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インボイス制度の影響は?売上1,000万円以下の個人事業主がすべきこと

監修者:税理士法人アンサーズ会計事務所

2023/12/15更新

売上が1,000万円以下の個人事業主は、消費税の免税事業者である方がほとんどです。しかし、2023年10月1日から始まったインボイス制度では、課税事業者なのか免税事業者なのかによって、影響の受け方が変わってきます。

本記事では、インボイス制度が売上1,000万円以下の個人事業主に与える影響や必要な対応について解説します。

インボイス制度の開始により売上1,000万円以下の個人事業主が受ける影響は?

個人事業主を含むすべての事業者は、消費税の「免税事業者」と「課税事業者」に分けられます。売上が1,000万円以下の個人事業主の場合、ほとんどが免税事業者です。

免税事業者は消費税の納税義務がないため、取引先との取引で発生した消費税をそのまま利益として得られます。一方、免税事業者の条件に該当しない課税事業者には、消費税の納税義務が発生します。

この免税事業者と課税事業者の違いを踏まえて、インボイス制度により売上が1,000万円以下の個人事業主、つまり免税事業者やその取引先が具体的にどのような影響を受けるのかを見ていきましょう。

免税事業者のままでいる場合の影響

インボイス制度の開始後も免税事業者のまま事業を続ける場合、適格請求書(インボイス)発行事業者に登録できないため、取引先へ適格請求書(インボイス)を交付することはできません。そのため、取引先は、仕入税額控除を適用できなくなります。仕入税額控除とは、課税事業者が納税すべき消費税額を計算する際に、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引くことで、消費税の二重課税を防ぐものです。

免税事業者のままでいれば、インボイス制度が開始されても消費税の納税義務は発生しません。しかし、取引先が課税事業者で、自身が免税事業者のままの場合は、前述のように仕入税額控除を受けられないため、取引先にとって消費税の負担額が増える可能性があります。

したがって、免税事業者のままでいる個人事業主には、次のような影響が出ると考えられます。

免税事業者のままでいる個人事業主が受けると想定される影響

  • 課税事業者との既存の取引が減少する、または契約を解消される
  • 課税事業者に消費税分の取引額の値下げを交渉される
  • 新規の課税事業者との取引獲得が困難になる

課税事業者が取引先に対して適格請求書発行事業者への登録や大幅な値下げなどを強要することは、独占禁止法によって禁止されていますが、消費税分の値下げなどを交渉される可能性はあるといえるでしょう。

適格請求書発行事業者となる場合の影響

インボイス制度に対応するために、売上1,000万円以下の個人事業主が適格請求書発行事業者となる場合には、免税事業者から課税事業者になる必要があります。課税事業者になると、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生します。

また、課税事業者は適格請求書に記載された複数税率をもとに消費税額および納税額を計算するため、経理処理が煩雑になる点にも注意が必要です。例えば、取引先に課税事業者と免税事業者が混在している場合は、それぞれ異なる税率で計算しなければなりません。経理処理の負担が大きくなるため、業務内容やツールなどの見直しも必要となるでしょう。

他にも、仕入れにかかる適格請求書とそれ以外の請求書を適切に管理できるように帳簿をつけたり、消費税の確定申告を行ったりしなければならず、必要な業務や手続きが増えることになります。なお、免税事業者が課税事業者となった場合には、課税事業者となった日から2年間は免税事業者に戻れない点にも注意が必要です。

取引先別・インボイス制度による影響

売上1,000万円以下の個人事業主は、取引先が課税事業者なのか免税事業者なのかによっても、インボイス制度による影響が異なります。それぞれ、どのような影響を受けるのかを見ていきましょう。

取引先が課税事業者の場合
取引先が課税事業者の場合は、仕入税額控除を受けるために適格請求書の交付を求められることがあります。そのため、免税事業者から課税事業者への転換を検討する必要性は高まります。
取引先が免税事業者の場合
取引先が免税事業者の場合には、取引先も適格請求書が必要ないため、適格請求書発行事業者へ転換する必要は基本的にありません。ただし、今後課税事業者と取引が発生した場合には、適格請求書発行事業者へ転換するかどうかの検討が必要となってくるはずです。

免税事業者から課税事業者となった場合の消費税の計算方法

免税事業者の個人事業主が課税事業者となった場合、消費税の納税方法には「本則課税(一般課税)」と「簡易課税」の2種類があります。ただし、インボイス制度に対応するために免税事業者から課税事業者になる場合には、軽減措置である「2割特例」の適用も可能です。

これら3種類の納税方法別に、消費税額の計算方法を見ていきましょう。

本則課税(一般課税)

本則課税とは、売上高に対する消費税額から、仕入れに対する消費税額を差し引いて消費税額を算出する方法です。一般課税と呼ばれることもあります。本則課税では、「納税額=売上税額-仕入税額」で納税額を計算します。

簡易課税

簡易課税は、基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上額が5,000万円以下の事業者の納税事務負担を軽減するために設けられた制度です。簡易課税では、「納税額=売上税額-(売上税額×みなし仕入率)」で納税額を計算します。

みなし仕入率とは簡易課税の納税額を計算する際に用いる割合のことで、事業区分別に40~90%のみなし仕入率が設定されています。事業区分ごとのみなし仕入率と該当する事業は、次のとおりです。

事業区分ごとのみなし仕入率と該当事業
事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質・形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
第2種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質・形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に関わる事業)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に関わる事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業など
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除く)
第6種事業 40% 不動産業

なお、一度簡易課税制度を選択すると、2年間は納税方法を変更できない点に注意しましょう。

2割特例

2割特例とは、免税事業者がインボイス制度に対応するために課税事業者になった場合にのみ適用できる、一定期間納税する消費税額を売上税額の2割とする負担軽減措置です。本則課税や簡易課税と比較すると、2割特例を適用する方が税負担を抑えられるケースが多いと想定されます。2割特例では「納税額=売上税額×20%」で納税額を計算します。

なお個人事業主の場合、インボイス制度が始まった2023年10月1日から適格請求書発行事業者に登録した場合、2割特例を適用できるのは2023年10~12月分の申告から2026年分の申告までとなります。

適格請求書発行事業者の登録申請方法

売上1,000万円以下の個人事業主が適格請求書発行事業者になるには、納税地を所轄する税務署への格請求書発行事業者の登録申請書の提出が必要です。登録完了時に通知される「登録番号」は、適格請求書の記載要件にもなっています。

なお、登録申請を行ってから登録完了の通知が届くまでには一定の期間がかかるため、登録が必要な個人事業主は早めに申請手続きを行うようにしましょう。登録申請には、所轄の税務署の窓口に提出する方法やインボイス登録センターへ送付する方法、e-Taxで提出する方法があります。手順について、詳しく見ていきましょう。

書面で申請する方法

国税庁のWebサイト新規タブで開くから登録申請書をダウンロードして、必要事項を記載します。登録申請書の1枚目には、申請者の住所や納税地、事業者名、代表者氏名、法人番号、事業者区分などの事業情報を記載します。2枚目は各確認事項にチェックを入れましょう。「免税事業者の確認」の部分は、課税事業者であればチェックは不要ですが、「登録要件の確認」は免税事業者、課税事業者問わずチェックが必要です。

申請書の記入が完了したら、所轄の税務書へ提出もしくは管轄地域のインボイス登録センターへ送付します。インボイス登録センターの所在地は、国税庁のWebサイト新規タブで開くで確認できます。

e-Taxで申請する方法

e-Taxで申請する場合には、フォームに回答するだけで登録手続きが完了します。ただし、申請にはマイナンバーカードなどの電子証明書と利用者識別番号などが必要です。事前に準備しておきましょう。

インボイス制度の登録申請についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

インボイス制度の登録申請の方法は?期限や手順と併せて解説

インボイス制度で売上1,000万円以下の個人事業主が準備すべきこと

インボイス制度の開始によって、売上1,000万円以下の個人事業主が受ける影響についてご説明してきました。このような影響を踏まえて個人事業主がしておくべき準備をご紹介します。

課税事業者になるかを検討する

課税事業者との取引がある個人事業主の場合、インボイス制度の開始によって、適格請求書の交付を求められたり、交付ができない場合は取引先や売上が減ってしまったりするリスクが考えられます。

そのため、課税事業者に転換して適格請求書を交付できるようにするのも選択肢の1つです。消費税の納税義務が発生し経理処理の負担も増えますが、事業を継続するためにも必要と判断するのであれば課税事業者へ転換し、すみやかに適格請求書発行事業者の登録申請を行いましょう。

もちろん、インボイス制度の開始以降も免税事業者のままでいることは可能です。インボイス制度がスタートしてからでも課税事業者に転換することはできるため、既存の取引先にインボイス制度開始後の取引について確認し、その返答をもとに判断するのも1つの方法といえます。

また、インボイス制度の開始後には経過措置が設けられているため、その間に課税事業者への転換を検討するという方法もあります。経過措置では、適格請求書発行事業者以外からの仕入れでも、2026年9月30日までは8割、2029年9月30日までは5割の仕入税額控除の適用が可能です。

課税事業者になる場合は適格請求書発行事業者に登録する

売上1,000万円以下の個人事業主が課税事業者となる場合には、取引先からの求めに応じて適格請求書を交付できる適格請求書発行事業者への登録を同時に行いましょう。適格請求書は、これまで作成してきた請求書とは記載要件が異なります。

適格請求書の記載要件は次のとおりです。

適格請求書の記載要件

  • 交付者の氏名または名称と登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 区分して税率ごとに合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

記載要件に漏れがないよう、請求書のテンプレートや仕様を変更する必要があります。また、適格請求書における適用税率の記載方法や消費税額の計算方法も確認しておきましょう。

売上1,000万円以下の個人事業主もインボイス制度への対応を検討しよう

インボイス制度の開始によって、売上1,000万円以下の免税事業者の個人事業主は、大きな影響を受ける可能性が高いといえます。必要な対応を検討し、あらかじめ準備をしておかなければなりません。課税事業者となると納税義務は発生しますが、もし取引先が課税事業者であれば、取引を継続するためには必要な対応であるとも考えられます。

また、インボイス制度の開始に伴い免税事業者から課税事業者へ転換する場合には、負担を軽減できる措置を適用することもできるため、忘れずに活用していきましょう。

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この記事の監修者 税理士法人アンサーズ会計事務所

吉祥寺にオフィスを構えて10年以上の実績と、40名以上のスタッフのマンパワーで、個人事業主から従業員100名を超える会社まで、幅広く対応中。司法書士、社会保険労務士など他士業との連携で法人のお悩み事にワンストップで対応可能。

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