税務調査が入るとどうなる?個人事業主ができることも解説
監修者: 齋藤一生(税理士)
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税務調査は、法人だけでなく個人も対象です。個人事業主の確定申告に誤りや不正、不審な点があった場合は、税務署による税務調査が行われる可能性もあります。
特に、個人事業主の場合、「税務調査が入るとどうなるのだろう」「税務調査では何をするのだろう」などと、不安に思う方も多いのではないでしょうか。税務調査が入った場合にどのようなことをされるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
ここでは、税務調査の内容や流れ、税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴と共に、税務調査の対象にならないために心掛けておきたいことなどを解説します。
税務調査は申告内容の正確性を確認する税務署による調査のこと
税務調査とは、納税者から提出された申告内容が正確かを確認するために行われる、税務署による調査のことです。法人税や所得税などは、納税者が自ら申告した内容に基づいて納税する申告納税制度となっています。
正しく申告・納税をしていれば問題はありませんが、中には申告内容が間違っていたり、故意に不正をしたりする方もいます。そのため、申告内容に誤りがないかを確認するために税務調査が行われます。税務調査は、事業を営んでいる法人や個人事業主のほか、確定申告の必要な方全般が対象となります。税務調査には任意調査と強制調査の2種類があり、具体的な調査内容は下記のとおりです。
任意調査
任意調査は、納税者の同意の下に税務署の職員が実施する調査で、税務調査の大半がこれに該当します。一般的には、電話や通知書で事前連絡があり、日程調整をしたうえで税務署の職員が自宅や事務所などを訪れ、1日もしくは2日ほどかけて帳簿などを調べます。
なお、「任意」と付いているものの、調査を拒否したり、正当な理由なく帳簿を見せなかったりすると、罰則を科されるかもしれません。つまり、任意とはいいながら、実際は通知が来たら調査を受ける必要があるといえるでしょう。
強制調査
強制調査は、国税局査察部が実施する調査です。裁判所の令状をもって強制的に行われる調査で、任意調査とは異なり事前連絡はありません。また、調査対象となった場合には、拒否することは不可能です。
強制調査は立件を目的とした犯罪捜査の一種であり、巨額の脱税の疑いがある場合に行われます。よほど悪質な脱税をしていない限りは、個人事業主が強制調査の対象になることはないでしょう。
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「個人事業主、白色申告なら調査は入らない」は嘘
「それほど売上が多くない個人事業主は税務調査の対象にはならない」「白色申告なら税務調査は入らない」などと考えている方もいるかもしれませんが、そのような事実が認められているわけではありません。誰もが税務調査の対象となる可能性があると考えて、正確な確定申告を心掛けましょう。
では、実際に、個人事業主を対象とした税務調査はどのくらい行われているのでしょうか。
国税庁の「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、2023年度(2023年7月~2024年6月)に実施された所得税の実地調査件数は4万7,528件です。このうち、申告漏れなどの非違件数(問題のあった件数)は4万131件でした。調査を受けた事業者などのうち、約84%に問題があったということです。
また、国税庁の「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、2023年分の確定申告のうち、事業所得と不動産所得の申告件数は約530万件です。
上記の実地調査件数は、個人事業主以外も含まれますので単純な割合計算はできません。とはいえ、繰り返しになりますが、調査対象には個人事業主も含まれていると考えて、正確な確定申告を心掛けましょう。
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税務調査されやすい個人事業主とは
税務調査の対象は、ランダムに決まるわけではありません。税務調査の対象になりやすい個人事業主には、いくつかの共通した傾向があります。
特に令和5年事務年度から国税庁がAIに申告漏れの事例を学習させ、税務調査を行う手法を取り入れた結果だとニュースでも話題になりました。AIが選定した対象業種や傾向のある納税者を重点的に調べる税務調査に取り組んでいるのでしょう。
具体的には、以下のような特徴がある場合、税務調査の対象になりやすいといわれています。しかし、前述したようにAIの活用によって、選定を効率化することで、対象業種や傾向がある事業者への税務調査の確率はあがるのかもしれません。
過去に申告漏れがあった
過去に申告漏れや不正などが発覚したことのある個人事業主は、正しく申告・納税している方に比べて、「また申告内容に漏れや不正がある可能性が高い」と税務署に判断されやすくなります。問題が再発していないか、過去の指摘事項が改善されているかを確認するために、税務調査が行われる可能性もあります。
利益が著しく低い
売上に対して利益が少なすぎる場合も、税務調査の対象になりやすくなります。特に、同規模、同業種の個人事業主に比べて利益率が著しく低いと、納税負担を減らすために不正をしているのではないかと疑われる可能性があります。また、「生活費はどこから出ているのか」と疑念を持たれる要因にもなりかねません。
必要経費に不自然な点がある
個人事業主が税務調査の対象になるケースとして多いのが、必要経費に不自然な点がある場合です。売上に対して必要経費が多すぎたり、経費計上に不自然な点があったりすると、事業に直接関係のない支出を必要経費にしているのではないかと疑われやすくなります。
また、売上に対して必要経費の金額が高すぎることで、利益が同業他社に比べて低すぎる場合も、不自然だと見られやすくなるでしょう。
例えば、一般的に交際費が少ないとされている業種で「接待交際費」が多額だった場合、私的な支出が計上されていないか、税務調査で帳簿や書類などの確認が行われることもあります。特に、個人事業主は、事業上の必要経費とプライベートの支出が混同してしまわないように、十分注意が必要です。
消費税の課税売上高が1,000万円をわずかに下回る
消費税の課税売上高が1,000万円をわずかに下回る年が続いている場合も、税務調査の対象に選ばれやすくなるケースです。
個人事業主は、年間の課税売上高が1,000万円を超えると翌々年から消費税の課税事業者になるため、このようなケースでは「消費税の課税を免れようと売上の調整をしているのではないか」と疑われやすくなります。
インボイス制度が2023年10月から開始されました。インボイス制度に対応で課税売上が課税事業者の要件に満たなくても、取引相手先によっては、課税事業者になった個人事業主の方もいるでしょう。
しかし、一般消費者相手のビジネスの場合、適格請求書(インボイス)の交付を求められないので、免税事業者でも問題はありません。そのため、課税売上高が1,000万円をわずかに下回る年が続いていると対象に選ばれやすくなることがあるのです。
税務署の把握する売上と申告書の売上が違う
税務署が把握している売上高と、確定申告で申告した売上高に相違がある場合は、税務調査の対象になる可能性が高くなります。
例えば、A社が「個人事業主Bに対して1,000万円を支払った」という申告をしているのに、Bの確定申告書上では「A社との取引で500万円を売り上げた」という申告が行われていた場合、どちらかの申告にミスや不正があると考えられます。税務署が不審に思い、正しい売上を確認するために税務調査を行う可能性が高いでしょう。
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税務調査の流れ
税務調査の大半は任意調査です。任意調査では、事前連絡の後に税務調査官が事業所を訪問し、帳簿や書類などを確認します。
ここからは、税務調査(任意調査)の具体的な流れを解説していきます。
1. 事前通知される
税務調査では最初に、税務署から税務調査を行う旨の事前連絡があります。連絡が入るタイミングは実地調査の2週間前ごろが多く、電話での連絡が一般的ですが、書面が郵送される場合もあります。
ただし、事前通知は義務ではありません。不正が疑われる場合などは、適正に税務調査を実施するために事前通知を省略されることもあります。
なお、税理士が申告書に税務代理権限証書を添付して申告していた場合は、基本的には税理士に連絡が入ります。
2. 調査日程の調整を行う
事前通知を受けたら、税務署と調査実施日の調整を行います。調査実施日は、仕事が忙しい日を避けるなど、個人事業主側の都合に合わせることが可能です。
なお、税務調査にあたって税理士に立ち会ってもらう場合には、税理士とも日程調整をしなければなりません。顧問税理士がおらず対応に不安のある場合には、税理士を探すことをおすすめします。
3. 事前に調査への準備を行う
調査日程が決まったら、必要な書類を揃え、整理しておきましょう。税務調査では、帳簿や領収書、契約書、通帳など、さまざまな書類の開示を求められます。
顧問税理士がいる場合は、税務調査前に打ち合わせをして、必要書類に不備や漏れはないかを確認できます。調査当日に聞かれそうなことや、税務署と見解の異なる可能性がある項目なども想定して、調査への準備を進めておくと安心です。
4. 税務調査の実施
調査への準備を終えた後、税務調査当日になると、税務署の職員が自宅や事務所、店舗などを訪問します。多くの場合、はじめに事業概要などに関するヒアリングが行われ、そこから決算書や帳簿などの書類、現金、棚卸資産などのチェックに進みます。実地調査は、1日から2日程度で終了することが一般的です。
その後、実地調査を踏まえて、税務署から指摘や質問を受けたり、追加資料を提出するよう求められたりすることがあります。顧問税理士がいなければ個人事業主自身が、顧問税理士がいれば税理士が対応します。
5. 調査結果の通知
調査結果が決定すると、申告是認、修正申告、更正という3パターンのうち、いずれかが通知されます。申告是認とは申告内容に何も問題がないこと、修正申告は税務署の指摘を認めて自分で申告をすることです。また、更正とは税務署の指摘に納税者が納得せず修正申告しない場合に、税務署側が各税法の規定を根拠に行う課税処分のことをいいます。
税務署の指摘を認めて追加の納税をする場合は、修正申告書を作成して税務署へ提出し、不足していた税額や延滞税、過少申告加算税などを納めなければなりません。場合によっては、重加算税が課せられることもあります。
修正申告のやり方、延滞税や重加算税などについて詳細は以下の記事を参考にしてください。
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税務調査を防ぐ一番の方法は、正確に確定申告をすること
税務調査の対象にならないようにするには、確定申告を正確に行うことが大切です。正しく確定申告をしていれば、たとえ税務調査が入ったとしても、問題なし(申告是認)という結果になるでしょう。
そのために、個人事業主が日ごろから心掛けたいことを以下にまとめました。
正確に記帳する
正しい確定申告の基本は、日ごろの正確な帳簿付けです。売上や必要経費など、日々の取引内容を正しく記帳することが、税務調査を避ける結果につながります。確定申告の直前にまとめて記帳しようとすると、ミスが発生しやすくなります。取引の記憶が新しいうちに、こまめに記帳しておきましょう。
帳簿の作成と保存は、個人事業主か法人かを問わず、事業を営むすべての事業者の義務です。
個人事業主では、65万円、55万円の青色申告特別控除を受けるために複式簿記で帳簿を付ける場合など、「簿記の知識がないと正しい記帳は難しいのでないか」と、不安になる方もいるかもしれません。また、手書きや表計算ソフトなどで帳簿を管理していると、計算間違いや申告書への転記ミスなどが起こりがちです。
2023年10月にインボイス制度が開始して、課税事業者になった個人事業主は、消費税の申告やインボイス制度に対応した帳簿付けが必須になりました。手書きや表計算ソフトでは正確な帳簿付けは、よほど経理に詳しくない限り困難です。
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申告期限を守り、漏れのないよう確定申告する
税務調査が入らないようにしたり、延滞税などのペナルティを発生させたりしないためにも、確定申告は必ず申告期限を守るようにしましょう。確定申告の期限は、原則として、毎年3月15日(土日祝日の場合は翌平日)です。また、確定申告書の提出期限と納税期限は同日のため、注意が必要です。
確定申告の際は、1年間の取引を記録した帳簿を基に収支をまとめ、納めるべき税金を計算し、確定申告書をはじめとした必要書類を作成する必要があります。期限ギリギリに準備をすると、ミスや漏れが起こりやすくなるうえ、提出前にチェックする時間もとれなくなってしまいます。
「慌てて提出したために申告書の誤りに気づかず、税務調査の対象になってしまった」ということにならないように、余裕を持って確定申告することが大切です。
必要経費を適切に申告する
必要経費の計上が不適切だと税務調査の対象になる可能性が高まるため、必要経費は適切に申告するようにしてください。特に、個人事業主の場合は、事業上の必要経費とプライベートの支出の線引きがあいまいになりやすいため、注意が必要です。
故意ではなかったとしても、事業とは関係ない支出を必要経費とすることは認められません。例えば、「事業に必要な出張に家族も連れて行き、家族旅行を兼ねた。その際の家族の旅費も、出張旅費としてまとめて経費計上した」といった経理処理は不適切です。
また、自宅を事務所と兼用している場合、家賃や光熱費、通信費などは全額を必要経費にはできず、実態に応じて事業での利用分とプライベートの利用分に振り分けなければなりません。知らず知らずのうちに不適切な経費計上をしてしまわないように、十分注意しましょう。
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確定申告は正しく申告しよう
税務調査とは、納税者の申告内容に問題がないかを税務署が確認するための調査です。個人事業主でも、売上や必要経費に不審な点があったり、急激な増減があったりすると、税務調査の対象になることがあります。
税務調査の対象になるのを避けるためには、日ごろから正確な記帳を心掛け、期限内に正しく確定申告を行うことが重要です。とはいえ、簿記の知識がないと、帳簿の付け方を間違えてしまったり、計算や転記をミスしてしまったりするかもしれません。記帳や確定申告の手間をなくし、ミスを防ぐには、確定申告ソフトの利用をおすすめします。
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