営業キャッシュ・フローとは?要素や確認すべき点、改善方法を解説

2023/11/07更新

この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

営業キャッシュ・フローは、企業の営業活動による現金収支を表すものです。営業キャッシュ・フローを見ることによって、企業の経営状況を判断することができます。

ここでは、営業キャッシュ・フローで確認すべきポイントや、営業キャッシュ・フローがマイナスの場合の改善方法などについて解説します。

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営業キャッシュ・フローは、本業によるキャッシュの増減を表すもの

営業キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと呼ばれ、これは商品の販売や仕入れなどの営業活動による現金収支を表すものです。営業キャッシュ・フローの構成要素は、現金取引で生じた収支や、掛取引において回収または支払った現金、従業員への給与、現金で支払った経費などです。また、製造業であれば、原材料費とそれを販売した収益も含まれます。

営業キャッシュ・フローのプラスが大きいほど、本業でしっかり稼げていることを意味します。逆にマイナスの場合は、利益が出ない商品・サービスを売っている、売上は立っているのに現金の回収ができていないといったことがいえるでしょう。事業の成長に力を入れたい企業にとっては、営業キャッシュ・フローのプラスは大きいほど良いといえます。

また、営業キャッシュ・フローは、一定期間の企業におけるキャッシュの増減をまとめたキャッシュ・フロー計算書に記載される項目の1つです。金融商品取引法が適用される上場企業などでは、貸借対照表や損益計算書と共に、決算時にキャッシュ・フロー計算書の作成が義務付けられています。

なお、キャッシュ・フロー計算書に記載する項目は、営業キャッシュ・フローの他にも、投資キャッシュ・フロー(投資活動によるキャッシュ・フロー)と財務キャッシュ・フロー(財務活動によるキャッシュ・フロー)の2つがあります。

キャッシュ・フロー計算書の記載項目

キャッシュ・フロー計算書※キャッシュ・フロー計算書は、大きく分けて①営業活動によるキャッシュ・フロー②投資活動によるキャッシュ・フロー③財務活動によるキャッシュ・フロー④全体の増減額(期首残高と期末残高)の4つから成り立っています。営業活動によるキャッシュ・フロー:営業収入、商品仕入支出、人件費支出、その他の営業費支出、投資活動によるキャッシュ・フロー:有形固定資産の購入、有形固定資産の売却、投資有価証券の売却、財務活動によるキャッシュ・フロー:短期借入金の増減、長期借入金の増減、資本金の増減、配当金の支払い、全体の増減額(期首残高と期末残高):現金及び現金同等物の増減額、現金及び現金同等物の期首残高、現金及び現金同等物の期末残高

キャッシュ・フロー計算書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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営業キャッシュ・フローの構成要素

営業キャッシュ・フローの増減には、さまざまな要素が影響しています。例えば、営業キャッシュ・フローをプラスにする要素としては、商品の販売やサービス提供による現金収入の他、売掛金の回収、保険金収入などが挙げられます。

一方、営業キャッシュ・フローをマイナスにする要素は、仕入れや製造による現金支出や買掛金の支払い、人件費や経費の現金支出などです。さらに、法人税等の支払いもマイナス要素になります。

営業キャッシュ・フローをプラスにする要素、マイナスにする要素をまとめると、次のとおりです。

営業キャッシュ・フローの構成要素
商品の販売・サービス提供による現金収入 プラス
商品などの仕入れによる現金支出 マイナス
人件費の現金支出 マイナス
現金支出の経費 マイナス
保険金収入 プラス
法人税等の支払い マイナス

この他、利息の受取りや支払い、配当金の受取りを含める場合もあります。

営業キャッシュ・フローを確認するときのポイント

前述したように、営業キャッシュ・フローのプラスが大きければ、本業がうまくいっていることがわかります。反対にマイナスなら、本業に不安材料があるといえます。ただ、営業キャッシュ・フローがマイナスでも、一概に悪い状態であるとはいえません。ここでは営業キャッシュ・フローを確認する際のポイントについて解説します。

マイナスの場合は損益計算書と見比べて業績を判断する

営業キャッシュ・フローがマイナスだった場合は、そのマイナスが一時的なものなのか、業績が悪化しているのかを見極める必要があります。

例えば、売上アップに伴う仕入量の増加や、事業拡大のために増員した人件費など、企業の成長段階における先行した支出があるなら、マイナスは一時的なものといえます。しかし、業績悪化によって営業キャッシュ・フローがマイナスになっているのであれば、早急に対応策を検討しなければなりません。

マイナスの要因を判断するには、営業キャッシュ・フローを損益計算書と見比べることが大切です。営業キャッシュ・フローがマイナスで、損益計算書でも赤字が続いている場合は、業績が悪化している可能性が高いといえます。一方、損益計算書では黒字で売上が増加しているなら、先行している支出の内容を確認しましょう。

損益計算書の記載項目

損益計算書 (単位:千円) 項目:経常損益の部 営業損益の部 売上高 金額:1,00,000 +、売上原価 金額:50,000 -、売上総利益 金額:50,000、販売費および一般管理費 金額:30,000 -、営業利益 金額:20,000 営業活動で稼いだ利益、営業外損益の部 営業外利益 受取利息 金額:1,000、受取配当金 金額:1,000、雑収入 金額:1,000、営業外収益合計 金額:3,000 +、営業外費用 支払利息 金額:800、為替差損 金額:100、雑支出 金額:100、営業外費用合計 金額:1,000 - 本業以外で使った費用、経常利益 金額:202,000 会社が通常の活動で上げている利益、項目:特別損益の部 特別利益 固定資産売却益 金額:800,000、投資有価証券売却 金額:200,000、特別利益合計 金額:1,000,000 + 本業以外で、かつ臨時で稼いだ収益、特別損失 投資有価証券売却損 金額:40,000、災害による損失 金額:10,000、特別損失合計 金額:50,000 - 本業以外で、かつ臨時で使った費用、項目:税引前当期利益 金額:1,152,000、法人税、住民税及び事業税等 金額:330,000 -、当期利益 金額:822,000 税金を引いた今期の最終的な利益

損益計算書についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

減価償却費の割合が多くないか確認する

キャッシュ・フロー計算書の作成方法には、直接法と間接法があり、直接法の場合には減価償却費のような支出を伴わない費用(非現金支出費用)を考慮する必要がありません。

しかし、間接法の場合には、税引前当期純利益に減価償却費を加算して計算します。そのため、営業キャッシュ・フローがプラスであっても、それだけで安心するのではなく、併せて減価償却費の割合が多くないかについても確認しておくことが大切です。なぜならば、減価償却は固定資産の購入費用を一定期間に配分し、期ごとに費用計上していくものであり、実際にお金を支払っているわけではないからです。

ゆえに、営業キャッシュ・フローがプラスになっていたとしても、減価償却費が加算されたことによるプラスである場合は、翌期以降の営業キャッシュ・フローは減少してしまう可能性があります。営業キャッシュ・フローを見るときは、税引前当期純利益が少なくなったり、マイナスになったりしていないか、加算されている減価償却費が多くないか、ということも併せて確認しておきましょう。

税引前当期純利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

損益計算書の営業利益と比較する

営業キャッシュ・フローは、損益計算書の営業利益と比較して確認しましょう。

損益計算書における営業利益は、営業活動によって稼ぎ出した利益を指すもので、営業キャッシュ・フローと似ています。ただし、損益計算書の営業利益が一会計期間内の本業による利益を表すのに対して、営業キャッシュ・フローは一会計期間の本業による現金収支であるという違いがあります。また、営業利益は売上が上がったタイミングなど取引完了時点で発生しますが、営業キャッシュ・フローは実際に現金が入出金された時点で発生します。

例えば、営業利益が増加しているのに営業活動によるキャッシュ・フローが減少していた場合は、売掛金の回収サイクルに問題がある可能性があります。反対に、営業利益よりも営業キャッシュ・フローの方が大きい場合は、効率的に営業活動を進めることができているといえるでしょう。

営業利益についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

営業キャッシュ・フローを改善する5つの方法

営業キャッシュ・フローがマイナスだったり少なかったりした場合、どのように改善していけばいいのでしょうか。ここからは、営業キャッシュ・フローの改善方法について解説していきます。

利益を増やす

営業キャッシュ・フローを改善するうえで、最も効果的なのは利益を増やすことです。利益を増やすには、売上を増加させる、粗利率を向上させる、原価や経費を見直すなどの方法があります。また、材料や商品のロスや廃棄を削減することも、利益向上につながります。

粗利・粗利率についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

売上債権をできるだけ早く回収する

売上債権とは売上代金の未回収分のことで、代表的なものが売掛金です。もし期日を過ぎた売掛金がある場合は、可能な限り早く回収しましょう。また、そもそも売掛金は、できるだけ早期回収が望ましいものです。新規の取引先には早期回収が可能な契約条件を提示する、既存の取引先には回収条件の見直しを交渉する、などの働きかけを行うことが大切です。

売掛金についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

支払い条件を見直す

売掛金は早期回収が望ましい一方で、買掛金の支払いはできるだけ先延ばしにすると、営業キャッシュ・フローの改善につながります。仕入代金などの支払い条件を見直し、できるだけ支払い期日を遅くできないか交渉してみましょう。支払いサイクルを長くすることで、資金繰りにも余裕が生まれます。

クレジットカードを活用する

現金の支出を遅らせるには、クレジットカードを活用するのも1つの方法です。例えば、それまで現金取引だったものをクレジットカードで支払うようにすれば、実際にお金が出ていくのを翌月や翌々月に後ろ倒しすることができます。

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営業キャッシュ・フローを把握して企業経営に役立てよう

キャッシュ・フロー計算書に記載される営業キャッシュ・フローは、本業である事業でどれだけのキャッシュが生み出されているかを表すものです。売上や利益だけを重視して営業キャッシュ・フローを把握していないと、資金繰りが悪化し、最悪の場合は黒字倒産のリスクを招く可能性があります。中小企業にはキャッシュ・フロー計算書の作成義務はありませんが、取引で生じるお金の流れについては日頃からチェックしておくことが重要です。

会社のお金の動きを把握するために利用したいのが、会計ソフトです。会計ソフトで日々の取引を記帳していれば、いつ、どんな理由で、いくらお金が出入りしたかを的確につかむことができます。営業キャッシュ・フローをきちんと理解し、健全な企業経営に活かしましょう。

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この記事の監修税理士法人 MIRAI合同会計事務所

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