副業していても失業保険はもらえる?失業中に副業を始める場合も解説
監修者:齋藤一生(税理士)
2024/08/30更新
副業をしている会社員の方が本業の会社を離職する場合、失業保険を受給できるのかどうか知りたいと思っていませんか?失業保険の受給期間中に副業を始めても良いのか、気になる方もいるでしょう。
実は、どちらの場合も、副業の働き方によっては失業保険を受給可能です。
本記事では、副業と失業保険の関係についてわかりやすく解説します。失業保険を適切に受給するために、対象となる条件や必要な手続きについてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
離職前から副業を続けていても失業保険をもらえる?
一般的に失業保険と呼ばれるものは、雇用保険における、給付者給付の基本手当(失業手当)のことです。労働者が失業した場合にハローワーク(公共職業安定所)で所定の手続きをすることで受給できます。働く意欲があり就労できる状態にあるものの、求職活動をしても仕事に就けない方が給付の対象となります。
したがって、本業が会社員の方で離職前から事業規模で副業をしているようなケースでは、失業保険(基本手当)は受け取れません。副業として行っている事業を通じて収入を得られるのであれば、失業状態とはみなされないからです。
ですが、本業の離職前から行っている副業があっても、それが事業規模ではない場合、副業の働き方や収入額などによってはハローワークが失業保険の給付を認める場合があります。給付が認められた場合、注意すべきポイントは主に次の3つです。
待機期間中に副業の仕事をしないこと
失業保険の給付を受ける際、「待機期間」中の過ごし方に注意が必要です。失業保険の受給では、ハローワークでの手続き後に7日間の待機期間があります。なお、失業保険の受給手順の詳細については後述します。
待機期間は仕事をしていない状態を確認するための期間で、離職理由にかかわらず全員に適用されるものです。待機期間が満了するまでは、失業保険の受給はできません。そのため、待機期間中はアルバイトやパートのほか、日雇いなどの就労形態を問わず、副業の仕事はしないようにしましょう。待機期間中に収入が発生する仕事に従事すれば失業中とはみなされず、待機期間が延長されてしまい、受給開始日が遅くなります。
資産運用など副業とみなされないケースやポイ活などの気軽な副業に関しても、取り組んで良いかどうか不明な場合はハローワークに確認しておくことをお勧めします。一般的には、待機期間中は収入を得る行動をしないのが基本です。
副業に充てる時間を1日4時間未満にすること
待機期間後、失業保険を受給しながら副業に取り組む場合には、副業に充てる時間を1日4時間未満にとどめる必要があります。1日4時間以上の労働は、就職または就労とみなされるからです。副業に4時間以上取り組んだ日に関しては、失業保険の支給対象外となりますので、支給されません。
また、副業に充てる時間が1日4時間未満であっても、副業で得た収入額によっては失業保険が減額される場合があります。
なお、自己都合・懲戒解雇による離職の場合、待機期間満了後に2~3か月の給付制限がありますが、給付制限期間中の副業についても考え方は同様です。
副業に充てる時間を週20時間未満にすること
失業保険受給期間中や給付制限期間中に副業をする場合、副業に充てる時間が週20時間以上になると、継続した就労とみなされます。雇用保険の被保険者として加入できる条件が、1週間の所定労働時間が20時間以上とされているためです。
週20時間以上働いた場合、働いていない日も含めて失業保険の支給対象外となってしまいますので、支給されません。副業がアルバイトやパート等の場合は副業先にあらかじめ相談し、受給期間中・給付制限期間中のシフトを調整する必要もあるかもしれません。
失業中に副業を始めた場合、失業保険はもらえる?
失業期間中、収入確保などのために、副業を新たに始める場合もあるでしょう。この場合、離職前から副業を続けているケースと同様に、副業の仕方によっては失業保険を受給することも可能です。受給対象となるケース・ならないケースについて解説します。
待機期間後に開始するのであればもらえる可能性がある
待機期間満了後、受給期間中や給付制限期間中に副業を始めるのであれば、失業保険を受給できる可能性があります。ただし、前述のとおり、副業に充てる時間は1日4時間・週20時間未満にとどめることが重要なポイントです。これを超えて副業に取り組んだ場合、失業保険が減額されたり、給付が停止されたりすることがあります。
事業を始める場合、給付の対象外となる可能性がある
失業中に副業を始めるうえで、個人事業主として事業規模で働くなど、事業を始めたりその準備を進めたりする場合には、給付の対象外となることもあります。
事業規模とみなされるかは、帳簿書類の記録・保存をしているかが判断の基準です。ただし、記帳・帳簿書類の保存があっても、収入規模が小さい場合や営利性が認められない場合、事業所得には該当しないと考えられるため、副業を始める前に管轄のハローワークに相談するのがお勧めです。
なお、事業として副業を始める場合、所定の条件を満たすことで、事業を行っている期間を受給期間に含めない「雇用保険受給期間の特例」が適用される可能性があります。特例申請の具体的な要件は、以下のとおりです。
雇用保険受給期間の特例申請の要件
- 事業の実施期間が30日以上であること
- 事業を始めた日、または準備に専念し始めた日から起算して30日を経過する日が受給期間の末日以前であること
- 当該事業について、就業手当または再就職手当を受給していないこと
- 当該事業について自立できないと認められる事業ではないこと
- 離職日の翌日以後に開始した事業であること
- ※厚生労働省「離職後に事業を開始等した方は雇用保険受給期間の特例を申請できます」
上の要件をすべて満たしている場合、事業を開始した日または準備に専念し始めた日の翌日から2か月以内に申請することで、雇用保険受給期間の特例が適用される可能性があります。対象期間は雇用保険の本来の受給期間である1年間に加え、起業等から休廃業までの最長3年間です。
特例申請の手続きを行う際には、以下の書類を提出する必要があります。
雇用保険受給期間の特例申請に必要な書類
- 受給期間延長等申請書
- 離職票-2または受給資格者証
- 事業を開始または準備に専念していることが確認できる書類(登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証、金融機関との金銭消費貸借契約書の写し、事務所貸借のための賃貸借契約書の写しなど)
失業保険の受給要件
失業保険は、失業した際に必要な給付を受けられる制度ですが、誰でも受給できるわけではありません。失業保険を受給するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
失業の状態にあること
失業保険を受給するには、失業の状態にあることが前提条件となります。注意点として、「仕事を辞めた(離職した)=失業状態」とみなされるとは限らないこと。
失業の状態とは、就職する意思や能力があるにもかかわらず、再び就業できるよう本人やハローワークが努力していても職業に就けない状態のことをいいます。求職活動をしていることが前提となるため、病気や妊娠・出産など、諸事情によりすぐに就職できない方や、就職する意思がない方は失業保険の受給対象にはなりません。
一定期間雇用保険に加入していること
失業保険を受給するには、雇用保険に一定期間加入していなければなりません。必要な加入期間は、離職理由によって異なります。
失業保険の受給に必要な雇用保険の加入期間
- 自己都合による退職の場合:離職日以前の2年間で被保険者期間が12か月以上
- 会社都合による離職の場合:離職日以前の1年間で被保険者期間が6か月以上
副業と失業保険の関係
副業と失業保険の関係を理解するうえで必ず押さえておきたいのが、雇用保険の適用要件です。正社員だけでなく、アルバイトやパートなどの場合も、一定の要件を満たせば雇用保険に加入できます。
具体的には、31日以上継続して雇用される見込みがあること、週の所定労働時間が20時間以上であることの2つが適用要件です。
ただし、雇用保険に加入できるのは1社のみです。主となる賃金を得ている勤務先で加入することになるため、例えば会社員の方が副業でアルバイトやパートに従事している場合には、本業の勤務先で雇用保険に加入することになります。このようなケースでは、副業の勤務先で雇用保険に重複して加入することはできません。
失業保険を受給する手続き
ここからは、失業保険を受給するための手続きについて解説します。離職後、できるだけ早く手続きを行うことが早い受給につながりますので、必要な書類や手順を把握しておきましょう。
1. 求職の申込みと受給資格の決定
失業保険の受給申請は、管轄のハローワークにて行います。以下の書類を準備したうえで、ハローワークで求職の申込みをしましょう。
失業保険の申請に必要な書類等
- 離職票(1および2)
- 本人確認書類(個人番号確認書類及び身元確認書類):マイナンバーカードであれば一枚で足りる。個人番号記載のある住民票や通知カードの場合は別途運転免許証又はパスポートが必要
- 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm、正面上三分身のもの。マイナンバーカードを提示する場合は不要)
- 金融機関の口座情報(本人名義の預金通帳またはキャッシュカードなど)
離職票は、離職したことを証明する書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、離職後、勤めていた会社から交付されます。離職票には2種類あり、「離職票-1」は離職者が失業保険の振込先などを記入するものです。「離職票-2」は企業が離職理由や離職日の直近6か月間の給与などを記載したもので、離職者本人の控えになります。
必要な申請手続きが完了すると、受給資格が決定されます。受給資格が決定した日から7日間は待機期間です。
会社都合による離職の場合、待機期間満了の翌日からが失業保険の受給対象日となります。
自己都合・懲戒解雇による離職の場合は、待機期間に加えて2~3か月の給付制限期間があるため、申請後すぐに失業保険を受給できない点に注意しましょう。なお、自己都合で離職した場合の給付制限に関しては、2025年度以降、原則1か月に短縮する方向で検討が進められています。
2. 雇用保険受給者初回説明会への出席
待機期間満了後は、ハローワークで行われる雇用保険受給者初回説明会に出席します。必要な手続きや求職活動などの説明がありますので、内容をしっかりと確認しましょう。ここで、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」などの書類が配られ、初回認定日が決まります。
3. 失業の認定
失業保険の受給には、「失業認定」が必要です。認定日は原則として4週間に1回あり、認定日にハローワークへ出向いて、失業認定申告書と雇用保険受給資格証を提出しなければなりません。
失業認定申告書には、求職活動の状況や就労・内職の事実などを正確に記入します。副業についても、就労した日や収入を得た日、収入額を、ありのまま漏れなく申告してください。
4. 失業保険の受給
失業認定後、通常5営業日で失業保険が指定した口座に振り込まれます。給付日数に関しては離職理由等によって異なりますが、給付を受けられる期間は離職の翌日から1年間が原則です。雇用保険受給期間の特例が適用された場合には、本来の受給期間である1年間に加え、最長3年間が給付対象期間となります。
副業による失業保険の不正受給は厳禁!
失業保険の受給期間中に副業をした場合、失業認定申告書にはありのままを正確に記載しなければなりません。事実と異なる申告により給付を受けたり、受けようと試みたりした場合には、不正受給として厳しい処分が下されます。
失業保険の不正受給に対する処罰
- 支給停止:不正を行った日以降の支給が一切されなくなる
- 返還命令:不正に受給した金額について、全額・即刻返還しなければならない
- 納付命令:悪質と判断された場合、不正に受給した金額の2倍の額を納付しなければならない(返還と合わせ、不正に受給した3倍の金額を返還することになる)
- 財産の差し押さえ:返還または納付しない場合、財産の差し押さえが行われることがある
- 刑罰:不正内容が特に悪質と判断された場合、詐欺罪として告発されることがある
たとえ意図的ではなくても、副業による収入に記載漏れがあれば不正受給とみなされかねません。失業保険の不正受給には厳しい処分が下されることを念頭に置き、失業認定申告書には正しく漏れなく記載し、提出することが重要です。
失業保険は所得税の確定申告が必要?
失業保険の給付金は課税対象外のため、失業保険に関する所得税の確定申告は不要です。ただし、失業中においては、失業保険以外の理由で確定申告が必要な場合があります。
失業中に所得税の確定申告が必要な場合
- 離職した本業の会社で年末調整を受けておらず、再就職をしていない場合
- 再就職し、失業期間中の社会保険料などを年末調整に含めていない場合
- 医療費控除など年末調整の対象外となる控除を受けたい場合
- 副業の年間所得が20万円超の場合(20万円以下の場合には所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告が必要となります)
このように、失業保険以外の事由により、確定申告が必要になります。副業を行う際には、確定申告を行うことも想定して帳簿付けをしていくのが望ましいでしょう。
確定申告ソフトを活用して、副業の収支を正確に把握できる環境を整えておくことをお勧めします。
失業保険の受給期間中に副業をする場合は、事実を正しく申告しよう
失業保険の受給期間中に副業に取り組む場合には、副業の就労時間や収入額を正しく申告することが重要です。離職前から副業をしていた場合、働き方によっては失業保険の支給が認められないケースもあるため、管轄のハローワークに確認しましょう。また、失業中に副業を始める場合は、管轄のハローワークに相談して事業規模に該当するかどうかを確認しておくことをお勧めします。
たとえ意図的ではなかったとしても、ハローワークに事実とは異なる申告をすれば不正受給を疑われるおそれがあるため、必要な手続きや受給要件などをしっかりと理解することが大切です。失業中の副業について慎重に判断し、今回紹介したポイントや注意点を参考に、失業保険は適切に受給してください。
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会社員などが副業をした場合、副業の所得が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。副業の収入や報酬から源泉徴収をされているなら、確定申告をすれば納めすぎた税金が返金される可能性が高いでしょう。ただ、所得税の確定申告をするには、書類の作成や税金の計算など面倒な作業が多いため、負担に感じる方もいるかもしれません。
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