ポイ活で確定申告が必要なケースは?注意点を税理士が解説!
監修者: 齋藤一生(税理士)
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ポイ活では、確定申告が必要になるケースがあります。では、どのような場合に確定申告が必要になるのでしょうか。また、給与所得者である会社員と個人事業主では、貯めたポイントの扱いに違いはあるのでしょうか。
ポイ活を行うのなら、「貯めたポイントは所得になるのか」「ポイ活で確定申告は必要か」といった、ポイ活に関する基礎知識を得ておくことが重要です。
ここでは、ポイ活で確定申告が必要となるケースや、ポイ活と確定申告にかかわる注意点などについて詳しく解説していきます。
ポイ活とはポイントを貯めてお得に使う活動のこと
「ポイ活」とは、さまざまな方法でポイントを上手に貯めたり、使ったりする活動のことです。店舗やECサイト、キャッシュレス決済、ポイントサイトなど、さまざまな場面でポイントを貯められるため、積極的にポイ活をしている方も増えています。
ただ、一括りにポイントといっても、付与される場面や使い道など、その内容は多岐にわたります。ポイ活で得られる主なポイントの種類を以下にまとめました。
ポイ活で得られる主なポイントの種類
ポイントの種類 | 概要 |
---|---|
ショップポイント | 百貨店やスーパーマーケット、家電量販店など、小売店舗で商品購入時に付与されるポイント |
ECサイトのポイント | ECサイトでの商品購入時に付与されるポイント |
キャッシュレス決済のポイント | クレジットカードやスマホ決済などの利用時に付与されるポイント |
ポイントサイトで獲得したポイント |
|
臨時的なキャンペーンで得たポイント | 企業や団体が一時的なキャンペーンのために付与するポイント 例:携帯電話事業者やインターネットプロバイダーなどが、新規利用者に対して期間限定で付与するポイントなど |
国や自治体の施策で得たポイント | 国や自治体の施策で得られるポイント 例:総務省「マイナポイント事業 |
アフィリエイトで得たポイント | アフィリエイトを行い、該当Webページへの遷移・購入などに応じて得られるポイント |
ポイ活が課税対象となる場合
ポイ活で得られたポイントは、その種類や使われ方によって、課税の対象となるポイント、ならないポイントに分かれます。
ポイントが課税対象になるのは、経済的利益に該当する場合です。経済的利益とは、簡単にいうと、「お金ではないが、それを受け取ることによってお金を受け取ったのと同じ効果を得る」という意味です。例えば、ポイントの中には、「1ポイント=1円」など、お金の代わりとして買い物に使用できるポイントがあります。このようなポイントを1,000ポイント使えば、お金を支払わなくても1,000円分の買い物が可能です。この場合、ポイント利用によって1,000円分の経済的利益を受けたことになります。
なお、ポイントに税金が発生するのは、基本的に「ポイントを使ったとき」です。ポイントを獲得したときや、使わずに保有しているときは、課税の対象にはなりません。また、ポイ活によるポイントが課税対象になる場合も、その内容によって所得区分が変わってきます。ポイントの所得区分は、以下のいずれかです。
一時所得に該当する場合
一時所得とは、給与所得など他の所得区分に該当しない所得のうち、営利目的でない臨時的な所得、対価性のない所得などのことです。一時所得に該当する所得として、生命保険の一時金や懸賞の賞金品などがあげられます。
ポイ活で一時所得に該当するケースとしては、一般消費者として買い物で共通ポイントを得た場合や、各種キャンペーンなどでポイントを得た場合などがあります。
雑所得に該当する場合
雑所得とは、他の所得区分に該当せず、上記の一時所得にも該当しない所得のことです。雑所得に該当する所得としては、公的年金や副業による所得などがあげられます。
ポイ活で得たポイントが雑所得に該当するケースとしては、副業でアフィリエイトなど継続的な業務によってポイントを得た場合や、アンケートへの回答など対価性のあるポイントを得た場合などがあげられます。
ポイントが一時所得か雑所得かで迷ったら、対価性があるか、つまり労務や役務によって得たポイントかどうかで判断するといいでしょう。例えば、アフィリエイトやアンケート、広告視聴、口コミ投稿などによって付与されたポイントは、労務や役務の対価といえるため雑所得に該当します。
事業所得に該当する場合
事業所得とは、小売業やサービス業など事業を行うことによって得る所得のことです。事業所得の収入には、本業による売上のほか、事業に付随して受ける経済的利益も含まれます。ポイ活で得たポイントが事業所得に該当するケースは、経費の支払いや事業用資産の購入などでポイントを得た場合などです。
ポイ活が課税対象とならない場合
ポイ活のポイントは、保有しているだけでは課税対象にはなりません。ポイ活で得たポイントを保有している状態では、何に使うかが決まっていないことが理由としてあげられます。また、ポイントの多くには有効期限が設定されており、獲得したポイントを使わないまま期限切れで失効してしまうかもしれません。
そのため、実際に経済的利益を確認できるタイミングとしては、ポイントを使用した時点が適切といえます。ただし、ポイントを電子マネーにチャージした場合は、その時点で現金と同様のポイントとして自由に使えるようになるため、チャージ時点での所得とするのが適切です。
また、特定の店舗で付与され、その店舗のみで利用可能なポイントは経済的利益に該当せず、課税の対象にはなりません。例えば、家電量販店やスーパーマーケットなどで提供している、他では使用できない店またはグループ独自のポイントが当てはまります。このポイントは頻繁に利用する顧客に対する一種の値引きであり、通常の商取引と考えられるため、経済的利益には該当しないものとします。
なお、抽選キャンペーンに当選するなどの臨時的・偶発的に発生するポイントは、この商取引からは外れていると考えられるため、経済的利益に該当し課税対象です。
給与所得者がポイ活で確定申告をしなければならないケース
会社員やパート、アルバイトなどの給与所得者は、本業の給与所得・退職所得のほかに得た所得の合計が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。ポイ活で得られる収入が一時所得に該当するなら90万円を超えた場合、雑所得に該当するなら20万円を超えた場合は確定申告が必要です。
では、ケースごとに詳しく見ていきましょう。なお、いずれのケースも、給与所得とポイ活以外の所得はないものとします。
ポイ活で得た収入が一時所得に該当し、90万円を超える
給与所得者がポイ活で得た収入金額が一時所得に該当する場合は、90万円を超えると確定申告が必要です。
収入金額は1年間でポイントを使用した金額です。控除できるのは、その収入を得るために直接支出した金額となりますが、このケースでは支出がありません。
一時所得の金額は、以下の計算式で算出します。
一時所得の計算式
一時所得=収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
さらに、給与所得者は、給与以外の所得金額が20万円以下であれば確定申告は不要とされています。この給与以外の所得に算入する金額は、一時所得であれば、上記の式で算出した額に2分の1を掛けた金額となります。
例えば、ポイント収入が90万円だった場合、「(90万円-50万円)×1/2=20万円」となり、確定申告が不要な所得金額内に収めることが可能です。1年間のポイント使用金額が90万円を超えない限りは、確定申告の必要はないため、「高額商品の代金が全額ポイント還元された」などの場合でなければ、一時所得のポイントで確定申告を行うことはほとんどないといえます。
ポイ活で得た収入が雑所得に該当し、20万円を超える
雑所得には、一時所得のような特別控除がないため、給与所得者がポイ活で得た収入が雑所得に該当する場合は、20万円を超えると確定申告が必要になります。
雑所得を算出する計算式は、以下のとおりです。
雑所得の計算式
雑所得=収入金額-必要経費
アフィリエイトを副業とし、ポイントを得ること自体を目的として業務を行っている場合は、アフィリエイトサイトを運営するために必要なネット関連の費用やパソコン、ソフトなどを経費に計上できます。アンケート回答や広告視聴などの場合は、基本的に経費はありません。
ポイ活以外に収入のない方がポイ活の確定申告をしなければならないケース
専業主婦(夫)や学生などでポイ活以外に収入のない方は、基礎控除という所得控除を差し引いた後に所得金額が残っていれば確定申告が必要です。所得控除とは、税負担の調整を行うために、納税者の個人的事情などに合わせて、所得税の計算のベースとなる所得金額から一定額を差し引ける制度です。
ここでは、ポイ活以外に収入のない方がポイ活の確定申告をしなければならないケースとして、以下で具体的な金額もあげながら例を紹介します。
所得控除は全部で15種類ありますが、解説する例では基礎控除のみ適用するものとします。なお、基礎控除の控除額は、合計所得金額が年間2,400万円以下なら48万円です。
ポイ活で得た収入が一時所得に該当し、146万円を超える
ポイ活で得た収入は、一時所得に該当する場合は、146万円を超えると確定申告が必要になります。これは、一時所得の額が146万円以下であれば基礎控除の48万円の範囲内であるため、課税所得金額がゼロになることが理由としてあげられます。
ポイ活で得た一時所得の金額を算出する計算式は、以下のとおりです。
一時所得の計算式
一時所得=収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
例えば、収入金額を146万円として上記の式で計算すると、一時所得は96万円になります。さらに、一時所得の金額の計算においては、この金額に2分の1を掛けるため、「96万円×1/2=48万円」です。基礎控除の48万円を差し引くと課税所得金額はゼロになり、税金がかからないということがわかります。
ポイ活で得た収入が雑所得に該当し、48万円を超える
ポイ活で得た収入が雑所得に該当する場合は、年間の収入が48万円を超えたら確定申告が必要になります。一方、雑所得には特別控除がありませんが基礎控除は適用されるため、48万円以下なら確定申告は不要です。
個人事業主がポイ活で確定申告をしなければならないケース
個人事業主の場合は、ポイ活に関係なく、年間の合計所得金額が基礎控除の48万円を超えると確定申告が必要です。
もし年間の所得が事業所得とポイ活で得られた所得の場合、ポイ活による所得が一時所得なら「事業所得+特別控除を適用した一時所得×1/2」、雑所得なら「事業所得+雑所得」として、合計所得金額を計算します。
また、個人事業主がポイントを使用して事業用の備品などを購入した場合は、経理処理が必要です。事業の支払いにポイントを使用した場合の仕訳例を、以下に紹介します。
事業用の備品に特定のお店のポイントを使用した場合の仕訳例
特定の店舗のポイント使用は、通常の商取引の値引きと同様に処理します。事業用の備品1万円につき、店舗のポイント2,000円を使用し、残額8,000円を現金で支払う場合の仕訳例は以下のとおりです。
事業所得としてポイントを使用した際の仕訳例
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 8,000 | 現金 | 8,000 |
この場合は、2,000円の値引きを受けた際に、ポイント使用後の金額である8,000円を消耗品費として計上します。
事業用の備品に共通ポイントを使用した場合の仕訳例
共通ポイントの使用は経済的利益を受けたことになるため、雑収入として仕訳します。事業用の備品1万円につき、共通ポイント2,000円分を使用し、残額8,000円を現金で支払う場合の仕訳例は以下のとおりです。
雑所得としてポイントを使用した場合の仕分け例
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 10,000 | 現金 | 8,000 |
雑収入(消費税不課税) | 2,000 |
この場合は、1万円全額を消耗品費としたうえで、2,000円分の雑収入を計上します。なお、この雑収入は消費税の対象外取引となりますが、事業に付随する収入であるため事業所得に含まれます。
プライベートの備品に店舗のポイントを使用した場合の仕訳例
プライベートの備品を事業用の現金で支払った場合は、事業主貸の勘定科目で仕訳が必要です。事業主貸は個人事業主特有の勘定科目で、主に事業用資金をプライベートで使った場合に用います。
特定の店舗のポイント使用は、通常の商取引の値引きと同様に仕訳し、借方勘定を事業主貸とします。プライベートの備品1万円につき、お店のポイント2,000円を使用し、残額8,000円を事業用の現金で支払う場合の仕訳例は以下のとおりです。
プライベートの備品にプライベートで貯めたポイントと事業用現金を使用した場合の仕訳例
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
事業主貸 | 8,000 | 現金 | 8,000 |
特定の店舗でのポイント使用は通常の商取引の値引きと変わらないことから、2,000円の値引きとして処理します。また、事業用の現金でプライベートの支払いをしているため、事業には関係ない支払いであることを表す勘定科目として事業主貸を使用します。
ポイ活で確定申告をする際の注意点
ポイ活で確定申告をする際には、いくつか注意すべき点があります。申告が必要な場合、以下のような点に注意して申告を行いましょう。
ポイ活で得た収入を記録しておく
ポイ活で確定申告が必要かどうかを判断するためには、1年間のポイントを使用した金額(ポイント収入)を集計しなければなりません。ポイントにはさまざまな種類があり、付与や使用のタイミングもバラバラなので、きちんと記録しておかないと管理できなくなってしまいます。
ポイントサイトなどで履歴が見られる場合には、そのデータをダウンロードしたり、プリントアウトしたりするなど、後で集計できるようにしておきましょう。
複数のサービスで得たポイントは合算する必要がある
複数のポイントサイトやキャッシュレス決済などを利用している場合は、すべてのポイントを合算して所得金額を算出する必要があります。確定申告が必要かどうかの判断も、ポイントを合算してから行うようにしましょう。
ポイ活以外にも副収入がある場合はポイントを合算する必要がある
ポイ活以外に一時所得や雑所得がある場合は、所得の種類ごとに合算しなければなりません。ポイ活のポイントが一時所得に当たる場合には、他の一時所得と合計したうえで所得金額の計算を行います。
例えば、給与所得者でポイ活以外に副業をしている場合は、すべての雑所得を合計して20万円を超えたら確定申告が必要です。また、生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金などは、一時所得に該当することもあります。
副業を知られたくない会社員は住民税を普通徴収にしておく
会社員で、確定申告により勤務先に副業が知られたくない場合には、普通徴収にしておくことがおすすめです。ポイ活など副業によって収入を得ると、その分だけ翌年の住民税が高くなります。会社員の住民税は特別徴収という給与から控除(天引き)されて勤務先を通じて納めるしくみのため、住民税額の変動があると、副収入があることを勤務先に察知されかねません。
副業を勤務先に知られるリスクを低減するには、確定申告の際、確定申告書の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄の「自分で納付」に◯を付けましょう。こうすることで、副業所得分の住民税を、納税通知書(納付書)を使って自分で納付する普通徴収に変更できます。
確定申告の書き方については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
ポイ活で申告漏れをしないために
電子マネーなどの普及に伴って、ポイ活を行う人は増加しています。国税庁もポイントに関する取り扱いを公表するなど、適正な納税のための情報を整備しています。ポイントサイトでの履歴を確認したり自分で意識的に記録したりするなどして、確定申告が必要か意識するようにしてください。
今後、ポイ活の広まりによっては、その収入について正しい申告がなされているかが重点的にチェックされる可能性もあります。必要に応じて申告時にすぐに対応ができるように、日ごろからポイ活の記録などを習慣付けておくことが大切です。
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