちの勤務先の給与が年間20万円以下で源泉徴収されている場合
2か所以上の勤務先で仕事をして給料をもらっている場合には、基本的に確定申告が必要です。しかし、本業の職場で年末調整を行っており、その他の勤務先の給料が年間20万円以下かつ源泉徴収がされている場合に限り、確定申告は不要です。(確定申告をすると税金が還付される可能性があります)
フリーターの確定申告のやり方
確定申告と聞くと、難しそうでやり方がわからないという方もいるかもしれません。しかし、確定申告をしないでいると、ペナルティが課されるおそれがあります。確定申告の方法をきちんと理解し、期限内に行うことが重要です。以下では、確定申告の具体的なやり方を解説していきます。
1.確定申告の必要書類を準備する
まずは申告に必要な書類を準備しましょう。必要書類は以下のとおりです。
確定申告書
確定申告書には定められた書式があります。「令和○年分の所得税及び復興特別所得税の申告書」という指定の用紙を使用してください。
申告書は最寄りの税務署で入手する方法の他、国税庁のWebページ内にある「確定申告書等作成コーナー」からダウンロードできます。用紙に手書きで記入する方法以外に、オンライン上で入力してプリントアウトする方法や、e-Taxを利用してWeb上で申告する方法があります。
源泉徴収票
源泉徴収票は、1年間の収入金額や控除額などが記載されている書類です。ここに記載されている情報を基に、確定申告書に必要な内容を記載します。通常は年末調整が終了した12月〜1月ごろに勤め先から発行されますが、もし、1月後半になっても手元に届かない場合は会社に問い合わせをしてください。
所得控除に使用する書類
確定申告をすると、さまざまな所得控除を受けられます。各種の控除を受けるためには、それぞれ控除額がわかる書類の準備が必要です。
所得控除は全部で15種類ありますが、その中でフリーターに当てはまることの多い代表的な所得控除と申告に必要な書類は以下のとおりです。
- 医療費控除:医療費通知(医療費のお知らせ)、医療費控除の明細書
- 社会保険料控除:社会保険料控除証明書または国民年金保険料控除証明書
- 生命保険料控除:生命保険料証明書
- 寄附金控除:寄付金受領証明書
参照:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
本人確認書類
確定申告書を提出する際には、本人確認できる書類が必要です。税務署の窓口で申告する場合はマイナンバーカード(個人番号カード)や通知カード、住民票の写し(番号付き)、運転免許証、パスポートなどの写真付き身分証明書が有効です。郵送で申告する場合には、上記書類の写しを提出します。また、オンライン申告の場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)・通知カード・運転免許証などの画像データの電子的送信、電子署名、ID・パスワード(事前に税務署での本人確認が必要)などで本人確認を行います。
参照:国税庁「番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等」
2.確定申告書を作成する
各種書類が用意できたら、次は確定申告書の作成です。かなり記入する項目が多いですが、すべてに記入する必要はなく、必要なところだけ書けば大丈夫です。確定申告書の作成は「収入源が給与所得のみ」の場合と「収入源が給与所得と副業所得」の場合とで異なります。
収入源が給与所得のみのフリーターの方は、基本的に「白色申告」という方法で申告を行います。この場合、作成する書類は確定申告書のみです。一方、フリーターで給与所得の他に事業所得がある場合、収入金額や支出を記入した「収支内訳書」を作成し、確定申告書と共に提出する必要があります。なお、事前に税務署へ申請して承認を受けた方が対象となる青色申告では「青色申告決算書
」という書類を作成・添付しなければなりません。書類の書き方に不安がある場合は、国税庁のHPに掲載されている見本を参考にするか、税務署の窓口でも相談に乗ってくれるため活用してください。
3.確定申告書を税務署に提出する
申告書などの書類が揃ったら、税務署に提出します。提出方法は「税務署の窓口に提出する」「管轄の税務署に郵送する」「e-Taxからネット申告する」の3つです。
窓口で提出する場合には、担当者に必要書類などが揃っているか確認してもらえますので、初めての方にとっては安心できます。また、窓口の受付時間外でも、収受箱に投函が可能です。郵送する場合には、管轄の税務署を調べて送付してください。提出日は書類が到着した日ではなく、消印日です。提出期限の最終日でも、その日中に郵便局に持参して消印を押してもらえれば、税務署に到着するのが提出期限後でも問題ありません。
e-Taxを使用して提出する場合には、マイナンバーカードとICカードリーダーなど、電子署名できる環境が必要です。ただし、マイナンバーカードの読み取りに対応しているスマートフォンがあれば、それ1台で電子署名も可能です。
確定申告の必要なフリーターが確定申告をしていないとどうなる?
確定申告の必要性を知らずに申告しなかったり、故意に申告をしなかったりした場合には、無申告加算税や延滞税などのペナルティを受ける可能性があります。無申告加算税は期限内に確定申告を行わなかった場合に課せられる税金で、納税金額や申告するタイミングにより、5%から30%の加算税がかかります。
延滞税は延滞した期間により、最高で年14.6%の延滞税が利息として課されます。税務署から悪質性が高いと判断されると、逋脱(ほだつ)犯として懲役または罰金、もしくはその両方の刑事罰が科されるおそれがあります。もし申告を忘れてしまった場合には、そのままにせず、税務署に連絡をして必ず申告をすることが重要です。
【Q&A】フリーターの確定申告に関するよくある質問
フリーターの方から寄せられる、確定申告に関してよくある質問と回答を紹介します。
確定申告とはなんですか?
確定申告とは、その年の自分の収入から課税所得を算出して所得税を確定する手続きのことです。1年間の給与収入が103万円を超えれば、基本的には納税義務が発生します。ただし、企業に勤めている多くの人は、毎月の給料から所得税が天引きされており、年末調整の対象になるため、確定申告は行わなくても良い場合が多いです。収入源がパート・アルバイト給与のみのフリーターも、会社で年末調整が行われている限り確定申告は不要です。ただし、2か所以上の職場で勤めている場合や、会社で年末調整を行っていない場合など、状況によっては確定申告が必要なこともあります。確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日までの1か月間です。
確定申告と年末調整は何が違いますか?
年末調整とは、「雇用主が所得税の過不足を精算する」手続きです。一方で確定申告は、「納税者本人が所得税を確定させる」手続きです。年末調整の場合は、あらかじめ源泉徴収で給料から一定額を天引きされています。その天引きされた所得税の過不足を12月に精算するということです。年末調整は1人1か所の勤務先でしか行うことができません。そのため、年末調整をしている勤め先以外からも収入があれば、その分については確定申告をしなければなりません。また、医療費や寄付金などの控除は年末調整では適用されないため、各種の控除を受けるためには確定申告が必要です。
フリーターも確定申告の必要性を理解しよう
フリーターの方でも、2か所以上に勤務している場合や、勤務先で年末調整が行われない場合、年内に退職した場合などは、確定申告が必要です。ただし、税務署などから案内が来るわけではありませんので、自分で確定申告の必要性を判断しなければなりません。申告方法に不安がある場合、「確定申告ソフト」の活用がおすすめです。確定申告に必要な手順がすぐにわかり、案内表示に従い必要事項を入力すれば自動的に確定申告書などが完成します。手間をかけず効率的に確定申告をしたい方は、「やよいの青色申告 オンライン」や「やよいの白色申告 オンライン」といったソフトをぜひ活用してみてください。
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この記事の監修者奥 典久(奥典久税理士事務所)
奥典久税理士事務所 代表
簿記専門学校で税理士講座講師として勤めたのち、会計事務所で勤務。その後独立し、奥典久税理士事務所を開業。相続(贈与)対策や事業承継コンサルティング経営、財務コンサルティングから各種セミナーなど、幅広く税理士業務に従事。
