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振込手数料は支払い側負担が原則!インボイス制度への対応と共に解説

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ビジネスで行われる掛取引では、売掛金や買掛金を口座振込で支払うのが一般的です。銀行などの金融機関でお金を振込むと、ほとんどの場合、振込手数料が発生します。では、振込手数料は、お金を支払う側と受け取る側の、どちらが負担すべきなのでしょうか。

本記事では、振込手数料の負担に関する基本的なルールや、インボイス制度開始に伴う対応方法などを解説します。

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振込手数料は金融機関への払い込み時に発生する手数料のこと

振込手数料とは、銀行などの金融機関の口座に、金銭を払い込むときに発生する手数料のことです。口座から別の口座に金銭を払い込むことを「口座振込」、受取人の口座に現金で払い込むことを「現金振込」といいます。口座振込も現金振込も、ほとんどの場合、振込手数料がかかります。

振込手数料は、利用する金融機関や振込先、振込金額、振込方法などによって金額が異なります。また、金融機関によっては、同一支店間なら振込手数料が無料になったり、毎月一定回数まで手数料無料で振込ができたりすることもあります。

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振込手数料の負担の種類

振込手数料が発生するのは、振込1件につき1回です。振込のたびに、お金を振込む側か、お金を受け取る側の、いずれかが振込手数料を負担しなければなりません。

このような、振込手数料をどちらが負担するかということについては、「先方負担」と「当方負担」の2種類の呼び方で区別をします。言葉のイメージから、「先方負担=取引先が負担」「当方負担=自社が負担」と考える方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。振込における先方とは振込先、当方とは振込元を指します。ポイントは、自社と取引先のどちらがお金を振込む側で、どちらがお金を受け取る側か、ということです。

振込手数料の先方負担と当方負担の違いを、正しく把握しておきましょう。

当方負担

当方負担は、お金を支払う側、つまり請求書を受け取った側が振込手数料を負担することです。当方負担の場合は、売掛金が振込まれる場合なら取引先が、買掛金を支払う場合なら自社が、振込手数料を負担することになり、支払先の口座には請求どおりの金額が入金されます。

前述した例でいうと、自社が振込む金額は、請求金額10万円に振込手数料550円を加えた10万550円です。そこから振込手数料550円が差し引かれ、取引先の口座に10万円が送金されます。

先方負担

先方負担とは、お金を受け取る側、つまり請求書を発行する側が振込手数料を負担することを意味します。取引先から売掛金の決済の場合なら自社が、仕入先に買掛金を振込む場合なら取引先が、振込手数料を負担します。

先方負担の場合、実際に入金されるのは、請求金額から振込手数料を差し引いた金額です。例えば、請求金額が10万円で、振込手数料が550円だったとしましょう。この場合、自社が振込む金額は10万円で、そこから振込手数料550円が差し引かれ、取引先の口座には9万9,450円が送金されます。

振込手数料はどちらが負担すべき?

請求書の作成にあたって、売り手と買い手のどちらが振込手数料を負担するのか、頭を悩ませたことのある方も多いかもしれません。「振込手数料をどちらが負担すべきか」ということについて、明確なルールはあるのでしょうか。

ここでは、振込手数料の負担について定めた法律や、ビジネスの場での一般的な考え方について、それぞれ説明します。

法律上は支払い側が負担することが原則とされている

民法第484条、第485条では、持参債務の原則が定められています。これは、契約上の取り決めなどがある場合を除いて、債務者は債権者の住所にて、指定口座で弁済をしなければならない、というものです。また、別段の意思表示や住所の移転、振込口座の変更などによって債権者が弁済の費用を増加させた場合を除き、弁済の費用は債務者の負担とされています。

弁済とは、債務を履行して債権を消滅させることを指します。つまり、法律上は、請求書を受け取った支払い側が振込手数料を負担することが原則とされているのです。前述した振込手数料の負担の種類でいえば、当方負担が原則となります。

ビジネスの場においても持参債務の原則に沿って考えることが多い

ビジネスの場においては、一般的には、法律上の持参債務の原則にもとづき、振込手数料は支払い側が負担するのが原則と考えられています。

ただし、これはあくまで一般論であり、絶対的なルールではありません。自社と取引先の認識が食い違った場合、振込手数料の負担をめぐってトラブルに発展してしまう可能性もあります。そのような事態を招くことのないように、新しく契約を結ぶ際には、振込手数料をどちらが負担するのかをあらかじめ決めておくといいでしょう。また、契約書や請求書に振込手数料について明記しておくと、認識の違いによるトラブルを防ぐことができます。

取引先に振込手数料を負担してもらうには?

振込手数料の金額は、1件だけなら数百円程度です。しかし、振込の件数や金額が多くなればなるほど、振込手数料の負担金額も大きくなっていきます。そのため、どの企業も、極力は振込手数料を負担したくないと考えるのが自然でしょう。

では、取引先に振込手数料を負担してもらうには、どうすればいいのでしょうか。新規取引先の場合、既存取引先の場合でそれぞれ説明します。

新規取引先の場合

新たに取引を開始する相手とは、正式な契約を結ぶ前に、どちらが振込手数料を負担するかを確認し、ルールを決めておきましょう。あらかじめ「振込手数料は発注側が負担する」などと定めておけば、契約後もスムーズな取引ができます。そのうえで、請求書を発行する際には、「振込手数料は貴社でご負担いただくようお願いいたします」などの一文を記載しておくといいでしょう。

既存取引先の場合

既存の取引先で、これまで自社で振込手数料を負担していた場合、取引先側で振込手数料を負担してもらえるよう変更したいと考えることがあるかもしれません。しかし、その場合も、請求書に「振込手数料は貴社でご負担ください」などと記載して一方的に送るようなことは避けましょう。これまで受け入れていた負担を、何の相談もなく突然覆すと、混乱やトラブルを招く可能性があります。

振込手数料の負担について変更をしたいときは、取引先と話し合いの場を設け、直接交渉するのがおすすめです。ただし、もし拒否された場合は、すみやかに引き下がった方が無難です。なぜならば、無理に要求を通そうとするとそれまで築いてきた関係に影響することもあるからです。1回数百円の振込手数料のために取引先を失うことのないよう気をつけましょう。

インボイス制度導入に伴い、振込手数料の負担はどうなる?

2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がはじまり、課税事業者が仕入税額控除を受けるには、所定の要件を満たした適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。振込手数料にも消費税がかかるため、仕入税額控除を受けるためには、原則として、金融機関が発行した適格請求書が必要です。また、振込手数料の会計処理は、売り手と買い手のどちらが手数料を負担するかによって異なります。

ここからは、インボイス制度開始に伴い、振込手数料の取り扱いがどのように変化したのかを詳しく見ていきましょう。

原則は、制度導入後も買い手側の負担

前述したように、振込手数料は、お金を支払う側が負担する、当方負担が原則です。自社が請求書を発行する立場なら、「振込手数料を売り手負担とする」といった取り決めがない限りは、買い手である取引先が振込手数料を負担するのが一般的でしょう。この原則は、インボイス制度が導入された現在も変わっていません。

場合によっては、売り手側の負担になることもある

振込手数料は買い手側の負担が原則とはいえ、実際には、売り手側が振込手数料を負担するケースも少なくありません。また、契約時などに「振込手数料を売り手負担とする」と取り決めを交わしたなら、当然、振込手数料は売り手の負担となります。自社が請求書を発行した場合、口座には、請求金額から振込手数料を差し引いた金額が送金されます。

このような売り手負担の振込手数料を処理する方法としては、売上から振込手数料の金額分を値引きする方法と、買い手が立て替えたものとする方法の2つです。どのように処理するかによって、適格請求書の保存などの対応が異なってくるため注意が必要です。

売上から値引きして処理する方法

売り手負担の振込手数料を処理する方法のひとつに、売り手が負担する振込手数料の金額を売上から値引きしたものとして処理する方法があります。

インボイス制度が導入された現在、売り手が値引きや売上返品、割引などを行う際には、所定事項を記載した適格返還請求書を、買い手に交付しなければなりません。しかし、1件あたり数百円の振込手数料のために返還インボイスを発行していては、膨大な事務負担が生じてしまいます。

そこで、2023年度の税制改正により、税込1万円未満の少額の値引きなどであれば、返還インボイスの交付が免除されることになりました。振込手数料は1件数百円ですから、売り手負担にあたって値引きとして処理をしても、返還インボイスの交付は不要です。

ここでは、振込手数料を売上から値引きして処理する場合の仕訳をご紹介します。例えば、売掛金10万円から振込手数料550円が差し引かれて振込まれた場合の仕訳は、以下のとおりです。

売上から値引きして処理する場合の仕訳
借方 貸方
預金 99,450 売掛金 100,000
売上値引 550

買い手が立て替えたものとして処理する方法

もうひとつの売り手負担の振込手数料を処理する方法が、本来売り手が負担すべき振込手数料を、一時的に買い手が立て替えたものとして処理する方法です。この方法では、振込手数料を買い手がいったん立て替えて金融機関に支払い、入金時に立替金を精算したものと考えます。

この場合、売り手が仕入税額控除を受けるためには、金融機関が発行した適格請求書と立替金精算書の2つの書類を買い手から受け取り、保存しなければなりません。前述した売上から値引きとする方法に比べて、事務負担はかなり大きくなるでしょう。

なお、ATMで振込をした際の手数料については、適格請求書の交付義務が免除されています。そのため、買い手である取引先がATMで振込をした場合は、振込手数料にかかわる適格請求書は不要です。また、2023年10月1日から2029年9月30日までの期間は、税込1万円未満の課税取引については適格請求書の保存を不要とする少額特例が定められています。少額特例を適用できるのは、前々事業年度の課税売上高が1億円以下(または前年上半期の課税売上高が5千万円以下)の事業者に限られます。なお、適格請求書の保存が不要な場合でも、買い手である取引先が交付した立替金精算書は必要なので注意が必要です。

ここでは、振込手数料を買い手が立て替えたものとする場合の仕訳をご紹介します。この場合、振込手数料は支払手数料の勘定科目で処理します。例えば、売掛金10万円から振込手数料550円が差し引かれて振込まれた場合の仕訳は、以下のとおりです。

振込手数料を買い手が立て替えた場合の仕訳
借方 貸方
預金 99,450 売掛金 100,000
支払手数料 550

3万円未満の支払いでも、適格請求書は必要?

インボイス制度導入以前は、税込3万円未満の取引については、請求書などの保存がなくても、定められた事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められていました。

しかし、インボイス制度導入に伴い、前述した少額特例に該当しない限りは、たとえ数百円の振込手数料でも、金融機関が交付した適格請求書がなければ仕入税額控除が受けられません。ATMを利用した場合の振込手数料なら適格請求書は不要ですが、窓口やインターネットバンキングの場合は適格請求書が必要になるため注意しましょう。

インボイス制度についてはこちらの記事で解説していますので、参考にしてください。

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インボイス制度開始に伴い、振込手数料の扱いにも注意が必要

振込手数料は、お金を支払う側が負担するのが法律上の原則です。そのため、自社が売り手として請求書を発行する場合は、買い手である取引先が振込手数料を負担することが一般的です。

ただし、これはあくまで原則であり、取引先によっては、自社が売り手であっても振込手数料を負担するケースもあります。さらにインボイス制度が開始され、振込手数料についても適格請求書の保存が必要になる場合があるので注意が必要です。振込手数料のような少額の取引については、事務負担を軽減するための措置も設けられています。

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よくあるご質問

振込手数料はどちらが負担すべき?

一般的には、振込手数料は支払い側が負担するのが原則と考えられています。ただし、これはあくまで一般論であり、絶対的なルールではありません。トラブルを招くことのないように、新しく契約を結ぶ際には、振込手数料をどちらが負担するのかをあらかじめ決めておくといいでしょう。詳しくはこちらをご確認ください。

インボイス制度で振込手数料はどちらが負担する?

振込手数料は、お金を支払う側が負担する、当方負担が原則です。自社が請求書を発行する立場なら、「振込手数料を売り手負担とする」といった取り決めがない限りは、買い手である取引先が振込手数料を負担するのが一般的です。この原則は、インボイス制度が開始された現在も変わっていません。詳しくはこちらをご確認ください。

3万円未満の振込手数料でも適格請求書は必要になる?

インボイス制度開始に伴い、少額特例に該当しない限りは、たとえ数百円の振込手数料でも、金融機関が交付した適格請求書がなければ仕入税額控除が受けられません。ATMを利用した場合の振込手数料なら適格請求書は不要ですが、窓口やインターネットバンキングの場合は適格請求書が必要になるため注意しましょう。詳しくはこちらをご確認ください。

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この記事の監修者税理士法人 MIRAI合同会計事務所

四谷と国分寺にオフィスのある税理士法人。税理士、社会保険労務士、行政書士等が在籍し確定申告の様々なご相談に対応可能。開業、法人設立の実績多数。
「知りたい!」を最優先に、一緒に問題点を紐解き未来に向けた会計をご提案。

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